マインオブザデッド   作:dorodoro

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12話閑話 旧ベルケシュトック大領地の騎士より

いきなり領主の養女ローゼマイン様を監視、護衛しろという命令が飛んできたのがついさっきのことだった。

 

故郷たるベルケシュトック大領地は今はなく旧領地として見捨てられた土地となった。

 

さて、初めて見た新しい領主の養女は作り物みたいに美しく、夜空色の髪が輝き黄金の目をしていた。

 

これで年齢は7、8歳位にしか見えず笑えばかわいいのに、完全に無表情でそれがいっそう作り物めいた雰囲気を引き立てていた。

 

さて、そんな彼女だが神殿長に任ぜられたらしく、神殿へ向かうとのことだ。

 

神殿など魔力のない者の掃き溜め所ではないか。そんなところへ配属されるローゼマイン様に少し同情した。

 

任務なので入り口まで送り城へ帰り、帰りの連絡を待つと急遽旅支度をせよという指令が出た。

 

なんでも故郷である、旧ベルケシュトック大領地に領主の養女で神殿長たるローゼマイン様が向かうのに付き添えとのことだ。

 

同じく旧ベルケシュトック大領地とする仲間とともに向かうことになった。

 

そこからが驚きの連続だった。

 

まず、貴族院に行っていないローゼマイン様が騎獣に乗っているのはおかしいがまだいい。

 

だがその騎獣の中に乗り込んでおり、しかも見た目はグリュンという魔獣に似た何かであり一瞬攻撃しそうになった。

 

まあ、そんなことは後から考えればたいしたことではなかった。

 

ローゼマイン様の指示で近くの村から全部まわるというので流石に全部まわるのは無理と答えると、

 

旧ベルケシュトックの神殿に向かうまでに効率よく村やギーベの館をまわりたいと言い出した。

 

領主の養女とはいえ領主に連なる者の命は絶対だ。

 

ローゼマイン様に責任はないが、たとえ故郷を見捨てたものの一族とはいえ希望には応えなければならない。

 

そんな風に考えていた私を今なら殴ってやりたい。

 

一番近い旧ベルケシュトックの村にたどり着くと

 

ローゼマイン様はろくに事前通知もせず村長宅へ直行し一方的にフリュートレーネの儀式を行うと宣言し、あわてて人を集めるという村長に時間の無駄だから必要ないとにべもなくいい、現在育てている農作地の中心だけ確認しさっさとそこへ向かっていった。

 

まさしく聖女、あるいは天使が舞い降りた。

 

一時期エーレンフェストに聖女が現れたといわれており、起こした奇跡の数々がこちらまで伝わってきたが当然そんなことは噂に過ぎないと思っていた。

 

ローゼマイン様は関係ないだろうが、その噂以上のすさまじい奇跡を起こしだした。

 

ローゼマイン様の美しい声が朗々と響き、今まで見たことない巨大な7色の魔力の渦がローゼマイン様を中心に展開され、外側に向かっていくのにしたがって美しい緑色の魔力となり広がっていく。

 

広がっていく緑色の魔力を地面が吸収しやせこけていた土地はたちまち回復し肥えていき細々と枯れかけていた作物がいっせいに花を咲かせ実を付け出した。

 

われわれは余りの神々しい現象に誰も動けないでいると、相変わらず少しも変わらない無表情で、

 

「さて呆けていないで、さっさと次へ行きますよ。ベルケシュトック全土をまわるのにいつまでも時間をかけられません。」

 

先ほどの現象もあり、もはや神の声に聞こえます。いや、女神様ですね。その言葉でみんなはっと気を戻し次の村へ向かいます。

 

そこからは、我先にとローゼマイン様のために動きます。全員で交代でオルドナンツを使まくり旧ベルケシュトックの仲間の応援を呼び続けた。

 

次々と癒してはろくにお礼の挨拶も受けずに飛び立ち、まったく休まず土地を癒し続けます。

 

ただ、見たこともないどす黒い色をした薬を何度も飲んでいるのには気になりましたが。

 

小神殿に着くともうあたりは完全に暗くなっています。騎獣から降りると体がつらいのか動きづらそうにしているので抱えて小神殿に運びます。

 

この時点で神殿などという感覚はとうに消えうせており、ローゼマイン様のためになら命も惜しくないという心境でした。

 

この後、応援が来るまではるか高みに上る覚悟でローゼマイン様のために働きました。

 

その後応援が大勢来てくれたので我々は休みに入りました。というかもう魔力など回復薬を含めて残っていません。

 

ローゼマイン様の体力と魔力はどうなっているのでしょうか。いや、恐ろしく無理しているのは間違いないでしょう。

 

なんといっても小神殿まで帰って来て降りると気絶したように倒れてしまわれるのだから。

 

これは最後まで旧ベルケシュトック全村をまわり終わられるまで八日間も続いた。

 

この話は後に伝説となって旧ベルケシュトックに舞い降りた天使、もしくは聖女という物語として後々まで語り継がれました。

 

 

 


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