21話 いざ貴族院へ
さて、また寝込んでしまいました。
フェシュピールだけでだめになるとかやんなっちゃうね。
結局寝込んだままで、起きられるようになったらもう貴族院へ向かう日でした。
私の魔力でしか開けない薬箱やいろいろな箱を運んでもらいます。お薬とお守りを追加出来るように素材の状態でも少々。調合室貸してもらえるかな。
お父様とお母様に見送りに来て貰えたので新作の薬を渡しておきます。以前の薬の効果と味を少し改善しただけだけどお守り代わりに持っててね。
緊急時はユレーヴェがあるだろうし要らないよね。今は、まだ万が一があっては困りますよ。
さて、貴族院へついたらディートリンデ様に挨拶だな。何よりまずしなければなりません。
「貴族院アーレンスバッハ寮へようこそおいでくださいました、ローゼマイン様」
うーん、聞いてはいたけどアーレンスバッハの城と変わらないね。
エーレンフェストの方もそうなのかな。
「ついて早々なのだけれどディートリンデ様はどちらへいらっしゃいます?」
「ディートリンデ様ですか?どちらでしょう、確認してまいりますね。」
エーレンフェストなら人数が少ないからすぐわかるけどこの人数じゃねぇ。
「お久しぶりですわね。ローゼマイン。貴族院へようこそですわ。」
オーホホという感じで向こうから来てくれました。
「ディートリンデお義姉様、本来こちらから伺わなければならないのにありがとう存じます。また、しばらく挨拶できずじまいで申し訳ございません。」
うん、無理してでも洗礼式の日に挨拶しておくべきでした。
「いいのですよ。先日のお披露目には驚きましたわ。ぶわっと派手に空に花が浮かんだように綺麗でしたわ。」
「まあ、空に花が浮かぶとはすばらしい表現です。わたくし感動しましたわ。流石はディートリンデお義姉さまです。」
いや、実際うまいね。花柄の祝福ってできるかな。ちょっとやってみる?
「あの、わたくし体が弱くてあの後3日も寝込んでしまいましたの。こちらでも無理をしてディートリンデお義姉さまには迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」
「まあ、あれほどの祝福をおこなったのなら当然ですわね。子供部屋に来ないから本当に心配しましたのよ。まったく、アウブであるお父様に無理してでもやるように命令されたと聞いてますわ。辛かったらわたくしからも一言言ってあげますからね。」
うん、やっぱりこの人身内にはいい人だ。なんか最近なぜか恐れられているし本当にありがたい。
でも悲しいけどたぶん演技なんだよね。演技がうますぎて本心にしか見えないから本当に策士なんだよ。
「ありがとう存じます。ディートリンデお義姉様。わたくし出自が出自ですので社交経験がまったく無く実際のマナー等に難があるので頼りにさせていただきますね。」
実際、ディートリンデ様が貴族院での生命線なんだよ。社交ではほとんどお願いしないといけないし。
ただ、裏ではどんな指示を飛ばしているのか。考えただけでおなかが痛くなってくる。
「さて、私の妹に挨拶をしたくて、皆さんそわそわしてますわ。私の妹ローゼマインに挨拶することを許可しますのでいらっしゃいな。」
本当に信頼したくなって心の中で涙が出てくる。先生達と違って初めから誘導してくれるし。
横で私の自慢しながらもスムーズに挨拶を進めてくれる。人数多いから挨拶大変なんだよ。顔と名前はほとんど頭に入ったけど。
しかし、やっぱりすごいなこの人。私のやったことを自分の功績のようにうまく変えずっと話し続ける。
しかも話は止まらないのに挨拶だけはスムーズに続く。どれだけ優秀なのだろう。
最悪の事態を考えるとこの人と敵対しないといけないとか、絶対考えたくない。
アウブは次期アウブをレティーツィア様でほぼ確定しているつもりみたいだけど、この人はやばいよ。頭痛いよ。
ディートリンデ様のおかげでスムーズに入寮できたし、部屋に荷物を運んでもらったけど。
とりあえず、運んでもらったものを全部確認します。
といっても重要なものは私の魔力にしか反応しない鍵をつけた箱にいれているからそれだけだけど。
普通にあけると普通の薬品の入ったビンが出てくるのだけど、私の魔力で空けると特別な薬が出てくるようにギミックを仕込んでおきました。
やっぱりだ。ため息が出ます。箱のいくつかはすりかえられ遅効性の毒に置き換えられています。
今身につけている服にも大量に薬や魔術具、魔法陣を仕込んでいるけど苦労して作ったのに残念ですね。
近くにあれば魔力で探せる魔法陣も組んだけど、これからどれだけされるかわからないから見つかる希望がほとんど無い状況では無駄にはできません。
うん、まあ、たくさん持ってきたし仕方がありませんね。
なにやら共同フロアに下りてくると騒がしいです。
何の騒ぎだろう。と首をかしげていると...
旧ベルケシュトック大領地の方達が正面に来て片ひざをついて忠誠のポーズをしてきました。うわぁ、いやな予感しかしないよ。
「ローゼマイン様、発言をお許しください。」
え、なに?本当にいきなり何。
「許します。というか発言ぐらいでそこまでかしこまらなくてもいいのですよ。」
と私が言い終わる前に、体を前のめりにするような感じで勢いよく言ってきました。
「なぜ我々の派閥から側近に入れてくださらないのですか。必要ならば名捧げでもなんでも行います。条件があるならお示しください。」
はぁ、自分から私の側近になりたいという。お勧めしないよ。仮には入れたとしても罪をかぶせられてぽいっとされるのが目に見えます。
「わたくしの側近達はアウブであるお父様に決めて頂いた大切な方々です。わたくしの側近はすべてアウブが決めることになっていますので希望があればギーベを通してアウブに言ってくださいまし。」
「ローゼマイン様、我々がお仕えするのはローゼマイン様だ...。」
黙れ、もう、その発言が私をどれだけ危険にするかわかっているのかな。魔力を放出し威嚇します。すると顔を真っ青にしてガタガタ震えだしました。
「お気持ちだけは受け取ります。それ以上言うならわかりますね。」
「ローゼマイン様、いくらアウブでもゲオルギーネ様の...。」
はあ、何でこの人こんなにガッツあるの、体がガタガタ震え顔が真っ青なのに。更に魔力を浴びせて黙らせたのでかわいそうな顔になっている。もしかして親にでも命令されているの。
「あなた方のアウブへの忠誠は疑ったことはありませんわ。ですがこれ以上わたくしの側近に関して文句があるというならばアウブへの翻意ととらえますけどよろしいのですか。」
ガタガタしながらも、申し訳ございません。と頭を下げてくる。
「親の命か何かはわかりませんけどお辛かったでしょう。その勇気をこのような無駄なことではなくアーレンスバッハのために使ってくださいまし。」
こっそり癒しの祝福をかけてやります。震えは止まったようです。させておいてあれだけど治まって良かったです。
はあ、冗談じゃないよ。まったく。
本当にディートリンデ様がいなくなった所でよかった。ディートリンデ様の怒りを買うような状況を作るわけにはいかないですし。
まあ、これで側近がどうこう言ってくる方はいなくなったでしょうし、結果的には良かったのかもしれませんね。
気持ち的にはしょんぼりだけど。
ちなみに騒がしかったのは私の側近連中と旧ベルケシュトックの方々の言い争いだったっようです。
かわいそうにね、仕えたくもない主に仕えているのに殴られて顔が酷く赤くなっているよ。
さて、アーレンスバッハの寮監が来たり。まあ!まあ!しか言っていなかったけど大丈夫かな。
食事も、うわぁ。ちょっと解毒薬必要かな。体が弱い私に嫌味な香辛料や食事になっています。
うーん、自分で作りたい。キッチン貸してくれないかな。あえて調理方法指定してみますか。
どこまでやってくれるか、伝わるかで側近達の危険度も少しは計れるしね。
ちなみに次の日から、蕎麦粥とか麦粥とか塩だけの焼き魚とか、野菜を茹でただけのものを指定してみた。
そばの実だけで作るおかゆって最高だよね。手間がすごくかかるけど。
周りの側近は非常にあれな目で見てきたけど気にしません。
今度コンソメでも作らせるかな。まあ、おいおいだね。
毒対策でもシンプルが一番だね。