マインオブザデッド   作:dorodoro

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46話 領主会議と顔合わせ

領主会議でアウブと第一夫人不在の状況でゲオルギーネ様から私的なお茶会の呼び出しです。

 

これには非常に困ってしまいました。普通なら断るべきです。

 

せめてアウブがいる間に話すべきでしょう。ですが、本音を聞き出すならこれはまたとない機会なのです。

 

アウブがいない以上、私に命令権を持っている人は不在な訳で...ゲオルギーネ様とは感情は別として、おそらく同じゲドゥルリーヒを持つ者として一度話をしてみたいとは、ずっと思っていたのでお受けすることにしました。

 

「お招きいただきありがとう存じます。ゲオルギーネ様。」

 

「ええ、来てくれてうれしいわ、ローゼマイン。」

 

つれてきている側近は二人です。どちらもゲオルギーネ様に忠誠を誓っておられる方です。

 

まったく、着いたときからゲオルギーネ様は挑発状態です。

 

側近と思われる後ろにいる方の1人は、私を拉致してくれたと思われる方じゃないですか。

 

あまい痺れる香りもしているし...。

 

はあ、やっぱり受けるんじゃなかったかな。お誘いを受けたことに、はやくも後悔してきました。

 

最初は当たり障りのない会話が続きます。

 

「ねえ、ローゼマイン。貴方が優秀だということはよくわかったわ。」

 

「私がもし優秀なのでしたら、ゲドゥルリーヒから離れることはありませんでしたわ。」

 

まったく何が言いたいのか分からない。

 

時間稼ぎなのかな、やっぱり。

 

それとも私の解釈がおかしくて会話として成り立っていないだけなのかな。

 

「まあ、わたくしはディートリンデよりよっぽど貴方を娘に欲しかったわ。」

 

「ディートリンデ様に不満を持たれるとはずいぶん贅沢な悩みですね。」

 

ディートリンデ様は優秀だと思うけど。

 

なんか話が噛み合わない。何が言いたいの?

 

向こうも何か噛み合わないものを感じるのか、この香りの関係か少し顔が強張っています。

 

「はあ、まるで混沌の女神に見いられたような状態ですわね。困ってしまいますわ。」

 

「申し訳ございません。ゲオルギーネ様。わたくしについては知っての通りこういったことには春を迎えたエーヴィリーベなもので。」

 

まったく誰のせいだよって言いたいよね。

 

え、経験したところで話下手だから無駄?

 

「ローゼマイン、わたくしにつけばゲドゥルリーヒの元へ導いてあげますよ。」

 

「あら、わたくしをゲドゥルリーヒから離した方がそんなこと言うなんて、何をするつもりですの?」

 

帰りたいよ。エーレンフェストに帰れるのならね。

 

「わたくしについてくれるのならお教えしますわ。」

 

「たくさんの方を、はるか高みへ導くお告げにしか聞こえませんわ。ご遠慮させて頂きたいかと存じます。」

 

どうせ暗殺とか何か手伝えってことでしょ。ごめんだよ。

 

「結果的にそうなったとしても戻りたくはないのかしら。」

 

「同じ心のゲドゥルリーヒの者同士エアヴェルミーンとエーヴィリーベのようになれるよう、心ではなく今のゲドゥルリーヒに尽くせませんの?」

 

これだけ謀略ができる方が、エーレンフェストとアーレンスバッハの友誼を願ってくれれば簡単に仲直りできると思うのだけど。

 

まあ、無理だよね。

 

「ローゼマイン、帰りたいのならこちらにつきなさい。」

 

はあ、自分の側近連中に剣を突き立てられるまぬけな主たる私。ものすごく怖いはずなのになにも感じなくてやになる。

 

「アウブより制約を受けている身としてはアウブに話をつけて頂いた方が早いかと存じますが。」

 

交渉決裂だね。私はゲオルギーネ様と私の側近連中に話しかけます。

 

「ゲオルギーネ様、彼らに止めるよう言っていだだけますか。彼らの貴方への忠誠心は十分確認が取れたでしょう。」

 

お守りはたくさんあるしこのくらいならどうにでもなるしね。

 

「貴方達も、主を失った側近として生きていくのですか?ゲオルギーネ様、貴方にとっても主催しているお茶会でいなくなったなんてなれば問題でしょう。」

 

ゲオルギーネ様が頷くと、剣を下げてくれました。側近もどこまでこの香りにやられているのかはしらないけど、なんとか話し合いで終われそうです。

 

「実に有意義で残念なお茶会でした。」

 

「わたくしにとってもそうですわね。」

 

はあ、来た意味なかったけど、話し合いの余地がないとわかっただけでも良かったのかな。

 

トルークまで使ってくるとか、まあこの領地では常套手段だからね。

 

今回も危なかったなぁ、さっきの状態では、側近にすら裏切られる主が悪いと言う事態になりかねないからね。

 

 

 

 

さて、アウブが城へ戻り領主会議の報告会です。

 

まず、順位は6位のままとのことです。

 

貴族院での成績は去年と比較してかなり伸びたとのことですが、これまでの順位を落としてきたことを鑑みて今年は様子見とのことです。

 

次にレティーツィア様の養子縁組の件で、既にドレヴァンヒェルの了承はもらっていたので正式な養子縁組は冬の洗礼式のお披露目会にするとのことですが、少しでも早くアーレンスバッハに慣れるため、数日でこちらに来るとのことです。

 

そして、アウレーリアの件ですが、正式にエーレンフェストに嫁ぐことを了承させたとのことです。

 

今後の情勢でエーレンフェストとの関係はどうなるかはわかりませんが、あれだけ愛し合っているのですからきっといいことですよね。

 

魔王様は怒っているかもしれませんが...。

 

他にはアウレーリアの星結びの儀式が終わり次第、アーレンスバッハに戻り星結びの儀式と星祭りに合わせてランツェナーヴェの使者のお出迎えです。

 

さてと、約束した以上はカードを準備しますよ。

 

と張り切っていたのですが、アウブより呼び出しです。

 

まず、ダンケルフェルガーの歴史書を渡されました。なんでもハンネローレ様のお陰でアウブダンケルフェルガーより貸し出して貰えたようです。

 

ダンケルフェルガーの歴史書はかっこいいですね。表紙も適当に作った歴史書と交換で借りて良かったのかな。

 

まあ、当然これが本題ではないわけですが。

 

「ローゼマイン、ゲオルギーネと接触したようだな。」

 

「あら、なにか不味かったでしょうか。」

 

何でばれているのでしょうか。

 

あのお茶会は、あそこだけの暗黙の秘密にするためにゲオルギーネ様との関係の深い方のみで行ったはずですが。

 

「アウレーリアの結婚の件だがゲオルギーネが強引に迫ってきたのだ。」

 

なんでもアウレーリアの星結びの件は、私を警戒しまくっているゲオルギーネ様が、アウレーリアを想像以上に取り込んでしまったので引き離すという意味もあったらしい。

 

もちろん主な目的はエーレンフェストの情報収集ですが。

 

わたしの行動が珍しく裏目に出ていない!

 

お互い得るものがあって万々歳だね。ウラノの世界の『うぃんうぃん』だね。

 

「だから監視を強めておったのだ。まさかローゼマインが、勝手にゲオルギーネに会いに行くとは考えもしなかったがな。」

 

あら、何でため息なのでしょうか。

 

「アウブ、わたくしからゲオルギーネ様に接触することはありませんわ。今回のお茶会で相容れないのはよくわかりましたし。」

 

「まあいい。今後軽率な行動はおさえるように。でないと私が不在の間、閉じ込めておく命令を出さねばならなくなる。」

 

そこまで不味い行動だったかな。

 

1度は必要なことだったと思うけど。

 

アウブのいない間にと思ったのは事実だけど、今後気を付けないと。

 

「あと、アウレーリアの星結びはエーレンフェストと共同で儀式を行うこととなった。ローゼマインも神殿長として祝福を担当する運びとなったのでよろしく頼む。」

 

ふうん、ってどう言うこと!?

 

「こちらはエーレンフェストの神官で構わないという話をしたのだが...。」

 

うん、何でもエーレンフェストが、最低限この条件を飲まないのなら他の条件をいろいろ加えるという話になったそうだ。

 

アーレンスバッハ側としてはそこまでしてこだわる条件でもないから、代わりに式台をアーレンスバッハの領界内にずらして行うことで合意したらしい。

 

「ローゼマインには、契約があるからエーレンフェスト領へ入らないように注意すること。」

 

従属契約の関係で許可されている範囲外へ出ようとすると透明な魔力の壁に阻まれる状態になるらしいので、注意しても仕方のない気もしますが。

 

私の意思で許可なくアーレンスバッハが管理する領地と貴族院以外に行ってはならないと命令まで受けているのでその関係でしょうか。

 

エーレンフェストとの接触要項については一時解除してくれるとのこと。

 

事前の打合せをしないわけにはいかないからね。とりあえず魔王様には会えそうです。アウレーリアを守ってもらえるよう直接お願いしなきゃ。

 

 

 

 

さて数日後、レティーツィア様がドレヴァンヒェルよりやって来ました。

 

「水の女神 フリュートレーネの清らかなる流れに導かれし良き出会いに、祝福を祈ることをお許しください」

 

「許します。」

 

妹ということになるのですね。

 

立場としては同じ養女で領主候補生なので、一応上になるのですが、血縁といい次期アウブ最有力候補といい、下手に出たくなります。

 

そんなこと言い出したら私は元平民になりますので切りがないのですが。

 

「ローゼマインお姉様、ドレヴァンヒェルでも噂はお聞きしてます。会えるのを楽しみにしてました。」

 

お姉様だって!お姉様だって!

 

しかもすごくかわいい!

 

金髪碧眼でウラノの世界の『せいようにんぎょう』みたいな。言い方が悪いかな?

 

とにかくすごくかわいいってこと!

 

お姉様といえば、カミルどうしているかな?もう外で元気に遊んでいるのかな?

 

「ええ、わたくしも楽しみにしてました。」

 

と言っても余り関わることはなさそうなんだよね。

 

基本的に私は神殿にこもりっきりだしね。

 

アウレーリアの星結びと洗礼式のお披露目会で、関わるとすれば関われるのだろうけど。

 

「ドレヴァンヒェルとは、文化も考えもまったく違い大変かと存じますが、できるだけお手伝いさせて貰いますのでよろしくお願いしますね。」

 

どれだけ手伝えるかは不明だけど、この土地はいろいろ大変だからね。出来るだけお手伝いはしますよ。

 

お父様もお母様も、今のところは余り私には関わらせる気はないようなので顔合わせだけで終わりました。

 

 

 

さて、今度はアウレーリアの件です。時間がない中、無理をしてでも時間を取ってもらいます。

 

「縁結びの女神リーベスクヒルフェの糸の導きにより、無事にお二方が結ばれたようで良かったです。」

 

本当に良かった。

 

貴族では、愛し合っていたって結ばれない方が多いからね。

 

「わたくしも星結びの場では神殿長として祝福させてもらいますのでよろしくお願いしますね。」

 

「ローゼマイン様に祝福をしていただけるとはとても光栄です。」

 

私も無理だと思ったんだよ。

 

だってエーレンフェストと思いっきり関わるじゃん。

 

最悪お土産託して終わりかなと覚悟してたんだよ。

 

「それで以前、アウレーリアは目元について悩んでいたでしょう。わたくしはまったく気になりませんけど。」

 

アウレーリアは以前に吊り上がったような自身の目が嫌いだといっていました。かっこよくて私はいいと思うのですが本人が気にしている以上、何とかしてあげたいと思っていたのです。

 

「ええ、ですのでむこうではヴェールで顔を隠すか悩んでおりまして。」

 

「それで、よろしければこちらの『化粧道具(メイクグッズ)』で目の回りを...側付きの人に渡しますね。よろしければ使ってみてくださらない?」

 

 

 

「だいぶこの薬を塗るだけで、見た印象が変わりますね。」

 

うん、使い方教えてメイクをしてもらいました。

 

こちらの世界でも元々化粧をする文化がないわけではないのですが、使い方とかは発展途上のようです。

 

「この顔料は、毒の中和作用とかにも使えますわ。」

 

私の場合は、口紅とか化粧とか魔力のせいかあまり意味がないのだけど塗るだけでかなりの毒を防げるからね。

 

「ただ、問題は作り方が少々特殊で余り大量生産がききません。」

 

毒の中和作用なくせば...結局色付けがめんどくさいんだよね。魔力で色付けするせいで繊細な作業になるし、魔力を使わずに変な材料を使えば今度は安全性にも関わるし。

 

「作り方はこちらに記しておきますので神殿にいるフェルディナンド様に作成をお願いしてくださいませ。」

 

「ありがとう存じます。ローゼマイン様。」

 

「ただ、神殿に頼むにしても無料(タダ)では作って貰えないかと存じますので、こちらを使って交渉してくださいませ。」

 

この為なら何でも出しちゃうよ。

 

私は魔紙の作成方法と、サンプルの紙を50枚渡しました。

 

「あと、最後にこれは図書館の魔術具の設計図です。もしアウレーリアがもしエーレンフェストへ行った後にどうにもできなくなったら、これを使ってフェルディナンド様に交渉してください。」

 

これだけ差し出せば、さすがに魔王様も動くよね?

 

動かなかったらどうしよう。

 

特に最後の図書館の魔術具は知っている可能性があるんだよね。まあ、最悪今回の作った魔法陣も全部のせたしいけるよね?

 

「何から何までありがとうございます。ローゼマイン様。わたくしにはこれらの価値はわかりませんが貴重な物なのでしょう?」

 

うふふん、この為なら何も惜しくはないよ!

 

「さすがに大したものではないとは言えませんね。でも個人的にアウレーリアに贈らせてもらいたかったのですわ。」

 

素材回収といい、本当に短い期間しか一緒にいられなかったけど救われたのは事実だし。

 

「ありがとう存じます。ローゼマイン様。側近として働けたことを誇りに思いますわ。」

 

ありがとうはこちらの台詞です。背中を預けられる人なんてアーレンスバッハにはいないからね。

 

 

 

 


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