GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER   作:OLDTELLER

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2. ヨコシマ、いきなり念能力者と出会う。

 

 

「ちょっ──! 待っ……」

 むなしく伸ばされた手はとどかず、瞬時に目の前の風景が変わったことで、ヨコシマは自分が転移されたことを知った。

 

 ところどころが崩れたコンクリートの床と錆びた鉄柵の向こうには真っ赤な赤い夕陽。

 廃ビルらしい建物の屋上のど真ん中。

 どこかで見た夕陽と今の風景が重なる。

 

「──っ! 仕事を手伝えっていわれたんで来てみれば……サギじゃーっ!」

 

 転移は自分でもしたことがあるので驚く事はなかったが、さっきまで目の前にいた神の言葉には、驚きうろたえるしかない。

 いくら死んだら元の世界に戻れるからとはいえ異世界で一生を過ごせなど言われればそれも当然だろう。

 

「うああああああーっ!!」

 よこしまはこんらんしている。

 

「…………」

 そんなヨコシマを警戒したように身構え、一人の女が見ていた。

 長い髪をぐるぐると塔のように盛った髪型のお水の姐さんふうの美女だ。

 

 いきなり空中から男が一人湧いて出たのだ。

 普通ならそんな現象を見れば驚くはずだが、ヨコシマを身構えて見ている女のほうには、混乱したような気配はない。

 そんな超常現象を起こす能力‘念’を知っていたからだ。

 

 ばんきゅっばんなカラダに、黒い下着のような胸元もあらわなキャミソールと長い脚を太ももまでまるだしの白いミニスカとオーラのみを纏い、彼女はヨコシマを観察していた。

 

 そんな姿の美女をみれば、混乱を欲情に代え、ちちしりふとももと叫びながらとびつきそうなヨコシマだが、幸いなのかあいにくなのか、彼女はヨコシマの後ろにいた。

 

「かえせーっ!! もどせーっ!!」

 

(オーラは纏っていない。 能力者にとばされたのかしら? ……それにしても下僕にしがいのなさそうな男ね)

 ヨコシマを見ていた女は涙を流して吼えるヨコシマの垂れ流しのオーラを見てそんなことを考えていたが、警戒するのもバカらしくなってきて声をかけることにした。

 それが、彼女を死の運命から救うことになるなどとは思いもせず。

 

「ちょっと、アンタ。 何、騒いでるのよ、うるさいわよ」

 その声にヨコシマがふり返り。

「……!! 一生ついていきます、おねーえさま──ッ!!」

 次の瞬間、彼女が反応できない速度でヨコシマは煩悩のおもむくままにセクハラをかましていた。

 

「ひわああッ!? なにすんの! 変態野郎ッ!!」

 いきなり強化系の能力者なみの速度で抱きつかれ、尻とふとももを撫ぜまわしながら、乳に頬ずりをかますという蛮行に、一瞬あぜんとしていた彼女だったが次の瞬間、怒りとともに拳を叩き込みヨコシマを地面にたたきつける。

 

「あああッ!! あまりのフェロモンについ! ……ってなんだ霊気が勝手に!?」

 コンクリートの床にうちつけた頭から血を流しながらも元気なヨコシマはいいわけになっていないいいわけを口にしかけ、自分の体から強烈な霊気がほとばしるのを感じていた。

 

「ちっ! やっちまったね。 いいかいよくお聞き」

 普段の彼女なら痴漢野郎など放っておいただろうが、なぜかオロオロとあわてているヨコシマを見ると放っておけない気になって、‘念’の制御法を教え始める。

 

(それにしても綺麗なオーラね。 澄んでいるというかこんなにオーラをこんなやつが持ってるなんてね)

 ‘念’について知る限りのことを簡単に説明しながらもそんな感慨が心に浮かんでくる。

 

「ええ!? いったいなにがどうなって……!?」

 だが、また混乱の状態異常におちいったヨコシマは彼女の説明を聞いていないようだ。

 

「わかったら、心を落ち着けてオーラを身に纏うイメージを思い浮かべな!」

 これはダメかもしれないという思いと一緒にこいつを死なせたくないという衝動が襲ってきて、そう叫んでいた。

 

「ま、纏う?」

 その真剣な声と表情を見てヨコシマはなんとかパニックから回復した。

 美神の調教と数々の修羅場で従わなければヤバい指示には反射的に従うクセができているのだ。

 

 普通ならここでマジメに‘念’の制御に取り組むところだが、反則技がデフォルトなのが美神事務所。

「よし、これでどうだッ!?」

 ヨコシマは文珠をポケットから取り出すと纏という文字を浮かべ、発動させた。

 

 その途端、吹き出るままになっていたオーラが纏まり‘纏’が完成した。

 

「具現化!? っていきなり‘発’!? ‘纏’をするためだけに!?」

 いきなりあがった声に、ホッとしたヨコシマは、常識を破られて混乱し始めた彼女のほうをふり返る。

「ああ、助かりました。 オレ、横島っていいます、横島忠夫」

 

「ヴ、ヴェーゼよ。 ……アンタいまなにやったの?」

 文珠での制御と霊気としての性質のせいか、通常より分厚い輝くような済んだ色のオーラに戸惑いながらヴェーゼは名乗り返すと、自分の常識を粉々にしてくれた男に問う。

 

「え、ヴェーゼさんが纏えって言ったんでやったんスよ。 いや~っ、おかげでたすかりました。 一時はどうなるものかと」

 そういって、さりげなく手をとって下心満載の目でみつめてくるヨコシマにヴェーゼは確信した。

 

(こいつ、バカだわ、それも見たことのないレベルの! 無意識で‘発’を作るって話は聞いたことあったけど、まさかこんなことで能力発動させるバカがいたなんて!)

 

 もし、この時ヴェーゼが霊力として出現したオーラの量を感じ取ることができたなら、もっとヨコシマは別の評価を受けただろう。

 桁外れたオーラ量に恐怖したかもしれない。

 

 だが、そうでなかったからこそ、ヴェーゼはヨコシマの本質を先入観なしに見ることができた。

 ヨコシマ・タダオ。

 霊能力を知らないために根本的に誤解されながらも、出会って直ぐに本質を見抜かれる底の浅い男であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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