約束していたヒルシュール先生の研究室にやってきました。
「ようこそ、ローゼマイン様、ここが私の研究室ですよ。」
うわぁ、地面にまで設計図。足の踏み場がないとはこのことだね!
ちなみに今回は最初に忠誠を誓ってくれた子と来ています。
「ローゼマイン様、これは流石に見るに耐えられません。片付けましょう。」
「でも、ヒルシュール先生的にはどうなんですの。片付けてかまわないのかしら?」
研究者って言ったらいろいろだしね。ウラノの世界でもこちらでも一緒でしょう?
かまわないというので、とりあえず片付けるのをお願いしました。
「それでフェルナンド様の魔術具と言うのはどこにありますの?」
うん、テンションあがるね。だって魔王様の遺産だよ。しかも貴族院時代のテンションあがるでしょ。
「ローゼマイン様、こちらに。」
うわぁ。ってみんな壊れてる?
「あの、先生この魔術具達壊れてますよね。ちゃんと分解してフルメンテナンスしてあげなきゃダメですよ。」
簡易メンテナンスはきっちりやっているみたいだけど、なんでフルメンテナンスしてあげないのだろう。
「ローゼマイン様はできるのですか?」
「やっていいんですの!」
え、魔王様の遺産を好き勝手にしていいの!?
「ええ、是非とも。」
あ、まずい興奮して本来の目的を忘れてた。シュバルツとヴァイスの魔法陣について意見を聞いておこうと思ったんだった。
「ヒルシュール先生、時間がない中で申し訳ないのですが是非ともこの魔法陣の採点をお願いしたいのですが。」
大丈夫だと思うんだけどね。でも一人では気が付かないことって沢山あるから他の方の協力が欲しいんだよね。
さてと、最低限重要な用件は済ませましたし、ではでは心置きなく魔王様の遺産を見ますかね。
「うわぁ、初期型、魔王様の設計の初期型です!しかも実物始めてみました。ああ、ここの魔法陣が壊れてる。こちらはうん、金粉固めて、ああ、先生油と魔石あります?ええ、そうです。ありがとうございます。」
分解分解、魔法陣が劣化にここは補足して、うわあ楽しい。
ああ、初期型のせいか無駄が多い。これじゃ無駄な魔力垂れ流しだよ。
テストの後!テストの!これ最終段階で無駄になって省いたと思われる回路が残っている。
こいつはもうだめだから、一から材料にして調合し直し!
うわあぁ、複写、そっかそうすれば綺麗に見えるようになるのかさすがは魔王様!
「先生先生、あと、あれとあれとあれと。」
とそこで側近の子が最低限片付け終えたのか
「ローゼマイン様、落ち着いてください。祝福が飛び出していますよ。」
「だって、だって、あの魔王様の初期型が壊れているとはいえこんなにあるのですよ。」
あ、そっかごめん。わからないよね。頭が少しさめました。
「こほん、ここにあるのはすごいものなのです。私にとっては、ユルゲンシュミット全土で見てもおそらくなかなか出逢えない知と遊び心の結晶なのです。」
「ローゼマイン様が幸せそうならそれで良いのですが。」
ヒルシュール先生に片っ端から出してもらい許可を得て効率よく改修したり好き勝手にいろいろさせていただきました。
「ローゼマイン様は魔法陣や魔術具の作製が本当にお得意なのですね。驚きました。ユルゲンシュミット全体で探してもここまでできる方はなかなかいないと思いますよ。」
「まあ、尊敬するヒルシュール先生にお世辞でもそこまで褒めていただけるとは嬉しいですわ。昔教わっていた人からはギリギリ落第だを唯一もらえたのが魔法陣関係ですから少し自信があるのですよ。」
本当に魔王様は、少しくらい褒めてくれても罰は当たらないと思うのですが、まあ、褒めるようなことはしていないってやつですよねきっと。
「これだけできて落第ですか...。その教えていた人がどなたかはとっても気になりますね...。」
「あの方は、何をしても時間の無駄か落第といった評価しかもらえませんでしたから、ぎりぎり落第はかなり、いえ、とっても頑張ったのですよ。私がもらえた中では最高評価でした。」
あれ、先生がなんか難しい顔と言いますか、あきれ顔?
「とても厳しい方に教わっていたのですね...。」
そんなこんなで楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
「ヒルシュール先生、今日は本当にありがとうございました。魔法陣の採点も時間のない中で申し訳なかったのですが助かりました。たぶんもう来る事ができないのは本当に残念です。」
魔法陣も問題ないとのことだけど、いろいろ改良のアドバイスがもらえました。できればこのまま預かって研究したいと言われましたがさすがに渡すことはできません。
必要なところは写してもらえたかと思いますが。
はぁ、本当にしょんぼりです。貴族院では緊張しっぱなしのアーレンスバッハの寮よりよっぽど落ち着きます。
「いえ、ローゼマイン様。残念なのは私のほうです。まさかこれほどたくさんの使えなくなった魔術具を整備し、改良までしていただけるとは。」
「ああ、後ちょっとだけ大丈夫ですわね。わたくしも勝手に改造してしまいましたし、設計図全部書き出しますので今後のメンテナンス改良等に役立ててくださいまし!」
うふふん、これだけすばらしい体験をさせていただいたのだから魔紙もバンバン渡しちゃうよ。
「先ほどから気になっていたのですが、これはなんですか?紙ですか、それにしては薄くて丈夫で。」
「あ、先生なら大丈夫だと思いますけどこの紙は先生が認めた人以外は見せないようにしてくださいまし。先生が認めた人以外は只の白い紙に見えるように設定して...。」
「ものすごいスピードで設計図が写りあがっていますね。驚きました、ええ、本当に。」
「それでは先生、さっきは説明しませんでしたが、少量魔力をこめてくださいませ、ほら立体的に見えたりいろいろ便利なんですわ。魔王様に唯一対抗できる秘密兵器ですので魔王様には絶対に見せないでくださいまし。」
「ええ、まあいいでしょう。本当に興味深いですね。ところで魔王様というのは?」
「フェルディナンド様のことに決まっておりましてよ!あの方はすべてを...。ごめんなさい忘れてくださいませ。」
やばいやばい、テンション上がり過ぎて気絶しそう。ああ、もうダメ幸せすぎる。
あうち!頭の魔法陣が起動しちゃった。
ううん、体に身に付けている魔石とかも気が付けばフルチャージだし、もういいよね。幸せなまま眠れるなら。頭の魔道具も切っちゃおう。
だめだ、切ったらやっぱり意識が保てないよぉ。おやすみなさい。
「ローゼマインさま!」
こんなローゼマイン様は見たことがありませんでした。
今まで表情はほとんど変わることなく何事にも淡々としているイメージしかありませんでしたから。
ところがヒルシュール先生のところへ着くと今まで見たことがないキラキラした目で、と言っても側近として側でよく見ているからわかる程度の変化ですが。
なんというか雰囲気がキラキラしていたのです。
もしかしたら本来のローゼマイン様は表情豊かな方なのかもしれません。
いつもより興奮した声でいろいろ話してくれましたがさっぱり話が分かりません。
そしてものすごいスピードで魔術具を直していきます。シュタープで常に3つほど魔法陣を上に展開したまま次々と魔術具が動くようになっていきます。
しかも、改良もしているようで、横でヒルシュール先生がずいぶん使いやすくなってますね。とか言っています。
しかし最後に倒れてしまわれるとは。何となく心安らいだ顔をしていますからいいのですが。
最後になにか気になることを言っていましたが、聞かなかったことにしましょう。
「それでは、ヒルシュール先生失礼しますね。」
「ええ、くれぐれもローゼマイン様とご許可を頂いたアウブアーレンスバッハに感謝をお伝えください。」