マインオブザデッド   作:dorodoro

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25話 忠誠なんていりません

なんだか、音楽の奉納で少しすっきりした気がします。

 

夢見も悪くありませんでした。

 

カミルはきっと夢よりもはるかに大きくなっているのだろうな。

 

まあ、あんな適当な曲を弾いて、ゲドゥルリーヒの曲になっちゃったな。

 

ライデンシャフトの夏の曲のはずだったんだけどなぁ。

 

というか選択、ウラノの世界の『ちょいす』が悪かったね。あんな体調で弾ける曲じゃなかったよ。

 

まあ、終わった後のことを考えてもしょうがないね。

 

はあ、やり直しかな。しょうがない、結局最後までちゃんと引けてないし。

 

だってあそこからの話ってないもの。適当に幸せにして締めようと思ったら手が止まってしまったんだよね。

 

 

 

さてさて、気持ちいい夢を見てから起きたのでほわほわ幸せな気分に浸っていると

 

同学年の女性の側近が一人で私の所へきました。

 

「ローゼマイン様、起きておりますか?」

 

「ええ、何かありましたか?どうぞ入ってくださいな。」

 

しかし、まだ夜明け前です。こんな時間になんでしょうか。

 

「ローゼマイン様、朝早くから申し訳ございません。少しお時間を頂戴したく存じます。」

 

「いえ、お気になさらず、わたくし久しぶりにぐっすり寝られて気分が良いですの。それで何の御用ですか。」

 

まさか、お命ください!とかやるとも思えないしなぁ。まあ、この部屋でそれを実行できる人は魔王様くらいであると信じたいですが。

 

魔王様だったらできるって?当たり前じゃないですか。

 

私の魔術具の基本設計は、ほとんど魔王様のものですから無効化も簡単です。

 

証拠隠滅も含めて五分持てばいいのではないでしょうか。

 

ただの五分あればとりあえず部屋から出て助けを呼べる可能性があること考えれば、五分は持たせられると思えるだけ私も成長したと胸を張っていえますが。

 

なかなか話してくれないなぁ。心の中で魔術具作成をがんばりましたって報告を終わっても、まだうつむいたまま言葉を探してかのようです。

 

「ローゼマイン様、改めて忠誠を捧げさせていただきたいのです。」

 

うん?忠誠ですか。

 

「いきなりどうしたのですか?あなたは側近です。ゲオルギーネ様からお借りしているとはいえ、次くらいには忠誠を頂いていると思っていますよ。」

 

「いえ、そうではなく。心の底からローゼマイン様第一に仕えさせて頂きたいのです。」

 

「確認しますが、あなたの独断ですか。家族に話してありますか。」

 

「私の独断です。」

 

うん、独断ですか。

 

「それでは今は私を主として見て頂けるということでいいですか。名捧げするとか言っても受け取れませんけど。」

 

「存じております。求められるならもちろんいたしますが。」

 

「理由をお聞きしても。」

 

理由がわからないんだよね。こんな倒れてばっかりの主に仕えたいなんて。

 

仮の立場でもいやだろうに何考えているのだろう。

 

「昨日の音楽の奉納ですわ。」

 

昨日のあの不完全な聞くに堪えない手もおぼつかず弾いた曲に何の感動を受けたのでしょう。

 

ああ、思い出したら少し恥ずかしい。子供のかんしゃくだよね。楽器にストレスを当り散らすなんて。

 

うん、結論、理解できない。

 

「ローゼマイン様の深い悲しみ、アーレンスバッハを思う深い気持ちが伝わってまいりました。」

 

アーレンスバッハ?余り考えていなかったかなぁ。

 

「そんなローゼマイン様がアーレンスバッハを害しようとなど考えるはずがございません。」

 

うん?最悪害すよ?人が死なない範囲でエーレンフェストに帰って無事でいられる確信が持てるなら...。

 

まあ、いっか。音楽の捉え方なんてみんな違うものね。

 

あんな音楽だけで忠誠を誓えるこの子の将来が少し心配だけど。

 

「わかりました。では初めての命令も聞いていただけますね。」

 

「ありがとうございます!誠心誠意お仕えいたします。」

 

キラキラしているけど、ごめんね。私はわがままなの。

 

「では、あなたはゲオルギーネ様を第一としてこれまで通り行動すること。ただし、あなた自身や家族や大切なもののために、どうしようもなくなって助けが必要になったら私に頼ること。」

 

うーん、他にあるかな。ないな。まあ、できる限りのことはしますよ。

 

うん、あ然としているね。この約束なら例え私がエーレンフェストに戻った後でも亡命とかで、どうとでもなるし。

 

頼られてもできない場合もあるけど、ここまで言ってくれている以上ただ見捨てたくはない。

 

そのあと、そんなものは忠誠を捧げるとはいいませんとかいろいろ言っていますが聞きません。

 

だって、その決断はこの子の命を限りなく危険にする決断ですもの。

 

それに...いえ、これ以上は考えるのを止めておきましょう。

 

「家族がいて家族のために尽くせないものが、どうしてアウブに仕える事ができますか。せっかく家族がいるのですから自分の命の次に大事にしてくださいませ。」

 

ああ、そんなことどの口から出るって感じだよね。究極的なことを言えば私も村の家族のこと以外考えていないのに。

 

やっぱり、アウブより家族を大切にするべきと思ってしまう私は絶対アウブにはなれないんだろうなぁ。

 

 

さてそんなことで諦めてもらおうと締めたつもりだったのですけが、その後も無言でうつむいて何も答えてくれません。

 

うーん、きっとかなり真剣に悩んでから来てくれたんだろうなということはよく分かりますが、変えるつもりはありませんし。

 

最終的に顔を上げて

 

「わたし、諦めませんから。」

 

と言って出て行きました。まあ、いいです。私に損も得もないですし。でもやっぱりそういう命令は聞いてくれないんだね。

 

 

 

とりあえず、座学は終わりました。後は実技ですね。フェシピールの件は側近に確認を取ってもらい、一応合格でいいそうです。

 

まあ、まだ音楽の試験があるし一年生だしいいってことだよね。神殿ではかなり弾いていたから技術についてだけなら問題はないと思うし。

 

 

 

 

「まあ、ローゼマイン。無事に座学は無事に終わったとのことですわね。昨日はずいぶん体調が悪くて午後の授業は早退したと聞きましたが体は大丈夫ですの。」

 

完治しきっていませんから大丈夫とはいえませんがまあ、いつもこんな感じだしね。

 

「ご心配ありがとう存じます。ディートリンデお義姉様。ぐっすり眠れたのでだいぶ良くなりました。」

 

本当に久しぶりにぐっすり眠れた。やっぱりストレスが溜まっていたのかなぁ。

 

「それはよかったですわ。まだ1年生は座学が終わっていない子も多いので、できるだけ手伝ってあげてくださいな。」

 

できるだけはします...。もう無理なので本当にできるだけは。

 

「ディートリンデお義姉様、わたくし図書館に申請の予約をしたのですがアーレンスバッハで申請する方を取りまとめて欲しいといわれております。例年どのくらいの方が登録するのでしょうか。」

 

「あら、わたくしの時は基本的に登録は個人だったので分かりませんわ。みなさん聞きまして、図書館登録したいかたはわたくしの妹ローゼマインに言うのですよ。期限についてはローゼマインいつまでですの?」

 

「登録は3日後の昼ですので、早くて申し訳ないのですが、明後日の夜までに一声お願いします。」

 

「さすがわたくしの妹ローゼマインですわね、図書館に行こうとなんて勉強熱心ですわね。ちなみに登録料は小金貨一枚ですわよ。」

 

うん、高いね。下級貴族は大変そう。助けてあげることはできないけど。

 

この後何名か来ましたけど、余り図書館に興味ある方は少ないようでした。

 

なぜか旧ベルケシュトックの方々は全員が私に話に来て登録できない方は申し訳ございませんとか言ってきたけど...。

 

 

 

 

さて、騎獣を作る授業なんだけどどうしよう。一応騎獣服には着替えさせてもらったけど。

 

騎獣の魔石はイメージ次第なのでどうとでも変えられます。

 

アウブに相談していなかった。エーレンフェストと同じ形はまずいよね。

 

仕方ありません、レッサー君ではなく、猫型にしますか。

 

今回の授業はアーレンスバッハの寮監です。

 

甲高い声の人で、余り話したことがありません。基本的にディートリンデ様が対応してくださったので。

 

「先生、どうしてもダメですか?」

 

一応悲しいですが顔はネコで作りました。アーレンスバッハの寮監は

 

「まあ!ダメなものはダメなのです。ですが、仕方ありません、他ならぬアウブに認めていただけているのなら私が言える事はありません。乗って見せてください。」

 

うん、レッサー君とネコ君。やっぱりアウブに許可をとってレッサー君のほうがいいなぁ。

 

「んまぁ!さすがはアウブの子ですわね。非常識!と言いたいですが、中に乗り込むとは...確かに利点もありますわね。」

 

うん、先生は絶対認めたくないという感じだけど...。体の弱い私には絶対に必要なものだ。

 

「先生、不出来なわたくしをお許しください。この体が普通の健康体ならと何度思ったことか。」

 

「んまぁ!そうですわね。いえ、確かにローゼマイン様は体がとても弱いのでした。よくご自身でできることを考えられて作られましたわ。乗った後、落ちてしまわれては大変ですものね。」

 

うん、アウブのご意向だね。私以外だったら認めてもらえなかっただろうな。

 

なんとか、騎獣を認めてもらえました。良かった。

 

だって、昔フェルディナンド様に実験だとか言って命令されて普通の騎獣にしたら空ですぐ耐え切れなくなって落ちて...。

 

助けてくれないんですよ!私が作ったお守りがどの程度機能するか確認したかったとか言って。

 

ええ、無事でしたよ。お守りがうまくいったおかげで。ただし、隠れてこっそり作った予備のおかげで衝撃を殺せましたよ。

 

そのとき作ったお守りだけでははるか高みに上ってました。これでも魔王様の実験に付き合った中ではましな方でしたが...。

 

 

初めて貴族院で飛んで空から見た学校の周りは、綺麗でしたよ。大きな神殿のようで見ていて気持ちいいものでした。

 

ただし、なにやら魔力を吸収収束すると思われる魔法陣やら、いろいろな魔法陣が隠されていてめまいがしましたが。

 

ヒルシュール先生を見習ってモノクルをつけて魔力とか見えないようにする魔術具でも作った方がいいかもしれません。

 

まあ、やるにしてもエーレンフェストに帰れてからでしょうが。

 

 

 

 

次の日の午前は午後の準備と貴族院内をめぐっていました。意外と祠が点在し神の像や紋章もあり、魔力を奉納しました。

 

神に祈りを!

 

午後は魔力圧縮の実技です。

 

うーん、どうしましょう。困りました。開放して圧縮して...。いつも通りやりますかね。

 

ヒルシュール先生が担当です。私の所の寮監がなるはずのところで無理やり割り込んでくれました。

 

話が分かる先生ですのでありがたいです。他の方々は2人の生徒に2人の先生が対応するのですが、なぜか私だけ1対1なのは何でですかね。

 

ああ、所属がエーレンフェストのままだったら。まあ、考えても仕方がありません。

 

計測の腕輪をはめる前に一度開放して、腕輪をつけます。うーん、圧縮率が高いです。更なる開放、開放、開放、このくらいでいいですね。

 

これ以上ただ開放すると熱くて危ないのです。腕輪?まあもう見なくていいでしょう。今より圧縮するのに集中です。

 

全部まとめて綺麗に畳んで圧縮袋、更に煮詰めて固定してからさらに詰め込んで。

 

うん、ウラノの世界の掃除機で綺麗にたくさんできた圧縮袋を更に圧縮袋に入れてぼんっと。

 

うん、ほんのちょっとだけ圧縮率上がりましたね。

 

これだけ苦労してもちょっとなんだよね。

 

「ヒルシュール先生、これ以上圧縮しないとダメですか?圧縮し直せばもう少し圧縮できるかと存じますけど。」

 

ウラノの世界のアルミ缶に機械で詰めたイメージをすればいい?

 

一度やりましたがひどい目にあいました。即魔力を開放し、ウラノの世界の融解剤を流すイメージをしたので事なきを得ましたが。

 

今なら...薬の話はやめましょう。ユレーヴェも今は手元にないですし。

 

まあ、そうでなくても道具としての意識を最大限変えてやれば以前できなかったやつでも...。

 

やめましょう。従属の指輪にいろいろ大切なものが持っていかれそうです。

 

領主候補生はあっという間にコツをつかんで席に戻って圧縮に励んでいるようです。

 

「ヒルシュール先生?戻ってよろしいですか。」

 

うーん、どうしちゃったんだろう。最初より、ちょっとしか圧縮できていないし。ダメなのかな。

 

「ああ、ごめんなさい。非常に興味深かったので少し考えてしまいました。もちろん大丈夫です。戻ってよろしいですよ。」

 

「ありがとう存じます。」

 

なんか変な反応しているけどまあいいや。

 

戻った後周りを観察すると、うーん、みんな魔力を動かして圧縮しているね。別にちょっと違うだけで結局みんな私とやっていることの基本に違いはないみたいだけど。

 

まあ、どうでもいいや。領主候補生以外のみんな、こんなにパタパタ倒れて大丈夫かな。

 

 


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