マインオブザデッド   作:dorodoro

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3話 なんか養子に出されることになったらしい

結局ギーベとの話し合いに行ったまま、その日は帰ってきませんでした。

 

おかあさんも、遅いわね。なんて言って心配そうです。

 

そもそもギーベがこの村に来ること自体が異常事態なのでしょうが。

 

おじいちゃんおばあちゃん勢に聞いた話だとこの村が閉ざされる前もいつ来たか覚えてないそうです。

 

このままでは狩りに影響が出るし早く帰ってくれないかなぁ。

 

というか、お父さんとか失礼なことして村ごと罪が問われるとかとんでもないことにならないよね。

 

結局お父さんがとても疲れた顔をして帰って来たのはさらに次の日の夜でした。

 

「おかえりなさい、会議はどうだったの。」

 

「おう、トゥーリもマインもいい子にしてたか。」

 

いつものお父さんぽいけどなんか違和感あるな、何か言われたのかな。

 

「お父さんは、お母さんとちょっと話があるからトゥーリもマインも早く寝なさい。」

 

そういってフロアから追い出されました。

 

何かあったのかな。心配だねと言いながらお姉ちゃんと部屋へ戻りました。

 

 

 

 

次の日、久しぶりの家族揃っての朝食です。

 

「そういえば、お父さんギーベは帰ったの。そろそろ神殿に行きたいのだけど。」

 

「今は絶対に行くな、いいか絶対にだぞ。」

 

なんでかわからないけどすごい剣幕で言われました。

 

と言われても今はまだ魔力の圧縮でまだまだ頑張れるけど気を抜くと危ない感じになってきているので早めに放出したかったのですが。

 

お父さんに怒られたのに加え、魔力対策のことを考えるとしょんぼりだよ。

 

「それで、お客様はいつまでいるの?」

 

トゥーリも天気はいいのに家の畑までしか外出の許可が出ないので少しイライラ気味です。

 

結局まだいるそうですがそろそろ帰りそうとのことです。

 

まあ、当然ですよね。こんな何もない村に何日もいること自体が異常だもんね。

 

その日の夜、お父さんが家族を集めました。何か話があるようです。

 

「実はな、トゥーリとマインに話しておかなければならないことがある。理解できるかはわからないが特にマインはしっかり聞いてくれ。」

 

うん、何やらめんどくさい話になりそうです。

 

まず、お父さんの出自についての話で、前ギーベライゼガングのお兄さんの直系らしい。

 

ちなみにライゼガングというのは南のほうで農業が盛んな地域なんだって。お米は...きっとないよねぇ。

 

それで前ギーベライゼガングのお兄さんの子の一人が貴族になる資格がない状態で生まれてしまったので、平民に追放されたらしい。

 

この追放にも、アーレンスバッハってお隣の大きな国から来た勢力があってわずかにも弱みを見せられなかったとか何とか。

 

そもそもこのエーレンフェストっていう領地についてすら全くわからないのにそんなこと言われてもねぇ。

 

それがお父さんのお爺さんで、お父さんまではライゼガングに住んでいたそうなんだけど、

 

お父さん自身は警備兵としてとても優秀だったらしく、エーレンフェストへ栄転し、そこでお母さんに一目ぼれ。

 

口説き落としたはいいけど、まじめな性格が災いし、貴族に目をつけられてこちらの辺境に飛ばされてしまったのこと。

 

私たちは、こっちに飛ばされてから生まれたらしい。

 

と言われても正直フーンだよね。他の人に比べてやけにお父さんのケガが少ないと思ったけどやっぱりお父さん優秀だったんだね。

 

どうこう言ったってもうただの平民じゃん。なんでこんな話聞かせるんだろう。

 

何かこの後話の続きでもあるのかなと思ったけどこれだけ話すといつもの家族会話に戻りました。

 

うーん、まあいいや。いやな予感がしますがあえてふたをすることとします。

 

その日の昼にギーベたちは帰ったとのことなので急いで神殿へ。

 

いくら畳んで圧縮しても魔力が溢れてくる状態なので奉納しなきゃ。

 

なんか魔力奉納しすぎたみたいで、変な魔法陣が起動して光の柱がたってるけど大丈夫だよね。

 

神殿の中だから外には見えないよね、きっと...。

 

 

 

 

さて、道も開通したお陰か旅商人もちょこちょこ来るようになりました。

 

みんな食料をメインに買っていきます。

 

お米や本について話を聞いてみますが、全くわからない模様です。

 

どうにもここら辺一帯はどこも食料不足らしくここ何年もひどくなる一方だと言う話です。

 

かごとか服とかお母さんの内職品は全く売れません。

 

商売でどうこうするのも難しいことがわかりました。しょんぼりだよ。

 

まあ、村の経済って村だけで回せるようにできてるからね。しょうがないね。

 

ちなみに旅商人も話を聞いてくるとここに来るのは命懸けらしいです。

 

周りに魔獣が強くてとても多く加えて雪が溶けきっていないとのことで大変とのこと。

 

大怪我して運ばれる人もいて祝詞をかけて回復させたりしましたが、基本的にユッタリとした時間が流れていきました。

 

 

 

 

そんなときにギーベから召喚状が、届きました。

 

内容としてはギュンター及びその家族は全員でギーベの館へ来ること。今から三日後に迎えが来るとの内容でした。

 

「お父さん、これって私もいかなきゃいけないの?」

 

外には興味はあるけど体調を考えると不安です。お引っ越しとかなるのかなぁ。

 

なんて考えているとお母さんが、

 

「家族揃ってギーベの館に来いだなんて、最低限のマナーは教えとかないと不味いかしら。と言っても、私も余り詳しくはないけれど。」

 

お母さんは、どこか品があるとは思っていたけどやっぱりいいところの出なのかな。お父さんについては聞いたけどお母さんについては聞いたことがありません。

 

「いや、貴族と平民じゃマナーは全然違うからとにかく無礼な真似をしないようにするしかないだろう。」

 

最低限、失礼のないようにいろいろ教わりました。

 

 

それで、迎えが来ると言うから馬車でも来るのかなと思ったらあの魔石でできた獣に乗った人が5名ほどで来ました。

 

うちの前でお出迎えしました。お父さんに習って家の前で頭を地面につけて声がかかるのを待ちます。

 

どこの戦国時代。不用意にあげたら死刑とか言わないよね。内心ガタガタしてました。

 

代表者と思われる方が私にゆっくり近づいてきて、ひょいっと抱き上げると。

 

「そなたが、ギュンターと、エーファが子のこの神殿のを管理しているもので間違いないか?」

 

何ですかこの展開。これは嘘ついたら死刑コース??

 

心の中で半泣きになりながら、

 

「掃除とかお祈りをいつもしていると言う意味でなら私が管理しています。」

 

と私が言うとウムウムといった感じになり、

 

「ではギュンターよ、この子を先に借りていくぞ。」

 

え、なにいっているのこの人。

 

「お待ちください、マインはとても体が弱く。」

 

「ではマインとやら行くぞ。」

 

え、あの何て言っている間に魔石の獣にのせられました。

 

待ってよ。お願いだからお父さんの話聞いて。

 

願いむなしくそのままお空へ、お空でほっぺをつつかれ、ぷひっとなけなんて理不尽な命令を実行されながら雪解けが始まったばかりの大きな館につれてかれました。

 

 

「アウブ、お戻りになられましたな。おお、この子が噂の、確かに見ただけで魔力に溢れているのがわかるな。」

 

なにやらガヤガヤいってますが私はヘトヘトです。熱も上がって来ている感じがあります。

 

もう無理、なにがなんだかついていけません。気がついたら意識が落ちていました。

 

 

 

ふかふかのベッド、とても懐かしい気がします。あれ、ここどこ。天国とか言う落ちはないよね。

 

マインさま、起きられましたね。お加減はいかがですか。

 

使用人の方かな、は、そういえばいきなり拉致されてそれからどうなったんだっけ。

 

お父さんが入ってきて、「おお、マイン大丈夫か!」といわれて安心しました。

 

今回は5日も寝込んだとのことで、迷惑をかけたようです。

 

とはいえ、そもそもお父さんの話を聞いてくれていればこんな事態にはならなかったのに。

 

 

 

体調はよくないけど起きられるようになった所で綺麗なフロアに連れて行かれます。

 

「さて、ギュンターには話したが、マイン、そなたはこのギーベライゼガングの養子として迎え入れることになった。」

 

え!ギーベってえらいんだよね。ついでにお父さんの実家の方ってことだけど何でそんなところに養子に行くなんて話になっているのだろう。

 

なんでも、エーレンフェスト全体が魔力不足で魔力のあるものは一人でも欲しいとのこと。

 

「子供のそなたには分からないだろうが...。」

 

となるとこの方はギーベハイデンツェルなのかな。

 

一応こんな子供相手でも説明はしてくれるようです。

 

でもこれ命令だから断れないも同然だよね。

 

なんでも、この間来たのはアウブでアウブの養女になるという話もあったようなのですが、余りの体の弱さに諦めたそうです。

 

そこで、ハイデンツェルにとのことなのですが、お父さんは傍系とはいえ、ギーベライゼガングの血統であるとのこと。

 

そして、ハイデンツェルとライゼガングはヴェローニカ派という隣の大領地から来た派閥と敵対しており同盟のような関係になることから今回の話になったとのこと。

 

まあ、ギーベハイデンツェルの表情を見ているととても仲良くは見えないんだけどね。

 

きっとこれはあれだね、ウラノの世界の敵の敵は味方だってやつだよね。

 

「お断りはできないんですよね。」

 

当然断られるという発想すらない貴族の方だが話はしてくれるようで、

 

「家族のことを思うならうちへ来なさい。」

 

今度はギーベライゼガングが続けます。

 

なんでも、必要であれば私一人のために村人全員殺さなければならない事態も考えられ、また他の領地から誘拐、証拠隠滅のため村ごとなくすなんてことも普通に考えられるとのこと。

 

「それに、マインよ、そなたは貴族としてしか生きられぬ。その膨大な魔力では平民とは子がなせんぞ。」

 

子をなすって、まだそんなこと考える年齢じゃないんですけど。

 

「それに、領主の養女になるとするならば、今の家族に会うことはできなくなる。領主の娘が平民と会うなんてもってのほかだからな。」

 

なにそれ、領主も平民も人間なのに。やっぱり、戦国時代くらい理不尽な世界だね。家族と会えなくなるって冗談じゃないのだけど。

 

ギーベハルデンツェルが話を続けます。

 

「その点、ギーベの養女なら家族と離れ離れにはなるが家族として会うことは問題ない。ましてライゼガングへいくなら君とは血縁だ。君のためにも、エーレンフェストのためにも君はこの話を受けるべきだ。」

 

もう泣きたいです。よくしてくれた村のみんなとお別れなんて。

 

絶対断りたいけど、お父さんとお母さんを見ても話はついているようで首を振るようなしぐさをしました。

 

「なに、必ず祈念式では必ずこちらに来てもらうようにするし、各種神殿の行事では必ず会えるよう取りはかろう。家族と離れ離れになるのは大変だと思うが君にとっては、最善の選択肢を提案したと思うし、これ以上は妥協できない。」

 

ギーベと言われる普通に暮らしていたら絶対話すことがないような方二人にここまで言われては断るのは不可能でしょう。

 

私は、静かにうなずきました。

 

「実は他領のものと思われる賊が、このハルデンツェルに何度か入ってきている。おそらく狙いはマインお主だ。一度家まで同行するがすぐエーレンフェストに向けて出発するのでそのつもりでいろ。」

 

「あと、すまないのだが君が行ったという祈念式の儀式をおこなってほしい。」

 

全くすまなそうではないですが...ギーベハルデンツェルが求めているのはきっと女性だけで行う儀式のことだよね。

 

「分かりました。では、明日行いますので家族との時間をください。」

 

「それはもちろんだ、そのくらいはいいですな。」

 

ギーベハルデンツェルがギーベライゼガングの許可を取り、家族そろって別の部屋に移されました。

 

 

 

 


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