マインオブザデッド   作:dorodoro

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10話 アウブアーレンスバッハの子

次に起きたときに、アウブの部屋に連れてかれた。

 

うん、まったく体が動かない。

 

幸い魔力は順調に流れるようになってきたようで、魔力強化をすれば少しは動ける。

 

まあ、大本がダメだからどうしようもないけどね?

 

さて、どうにも私はアウブアーレンスバッハと第一夫人の養女という形になるらしい。

 

さてさて、どれもどうでもいい問題ですが、どうにも私は約3年間も寝ていたそうです。

 

うん、今年11歳だって、八歳から一気に約2年以上ね。10歳ということにして無理やり今年に貴族院へ送り込むとのこと。

 

一応、領主候補生である以上貴族院行きは必須ねぇ。まあ、命令には従わざるを得ない。

 

うん、そういう点ではアウブの命は絶対だったから何も変わらないね。あはは。

 

三年間魔力道具扱いして、従属させて、うーん、流石は大領地。きっとこの世界ではこれが普通なんだろうね。うん。

 

とりあえず、リハビリかな。従属の指輪は領主一族のものだけあってとても薄く品質はものすごく高そうだ。手袋で隠せそうだからまだよかった。

 

 

 

監視も兼ねてなのか何なのか知らないけど、政務室につれてかれ横でアウブの仕事ぶりを見せられてる。

 

座っているだけでつらいんだけど、まあ、リハビリだね。

 

あ、そこたぶん計算間違っている。ふーん、貿易額ってそんなものなのか。

 

とにかく農業関係がダメージだらけ。壊滅的といっていいほどで目も当てられない。

 

というか、たぶんこれアーレンバッハ付近の貴族は流石に不正、横流しているよね。

 

農業系は壊滅しているにせよ、貿易関係は流石に厳重に注意しているのかおかしな数字はない。

 

まあ、知識が足りないし、今までの推移が分からないからどうか分からないけどね。

 

私の様子を不審に思ったのか何なのか知らないけど、ふと手を止めてアウブが話しかけてきた。

 

「どうした、疲れたか。部屋に戻って休んでもいいぞ。」

 

一応、お父様でいいんだよね、この人。お父様と呼ぶには少し歳を召した方に見えるけど。

 

「お父様、書類について意見を言わせてもらっていいですか。」

 

まさかこの年で政務の書類について意見を言われるとは思わなかったようで、少し表情が変わった。

 

「ローゼマインよ、以前のところでは領地経営にかかわっていたのか?」

 

「私がやっていたのは神殿経営ですわ、お父様。ただ、将来アウブを補佐する立場になるかもしれないということで最低限は叩き込まれていますわ。」

 

驚きなのか呆れなのか僅かに表情を変える。アウブの割には表情豊かだよね。まあ、私以外は側近関係しかいないから関係ないんだろうけど。

 

「なら、好きに意見を述べなさい。」

 

「ありがとう存じます。まず農業関係は不正や計算間違いでなればアーレンスバッハ首都近郊でもかなりの住民から餓死者が出る計算になっていますわ。」

 

つらつらと、数字と人口から実態を述べる。というか横流しとかあるならもっと出ててもおかしくないよね。

 

あと、死者と食料収穫やストックの報告等つじつまが合っていない項目が多すぎます。

 

特に旧ベルケシュトック大領地とかやばすぎる。これはもう生きていける状態ではないよ。

 

「お父様、これらは本当に信頼できる数字ですか。視察とかは信頼できるものにさせておりますか。」

 

少しの間、沈黙の時間が流れます。軽く頭をとんとんたたくのがお父様の考えているときの癖のようです。

 

「ローゼマインよ、お主ならどうする。」

 

いや、聞かれても困るよ。アーレンスバッハの実態なんて実際のところ分からないのだから。

 

「お父様、とりあえずアーレンスバッハの本神殿の神殿長を呼び出し実態を聞くべきです。後できれば他の神官にも。」

 

神殿がうまく機能していない可能性は高い。聞いても隠したりごまかしたり無駄だと思うけど何もしないよりいいでしょう。

 

「ふむ、ならばお主をアウブアーレンスバッハの命令により神殿長に命ずる。神殿の実態把握と必要なら改革をせよ。」

 

ちょっと、正気ですか。実年齢そろそろ11歳だけど所詮8歳の子にいきなりそんな無茶な命令するの。

 

しかも従属契約しているいわば奴隷だよ。王家直属とは言え。加えて実質的に最近まで敵対的領地の者に。

 

まあ、従属契約のせいでやらざるを得ないけどさ。そう考えると合理的?いやいやないから。

 

「ご命令とあらば。」

 

まあ、最善は尽くしますよ。最善は。

 

「ふむ、ではそろそろ食事だな。体が大丈夫なら少し付き合え。」

 

 

 

食事は、お父様とお母様と行った。ゲオルギーネ様は席を外している模様だ。

 

当然食欲なんてない。しかも食べなれない香辛料系のものばっかりだ。

 

ただ、麦粥のようなものが出ていて少し食べられた。おこめと少し似ているからほっこりとした。

 

「お父様、お母様、お話をしてもいいですか。」

 

「なんだい、好きになさい。」

 

発言の許可を求めるのが正しいのか分からないけどまあ、食べてる途中に話していいというなら言わせてもらおう。

 

「お父様と、お母様は毒の耐性を上げる訓練でもしているのですか?」

 

 

 

 

突然私の娘になったローゼマインがとんでもないことを言ってきた。

 

確かに最近どんどん体の調子が悪くなってきているけど毒?何を言っているんだいこの子は。

 

「どういうことだい、言ってごらん。」

 

夫の目も遠くなった表情とやわらかい言い方もちょっと気になったがローゼマインの発言のほうがとても気になる。

 

「こちらとこちらの料理の食べ合わせが非常に悪いです。特に魔力の高い人には悪影響を及ぼします。後はこちらの料理は調理方法で、確かにこの料理は下手に茹でたり下処理をしない方が味はいいのですが毒が抜けませんし、体に堆積します。」

 

何なんだいこの子は、こんな子供が毒の知識を語る。夫の話が本当なら領地経営まで心得があるとのことだけど。

 

「必要なら道具と材料をそろえていただければ薬も用意しますけど。もちろん私を信頼していただけるならでございますが。」

 

 

 

 

 

信用できるのかい。アウブは詳しく話してくれないけど相当わけありなのだろう。

 

いきなり養子縁組なんていわれて素性を調べている時間はなかったけど、従属の指輪をつけて養子縁組なんて聞いたことがない。

 

「わかった。何が必要だ。」

 

夫はこの子を信頼するようだ。

 

そのあと、工房とする隠し部屋が欲しいとか、私には使い道の分からない材料を求めてきた。

 

隠し部屋は却下したが他は王城にある薬品を管轄する文官に引き継ぐことになった。

 

「あと、健康管理の方は何も言っておられないのですか。」

 

特に、夫とともに体調不良については気の疲れだとしかいわれていない。

 

ローゼマインは表情は変わらないよう勤めているが、ため息をこっそりついているような表情になった。

 

「よろしければ、一度私が健康診断をさせていただきたいと存じます。」

 

そこで改めて一呼吸置いてから、少し心配そうに言ってきた。

 

「特にお母様、魔力の流れがおかしくなってきているのが見ただけで分かります。緊急ではないですが他にもいろいろ対応をとるべきところがあるかと存じます。」

 

いったいこの子はどれだけの能力と知識を持っているのだろうか。

 

 

 

 

はあ、やってらんないよ。なんなのこの領地。

 

いやねフェルディナンド様の噂でしょっちゅうヴェローニカ様とゲオルギーネ様が組んで毒殺やらなにやら受けてたとは聞いてはいたけどアウブや第一婦人にまでやるかねほんと。

 

従属の指輪のことを考えるとお父様に消えてもらったほうが自由になる可能性は高いけど、取り合えず話は聞いてくれそうだし次の人がもっといいかは分からないしね。

 

さてさて、交渉は成立。隠し部屋は断念したけど更にあれから王宮の極貴重品を除けば薬剤関係は自由にしてよいとのお墨付きを得たし、明日からだね。

 

ただ、残念ながら案の定無理がたたり3日も寝る羽目になってしまった。うう、筋肉痛も痛いよ。

 

気を取り直して側に控えた侍従に案内させ、ウラノの世界の水戸黄門の押印がごとく王命の元に文官を黙らせ材料を用意させ自分で材料を一個一個確認します。

 

やはり、わざとかしらないけど古くなったら毒の作用を発生させる葉やら、逆にしっかり乾燥させないとダメな材料やら、使いたい状態と逆の作用を引き起こす材料が混ざっています。

 

短縮の魔法陣は使えないけど身体強化の魔術を使い作っていきます。

 

当然周りには人払いをさせています。

 

うふふん、回復薬も大量に作るよ。体調用の薬もついでに、あと他にも毒を中和する薬や、あれやこれも。

 

うん、体力回復していないのに無理するものじゃないね。

 

でも薬のおかげで2日で何とか回復。魔術具も作ったし。準備万端だね。

 

 

 

 

「さて、ではお父様からいろいろ見させていただきますね。不快な感じとかするかと存じますがご容赦くださいね。」

 

体調検査用の魔術具まで自作しましたよ。作るのって面白いよね。

 

さてさて、あらあら、やっぱりいろいろ薬を作っておいてよかった。出し切るのに1ヶ月はかかるなぁ、これ。

 

続いてお母様の部屋に行き検査をします。私のほうが病弱で健康管理しろ?まあ、言い返せないけど生来のものですから。

 

そういうことは、ぼろぼろの娘にいろいろ命令するお父様にぜひ言って欲しいものです。

 

まあ、どこかのタイミングでユレーヴェにつからないとなぁ。最低限隠し部屋と材料を確保しなきゃ。

 

「お母様、まず食後にこちらの薬を3日、こちらは7日飲んでいただければだいぶ改善するかと存じます。その後はこちらの薬を20日程のんでいただければ毒を排出しきれるかと存じます。」

 

「まあ、分かりましたわ。アウブを信頼して飲んでみますわ。」

 

うん、アウブがおかしいと思います。命令したって抜け道がないわけじゃないのに変なところで信頼されている気がする。

 

「必ず、お母様の隠し部屋で管理するなり、信頼できるところで管理してくださいませ。」

 

お母様の方が重症かと思ったけど実際はお父様のほうがいろいろ危険だったね。

 

きっとアウブは毒に多少耐性が高いのでしょう。体力等も考慮するとどちらも同じくらいまずかったということかな。

 

きっとゲオルギーネさまの関係なんだろうけど内輪に仕掛けるのはとても優秀な方なんだね。もうやだ。村に帰りたい。

 

 

 

さて、取り合えずやることはやったから、神殿側の準備も整ったらしいので行きますかね。

 

第一婦人であるお母様とアウブが健康になれば少しはゲオルギーネ様を抑えられるはず。

 

そうすれば結果的にエーレンフェストの利益にもつながります。

 

今後のことを考えただけで暗くなっていきます。みんな心配しているか死んだことになっているのか。

 

ああ、会いたいよ。村の家族に会いたい。

 

 

 

 

 




ちなみに第一夫人原作でロゼマ9歳時に死亡ですが、ロゼマ拉致の関係でいろいろ歴史が変わってます。
レティーツィア様もロゼマ8歳時に養子縁組していますが、変更します。

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