GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER   作:OLDTELLER

47 / 74
23. 大脱走!? 反則御免のトリックタワー

 

 

 

 

「なにやっとんじゃ、おまえはーっ!!」

 トリックタワーの内部、吹き抜けになった大穴中にレオリオの大声が響き渡った。

 

 大穴の向こうに続く通路からはもくもくと白い煙が流れて、ヨコシマの手には暴徒鎮圧用のランチャーがセットされたライフル銃。

 

 全ては一瞬の出来事だった。

 穴の向こうの通路で、傷だらけのハゲが自分達が試練官として審査委員会に雇われたことを告げ、5人の内3人が勝利すれば先に進めるのだと説明している途中で、煙をふきながら催眠ガス弾が飛んだのだ。

 

「うるせーっ! 先手必勝、一網打尽!! 少年マンガじゃあるまいし、あんなムキムキなんかといちいち戦ってられるかっ!!」

 

 なにやらレーゾンデーテルを危うくしそうな発言をしながら、ヨコシマはレオリオに言い返した。

 

「これで、失格になったらどうすんだ!? おい、先にいけんのか、これ!?」

 そういって通路の向こうを覗き込むレオリオの目には、倒れ伏した5人の囚人がいる。

 

「くっ! 何か考えがあるんだろーな!!」

 唖然としていたクラピカが、そこでやっと我に返ってヨコシマをにらむ。

 

「あるわけねーじゃん。 あーあ、これで試験終了か。 ちぇっ、受かるかどうかって運しだいかよ」

 キルアが、すでに落ちた気になって、やれやれと首をふる。

 

「えっ? えっ!?」

 ゴンは、事態がのみこめないのか、キルアとクラピカ、そしてヨコシマの顔を見回していた。

 

「おまえ、ほんと俺をなめとるな」

 こめかみに青筋をうかべてキルアを見て言うと、ヨコシマは、クラピカとレオリオのほうをふり返る。

「安心しろ。 要は下までつきゃーいいんだから、失格になったりしないって。ヴェーゼさんだって、パラシュートで降りて合格もらったんだぞ」

 

 こうも自信満々なのは、ミューズの指示で動いているからなのだが、いかにも自分の手柄だという顔で、ヨコシマは、蜘蛛のマークがついたランチャーを肩にかつぐと、試験の本質について語った。

 

「試験官に攻撃したら失格だけど、あいつらは試練官──」

 

「そんなことを言っているんじゃないっ!!」

 その瞬間、クラピカの目が深紅に染まり、その身を包む雰囲気が一変する。

 

「うおっ!?」

 ビクリとヨコシマがその目を見てひるみ、おそるおそる言う。

「な、なんだ──!? 病気か!? ……目が赤いぞおまえ!!」

 

「……!」

 緋の眼を病気よばわりされて、初めて自分の状態に気づいたクラピカは、自分を落ち着けるために目を閉じて言う。

「すまん。 蜘蛛を見るとこうなってしまうんだ。 それを隠してくれ」

 

 訳がわからないという様子のヨコシマにレオリオが、クラピカの境遇を説明する。

 

 クラピカの眼は、緋の眼と呼ばれる少数民族クルタ族の特徴で、世界7大美色に数えられ、そのせいで人体収集マニアに狙われていること。

 クラピカ以外のクルタ族は、緋の眼を目当てに、蜘蛛の刺青をトレードマークにした強盗殺人犯集団、幻影旅団に滅ぼされたらしいこと。

 クラピカが、旅団を滅し奪われた同胞の眼球を取り戻すためにハンターを目指しているということ。

 

 その説明の間に落ち着いたのか、クラピカが再度眼を開いたときには、そこに狂おしい緋の色はなかった。

 

「へー、殺し屋一家の箱入り息子といい、おまえらけっこう苦労してんだな」

 ヨコシマは、蜘蛛の図形を見ただけで我を忘れそうになる自分を恥じて落ち込んでいるクルピカを、少し気まずげに見て、ぽつりとつぶやく。

 

「殺し屋ァ!? 」

「誰が、箱入り息子だよっ!」

 

 レオリオとキルアが、それにほぼ同時につっこむ。

 どうやら、ヨコシマの影響で、シリアスな雰囲気に耐えられなくなっているようだ。

 

 そのせいで、今度はゴンが、キルアの境遇を、レオリオとクラピカに説明する事になった。

 そして、それに止まらず、ゴンは、金がなかったせいで治療を受けられずに死んだ友を思って医者を志すレオリオのことや、ハンターである親父の背を追う自分の事を語り、ヨコシマを真っ直ぐに見る。

 

「だから、オレ達みんなハンターになりたいんだ。 ヨコシマさん、だから先に進む方法があるんだったら教えて」

 

「…………おおっ!」

 そう改めて言われて、自分達がハンター試験の最中だということを思い出したヨコシマは、ポンと手を叩いた。

 どこまでもユルいうえに、大した目的もないヨコシマである。

 

「そうだった。 だいじょぶ、まかしとけっ! 道具はいっぱいあるんだ」

 ヨコシマはそう言うと、リュックからランチャーにつけるワイヤーガンを持ち出してくる。

「これがありゃ渡れるだろ。 あとプラスチック爆弾もあるから、扉もふっとばせるぞ!」

 

「………………」

 戦争でもする気だったのかという無言のツッコミが、4人からとんだのは言うまでもない。

 

 電池がなければバズーカを使えというのは、かっての上司の方針だ。

 かくして、三次試験は、ヨコシマの美神式反則無双で、残り4人の見せ場を奪い、無血のまま過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。