マインオブザデッド   作:dorodoro

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15話 意見交換

ああ、いたいよぉ。村で家族と暮らせればそれだけでよかったのに。

 

何でこんなところまで来て、奴隷のような契約させられて下手したら家族が危険になるような国を支援してまでやってきたのに。

 

「アウブとして命ずる。ローゼマインよ、今ここで死ぬことは絶対に許さん。先ほどの命令は撤回する。」

 

ああ、痛い。もう遅いよ。

 

「フォルコヴェーゼン」

 

「ローゼマインにルングシュメールの癒しを」

 

そんな呪文が聞こえたような気がします。

 

 

 

 

 

まさかナイフを隠し持ち私を刺そうとするのではなく自分を刺すとは。

 

慌てて生きることと、命令の撤回を行う。

 

まずい、まず治すにせよナイフを抜かねば。

 

「フォルコヴェーゼン」

 

とりあえず、領民を守る呪文で血を止めナイフを抜く。

 

後から考えれば、アウブらしくもなく相当慌てていた様だ。

 

「ローゼマインにルングシュメールの癒しを」

 

傷はあっという間にふさがる。

 

当然だ。ナイフでできる綺麗な傷を治すのにそこまで苦労はせぬ。

 

とりあえず側の仮眠用の寝具に寝かせる。次に医者を呼び状況を確認させる。特に問題はないとの事だ。とりあえずよかった、一安心だ。

 

しかし、行動が理解不能だ。ゲオルギーネに渡されてから簡単には素性を調べさせたが他領のものであるのは間違いないが実際のところ誰だかわかっていない。

 

ローゼマインというのもゲオルギーネが勝手につけた名前だ。一番の最有力候補であるエーレンフェストの聖女というものは、話しはいくらでも出てくるし、神殿にいたのは確かだが素性についてはそこから深まらない。

 

まして仮想敵対領地だ。ゲオルギーネなら内部に協力者がたくさんいるので手に入るだろうからいくらでも手に入るが私の伝手では無理だ。

 

そもそもあの国はなぞが多すぎる。今度起きたら命令でもなんでもして絶対に全部聞きだす。

 

その前に相談だな。あいつになんと言われるか。

 

 

 

 

 

う...ん、ああ、生きてた。命の危険で取り消されたかはなぞだけど、大丈夫だよね。

 

あそこまでいって命の危険でないって、もしまた名捧げを受けるという話になったら毎回命をかけなきゃダメって事かな。

 

ああ、イヤだな。もっと体が頑丈だったら受けても少しはよかったかもしれないけど。いや、やっぱり無理だね。

 

もういやだ、あはは。

 

そういえば、ここは?自分の部屋か。

 

「ローゼマイン様!起きられましたか。すぐにアウブへ報告せねば。」

 

ううん、おなかが痛い。村の家族に会いたい。これがウラノの世界のホームシックってやつかなぁ。

 

「起きましたか、ローゼマイン!」

 

ああ、お母様。起きたばっかりでございます。

 

「よかったわ。ローゼマインのおかげで最近はとても体調がよいのですよ。」

 

「ローゼマイン起きたと聞いたが!」

 

お父様とお母様、忙しいはずの二人がこんなに急いでくるなんて。

 

「あなた、あなたのせいでローゼマインが苦しんだのですから。もちろん絶対必要な命令だというならともかく名捧げ程度で。そんなもの重要視しているのはアーレンスバッハぐらいでしてよ。」

 

「だが、必要なのだ。それよりローゼマインよ。今回のことでお主と価値観がまるで違うということはよくわかった。」

 

う、ん?もしかしたら理解しようとしてくれそうな感じかな。

 

その後、私を抱え隠し部屋の魔術具を取り出す。簡単な設定をしてあったようで、三人で中に入りました。

 

「そもそも、お主の出自を調べさせていたのだが、はっきりと確信を持てるほど調べられなかった。」

 

え、当然知っているものばかりだと思ったよ。ゲオルギーネ様あたりにでも聞けばわかるんじゃないの?

 

「お主の出自から話してもらえるか。」

 

「申し訳ございません。話を聞きたければ命令してもらえますか。お願いというのでしたら一から話したくございません。」

 

お父様、なんだか苦しそうな顔をしている。ただの道具が思いの他使いやすかったから愛着を持ってしまった感じかな。

 

「命令だ。ローゼマイン。お主の生まれたときから本当の名まで全部話せ。」

 

命令ならしょうがないよね。村の家族のことは話したくないけどあの村は正式名称がついてないから命令でも隠し通せるかもしれないし。

 

もしかしたら村の家族について聞いてもらいたかったのかもしれません。平民であった村の家族からギーベの養子になった経緯、神殿での生活について全部話しました。

 

平民であったときの家族の名前と村の詳しい場所は言わなくてよいと許可をもらえたので話さなくて済んだ。

 

「なるほどな、平民上がりか。誰もお主を見て平民上がりだということは信じないだろうな。」

 

「それよりもフェルディナンド様の教え子ですって。平民上がりであるよりもそっちの方が驚きでは。」

 

「そういえば、とても優秀なアウブの副官が、エーレンフェストにはいると、ゲオルギーネがこぼしておったな。その者のことか。」

 

「噂ではすごいことになってるけど、実際のところはどうなんです。ローゼマイン話してもらえるかしら。」

 

え、フェルディナンド様のこと。フェルディナンド様ねぇ。

 

本人はただの薬や魔術具を研究していれば幸せだという人間なのですがということを述べた後、

 

「一言で言うなら、英知の神が間違ってこの世に産み落とした子ですね。」

 

興味深いということでお父様も話を聞いてきます。

 

「ほう、それは知識がすごいということか。」

 

「それだけではございません。すべての情報状況を的確に読み必ず最善手を打つ、こういうことを言ってはいけませんが仮にフェルディナンド様がツェントになったのなら今あるユンゲルシュミットの問題はほとんど、どんな形であれ解決するでしょう。」

 

「それほどのものなのですか。」

 

「あの、お母様、私のような唯の子供が思ったことなので参考程度にしてくださいませ。それに私程度では弟子としてすら認められませんでしたから。」

 

「まあ、そうなんですの。アウブからもとても優秀だと聞いていますよ。ねえ、あなた。」

 

「そう思っていただけているのなら幸いです。数々の配慮感謝いたします。ただ、このような契約がある身で申し訳ないのですが私以外の命にかかわる命令はご配慮いただけると幸いです。」

 

うん、まずいね。完全に奴隷根性ってやつなのかな。契約魔術が侵食してきているのか、ウラノの世界で言う適応というのか。だって実際契約怖すぎる。

 

その後も、もしかしてお慕いしているのかしらとか聞かれたので、教師としては尊敬もお慕いもしていますが人間としては付き合いたくありません。と答えておきました。

 

だってフェルディナンド様って悪魔で魔王だもん。

 

 

 

 

聞いた話では平民の身食いが神殿でうまく魔力をコントロールし豊富な魔力があったから目をつけられ育てられたということか。

 

しかし、正直なところローゼマインという鬼札を手に入れたと思っていたが、この子ですら無能と評するフェルディナンドというものはいったいどうなっておるのだ。

 

ゲオルギーネは、エーレンフェストとの諍いを望んでいる可能性が高いので、一度本気で楔を打ち込みエーレンフェストとの関係改善を模索するか。

 

 

 

 




フェルディナンド様も原作と違って、ロゼマの前世を見ていないので完全に表面だけの繋がりです。
つまりほとんど心は繋がっていません。
フェルディナンド様にとっては壊れても問題ないから平気で無理させてました。
一応エーレンフェスト領主一族とライゼガングは仲良くはないですしね。心は家族が守ってましたし。

この作品ではあくまでマインであり、ウラノではほとんどないのでやっても無駄かもしれませんが。

あと、師弟関係については後でわかると思います。

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