マインオブザデッド   作:dorodoro

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31話 採集場所へ

私はとあるアーレンスバッハの旧ベルケシュトックの学生です。

 

「さて、時間が取れる方がおりましたら、午前中わたくしに採集場所へご案内いただけないでしょうか。」

 

朝の共有フロアで珍しくローゼマイン様がお願いをしてきた。

 

何をしたいのかは分かりませんが、ローゼマイン様のためならば何でもするのは、神々がユルゲンシュミットにいるのと同じくらい当然のことだ。

 

「ただし、すでに予定の入っているもの、授業のあるものや、授業で余裕の無いものは絶対来てはなりません。もし分かったらわたくしがわたくしのことを許せなくなりますのでやめてくださいませ。」

 

私は死ぬ気で勉強し、今日の午前に予定が入っていないことを神々とわれわれの天使であるローゼマイン様に感謝した。

 

ちなみに我々旧ベルケシュトックの貴族は全員座学に関しては、初日合格もしくは最短で合格している。

 

実技は、流石に無理だが非常に優秀だと周りからも評価されている。

 

ローゼマイン様がどんな方かって?

 

彼女はもはやただ死を待つしかないと覚悟を決めた旧ベルケシュトックの領地に舞い降りた天使で救いの女神だ。

 

その舞い降りた神々しい輝きは色あせることなく今もまぶたに焼き付いている。

 

魔力がほとんどなくなった大地に魔力を惜しみなく注ぎ、作物が青々と実り、みんなが奇跡に驚いている中、お礼も受け取らずに飛んで行ってしまう。

 

彼女の慈愛の精神はとどまることを知らない。

 

我々の絶望から救ってくれた救いの天使に返せるものは何も持っていないので、せめて名捧をしようという事になった。

 

そこでまず、ギーベ一同ローゼマイン様のもとへ行ったのだが、命を大事にしなさいと受け取ってもらえなかったそうだ。

 

ローゼマイン様の政治的基盤は決してよくない。まず本人の経歴が不明であり神殿に預けられていたところ、第一夫人の養女としたというところからもうおかしい。

 

明らかに訳ありであり支持を得られるような経歴ではない。

 

そんな中、弱いとはいえアーレンスバッハの三分の一を占める大地を持つわれわれが後ろ盾につけば、だいぶ良くなるのは間違いが無いのだが、あくまでローゼマイン様が動いたのはアウブのご意向であり、感謝はアウブへと。

 

そして最近体調が悪くなり支持基盤が弱くなりかけていた第一夫人を支持して欲しいという非常に謙虚なものだ。

 

その後に第一夫人も持ち直し今では基盤も磐石だ。

 

当然我々は、ローゼマイン様の命に対する慈しみを最重要視し、ゲオルギーネに名捧げしたギーベは即座に隠居しローゼマイン様のためにいつでも動ける体制を作った。

 

ローゼマイン様を命をかけてお守りするつもりだが、ローゼマイン様はそれを望まないため彼女の前では絶対に言わないようにしている。

 

あとはローゼマイン様の側近連中にはイライラさせられる。

 

ローゼマイン様の側近は政敵であるゲオルギーネ様の派閥のものだけで構成されている。

 

そんなやつらが我々の天使たるローゼマイン様に狼藉を働いているようにしか思えないのだ。

 

やることは最低限やっているようだが、明らかにローゼマイン様の持ち物と思われる物を持ち去ろうとした愚か者を何回か成敗した。

 

もちろん、それを我々の天使より預かったものとして大切に保管している。

 

せめて我々のうち一人だけでも側近には入れれば良かったのだが、ローゼマイン様の側近はすべてアウブが決めることになっているため我々では手出しができない。

 

ローゼマイン様本人に直談判した時もアウブのご意向といって、取り合ってくれないのだ。

 

なぜローゼマイン様ほどの方がそれほどアウブに忠誠を誓うのか。

 

はたしてあのアウブにそれほどの価値があるのか。

 

なぜもっと我々を頼ってくださらないのか。

 

だが我々はローゼマイン様のために動く、ローゼマイン様がアウブに忠誠を誓うというならそうするしかないのだ。

 

 

 

 

さてローゼマイン様を採集場所へお連れした。流石に側近連中も二名来ている。

 

まったく、側近の連中ときたら、用事が無いものは全員ついて行くのが当然だというのに。

 

我々の仲間では、予定を入れてしまっていて行けなくて血の涙を流していたものもいる。だがローゼマイン様は絶対なのだ。泣く泣く諦めさせた。

 

最近は薬の調合で素材が必要なため採取場所が荒れている。

 

ローゼマイン様はほんの少しやわらかい表情になって悪くない状態ですわねという。

 

これほど悪い状態だというのに何を言っているのかと全員で驚いたがその後もっと驚かされた。

 

「シュトレイトコルベン」

 

聞いたことの無い呪文をローゼマイン様が唱えるとシュタープが以前一度だけ見た奇跡を起こした神具に変わった。

 

「癒しと変化をもたらす水の女神 フリュートレーネよ

側に仕える眷属たる十二の女神よ 」

 

ローゼマイン様が淡々と読み上げていく。私はあの時は聞こえなかった祝詞を聞くことができることを神々に感謝した。

 

「至上の波紋を投げかけて 清らかなる御加護を賜わらん 我が望むところまで 御身が貴色で満たし給え」

 

ローゼマイン様から七色の魔力が飛び出し外に広がるにつれて膨大な緑色の魔力が渦巻いた。

 

地面には緑色の魔力が線になって描かれていき魔法陣が完成していく。

 

最後に、荒廃しかかっていた緑が青々とし、植物によっては実をつけていた。

 

あの時は余りの奇跡にきっちり見えなかったが今回は興奮しながらもきっちり見ることができてとても感動した。

 

さすがは我々の天使で女神だ。

 

「さて、みなさま、少し協力していただきたいのですけど。」

 

ローゼマイン様に言われた素材を集めていく。側近連中は動かない。

 

ローゼマイン様も、まあ、護衛ですからと申し訳なさそうにしながらも諦めている感じだ。

 

「皆様ありがとう存じます。おかげさまで欲しい物が手に入りました。」

 

本当にうっすらと微笑んだように見える。

 

ローゼマイン様の表情はほとんど変わらない。そのローゼマイン様が我々に微笑を下さった。

 

ここにこれなかったもの達に自慢しよう。ですが、感謝したいのはこちらです。

 

荒廃していて、課題に困っていた採取場所が青々としているのですから。

 

 

 

 

 

さて、ようやく手に入りましたよ。素材。

 

もう本当は補給を諦めていたのですが、思わぬところで貴重な品が手に入りました。

 

さて、調合道具も持ってきてますし、午後は追加の薬の作成ですね。

 

私では、癒すことはできても素材回収はひどく時間がかかりますから。

 

いやね、最悪は身体強化の魔術で無理する予定だったんですよ。

 

まあ、あの状態では課題にも困るでしょうしそのくらい働いてもらっても問題ないよね。

 

まあ、でも少し荒廃した状態で助かりました。

 

下手に自然に実をつけるより私の魔力でつけさせたほうが上質な素材ができるのは実験済みです。

 

はぁ、もっと質の悪い素材で同じ効果の出る薬を作りたいです。魔王様の域に至るのはとても遠いい。

 

ちなみにシュタープ混ぜ棒最高です。

 

ペンも最高です。空中に魔法陣描いてとりあえず、加速の魔法陣一個から。確か魔王様は普通に3つくらい使っていたよね。

 

ひどい時だと四つ。たまに私に遅いとか言って作業途中なのに魔法陣を描いてきて失敗しかけて大変でした。

 

まあ、私も魔王様のところにいた時は魔力媒体に先に魔法陣を描いて起動させて加速させたりもしましたけど。

 

さて次は2つっと、うーん、しばらく2つで練習ですね。

 

ああ、補給ができるっていいですね。

 

うふふん、少しだけ余裕ができるような気がする。

 

あ、まずい、採取場所癒すのに魔力を使いすぎました。今の調合までは魔力持つよね。いやもたせなきゃ。

 

はぁ、あせりました。仕方が無いので少し休憩です。

 

 

 

ふう、満足、これでたぶん大丈夫です。なんかまた食事をとか言ってますね。薬をしまって身につけて、では食堂へ行ってきますか。

 

側近連中と味気ない食事ですが、薬の補給ができたからか安心したからかいつもよりおいしく感じました。

 

 

 


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