GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER 作:OLDTELLER
「それでは最終試験を開始する!!」
無慈悲なネテロの宣言が響き渡り、少し額の生え際が後退した小太りの男が前に出る。
「第一試合、ゴン対ヨコシマ」
そして第一試合の選手を呼び出す声が、再び試合場に響き渡った。
……のだがヨコシマは、すっかり、やさぐれていた。
「ちくしょーっ!! ハンターになったら女にモテモテだっつーから頑張ったのに! 俺だけこんなッ! こんなのやってられっか──ッ!!」
二人を呼ぶ立会人マスタの声にも応えず、うがーっとかおがーんとか妙な声をあげながら、マットにガンガンッと頭突きをくらわしていた。
どうやら、完全にやけになっているようだ。
「もう試合の開始は宣言されましたから……」
どうしようという風に自分を見てくるゴンに、マスタはそう判断を委ねた。
「…………ふう」
一つため息をつくと、ゴンは意を決したようにゆっくりとヨコシマに近づいていく。
「ヨコシマさん。勝負しよう!」
そしていきなり襲い掛かったりすることなく、真っ直ぐにヨコシマを見据えて言う。
「親父に会いにいくんだ。 親父はハンターをしてる。 今はすごく遠い
だから、こんなハンデ戦でヨコシマには悪いけどと断りながらもゴンは、決意に満ちた表情で続けた。
「でも、もしオレがここであきらめたら一生会えない気がする。 だから
もしこれが、ぐだぐだと愚痴を垂れ流しながら完全にやさぐれて、ヒガミの
「クカ──ッ! お前は、俺に負けてもまだチャンスがあるだろーがっ!! 俺なんかお前に勝っても、無理そうな相手山盛りだぞっ!!」
その言葉に逆上したヨコシマが、やっとゴンのほうを向く。
「それでも、ヨコシマさんは、あきらめちゃダメだ! 夢があるんなら叶えようとしなきゃ」
正々堂々と戦って夢を勝ち取るべきだと諭すゴンだったが、美神に鍛えられた
「お前、なんもわかっとらんやないかッ!! そう思うんやったら『まいった』って言って負け上がらんかっ! オレとお前は対等じゃねーんだぞ!! 」
在日利権団体のような恥じも外聞もない弱者偽装で差別を訴え、権利を主張する。
まあヨコシマの場合は、本当に差別されているのだが、それでもゴンに勝ちを譲れという権利があるのではなく、それはやはり在日利権団体と同じく筋違いの主張だった。
(その通りだぜ。ゴン)
キルアは、ヨコシマの見苦しさに
(いくらお前が本気で言ってても、想いに差がありすぎる。 その差をこの場でうめられっこない!! しょせん力で押し通すしかない。ぶん殴っちまえ、そんなバカ!!)
「クラピカ、止めるなよ。この試合が終わったら、あのバカぶん殴る」
「止める? 私がか? 大丈夫だ。それはない」
レオリオとクラピカもキルアと同じ気分だったらしく、あきれながらも、ヨコシマのあまりの見苦しさに、ぜったい活を入れてやると心に決めていた。
自分達の試合でと思わないあたり、完全にヨコシマが負けると決めてかかっているが、これも
くっくっと、ヨコシマと関係の薄いスパーなどは、キャラに似合わず笑いを漏らし、失礼と謝っている。
「それは困る!!」
しかし、周囲の反応も気にせず、ゴンだけはヨコシマを見捨てず、正々堂々の勝負を希望していた。
「降参するのはいやだ!!」
「じゃあ、もう、諦めるななんていうんじゃね──ッ!!
「そんなのダメだよ、ずるい!! ちゃんと2人でどうやって勝負するか決めようよ!!」
「お前、降参するのはいやなんだろ! だったらいーやないかッ!!」
「だからって、こんな
「じゃどーすんだ!?」
「それをいっしょに考えよーよ!!」
「…………つまり、俺は諦める気だけど、お前が気持ちよく勝てるように、真剣に戦える勝負方法を考えろってことか?」
「うん!!」
やっと解ってくれたかというように、ゴンがそう言った瞬間。
「アホか────いッ!!」
ヨコシマは理不尽な怒りの全てをぶつけるツッコミをゴンにぶちかました。
そして、ギャグのようにひゅーんと宙を飛び、ど────んんん、と鈍い音をたてて、マットに落ちたゴンは、完全に気絶していた。
もちろん、降参したわけではないので本来なら試合続行なのだが、ネテロの一声でゴンVSヨコシマの一戦は後にまわされる事になる。
もちろん、不意打ちの上に、それまで醜態をさらしていたヨコシマの味方をするものはなく、数時間後待ってゴンが目を覚まさなければ、ヨコシマとスパーの試合を先に行うことに決まった。
どこまでもヨコシマを不遇な立場に追い込むネテロだが、それに異を誰も唱えないのは、果たして
何れにしろ、ヨコシマの合格は絶望的なままであった。