マインオブザデッド   作:dorodoro

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30話 閑話ヴィルフリート

私はヴィルフリート。エーレンフェストの領主候補生の1年だ。

 

私には以前に憧れの人がいたのだ。マインという私より一つ年上の少女だ。

 

初めての出会いは衝撃だった。

 

その日はいつも通り全然面白くない勉強から逃げていたのだ。

 

そして、いつも通り庭に隠れてやり過ごそうとしていたのだが、そこで出会ったのがマインなのだ。

 

その子は本を読んでいたようだ。私が隠れるため移動していると顔を上げて目が合った。

 

金色のとても美しい目で髪の毛は美しい夜空色どこか儚い雰囲気をかもし出した少女だった。

 

ここに隠れているのを知らされてはまずいと、私のことは誰にも言うなというと、にっこりと美しい笑顔で

 

「ええ、ここには誰もいなかったでいいのですのね。」

 

といった。

 

私はしばらく近くに隠れていたのだが、だんだん飽きてきて少女の隣に座ったのだ。

 

その時は驚いた、先ほどの儚い雰囲気は無く生命力のあふれたキラキラした眼で本を読んでおった。

 

そんなに面白いものなのか?勉強を教える教育係のものは本を読みなさいといってくるが本なんてとても面白くない。

 

そんな本にこれほどキラキラさせて夢中になっている理由を知りたくて再度声をかけたのだ。

 

「おい」

 

まったく反応しない、何度声をかけてもキラキラした目で本を読み続けていた。

 

「おい、本なんか読んで面白いのか。」

 

耳元で少し大きな声で言ったら、キラキラした目が急になくなり、先ほどの儚い雰囲気になり

 

「本も最高ですが、知識を知るのが面白いのですよ。」

 

などというのだ。まったく信じられないので意地の悪い質問をしてやったのだ。

 

「ふーん、じゃあなんかその知識で面白い話をしろ。」

 

そうすると不思議そうな顔を一瞬したのだが、急に優しい目をして私を見てユンゲルシュミットの神の話をしだした。

 

神々の恋の話から、戦いの熱くなる話まで、優しい声で物語をつむぐのだ。

 

今までの教育係で神を教えようとしたものにこれほど面白い話をしてくれたものはいない。

 

永遠に続くかと思った時間は私を探しにきた教育係によって終わりを迎えるのだが最後に彼女の名前を聞けた。

 

「マインと申します。」

 

一瞬で覚えた。今思えば初恋である。

 

その後も何度かその場所に足を運び、いた時はうれしくなり物語をせがんだ。

 

その中で彼女の情報も聞いたのだ。ライゼガングの上級貴族の娘らしい。

 

すぐに側仕えにしたくて誘ったのだが、

 

よく遊ぶのもいいが、よく勉強をし、周りの言うことによく耳を傾け自分で判断できるもの以外に仕える事はできないといわれてしまったのだ。

 

余りに悔しくお父様にせがんでみたのだが、絶対に無理とのことだった。

 

だが本気でその子の言う事を実行し、そのようになれるよう努力をすれば将来的に必ずその子を連れてきてやると約束してくれたのだ。

 

それから私は本気で勉強をした。

 

神学はマインが話してくれた物語のおかげで先生よりも詳しいような状態になり驚かせ、他の教科も必死にがんばった。

 

そして忘れもしない、あの洗礼式。私が洗礼式を受ける時に彼女が神殿長の代役として私を洗礼してくれることになった。

 

久しぶりに見たマインは余り身長は伸びていなかったが、神殿長らしく凛としておりとてもすばらしい雰囲気だったのだ。

 

はじめに挨拶しに来てくれたときには高揚した。

 

彼女の去年の洗礼式について話は聞いていたが私の成長を見て欲しくて私は負けぬということと、必ず私のものにするという宣言をした。

 

そうしたらマインは体の弱さを理由に断ってきたが私は絶対にあきらめたくなかったのだ。

 

 

 

 

洗礼式はすばらしかった、まるでマインが聖女様になったかのように神々しく祝福をしてくれた。

 

洗礼式とはこれほどすばらしいものなのかと感動したものだ。

 

だが、これはやはり特別だったというのは後で知った。もう二度とエーレンフェストでこれほどの祝福が見ることができないというのは後で知ることになった。

 

 

 

 

実はこの時のエーレンフェストという土地は数年前まで御婆上であるヴェローニカが、彼女の子であるゲオルギーネのいるアーレンスバッハと通謀しており、後一歩で内乱という状態になっていたのだ。

 

そして忘れもしない、そうしてあの事件は起ってしまった。

 

それは洗礼式を行った後のパーティーだった。

 

そのパーティーに賊が大量に入り込んできたのだ。

 

私は真っ先に逃げ出すよう誘導されたのだが、同じ洗礼式を受けた仲間が捕まっているのに我慢ができなくなり助けに行った。

 

しかし、力及ばず何もできずに捕まってしまった。今なら分かるがどう考えてもまっすぐ逃げるか騎士団に助けを求めるべきだった。

 

そして抵抗するもまったく束縛から抜け出せずにいると、なんとマインも捕まってしまったのか一緒に拘束されてしまったのだ。

 

彼女はすごい血を流していた。私はせめてマインだけでも助けようと更に必死にあがいていた。

 

マインはしばらく意識が朦朧としていたようだが急に強い意志を持った目が輝きだした。

 

そのあと彼女の体から出た血が私を拘束していた賊のシュタープに取り付き爆発したのだ。

 

おかげで私は拘束から抜け出せたのだが非常に高いところから落とされてしまった。

 

「マイン!」と叫んだのは覚えている。

 

最後に見た彼女は美しい金色の目で私に微笑んだように見えた後、ぐったりと倒れたのは覚えている。

 

 

 

 

それからの日々は怒涛の日々だった。

 

御婆上であるヴェローニカや、アーレンスバッハの関係者をことごとく粛清したのだ。

 

その日から私は誓った。エーレンフェストを必ずアーレンスバッハを越える領地にし、復讐してやると。

 

まず頼れる仲間を募った。今まで領主一族との仲が最悪だったライゼガングを即座に仲間につけた。

 

当時ライゼガングも大切なマインを失ったということもあって怒り狂って、今すぐにでもアーレンスバッハに仕掛けろとお父様に迫った。

 

だが、お父様はうなずかなかった、そこに私が付け込んだ。

 

私がアウブになったら必ず復讐するから手伝ってくれと。

 

何度も罵倒を浴びた、だが私は諦めずにギーベの館に足を運び協力を迫った。

 

ついにギーベと前ギーベライゼガングを根負けさせ、両者の絶対の信頼が生まれた。

 

しかし、恨みは長くは続かなかった。なにより何度も彼らと語り合う中でマインは相手を怨むことを望まないという結論となった。

 

だが当時、同じ悲しみに触れたライゼガングとの友好状態は続いた。

 

彼らと私の友好があり、今エーレンフェストは順位を上げるため一枚岩となった。

 

これはエーレンフェスト史上最も安定しているという今の状態を作り上げたのだ。

 

これ以外にもエーレンフェスト全員で教育レベルをあげるため私は更に自分を追い込んだ。

 

できないものにうまく話しやる気を出させ教える。きっとこれはマインが残してくれた遺産だ。

 

彼女が言った仕えたい人間になれるようあらゆる努力をした。

 

 

 

さて話は貴族院の入学時点に戻る。

 

なにやらアーレンスバッハに動きがあったと言う情報が入ったのは私が貴族院に入学する直前だった。

 

しかし、国境を完全に閉ざし、詳しい情報は当然入ってこない。漠然とした不安の中、私は貴族院へ向った。

 

そこで出逢ったのだ、それは領主候補生の親睦会だった。

 

アーレンスバッハの領主候補生の席にマインに瓜二つの少女がいたのだ。

 

だが、あれから三年がすぎているにもかかわらずそんなに成長しているように見えない。

 

しかも彼女は1歳年上のはずだが情報を集めると同じ学年とのことだ。

 

その後、接触してみるもなんともいえぬ、気まずいものだった。

 

というのも、マインに瓜二つの少女はローゼマインと名乗り、挨拶だけしたら目も合わせてくれなかった。

 

瓜二つにローゼマインのという名前でほぼ確信していたのだが、似ていないところも多い。

 

マインはやわらかい雰囲気やキラキラした生命力にあふれた顔をしていた。

 

だがローゼマインは表情一つ動かず、こちらが声をかけても怯えたように左手の白い手袋をしきりに気にし心そこにあらずという感じだった。

 

なんとしても話し続けようとするもどんどん顔が青くなってしまい退席してしまった。

 

その後もマインと親戚の関係だったハルトムートが、絶対にマインだといって真っ先に接触を試みたのだが...。

 

その後何か感じたのか接触するには細心の注意が必要ですと忠告してきた。

 

今は表面上は落ち着いているように見えるが、接触の機会をうかがっているのは狂気をはらんだ目を見ればすぐに分かる。

 

ちなみにハルトムートは私がライゼガングへ協力をお願いしていた時に真っ先に協力を申し出てくれた腹心中の腹心だ。

 

私も何度も接触しようとするも完全に避けられているようでまったく話すことすらできない。

 

だが、情報はいくらでも入ってきた。

 

まず一つ、ローゼマインは領主候補生でありながら、あれほど神事を嫌っていたアーレンスバッハの神殿長らしい。

 

もはやこれだけでほぼマインであるといっているに等しい。

 

そして旧ベルケシュトックの大改革を一人の魔力で決行したらしい。

 

まるで女神を崇拝するようにアーレンスバッハの旧ベルケシュトックの貴族と話すとぺらぺらと当時の奇跡を話してくれる。

 

そして必ず最後に彼女のためにできることなら命をかけて行うと言うのだ。

 

それほどの魔力、エーレンフェストの大地を一人で賄うようなものだ。

 

マインにできるかはわからないが、できるとしたら彼女以外に同じ世代に二人と現れるとは思えない。

 

さらに初めのフェシピールの授業。

 

すばらしい技巧に乗せた音楽、始まり方がお父上がフェルディナンド叔父上からせしめたマインの神を捧げる曲に非常に似ていた。

 

だが始まって心地よいすばらしい音と祝福、後半の恐ろしく悲しい音と祝福。

 

まるで、エーレンフェストから拉致されアーレンスバッハでひどい目に合わされているかのように聞こえる。

 

優秀さもマインだ、授業はすべて最低限の授業で終えてしまう。

 

私も時間があるときフェルディナンド叔父上に手ほどきを受けるが唯一ついていけたのはマインだけだったそうだ。

 

その優秀さは並外れており、側近を除けば唯一フェルディナンド叔父上が認めていたように話す人間だそうだ。

 

そのような並外れた人間なら貴族院での勉強など楽だろう。

 

魔力量も噂に違いなくシュタープの授業でも顔色を変えずに最後まであっという間に課題をおえてしまった。

 

最後のペンと、混ぜ棒にシュタープを変形させた時に本当にほんの僅かに目がキラキラし、当時のマインを思い出した。

 

そしてその後だ、シュタープをフリュートレーネの杖に変えたのだ。すぐ戻してしまったがあれは間違いなくフリュートレーネの杖だった。

 

神具をシュタープで作れるとは、まったく驚いたものだ。周りには見逃した者もいたが。

 

だが、それよりも神具を出した時のローゼマインの表情が柔らかい雰囲気を出していたマインと非常に似ていた。

 

私も意地になって最後の試験までいったが流石に最後のナイフに変形させる試験は受けられなかった。

 

もちろんエーレンフェストへは詳細を逐一詳しく報告している。

 

私はもはや断言できる。あれはマインだ。

 

そしてローゼマインはディートリンデと仲が良いのかはわからないが、よく一緒にいて彼女を介すと接触できるのだ。

 

ディートリンデを利用し必ず話を全部聞きだすと決心するのに時間はかからなかった。

 

 

 

 




年齢には原作と同じくツッコミ禁止です。


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