朝にディートリンデ様が突然やってきました。
「ローゼマイン、今日のお茶会の準備なさい。」
お茶会、何の話だろう。
「ディートリンデお義姉様、本日にお茶会があるなんて話は、わたくしお聞きしておりませんけど。」
「ええ、あなたが仮病とか使いそうだから黙っておいたのですわ。幸い今日は顔色もいいし問題ないわよね。参加なさい。」
どうしよう。というか何のお茶会だろう。
言われた通りに最低限の準備だけして共有フロアに戻ります。
そこで何処とのお茶会か確認すると...。
「以前話したでしょう、わたくしの親族同士のお茶会ですわ。」
はい、以前話にあった親族同士のお茶会でした。やめて、いやだよ参加したくないよ!
「逃げようとしてもダメですわよ。わたくの親族同士のお茶会なら練習にちょうど良いですし、引っ込み思案のローゼマインにはピッタリですわ。」
ディートリンデ様に手を引っ張られ逃げられません。
ディートリンデ様、それなりに尽くしてきたつもりですが何か恨みでもあるのでしょうか。
ああ、ウラノの世界の『ほとけさま』でもいいから助けてください。
お茶会が始まってしまいました。参加者は4名で私の両隣がディートリンデ様とリュディガー様、真正面にヴィルフリート様です。
うーん、この中だと私だけ場違いだよね。なんで私はここにいるのだろう。
周りは親戚関係なので共通の話題で盛り上がっているので私は話に入らずに適当に相槌を入れる。ディートリンデ様は話好きなので適当に相槌を入れているだけで楽ですね。
でもやっぱり、ヴィルフリート様が関わってくるせいかほんの少しずつだけど従属の指輪が反応しています。
「ディートリンデお義姉様、わたくしルングシュメールよりささやきを頂きとう存じます。」
「あら、確かにちょっと顔の色が悪いわね。」
疲れてきたのでいったん席を外させてもらう。
はぁ、もう、戻りたくないよ。しばらく休んで一息ついたら戻りたくないけど戻ります。
「ローゼマイン、ヴィルフリートがあなたと話をしたいと言ってますわ。」
え、ディートリンデ様、私は話したいことなどございません。
「いいから行ってきなさいな。」
だから、なんでディートリンデ様は強引なの。そんなに私のことが嫌いなの。
はぁ、後ろに側近連中がいるけどヴィルフリート様と二人で対談とか、勘弁してよ。指輪に注意しなきゃ。
そこで盗聴防止用の魔術具をヴィルフリート様が私に向かって渡そうとしてきます。
「わたくしは混沌の女神のように話すことなんてございませんわ。」
「まあ、ローゼマイン。何かヴィルフリートには話したいことがあるようです。聞くだけでいいから聞いてあげなさい。」
「ディートリンデお義姉様、わたくしは。」
ディートリンデ様...。もう、諦めるしかないのでしょうか。
「いいから。」
避けられないしどうしよう。ディートリンデ様は私をここで蒸発させるつもりなのかな。仕方がないよね。これなら回避の努力したことになるよね。きっと。
半分絶望しながら私はヴィルフリート様の盗聴防止用の魔術具を受け取ります。
「単刀直入に聞く、そなたマインだな。」
「ヴィルフリート様、おっしゃる意味が分かりません。私はローゼマインです。」
どう切り上げよう。無視するべきなのかな。
やっぱり私のことばれてるのかな。でも、私が認めない限りは大丈夫だよね。
ああ、いやだな。指輪が少しずつ光りだしているよぉ。
「では、ローゼマインよ、マインという少女の関係の話を聞いてくれないか。」
仕方がないといった感じで、真剣に私を見ながらヴィルフリート様が言ってきました。
「聞くだけならいいですけど...。」
何が言いたいの?わからないよ。聞くだけならまだまだ大丈夫そうだしどうにかなるよね。
「最近ハイデンツェルというエーレンフェストの北の方の領地で魔物を小集団で狩る平民の一団がいると聞いて視察に行ってきたのだ。その狩猟団の隊長はギュンターと言ってだな。驚いたことに中級貴族でも苦戦する魔物を一刀両断にするのだ。」
お父さん。元気なんだ。よかった。でもなんでヴィルフリート様が今そんな話をするの。
「すごいだろう。私も驚いた。平民にできる技ではとてもなかった。もともと貴族の関係者なのだが魔力もなくあそこまでの技能。魔力さえあればと、おじいさまも残念がっていたのだ。私も興奮してなぜそこまで強くなれたのかと聞いたら」
とそこで、ヴィルフリート様が一呼吸置きます。
「帰ってこない娘の帰ってくる場所を守るためだ。というのだ。素晴らしい家族愛だと思った。」
お父さん...ダメ、表情を隠さなきゃ。ひどいよ、ヴィルフリート様はなんでこんな場でそんな話するの。
「また、その家族も面白いものを作っていてだな。其方の髪につけているような花の髪飾りを作っていたのだ。余りに見事だったから一つ買って帰ったのだが。一番見栄えのする髪飾りが置いてあり、これを売ってくれと言ったら、帰ってくる娘のための髪飾りだから売れんというのだ。仮にも領主の息子にだぞ。まあ、外れの村だから常識が通じないのかもしれないが。」
もう、やめてよ。ここでわたしがマインだなんて言えるわけないじゃん。
「なぁ、そなたにとってアーレンスバッハはゲドゥルリーヒになりえるのか?其方がマインでなくてもよいから、エーレンフェストに来ないか。」
いや、やめてよ。私だってアーレンスバッハなんかにいたくないよ!エーレンフェストに帰り...。
いたい、いたい、いたい、いやいやいや、指輪がすごく光ってる。
あついあついあつい!魔力がコントロールできない。
「ローゼマイン!」
ディートリンデ様の声が聞こえる気がする。
あ、床だ。いたい、力が入らないよぉ。魔力の暴走が止められない。内側を魔力がぐるぐるとんでもない熱量を持って回っているみたいだ。
「ヴィルフリート、かわいい妹に何をしましたの!しっかりしなさいローゼマイン、こうしてはいられませんわ!失礼しますわ」
ああ、きっと従属契約が半分発動しちゃった。これはやばいよぉ。
「しっかりなさいローゼマイン。あなた達ローゼマインを医者の所へ。」
「お義姉さま...ごめんなさい、これは持病なのです。私の部屋まで運んで...。」
「しっかりなさい。あなた達ローゼマインの言うとおり急いで運びなさい。」
誰だかわからないけど部屋まで運んでくれた。
「入り口...の、上から、三番目の右奥のは、こ..。」
「入り口の棚の上から三番目の右奥、これですわね。で、どれですの」
「お義姉さま...ごめんなさい、箱ごと貸して、下さい、ませ。」
「どれですの。」
「お義姉さま...人払いをおねが...。」
「人払いとかそんな場合では...仕方ないわねあなた達でていきなさい。」
「一生のおね、がいです、はこだけおいて、うしろをむいて...あぐ」
「なんなのですか。ああ、もうわかりましたわ。はい、これが箱よ。後ろ向きましたわ。」
「ありがと..ぞんじ.。」
ああ、くるしい。魔力の暴走を抑える薬は。震える手で何とか取れた。うまく動かないけどなんとかのめ...。
「ああ、もう、この薬でいいんですわね。ほら開けてあげるから、飲みなさい。」
「ありが...とう...おねえ...。」
「本当に大丈夫なのですか、大丈夫なら何も心配せず眠りなさい。」
ああ、やっぱりディートリンデ様は策士だ、これで貴重な対策が一つだめになってしまったかもしれません。
起きたら側近たちが慌てて連絡等に動き出しました。
なんでも4日も死んだように眠っていたそうです。
体を起こすのも億劫です。
まだまだ熱が回復していないようですが、今の周りに人がいる状態であれらの薬を出すわけにはいきません。
「ローゼマイン!」
ディートリンデ様、まだ起きたばかりなのですが。
「ディートリンデお義姉さま、ご迷惑おかけしました。」
「本当に大丈夫そうでよかったですわ。わたくしにこんなに心配させるなんてローゼマインはわたくしの妹失格ですわ。」
わからないよ。なんでそんなに本心から心配そうにしているの。はるか高みに上らせようとしたんじゃないの?どこまで演技なの。
「ところで何なのですか、あの薬は。話してもらえるわね。」
ディートリンデ様...。
はあ、やっぱり聞いてくるよね。ごまかすにしても、どうやっても墓穴を掘る未来しか浮かばない。
というかディートリンデ様に嘘ついてもばれるだろうし
「ディートリンデお義姉さま、私のことについてゲオルギーネ様からはどう聞いていますか。」
「あなたのこと?何も聞いていませんわ。」
はぁ!そんなわけない。演技なの?もう本当にどう答えてよいかわからないよぉ。
「お母様から、ローゼマインの人となりを見て判断なさいといわれてますわ。」
たぶん、うそだ。でもそういうこと前提なら表面上は従属契約についても知らないといっている状態だしどうしよう。
「お義姉さま、身食いという言葉はご存知ですよね。」
「もちろんですわ。平民の子にある魔力の病気よね。」
「私のこの症状も身食いと同じようなものなのです。魔力が多く魔力の操作に難がある場合、このような状態になる者もいるそうです。」
うん、まあ実際身食いだったし。
「この間飲んだ薬は魔力の暴走を抑える特殊な薬なのです。」
嘘は言っていません。この薬は私の切り札の一つだったんだけど...。
「そうだったのですわね。あとこれ、この間薬箱に戻せなかったから渡しておくわ。」
ああ!私特製の回復薬。やっぱり薬箱の秘密もばれたってことだよね。次はどう隠そう。幸い奉納式まで余り時間が無いし城で療養するとか言って帰ろう。
お父様、ローゼマインにはディートリンデ様の荷は重過ぎます。使えない道具でごめんなさい。
ヴィルフリートのせいでキレが悪くなってしまいました。
最初にディートリンデ様側書いてから作った力作のはずなのに...。
ちなみにディートリンデ様側はアップしません。