マインオブザデッド   作:dorodoro

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27話 シュタープ取得 心の叫び

それは次の日、今日は午前中特に予定なしとなっていたのですが。

 

「お茶会ですか?」

 

「ええ、是非にと音楽の先生方からお誘いの文が届いております。」

 

側近の一人が言いました。うーん、お断りしたい。

 

「お断りしたいのですが。」

 

「何を言ってますのローゼマイン、せっかくのお誘い絶対に行かなければなりませんわ。」

 

ディートリンデ様、いつの間に来たのでしょうか...。

 

「そういえば、音楽の授業ですばらしい演奏をしたと聞いてますよ。流石は私の妹です。」

 

「ディートリンデお義姉様、あの演奏は情けない話ですが最後まで弾かないで終わってしまった演奏なのです。そのような状態ですばらしいと言われましても。」

 

「まあ、それではちゃんと最後まで聞かせてあげなければいけませんよ。アーレンスバッハの領主候補生として途中で投げ出すのはどうかと思いますわ。」

 

うーん、なんか、そういわれると正論な気もするけど。

 

「それに私も聞いてみたいですわ。私の優秀な妹がどんな曲を弾くのか興味がありますわ。」

 

「優秀なデイートリンデお義姉さまに聞かせるほど、たいした腕前ではございません。」

 

というか、いろいろ薬や魔道具が、ちょこちょこいじられたりなくされたり。箱の表側だからいいけど補給をまったくしないのはばれる可能性もあるしなぁ...。

 

でも材料もないし...時間もないし。部屋の防犯装置は私がいないときは基本的に切っておりますし...。

 

万が一にでも私の部屋の防衛装置に触れてはるか高みに上られても困ります。

 

やっぱりディートリンデ様が関わっているのかなぁ。関わっているなら少しでも補給の邪魔しようと思うだろうし...。

 

「とにかく、誘われたお茶会はできる限りでないといけませんわ。少なくとも最後まで聞きたいと先生に思われる演奏をしたのですから胸を張って参加しなさい。」

 

おーほほ、という感じで行ってしまう。これで行かないって言ったらやっぱりだよね。

 

あの曲はなんとなくしか覚えていないから楽譜に書き出して...書き出したけどやっぱり弾きたくない。他の曲にしよう。そういえば今日はお祈りをしていなかったなぁ。

 

諦めて音楽を奉納しますか。メスティオノーラ様の曲がいいなぁ。結局曲から作らなきゃ。

 

ああ、エーレンフェストのときは良かったですね。ロジーナとか元気かな。作詞編曲してもらって...それ以前に心から信頼できる仲間がいませんが。

 

図書館の魔道具の話にしよう。あの装置の元には何が眠っているのだろう。うふふん、ウラノの世界の『みすてりー』ってやつですかね。

 

結局時間がなくなりかけて危なかったですが今日の奉納のノルマは何とかできました。

 

 

 

午後の授業はシュタープの取得です。

 

まあ、ご存知だと思いますがウラノの世界では魔法の杖と呼ばれる、あれを思い浮かべていただければよいと思います。

 

シュタープについて、聖典を読むと神が王に与えた物の一つで魔力の優れた王が魔力の扱いに困っていたところシュタープにより魔力をコントロールできるようになったとか。

 

昔は最終学年で取得していたそうです。

 

カリキュラムの関係から初年度に移ったようですが、便利なものらしいので、なぜ昔は最終学年にしていたのかは不明とのことです。

 

ああ、聖典といえばエーレンフェストにいたころの聖典ちゃんが懐かしいです。こっち来てから呼び出せなくなっちゃったんですよね。

 

やはり領地が違うからなのでしょうか。

 

さて、今日は講堂に集まった後に、礼拝室へ、祭壇がなんとも、普段からお祈りに開放していただけませんよね。

 

祭壇の魔石にかな、先生が魔力を込めると入り口ができここにいる領主候補生が順々に中へ入っていきます。

 

他の領主候補生にはとっとと先に行って貰います。

 

急いでもしょうがないのでゆっくり行きます。他の方とぶつかっては絶対にいけないそうですがこれだけゆっくり歩いていると絶対最後でしょうね。

 

はぁ、どれだけ歩いたでしょうか。もう皆さん当然いません。なんといいますか、神殿暮らしが長いからなのか分かりませんが、なんとも落ち着く空間なんですよね。

 

まあ、もうどうとでもなれ。と思います。

 

 

 

 

見つけられないほうがいいのではないか。そんな気さえしてきました。

 

奥に行けばいくほど、神々の魔力というのでしょうか。歩いていてもとても心地いいのです。

 

かなり奥の方まで歩いたら出てきた螺旋階段に座って少し休憩します。うん、魔力構成も今まで見たことのない構造で興味深いです。

 

さて、余り休憩しすぎても怒られてしまいます。

 

うん、螺旋階段をゆっくりと上りきりますと行き止まりですか。あれですね、ウラノの世界で言う『ゆぐどらしるの木』でいいのでしょうか。

 

よくよくウラノの世界と比較してみるとこの世界は身近な不思議に満ちています。

 

あのウラノという少女の知る『ふぁんたじー』に似た世界なのですが、世界として安定していないというかなんというか。

 

まあ、そんな以前から言っている『ふぁんたじー』のことはどうでもいいのですが。いかんせん現実逃避もしたくなります。

 

ここに溜まっている魔力は明らかな意思を持ち、私に何かを投げかけているようなのです。

 

これ以上私に何かをしろというのでしょうか。

 

あ、でもこの異常な空間ならもしかして。

 

村の家族のために祝詞でもあげてみましょうか。

 

「高く亭亭たる大空を司る、最高神は闇と光の夫婦神

広く浩浩たる大地を司る、五柱の大神 

水の女神 フリュートレーネ 

火の神 ライデンシャフト 

風の女神 シュツェーリア 

土の女神 ゲドゥルリーヒ 

命の神 エーヴィリーベよ

我の祈りを聞き届け 御身の祝福を与え給え 」

 

明らかに省略した祝詞でいつも以上の祝福が飛んでいきます。加えて普段の祝福と違う飛び方をしています。つまりここは限りなく神の領域に近い、もしくは似せた領域である可能性が高いということです。

 

早く取ってというかのように魔石(神の意思)が主張していますがごめんなさいもうちょっと待ってください。

 

ちなみに、さっきの祝福は心の底から村の家族を思い送りました。届くのかな。届くといいな。

 

さて、ここなら大丈夫かも。

 

試してみますか。

 

「神様方、このような場で仮にも神殿の神殿長たる私が神をないがしろにするような愚かな行動をすることをお許しください。」

 

おねがいします、許してください。神の方々。もういろいろ限界なのです。わたしはにんげん、わたしは人げん、私は人間。

 

「アーレンスバッハのバカヤロー!アウブのわからずや!」

 

「フェルディナンド様のいるエーレンフェストと戦うなんてできるか!勝てるわけないだろ!」

 

はぁ、はぁ、ここに来るまでもかなり体力を使っているのにとても疲れます。指輪はまったく発動しません。

 

「わたしはアーレンスバッハのローゼマインなんかじゃない、ただのエーレンフェストの名も無き村のマインだ!」

 

「お父さん、お母さん、トゥーリ、カミル。必ず私はみんなに会うんだ!」

 

「アーレンスバッハの私を慕ってくれる者のバカヤロー。わたしはあなた達の気持ちになんかこたえることできるわけないだろ!」

 

もうこころ、くるしいのです。

 

「私の心のゲドゥルリーヒはエーレンフェストで大切なものはエーレンフェストにあり、魂をエーレンフェストに置いてある弱い私のバカヤロー!そんな私があなた方から慕われる資格なんてあるか!」

 

馬鹿みたいに叫びまくります。涙が止まりません。その後もひとしきり叫びまくった後。

 

「ただの村人、マインとして少しの間いさせてくれた、そして愚かな行動を許していただいた神々に切に感謝いたします。」

 

もう一度、私の知る神々一人一人に感謝をささげ魔力を捧げられないことをお詫びします。

 

「わたくしはアーレンスバッハのアウブの子、ローゼマイン。私はアウブのどうぐ、アウブの道ぐ、アウブの道具。」

 

こんなおまじないをかけても意味はありませんが、かけないよりずっと良いのです。実際道具になんてなれるわけはありませんが。

 

 

 

 

「ごめんなさいね、大変お待たせいたしました。待ってていただきありがとう存じます。頂戴致します。」

 

魔石(神の意思)がさっきと変わっているような気がしますがきっと気のせいですよね。なんだか更に魔力が集まってきているような。

 

受け取った後、魔力が吸われていきます。魔力を少しでも取っておくべきだったのでしょうが、村の家族のために魔力を使ったことに後悔はありません。

 

その後?余りに戻ってこない私を先生達が全力で私を探していたそうです。迷惑おかけしまして申し訳ありませんが後悔はありません。

 

階段を降りた後少し戻って横になって休んでいたら死んだと勘違いされましたけどね。

 

だって、あれだけのことをすれば、無理です、もう体力の限界です。

 

がんばって、帰りましたよ。身体強化の魔術がほとんど使えないせいでものすごく時間がかかりましたが。

 

加えて戻れば戻るほど契約の干渉が強くなっていきます。ものすごく心が和らぎ感情のコントロールができないができなくなったのはこのせいなのかも。

 

帰りたくないよぉ、もういっそここに暮らしたい。でも帰らなきゃ。そんな気持ちのせいで更に足が進まなくなります。

 

神の意志を取得に行き、最奥の間で、危うくはるか高みへと上りかけた者がいると噂になったそうですがどうでもいいですね。

 

 

 

 




微妙な回ですがこの話を書かないと先に進めませんのでご了承を。

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