マインオブザデッド   作:dorodoro

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39話 一時の帰宅と奉納式

起きてから数日、ようやく手紙の返事と言いますか、帰還命令が来ました。

 

やっぱり妨害とかされているんだろうな。

 

緊急で出したのに帰還命令までこれだけかかるのだから。

 

溜息しか出ません。

 

ディートリンデ様も

 

「仕方がないわね。ゆっくり療養なさい。こちらのことは気にしなくてよくってよ。」

 

という感じで送り出してくれました。

 

「申し訳ございません、ディートリンデお義姉様。領主催のお茶会まで入る予定でしたのに。」

 

せめて、領主催のお茶会まで入る予定だったのですが。

 

この人の本心が全く分からないしどう対応していいのかわからないよ。

 

「とりあえず、ローゼマイン抜きで一回行い、帰ってきたらまた、簡易的なお茶会を行うことにしますわ。まさかあそこまで小規模のお茶会で倒れるとは思いませんでしたの。」

 

う、なんかものすごく迷惑をかける感じです。わざわざ私のために表面上は気を使って2回に分け小規模にすると言ってくださっていますし。

 

「お心遣いありがとう存じます。ディートリンデお義姉様。ゆっくり療養し奉納式が終わり次第また戻ってまいります。」

 

はぁ、帰って報告と対策です。今回の件で更に魔力の停滞も加速しているし、もともと必要だったユレーヴェに入る時間も検討しなきゃ。

 

 

 

 

「ただいま戻りました。アウブ、お母様。」

 

帰って来た私はアウブの執務室へ通されました。その後、アウブがお母様と私を残して人払いをおこないます。

 

「さて、ローゼマインから連絡がほとんど入らなかったが、何かあったのか。」

 

「お父様方には、やはり届いておりませんでしたか。わたくしも何度か手紙を出したのですが返事は一度も頂けなかったので。」

 

「一度届いたのだが、内容が何通りにも解釈ができて判断ができなかった。改めて聞かせてくれるか。」

 

まずい、考えすぎた?

 

「わかりました。お話しします。」

 

私はディートリンデ様についてや、ヒルシュール先生について話します。

 

「ディートリンデ様は本当によくわかりませんので困っております。ゲオルギーネ様の娘となれば当然わたくしの契約については知っておりますよね。」

 

あれ、お父様、お母様なんでそんな安心した顔をしているの。私本当に困っているのですが。

 

「ローゼマインから見てディートリンデはそのように見えるのか。私もあれについては良くわからんのだ。だが、知っているという前提で物事を進めた方がよいだろう。」

 

少しデイートリンデについて見直すべきか、なんてつぶやいているように聞こえます。

 

「あと、お父様。どうやら従属契約が発動してしまったようです。わたくしは回避のため努力したつもりでしたが、回避できませんでしたので契約について再度見直しをさせて頂きたいかと存じます。」

 

「今回倒れた件というのは従属契約に関するものだったのか。本来なら...。まあ無事だったのなら良い。最大限回避のために努力したのか。」

 

最大限!?努力はしたつもりですがどこまでやれば最大限になるのでしょうか。

 

「わかりません、努力はしましたがどこまでやれば最大限になるのかはわたくしには分かりませんでした。」

 

「とにかく経緯を話してみよ。」

 

「アウブに対する忠誠にかかわる話なので、話したくないのですが、ダメでしょうか。」

 

「だめだ、ローゼマインのためでもある。契約を見直すためにも絶対に必要だ。必要ならば命令する。」

 

いやいやながら、もはや命令なので全部話します。

 

「ふむ、わかった。契約を努力目標に引き下げよう。ただし、契約など関係なくても其方はアーレンスバッハの領主候補生だ。アーレンスバッハについて一番に考えてもらわねば困る。」

 

勝手につれてきておいて、命令されて、心のゲドゥルリーヒにまで言われたくないよ。

 

「あなた、さすがに言いすぎです。ローゼマインの立場も考えてあげるべきです。心くらい自由にさせてあげてもよいのではなくて。」

 

「ならん、今ローゼマインにいなくなられては困るからできる範囲で最大限配慮しているつもりだ。これ以上は無理だ。」

 

やっぱり所詮は道具ってやつだよね。お先が真っ暗すぎる。

 

その後、夫婦喧嘩が始まりそうな雰囲気でしたが、止める気力がありません。

 

最後に、王族について社交に疎い私からはこれ以上関わらないほうがいいという話や、図書館の魔術具についてはそのまま現状維持という話になりました。

 

ヒルシュール先生については保留です。

 

 

 

さて話がすめば、奉納式の為に神殿に向かいます。

 

エーレンフェストの時はもう少し遅くから始めていたと思うのですが、アーレンスバッハでは始めるのが早いようです。

 

理由はすぐわかりました。エーレンフェストの三倍の領地があるのに下級貴族の魔力もない方二人に、一般人とほとんど変わらない青色神官8名...。

 

終わるわけがありません。エーレンフェストだって、それなりに魔力のある青色神官が5名いたのですから。まあ、魔王様は別格として。

 

毎日頑張ってくれていたようですが、まだ十分の一も終わっていません。

 

絶望せずに良く毎日お勤めを果たされていると思います。とりあえずねぎらいの言葉くらいかけてあげないとかわいそうでしょう。

 

「毎日の奉納ご苦労様です。これから毎日一緒に頑張りましょう。」

 

今回は私を先頭で跪き両手を赤いカーペットに当てます。

 

「我は世界を創り給いし神々に感謝をささげるものなり。」

 

そのあと、最高神と五柱の大神に祈りを捧げる祝詞を読み上げます。

 

「息づくすべての生命に恩恵を与えし神々に敬意を表し、その尊い神力の恩恵に報い奉らんことを」

 

いつも思うんだけどさ、ものすごく引っ張られる感じだよね。

 

魔力がどんどん引き抜かれます。まだまだいけるな。

 

 

 

 

うーん、ここらへんでやめておこう。

 

はぁ、さすがは大領地。これだけやってもまだあと終わるまで8日はかかりそうだね。

 

回復薬使えばもう少し短縮できそうですが、回復薬使ってまでやりたくないし。

 

「すばらしい、さすがは神殿長です。この調子でいけば本当に久しぶりに領地全体に魔力がいきわたりそうです。」

 

「皆様の頑張りが領地に魔力を潤すのです。わたくしはこの中では魔力が多い方かもしれませんがいつまで神殿にいられるかは分かりません。」

 

本当に何時になったら帰れるようになるかなぁ。はぁ。

 

「神も必ず皆様の頑張りを見ていらっしゃると思いますので、ご一緒にお勤めを頑張りましょう。」

 

ちなみに皆様は私の魔力の流れがあまりに早いためついていけずにすぐ手を離したそうです。

 

儀式の後は去年までの状況を聞いていきます。

 

なんでも中央に近いところでも5割くらいしか魔力が満たされていない小聖杯が送られるなんてことは当たり前で旧ベルケシュトックについては、ほとんどない状態で送られていたそう。

 

ゲオルギーネ様がどこからか引っ張って来た時もあったらしいけどできなくなってからは、もはやウラノの世界の『すずめのなみだ』だったそうです。

 

それって結局私の魔力じゃん。言うわけにいかないけど。当然そんな状態だから神殿への風当たりはとてもひどいもので皆さん疲れ切っていたのもそのせいらしいです。

 

雪もそこまでなく、冬にも食物を育てられるから何とか凌げていたけどその絶望はひどいものだったそうです。

 

なんで皆さんそんなに神殿を嫌うのだろう。貴族の方が魔力を奉納すればここまでひどい状態にならないだろうに。

 

もはやその発想すらないのかな。

 

旧ベルケシュトック大領地についても領民たちを思うなら自分たちでやればいいだけだったのでは。そう考えるとよくわからなくなります。

 

まあ、きっとここでは私が異端なのでしょう。とりあえずお勤めを果たしますか。

 

8日間かけてようやく終わったのですが、アウブよりウラノの世界の『おかわり』です。

 

いや、命令されてしまえばやるしかありませんが。

 

はぁ、なんでも王族や今まで借りのある他の領地に返しておきたいんだって。

 

他の神官たちに手伝わせるわけにもいかないので、一人でやりましたよ。

 

報酬を求めましたよ。当然ですが。おかげで薬の素材とかユレーヴェの質を上げる材料とか魔術具の材料とかいろいろ手に入りました。

 

余った時間は神殿だけでなく政務を手伝わされたり、読書したり魔術具を作ったり休んだり。終わった後は疲れがたまっていたのか3日も寝込んでしまいましたが。

 

ちなみに旧ベルケシュトック大領地の魔力奉納の件は、後々分かった話なのですが、神殿はアーレンスバッハの領主の町の管轄で旧ベルケシュトックに住んでいる方は完全に青色神官にならない限り関われないとのことです。

 

青色神官になると当然アーレンスバッハのために働かなければならないわけで領主の町周辺を優先...。

 

当然出せる人なんて政変のせいでただでさえいないため旧ベルケシュトックまでは魔力を回すのはとても無理です。

 

いろいろ制度が悪いですね本当に。せめて旧ベルケシュトックの小神殿が独立して儀式を行えればよかったのでしょうが。

 

 

 

 

さて、アウブに小聖杯の魔力奉納の完了の報告と貴族院へ戻るべきかアーレンスバッハの冬の社交場に少し出るべきかお伺いを立てます。

 

城での側近がほとんどいない状態ではまずいので一人増やすので社交ついでに会ってこいとのことで、お母様と社交界へ行きました。

 

「命の神 エーヴィリーベの厳しき選別を受けた類稀なる出会いに、祝福を祈ることをお許しください」

 

「許します」

 

「ローゼマイン様に 命の神 エーヴィリーベの祝福を」

 

アウレーリア様、お父様の弟の子で釣り目な方でどこか緊張感のある方ですが、うーんつながりは全くないはずなのだけどどっかで見たことある方なんだよね。

 

「ローゼマイン様につきましては何度か城の図書室でお見掛けいたしました。」

 

ああ!どこかで見たことあると思ったら。

 

まさかの図書室同盟の方だ!勝手に私が呼んでいるだけだけど。

 

寡黙な方で本のことで多少盛り上がることはあっても言葉少なめに話が進んでいきます。

 

うん、アーレンスバッハでは珍しい人だよね。みなさん喋るの大好きだからなぁ。

 

きつそうな見た目だけど、落ち着いた雰囲気であまり周りにいないタイプです。

 

私にとっては非常に付き合いやすいタイプの方ですぐ気に入りました。ぜひとも側近になってくれるといいのだけど。

 

これが、少しの間お世話になる、アウレーリアとの出会いでした。

 

その後もお母様と第一夫人派の方へ挨拶したり、軽く話したりして、その日の社交界は終わりました。

 

その後も何度か社交界に出た後で貴族院へ戻ることになりました。

 

城ではアウレーリアが側近としてついてくれるなり、何度かお世話になりました。

 

変な恐れとか悲壮感とか喋り続けるとか変なところがない普通の人ってありがたいよね。

 

本も好きみたいだし、どんな本が好きなのかも話してみたいなぁ。でも、この方もゲオルギーネ派の方だし、信頼しきってはいけないんだよね。

 

はぁ、慣れたとはいえしょんぼりです。

 

 

 

さて、貴族院へ戻る前の最後の打ち合わせです。

 

とりあえず、エーレンフェストの者との接触は努力目標へ格下げ。お願いだから効果が出てほしいです。

 

今の私はエーレンフェストへ関わらないほうがいいのは確実なので契約そのものはしょうがないけど、さすがにあれだけ頑張って回避してもダメだと言われるのは非常に困ります。

 

ヒルシュール先生については、一回だけなら会ってもいいと!必ずエーレンフェストの者に会わないことが条件だけど。

 

後は今回通じなかったので連絡用の合言葉等の暗号を一応確認しました。緊急用の連絡経路の確保は側近連中が完全に非協力のため無理だそうです。

 

今回も孤立無援がほぼ確定です。まあ、もう残り短いのでどうとでもなるでしょう。

 

残り期間なら薬は身に付けている分で十分だし、魔紙も空いている時間で大量生産したし、いざとなれば採取場へ行けばある程度は何とかなるしね。

 

ではでは再度貴族院へ行ってきますかね。

 

 

 

 


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