「良く戻りましたわ。ローゼマイン。戻る前の状態を見ると心配でしたが大丈夫そうで良かったわ。」
「ご迷惑おかけいたしました。ディートリンデお義姉様。」
お出迎えまでしてくれるとは、何かすぐしなきゃいけないことがあるのかな。
「さてさて、戻ってきて早々だけれども、2回目の領主催のお茶会を開きますわ。今回は代表1名に限定して行うからローゼマインも安心して参加しなさいな。」
その後、1回目をいかに大規模におこない他領に見せつけたかを自慢が続きます。
うわぁ、もし、私がこのままアーレンスバッハに居続けたらそんな派手に大規模なお茶会開かないといけないのかな。
主催なんかできる気がしない...。大げさに言ってくれているといいのだけど。いや、たぶんないな。
でも、ディートリンデ様が仕切ってくれるおかげで、私は簡単な指示を出すだけで何もしなくても準備が進んでいきます。
こっそりヒルシュール先生に明後日の予定が空いているか連絡をし、その後食堂へ確認に向かいます。
前半にお願いしたウラノの世界の水あめもどきどうなっているかなぁ。
確認してみると、うまくできるようになったようで、カステラに水あめを加え、さらに柑橘類の皮をすりおろしたものや、果汁を加えたものなど作ってもらいます。
ウラノの世界のあんこがあれば、挟んで別のお菓子にできたのになぁ。
乳製品も手に入らないわけではないのですが、アーレンスバッハでは暖かすぎるせいかあまり良質なものが手に入りません。
まあいいや、砂糖菓子をメインに出しておいて目立たないところにこそっと置かせておいてもらえば問題ないよね。
アナスタージウス王子も貧相だとか言っていたし、あまり食べる人はいないだろうからきっと問題ないよね。
エグランティーヌ様が来る予定みたいだからないと、何か言われたらいやだしね。
しかし、来る人を限定してくれたのにものすごい数のお菓子を用意するんだね。
これなら完全に埋もれるしいいかなと思いました。
さて、お茶会当日です。
何やらヴィルフリート様がお詫びを兼ねて渡したいものがあるということで始まるよりかなり早くにいらっしゃいました。
いや、別にアーレンスバッハの事情なのでヴィルフリート様が悪いわけではないのですが。
ディートリンデ様も少し配慮してくれたのか、最初はヴィルフリート様と仲良く談笑していました。
単純に自分が話したかっただけかもしれませんが。
そのあとやっぱり呼ばれ、渡されます。
シュバルツとバイツの服とのことでした。リーゼレータさんが中心に作ったそうです。
エーレンフェストの城ではこの人とも何度もすれ違っていますし、挨拶もしたことがあるくらいには認識があります。
さすがにシュミル好きとまでは知りませんでしたが。
「ありがとう存じます。リーゼレータ。」
うん、本当にありがとう存じます。
白と黒がメインの装飾というのがよくわかっています。
わたしもシンプルな色合いのほうが好きです。
「派手さがちょっと足りないのではなくて、もっとこう装飾を加えて色合いも加えて。」
うん、アーレンスバッハの人としてはディートリンデ様が正しいですね。
「ディートリンデお義姉様、図書館はあくまで本を読むところなので下手に目立ちすぎない方がいいかと存じます。」
「まあ、そんなものかしら。ローゼマインが気に入ったのなら使わせてもらえばいいのではなくて。」
そう言ってディートリンデ様が服を広げます。
そこの胸には...。
本当にやめてほしいのですが、いや、本当はうれしいんだよ、とっても。
ですが感情的になるわけにいかないところでやめて欲しいというか、さっさと何も見ずしまうんだった。
うん、トゥーリ、お母さん本当に頑張って作ってくれたんだね。
二人かどうかはわからないけど前回のヴィルフリート様の話だときっとそういうことだよね。
「ぜひとも使わせて頂きます。頂戴いたします。」
できるだけ感情を殺すために、抑揚のない声で言葉をかけます。
やはり、努力目標になったおかげかだいぶ反応は緩和され従属の指輪もこのくらいなら大丈夫そうです。
その後、すぐに他の領地より人がたくさん来て対応に追われます。
基本的にはディートリンデ様が捕まえてくれて持って行ってくださるので非常にありがたいのですが、
私はエグランティーヌ様の関係でお姉さま方につかまったりして大変です。
カステラは結構好評でした。
あのしっとり感のあるお菓子はなかなかないらしく、水あめを加えたのがよかったようです。
基本的に砂糖菓子に埋もれているので目立つことなくここにいるお姉さま方以外注目していないのもありがたいです。
うーん、思ったより嫌みを言われないね。体が弱いこととか場合によっては神殿についていろいろ言われるかと思ったけど。
まあ、領主催のお茶会は2回目だしやっぱりアーレンスバッハが大領地であるのが大きいのかな。
といっても、中領地に抜かれての6位らしいけど。最近は順位を落とす一方らしい。
当然だよね。内部ガタガタだもの。
大体の方々に挨拶を終わって、そろそろおしまいかなという状況になりました。
ダンケルフェルガーのハンネローレ様とは一度話したかったのですが、なぜかタイミングが悪く会えないんですよね。
まあ、私は時の女神 ドレッファングーアの加護が弱いのでしょう。
昔はそんなことなかったと思うのですがアーレンスバッハに来てからは切にそう感じます。
うん、今回もダメかなと思ったときに会えました。
「あの、ローゼマイン様」
うん、あれ、なんか決心したような緊張したような変な雰囲気なんだけど私に何かあったかなぁ。
「ハンネローレ様、来てくださってありがとうございます。どうにも一度挨拶をと思ったのですが、私は時の女神 ドレッファングーアの加護が弱いせいかすれ違ってばかりでしたので。」
あれ、少しぽかんとしたような。なんか変なこと言ったかな?
「わたくし、お兄様のことで会話があったのですけど、このようなところで申し上げることではございませんのでまたの機会に。」
お兄様?ディッターの件かな。それくらいしか関わっていないし。こちらこそ良く知りもせず巻き込もうとしてごめんなさい。
「ディッターの件ならお気になさらずに。わたくしもいい経験をさせていただけましたから。むしろ巻き込もうとしてごめんなさい。」
うん、謝っておかないとね。
「いえ、わたくしの方こそ、その...。」
やっぱりその件だったのかな。なんか申し訳なさそう。雰囲気的にも非常に気が合いそうな方だし相談を持ち掛けてみますか。
「もしそちらの気が済まないというなら今度わたくしの相談に乗っていただきたいのですけど。」
この方にはぜひ相談したい、あのディッター集団をまとめる技術を。
「あの、それでしたら、よろしければわたくしと友達になってくださらないかと...。」
え、本当ですか!ボッチの私と!?もしかしてボッチ村脱出のチャンス?
「ええ、よろこんで。アーレンスバッハとはお隣同士ですし旧ベルケシュトックの繋がりもあるのでぜひ仲良くしていただけると嬉しいです。」
いきなりウラノの世界の『くーりんぐおふ』するいじめとかないよね。え、ないって言ってよ!
やばい興奮すると、まずい落ち着かなきゃ。まあ、いざとなれば髪飾りの魔法陣が起動して...。
意識だけは飛ばないようにしてあるんだけどいかんせんはるか高みに上りかけるから嫌なんだよね。
ひゃっほい、ウラノの世界の相談相手ゲット。いやウラノの世界関係ないし落ち着け私。
そのあと、二人でお茶会をしましょうという話になり2日後にハンネローレ様が招いてくださることになって無事にお茶会は終わりました。