朝です。ディートリンデ様がやってきました。
「そういえば、ローゼマイン。音楽の先生とのお茶会は準備できてまして。」
「申し訳ございません、ディートリンデお義姉さま。何の話でしょうか。」
え、何の話...。ああ、そんなものもありました。でも日程はまだ決まっていないはず。
「準備は大丈夫ですの。姉として心配でしてよ。もう後2日でしょう。」
え、何も聞いていないのですが。準備かぁ。2日ね。
「ディートリンデお義姉さま。知っての通り私はお茶会について全くと言っていいほど行ったことがございません。」
コツ等、お茶会で重要なことを教えてくださいまし。と催促してみる。
いや、本当は最初のお茶会はディートリンデ様についていって体験する予定だったのですが。
「うーん、慣れとしかいいようがないですわね。あなた達何かありまして。」
いろいろ改めて聞いてみるといろいろ出てきます。
うん、お土産かぁ。すぐ食べられるものね。
アーレンスバッハのお菓子は確か砂糖を固めたものばかりなんだよね。
砂糖最高って言う文化だから。
砂糖が豊富に手に入ることだけはいいのだけど。
カトルカール(パウンドケーキ)とかでもいいけど、絶対アーレンスバッハの人は好きじゃないよね。
「あと、ローゼマイン、いつも地味な服を着ていますがもっと派手におしゃれをしないとダメですわよ。」
ごめんなさい、したくてもできないのです。常にお守りや薬を大量に持ち運ぶことを考えると...。
あと、絶対したくなかったけど、諦めてここでやるか。相談しておかなきゃ。
「図書館のソランジュ先生より、一時的な管理を任されている魔術具をこちらへ持ってきて解析しないといけなくなったのですが。」
元々王族のもので王族のアスタナージウス王子に話できないかと確認しますが、あまり気乗りしない顔で必要なら解析作業が終わった後でいいのではということになりました。まあ確かに王族ってめんどくさいし。
それほど大事なものなら護衛等も必要という話になります。
「早いほうがいいのでしたら、3日後の午前がいいですわね。解析に時間はかかるのかしら。」
正直分かりません。そこも含めてできるだけ早くということもあって3日後ということになります。
荷が重いです。図書館でできるのが一番良かったのですが。それだったらヒルシュール先生とか他の先生にも協力をお願いできたのに。
「ディートリンデお義姉さま、わたくし神殿ではたまに料理とかしていたのですが一度厨房に入る許可をいただけないでしょうか。」
「ローゼマイン、それは流石に領主候補生としてよろしくないですわ。必要なら指示しなさい。」
「知っての通り、ディートリンデお義姉さまと違って指示を出すにしても直接しないとうまく指示が伝わらないのですわ。」
あと、調合の訓練にもなるのです。と言うとそれは良いことかもしれないけど本来文官の仕事ですわよとのことです。そんなこと知らなかったよ。
いままで村の御婆様連中とかフェルディナンド様としか作ったことがなかったし。
自分で作るのが普通のところにいたしなぁ。ああ、せめて上級貴族に戻りたい。
はぁ、ディートリンデ様は命令というものがよくわかっているかもしれないけど私には無理。
結局、まったく仕方が無い妹だわと言って、作業しない邪魔しない見ているだけということで許可を取りました。
さて、そうとなれば早く準備しないとなりません。
早速厨房に連絡を取り、材料があるか確認です。
砂糖はありますね。水あめ欲しいけど流石に無理か。蜂蜜はある。卵もある、砂糖菓子があるのでざら目砂糖に似たものもある。
ウラノの世界のカステラかな。
はぁ、みんな病気になったことがないとわからないかもしれないけど、ウラノの世界の病人も結構料理できるんだよ。
なぜかって、砂糖の摂取量の制限とか食事制限なんて当たり前だからね。市販品なんて食べられないから自分で工夫して作らないと無理なんだよ。
卵に砂糖を少量入れてふんわり、厨房で作業したい。許可をとって卵をかき混ぜている方の上に加速の魔法陣を使ってあっという間にメレンゲにする。
後は水とか材料とか先に混ぜておいたものを入れて、ざら目砂糖を均等にひいて四角い容器でオーブンを低温にして焼き上げる。
少量切ってもらう。うん、まあいいかな。さめて固まればいい感じにはなると思う。
かなり甘くしたから糖蔵状態になっているし問題ないので多少容器にふたで圧力をかけて綺麗な四角になるようにして冷暗所で放置。
初めてのお茶会だと言えば、格の低い料理と思われても先生方なら笑って許してもらえるだろう。
「ローゼマイン様、なんですかこれは。」
うん、知らないのかな。庶民の味だから貴族は食べないとか。なぜか砂糖菓子ばかりだし。
あれ、でも砂糖の値段が高いこと考えると...。
まあいいですそれよりも、砂糖細工したいなぁ。加熱させる道具が難しいし、やることいっぱいだからやらないけど。
「私が作るお薬の応用で、海外のお菓子をまねたものです。」
貿易しまくっているからね。正直な話、貿易がないと持たなかったよあの領地。
やっぱり次から呼ばれないようにパウンドケーキ(カトルカール)位にしたほうが良かったかなぁ。
ウラノの好きなというかそれしか食べられない砂糖控えめにして...。
うん諦めよう。カステラならぎりぎりないい線いっていると思うし。
でも、ディートリンデ様に言ったら、「こんな素朴な感じのお菓子を作るなんて大領地にふさわしくないですわ」と怒られるだろうしなぁ。
「ごめんなさい、このお菓子の事はここだけの秘密にしておいて下さいね。こういうお菓子を作ったことを知られるのはなんと言うか恥ずかしいのです。」
「わかりました、ここだけの話にしておきます。」
うん、口止め完了。あとは平凡にお茶会して普通に無難、もしくは拙く終わったという噂が流れればさほど御呼ばれする心配はないでしょう。
終わった後は、ディートリンデ様からフェシピールの指導をしなさいという指令が何故かくだり下級貴族中心に何故か教えることに。
別にフェシピールの腕なんて試験に最低限通ればいらないとしか思えないのですが。
最後に何故かせがまれて弾きましたよ。必ず神の関係の曲でとのことでリクエストいただいたので適当に弾きました。
神事以外のところで、祝福をやたらめったら人前で出すのは本当はいやなのですが。
神へ捧げる曲を弾くと抑えても出てしまうので諦めていますけどね。
午後はソランジェ先生の図書館です。
ソランジュ先生に日程を確認し許可を得て、魔力を適当に奉納して、シュバルツ、ヴァイスの相手をしてから、二階の本を片っ端からウラノの世界のスキャンをしていたのですが...。
また一人で抜け出し、図書館に入ってからしばらくして後ろにずっとついてくる方がいます。
感じる魔力からアーレンスバッハではない方のようですね。
ええ、まあいいです。図書館の中だけですし、別にこの魔法陣、普通の人には余り意味のないものですから。
ふーん、いろいろな魔獣の情報がありますね。ディッターの対策本とか。
「ローゼマイン様こちらへおいででしたか。」
ああ、最近なんだか行動パターンが読まれてますね。
「ええ、もう少し調べ物をしていますのでご一緒くださいね。」
呼ばれて後ろを振り返ると、うん。さっきまでついてきた方が分かりました。
でもあの方なら...。話しかけられなかったのは良かったのですが、エーレンフェストで少しだけお世話になって非常に優秀な方でしたので。
カトルカール、日本人的にはカステラの方が高級感ありますが、ぶっちゃけパウンドケーキの方が材料費高いですね。というか本好き油はあるけどバターあんの?と思ったら魚料理で出てきてますね。サラダ油でも作れるからいいですけどね。カステラは紙がないと焦げて容器にくっついて無理じゃんとかは受け付けません(笑)和菓子屋では最後に蒸すんでしたっけ?うろ覚えです。
ちなみに病弱設定なので油を使わないカステラの方がいいのです。
ついでにバターの歴史は紀元前からあるのですね。本格的に利用されだしたのは15世紀辺りのようですが。本好きの生クリームも謎でしょうがなかったのですが、おそらくバターと牛乳を混ぜた模造品かと推測。砂糖入ってきたばっかりで一から作るとあんなに手間のかかる普通の生クリームがあるわけがないと思います...
非常に優秀な方、出したくてしょうがないですがほとんど出す予定はありません。意外と扱いが難しいのです。ちなみに彼もストーカー行為をしたくてしているわけではありません。