本当は儀式なんてやっていないで家族と一緒に少しでもいたかったけど仕方なく儀式を行いました。
その後村へ。ギーベたちとはここでお別れ、付き添いの騎士が送ってくれるらしい。
今生の別れではないにせよ、住みなれた村を離れるのは苦しい。
でも、戻ってこれないわけではない。
私がいなくなった後、ギーベハルデンツェルの計らいで下級貴族の騎士を神殿の管理と警備をかねて派遣してくれるとのことです。
私物を整理しろといわれても私が提案しトゥーリとお母さんが作ってくれた花飾りと聖典位しかないなぁ。
とりあえず、神殿に寄り魔力をこめる。
聖典を見ていると本当は祝詞入れた儀式のほうがいいらしいけど今回は時間がないので簡単に祈りをささげ魔力を奉納した。
引き継ぐ騎士の方に簡単に説明する。聖典はもっていっていいといってくれた。小聖杯、大聖杯や槍とかいろいろ最後に魔力をあふれんばかりに込めておく。
ちなみに一緒に来てくれた騎士さんもルッツと同じく地下通路には入れなかった。また次回来た時に奉納しないと...。
村人が総出で出てきてくれる。いろいろお土産を渡そうとしてくれるが食材とか渡されても持っていけないよぉ。
薬とかもらってルッツとか、家族とかみんな泣いている。
「みんな今までありがとう。でもね。また何度もこれるから大丈夫だよ。ギーベのおかげで今生の別れじゃないんだよ。」
みんな、体に気をつけてなとか体のことばっかり心配してくれる。
「お父さん、お母さん、トゥーリお姉ちゃん、いつもありがとう。また必ず来られるから笑顔で見送って欲しいなぁ。」
私が泣き顔になっているのに家族に笑顔で送って欲しいなんていうなんてわがままだなぁ。
「マイン、マイン。」と家族が何度も言っています。
しばらくすると一緒に来てくれた騎士の方が
「それでは娘さんをお預かりする。なにギュンターはよく知っていると思うがギーベは平民にも慈悲深くすばらしい方だ。安心せよ。」
村との別れのときです。
魔石の獣に乗った後に別れの祝福を送ります。
言葉になりませんので心の中で、闇と光の最高神、水の女神、火の神、風の女神、土の女神、命の神に祈りをささげます。
村の人々が私がいなくなった後も以前のように食料もない大変な状態にならず今後も幸せに暮らせますようにと全力で祈ります。
美しい7色の祝福が村に降り注ぎました。
最後まで魔石の獣の上から家族が見えなくなるまで手を振って別れました。
しばらく騎士の方たちは驚いた様子でしたが、安定して飛んでいました。そんなに驚くことなのでしょうか。
いつもより多くて色が増えただけでウラノの世界の花火から見ればたいしたことなどないと思うのですが。
「こほん、さて、それではマイン嬢。これからいったんエーレンフェストへ向かう。体が弱いことはよく聞いているから少しでも悪くなったらすぐ言うように。」
「ありがとうございます。ところで、エーレンフェストって領主の町ですよね。ライゼガングへ向かうのではないのですか。」
「ああ、それはだな...。」
この領地はエーレンフェストで当然ギーベはエーレンフェストにも活動拠点を持っているのでいったんそこに行くとのことです。
あと、非常に言いにくそうにしながら話すには、ライゼガングはハルデンツェルもそうなのだが政情が余りよろしくないらしく情報収集もかねて一旦エーレンフェストの城で合流するとのことでした。
その後は、疲れてきましたが丁寧に運んでくれたので気がついたら眠っていました。
急にひどい衝撃がします。
「起きるのだ、マイン嬢。」
「どうしました。」
「敵襲だ、どこのものか分からぬ。こちらも護衛が4名いるから防御に徹すればどうということもないが、ゆれるので気をつけてくれ。」
「分かりました。」
そこで少し考えます、祝福贈ればいいんじゃない。万が一があると困るし。
「風の女神シュツェーリアが眷属 疾風の女神シュタイフェリーゼと忍耐の女神 ドゥルトゼッツェンの御加護がありますように」
「祝福ありがたき。」
光る危険そうなものとかが飛んできたりしましたが、加速して逃げ切れたようです。
「しかし、すばらしい祝福ですな。その聖典も大きさを変えられたりすばらしい魔術具のようだ。」
周りの騎士から感謝されました。少しでも役に立てたのならよかったです。
そんなこんなで加速したのであっという間に立派な城が見えて来ました。
すごいなぁ。ウラノの世界の西洋の城だ、『ふぁんたじー』だね。
家族と別れた悲しみが少し薄れた気がします。
それから発着場の様な所に降り、抱えられて城の中へ入りました。
中に入ったら衣服をはがされ、湯浴みをさせられ着替えさせられます。自分でできるのになんて思ってしまいますが貴族のしきたりなのだそうです。
とりあえず疲れただろうということで食事が部屋に運ばれ食べ終わったらまた寝巻きに着替えさせられ寝る事になりました。
次の日朝ごはんを食べるとギーベのいる部屋へつれてかれました。そこにはぷひぷひ言わされたアウブがいました。
なんでも契約魔術を行うということで同席しているとのことです。
といっても内容は住んでいた村以外でのもしくはギーベの指定した場所以外での家族としての接触禁止。
私の名前以外はすでに入っており、すでに説明もされていたのでサインします。拇印を押せば完了です。
うーん点滴や注射で血を見るのはなれてるけど自分で指先を切って押すのはやな感じです。
しかし、お父さんはよほどライゼガングの方々を信頼しているんだな。字もあまり読めないはずなのにサインしちゃうんだから。
「さて、マインよ、アウブとして命ずる。しばらく城と神殿にて貴族教育をうけろ。」
とりあえず、城でマナー講座を受けることになりました。
最初は苦労したけど基本を覚えてしまえばマナーについてはあっという間でした。
マナーの先生も上級貴族としてならどこへ出しても恥ずかしくないとほめていただきました。
ちなみに空いた時間は図書室へ行ったり、本を借りたりしたのですが、こんなことがありました。
その日は、余りにいい天気なので外で本が読みたくなって庭の花壇の脇で本を広げ読んでいました。
そこへいきなり走ってきて目の前の花壇に子供が隠れるようにしゃがみました。
余りにバタバタうるさかったので珍しく本から目を離したのですが、
「おい、お前誰かに聞かれても私がここにいるとか言うんじゃないぞ。」
「ええ、ここには誰もいなかったでいいのですのね。」
うん、誰か知らないけど邪魔されないならそれでいいや。
その子を完全無視することを決定し、しばらく本を読んでいたのですが
「本なんか読んで面白いのか。」
耳元で言われては流石に反応してしまい、横をみるとさっきの子が隣に座っていました。
「本も最高ですが、知識を知るのが面白いのですよ。」
「ふーん、じゃあなんかその知識で面白い話をしろ。」
誰もいなかったんじゃなかったのでしょうか。
まあ、私と同じ位の年齢でしょうし適当に聖典の話を元に神様の物語を話してあげます。
「神様とは、そんな面白い話があったのだな。教えに来るやつらの話は本当につまらないがお前の話は面白かった。また聞かせてもらえるか。」
そこで「ヴィルフリートさま、どこですか」と言う声が聞こえてきました。
「おっと、まずい、そろそろ行かねば。そういえばそなた名は。」
「マインと申します。」
「マインか、またここにくれば会えるか。」
うーん、今日ここにいるのはたまたまだしまた気まぐれに来ればいっか。
「時の女神 ドレッファングーアの導きがあれば会えるかと存じます。」
暗に会えない可能性が高いですよといってみる。
「おお、今日の話しでも出てきた時の神か、おっといかん見つかってしまう。ではな。」
うん、これで会うことはしばらくないでしょう。しかし領主一族というのは元気なのですね。少し荒れた花壇をこっそり祝詞で直しておきました。
ちなみに図書室には、残念ながら稲についてというかそもそも農業に関する本はなかったですが、エーレンフェストの歴史等知れて面白かったです。
しかしここからが本当に大変でした。ええ、宗教怖いではなく神殿は怖いところだなということをイヤというほど感じることになります。