マインオブザデッド   作:dorodoro

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28話 奉納舞いでの劇薬

あーあ、何で授業なんかのせいで無駄な薬を使わなきゃならないのでしょうか。

 

補給ができないって本当につらい。ウラノの知識ではウラノの世界の戦争は補給こそが生命線なんて話があったけど本当にそうだね。

 

神の意思を取得して先生方に迷惑をかけて湯浴みもせず寝床に行きました。側近達は、とてもうるさく言って来ましたがもう無理です。

 

熱いし、寒いし、いっその事このままはるかな高みに上れればいいのに。

 

以前に魔王様に教わった凶悪な回復薬をあおります。少しだけ味を改良したんだよ。

 

ウラノの世界の良薬は口に苦し。苦いというかもういろいろ味がおかしいけど。

 

ああ、もうだめだ、完全に封印していたマインの顔をのぞかせてしまったせいか心がとっても弱くなっている。

 

村のみんなが恋しいよぉ。こういうとき信頼できる人が近くにいてくれるだけでとっても安心できるのですが。

 

アーレンスバッハで、作ろうともせず拒絶しかしない私がいけないのですが。そんな人作ったら作ったでまた無理がかかるし、孤独のほうが楽な面がむしろ多いです。

 

大丈夫、ここでの私はアウブアーレンスバッハの子ローゼマイン。私はアウブの...。

 

次の日も眠り続けます。私が部屋にいる場合は私が許可しないとウラノの世界の知識も応用して物理的に入れないようにしてあるので、かなり無理しないと入れません。

 

そんなことになったら防犯装置が発動してしまいます。

 

ああ、ガンガンうるさいです。大丈夫ですか。入れてください。っていっているように聞こえますけど。

 

ああ、そんなにうるさくされると頭が痛い熱い。人は水だけあればある程度生きていけると思うのです。栄養剤があればなお良しです。

 

別に一日くらいどうってことないでしょう。魔石こと神の意思は、だいぶ小さくなりましたね。これなら今日中に吸収できそうです。

 

 

 

 

ああ、またひと寝入りしてしまいました。入れてください入れてください。と聞こえます。

 

そういえばこんな状態もなんだか懐かしいなぁ。

 

フェルディナンド様の研究室で、とてもいいところまでいってあと少しってところで倒れる寸前まで研究していたら、こんなこと良く合ったなぁ。

 

魔王様が研究モードに入ると私は限界を超えない限り、退出できません。私がいること前提で実験の予定が組まれているので逃げ出せないのです。

 

あの方は私がどこまでやれば壊れないかよくわかっている方でした。そのときの遺産で今の私が何とか生きていけているので、これっっぽっちも怨んだりしていませんが。

 

まあ、弟子として認められていない以上ただの便利道具。よく考えると契約のあるなし以外はさほど変わらない扱いですね。契約のあるなしは本当に大きい話ですが...。

 

これ以上は、まずいですね。あと少しで神の意思も取り込めそうです。

 

「何かありましたか。今入れるようにしますね。」

 

仕方が無いので許可を出し入れるようにしてあげます。

 

「ローゼマイン様、良かったです。ご心配しました。緊急用の方法でも入れなかったのであせりました。」

 

「あら、それはそれは。私は緊急用の入り方なんて知らされておりませんので何かトラブルでもあったのでしょうか。」

 

全く私に知らせないで勝手に作ってあったんだよ。ひどいよ本当に。

 

最低限知らせてくれるくらいはするかなと期待したのに。それも三ヶ所。扉に二つ、他にも転移用の特殊な魔法陣まで。

 

転移用の魔法陣とか良くやるよと思ったよ。あれって買えば高いし作るのにも手間がかかるんだよ。

 

でもあれって分かってしまえば物理的に重いものを上におくだけで簡単に防げるんだよね。

 

さらに魔力を通しにくい素材を置いて置けば完璧に...。

 

「いえ、こちらの話ですので、後でこちらで確認させていただきます。」

 

「まだわたくし、体を起こすのもつらいんですの。それに湯浴みもできていないのでお恥ずかしいので今日のところはお引取り願えますか。」

 

「はい、無事を確認できればみんな安心します。お食事と水の替えはこちらに置いておきます。それでは。」

 

あなた的にはきっとはるか高みに上ってくれた方がよかったのでは?ああ、でも主を失った側近はアーレンスバッハでは二度と這い上がれませんし。

 

そういう方はアーレンスバッハでは結婚前なら外の領地へ出て行きます。成績等見ても優秀なようなのでかわいそうですね。一応、ゲオルギーネ様にお会いしたら一言くらい言ってあげますかね。

 

ちなみに食事は水と栄養剤ですませました。だって味覚も嗅覚も熱のせいで戻っていないんだもん。毒が入っていても分からないよ。

 

しかも置いていかれた食事は私の嫌いな種類の香辛料入りだし。

 

そういえば講義はって、今日は土の日お休みでした。夜になってシュタープも取り込めました。

 

下手にシュタープ起動させて何かトラブル起こっても嫌だしなぁ。と、大人の持っているシンプルな形のシュタープをイメージしたかったのが悪かったのでしょうか。

 

勝手に出てきているのですが。戻すのはイメージ送り込むだけでいいのかな。

 

なんか七色に輝きだして何かしろといっているように感じます。

 

これって自分の分身のようなものなのでしょうか。だとすると無理やり封じているマインの意思?それとも神の意思?

 

とりあえず、神殿の神具をイメージしいろいろ形を変えてみます。

 

最後にウラノの世界の剣(「えくすかりばー」というらしいです。)とか盾をイメージしてみましたが普通のシュタープに戻ってしまいました。

 

まあ、別にやりたくてやったわけではないのでどうでもいいです。それよりもようやく戻ってくれました。

 

使い方は授業で教わるべきでしょう。流石にシュタープについてはフェルディナンド様には教わっておりませんし。

 

流石に気持ち悪いので湯浴みの準備と食事を用意してもらいます。

 

おかゆもどきでいいよ。他は体が受け付けません。お芋を摩り下ろした薄いスープでもいいなぁ。

 

マインの小さなときに良く食べた味気ない薄いスープも懐かしいです。

 

湯浴みが終わった後、本当にこれでいいのですかと持ってきてくれました。

 

いいんです。それに余りにおいしいものを食べるとあれらの薬を飲めなくなってしまわないか、その方が心配です。

 

そういう意味ではアーレンスバッハの食事は味覚にあわなくて正解だったのかもしれません...。

 

そのあと、汗でひどくなった寝具を変えてもらいました。

 

簡易的に薬物検査。まあ、流石に大丈夫でしょうが。

 

毒ガス等空気感染の場合はこっそり置いてある魔道具が大体検出してくれますし、問題なし。

 

寝具に戻ってアーレンスバッハの歴史書を読みながら自然と眠りました。

 

やっぱり礎の記憶が正しいならこの国の領主はとっても嘘つきだね。

 

全然記憶にあるのと同じ時代と思われるところの記述が全然一致しないよ。今までに無いほどすばらしい善政をしいたって一文だけで書いてあったんだけど...実態は貴族の略奪を完全に領主が裏で許可していて困窮して訴えでた領民を村ごとメダルの儀式で普通に処分したりとか結構あってもうやだ。それはもうただの恐怖政治だよ。

 

今のアウブはまだいいほうなんだと心の底から思いました。

 

 

 

 

さて、本日の授業は奉納舞です。

 

無事でよかったですとたくさんの方が言ってくれましたが、どこまでが本心なのでしょうか。

 

ディートリンデ様については抱きしめていろいろ言ってくれましたが、本当にこの御方はどう判断してよいか困ります。

 

すべてが本心にしか見えないので対処に困るのです。実際はゲオルギーネ様と同様に策士なだけですが。

 

まあ、皆さんに心配してくれてありがとう存じます。って言っておけばいいよね。旧ベルケシュトックの方々も相変わらずです。

 

「我等は世界を創り給いし神々に祈りと感謝を捧げる者なり」

 

まあ、奉納舞ですから神殿でやるのと同じですね。

 

フェルディナンド様に魔力奉納のついでに覚えるようにと、わざわざ他の人雇ってまで教えられました。

 

最後だけ必ず来て採点していくのでまったく油断できません。一番初めは全然覚えられず、教えに来てくれた方共々説教を受けました。

 

直前まで恐怖の実験につき合わせて珍しく早めに開放されたと思ったらいきなりだもん、あの方の行う事はすべてウラノの世界のムリゲーです。

 

「神に祈りを!」

 

うんうん、でもなんで王族の儀式でこういうものが残っているのに神殿はここまで嫌われているのだろう。

 

闇の神に捧げる役のアスタナージウス王子は大変そうですね...。相方の光の巫女役のクラッセンブルクの方がうますぎるだけですか。

 

はぁ、まあ、美しいとかそういうものより、調和があっているほうが好きだな。

 

少しくらいアスタナージウス王子に合わせてあげるかアスタナージウス王子を奮起させるようがんばるか...私程度がどうこう言うことではないですね。

 

「ローゼマインちょっと来なさい。」

 

ディートリンデ様、今度はいきなり何をするのでしょうか。もう少し思考の渦に浸っていたいのですが。

 

「ヴィルフリート、改めて紹介しますわ。先ほど話した私の優秀な妹ローゼマインですわ。私の補佐をがんばってくれていますわ。ほらローゼマインこの間は体調崩して途中で退席したのですから一言謝っておきなさいな。」

 

ゆ、油断していました。この方は何を言っているのでしょう。

 

わたしの契約については当然のごとく知っているはずなのに。

 

こんな場で私が蒸発したら騒ぎではすみません。もう本当に助けてください。

 

「あ、改めまして、この間は途中退席をしてしまい申し訳ございませんでした、ヴィルフリート様。わたくし本日も先日のシュタープの件でまだまだ体調が回復していません。」

 

そこから、不快な思いをさせてしまっては申し訳ございませんので退席させていただきます。ということを暗に伝えこの場から離れようとします。

 

「待ちなさい、ローゼマイン。もう、何でそんなにヴィルフリートから逃げるのですか。今度私的なお茶会を従姉弟同士でしますのよ。もちろんあなたも参加するのですわよ。」

 

何いっているのこの人、本心から困った妹ですわねという雰囲気を出して逃がそうとしません。

 

流石にこれはやりすぎでしょう。ゲオルギーネ様もここまでは流石に許さないはずです。え、許さないよね。きっと。自信が持てない...。

 

「ディートリンデお義姉様、ゲオルギーネ様の許可は得ているのでしょうか。」

 

「お母様の許可?何を言っているのですかローゼマイン。領主候補生同士よくよく仲良くなるようにあなたも言われているでしょう。」

 

「優秀なディートリンデお義姉さまと違って、わたくしは仮の領主候補生でございます。アウブからも社交については体調面から最低限でかまわないと許可を頂いております。」

 

そこで横槍が入ります。

 

「おや、ローゼマイン様もそのお茶会に出られるのですか。でしたら私も参加させていただいてよろしいですか。」

 

フレーベルタークのリュディガー様です。ヴィルフリート様とよく似ています。

 

「ええ、もちろんですわ、日程が決まり次第おこないましょう。楽しみですわね。」

 

「あの、みなさま。大変恐縮ですが知っての通りわたくし体調を崩してばかりですので参加できない可能性が非常に高いと存じますのでよろしくお願いします。」

 

「もちろん、その時は仕方が無いけど体調を整えて、できる限り参加するのですよ。ふふ、楽しみですわね。」

 

私をこっそりいじめてそんなに楽しいのでしょうかディートリンデ様。万が一私がはるか高みに上ったら流石にディートリンデ様でも手に負えないかと思うのですが。

 

「そうだな、面白い噂もいろいろ聞いているし、ローゼマイン、お主とは一度じっくり話をしてみたいと思っていたのだ。」

 

ヴィルフリート様、私はじっくりなんて話したくはございません。契約の関係で無理です。ごめんなさい。

 

「お気持ちはうれしいですけど、時の女神 ドレッファングーアの糸が重なる時があればよろしくお願いしますわ。」

 

絶対に参加しません!と言っておいた方がいいよね。絶対に失礼だけど。私は第6位アーレンスバッハのアウブの子、私は第6位アーレンスバッハのアウブの子...

 

ぐすん、ごめんなさい。かつての主になるかもしれなかった方。心の中だけで謝らせていただきます。

 

「ローゼマイン!もう、ごめんなさいね。ローゼマインは極度の引っ込み思案なのですわ。授業については宮廷作法も終わってますし問題ないはずなのにまったく。」

 

まったく、もうではございません、ディートリンデ様、逃げるが勝ち。

 

「ディートリンデお義姉さま、余り話をしたことがない殿方と話しすぎて私疲れてしまいました。申し訳ございませんが失礼いたしますわ。」

 

「まったく、仕方の無い妹ですわ。できるだけお茶会に参加させますので皆様候補日が決まったら連絡しますのでよろしくお願いしますね。いえ、ローゼマインも必ず参加させますので。」

 

どうやって逃げよう。お父様との私的な連絡網なんて用意していないし、情報の管轄にはゲオルギーネ様は必ず入ってくるから...。

 

やっぱり体調不良で、奉納式まで逃げ切れるかなぁ。幸いこのくらいの接触なら問題は無いようだけど。

 

まさかここまでディートリンデ様が私にかかわってくるとは思いませんでした。

 

良薬口に苦し、劇薬も口に苦いのは当然のこと命の味がいたします。助けてください。本当に。

 

 

 

 

その後、アスタナージウス王子に話しかけられ、いろいろ面白いから興味があると言われましたが上の空です。

 

王族相手に上の空とか非常にまずい事態なのですがさっきの事態ほどではありません。

 

なぜか授業の後に付き合う流れになってしまいました。なぜ私なのでしょうか?ディートリンデ様に王子が興味を持つとは思えませんし。

 

 

 

さて、そんな話をしていられる時間も終わり、奉納舞を実際に舞う練習が始まります。奉納舞は試験とか無いし、正直なところ体力面を除けばちょっと自信がありますよ。

 

最後まで魔王様の合格は出ませんでしたが教えていただいた方には褒めていただきましたし。

 

お世辞じゃないよね。きっと。あれだけガミガミ一緒に魔王様に怒られるのに付き合って下さったんだから。

 

おかげさまで、大変結構ですをもらいました。無事に終わってよかったです。更に実技の授業が終わった後、王子は結局周りに女性をはべらせて予定ができたとか言ってくださって付き合わなくて済んでよかったです。

 

 

 

 

次の日は珍しく予定が入っていなかったのですが、体調不良です。

 

だって夜通し手紙を書いて、何度も何度も書き直してようやく納得ができる手紙ができたのでアウブに報告書として送ってもらいました。

 

前回の返事もいただけないし。誰か止めてないよね。ヒルシュール先生...。なんでわたしはアーレンスバッハなのでしょうか。

 

ゲオルギーネ様辺りが何かしていてもおかしくないので、ここまで来ると外部に期待せず独力で何とかするしかないかもしれません。

 

はぁ。もう薬漬けは嫌なのです。その命綱の薬のストックも想定以上の消費と妨害でどうしましょう。

 

 

 

 

さて次の日はフェシュピールの授業です。

 

はぁ、今回は良かったです。課題曲の楽譜を弾くだけでした。もともとウラノも意外と音楽の知識がありその知識と合わせて今までいろいろやってきましたが。

 

そういえば魔王様は一度も合格くれなかったなぁ。これ以上は時間の無駄だから曲を変える。それしかなかったものね。

 

私の教育係としてアウブに任じられたから仕方なく教えていたんだよねきっと。そんなことよりも実験道具として使いたいってことだろうし。

 

不安はありましたが、今更練習したところでうまくはなりませんので音符だけ全部確認しさっさと試験を受けます。

 

うん、まあ、わたし的には及第点です。体調面で回復しきっていませんし、神への曲でないから奉納はしませんでしたが。

 

魔王様基準ではですか。お小言が飛んできますねきっと。やり直しという声が聞こえそうです。

 

やっぱり少しくらい練習してから試験を受けた方がよかったかな。

 

結果は一応、合格だそうです。皆様どことなく不満そうです。やっぱり僅かにも手を抜いてはいけないのでしょうか。

 

審査の話し合いでは祝福がどうとか聞こえてきた気もしますが。まあ、合格は合格です。成績なんてどうでもいいので合格がもらえればいいのです。

 

 

 

次の人が来ないのでお茶会の話になります。

 

お茶会を楽しみにしていますなんて言われてしまいましたがどうしましょう。

 

体調を理由にお断りをしたいのですが、ディートリンデ様のことを考えると無理です。参加するのは仕方が無いのでせめて体調の関係から普通のお茶会より短めにしてもらうよう交渉しました。

 

終わればさっさと退散です。邪魔者はさっさと消えるに限ります。

 

その夜はアーレンスバッハの話を読み終わってしまいました。

 

歴史書では綺麗な話にしかなっていませんでしたが、完全に作り物ですね。本当の歴史書を作らなくてよいのでしょうか。

 

まあ、礎より流れ込んできた知識が正しいのならですが。

 

 

 

 


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