GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER   作:OLDTELLER

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21. ヨコシマの最期!? 銃刀法違反は死の香り!!

 

 

 

「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。 ここが第三次試験のスタート地点となります」

 そう言ったのは豆のゆるキャラかおまえはと思わず突っ込みたくなる顔の──一次試験のときに番号札をくばっていたハンター協会職員だった。

 

 その職員の説明によれば、試験内容は72時間以内に生きてトリックタワーを降りてくることらしい。

「それではスタート!! 頑張ってくださいね」

 そうして、飛び去る飛行船からのアナウンスと共に三次試験は始まった。

 

 ヨコシマ達はというと、開始の合図早々、他の受験生と離れた塔の端で試験の準備を始めていた。

 

「これはアレが役に立ちそうね」

 ヴェーゼはそう言って、だんだんと人影の減ってきている辺りを見回して続ける。

「じゃあ、受験生がみんな消えたら出発しましょうか。 ヨコシマくん荷物降ろしていいわよ」

 

「わかりました。 じゃあ──」

 ヨコシマが答える途中で、ミューズの声が割って入る。

「ちょっと待って。 情報によるとトリックタワー周辺には凶暴な肉食の人面鳥が生息してるわ。 外壁ルートは危険じゃない?」

 

「大丈夫よ。 こんなときのためにレーザーポインタつきのライフルがあるんだから」

 リュックの中から折りたたみバイクのケースよりも一回り小さなジュラルミンケースを取り出しながら

ヴェーゼはニッコリと笑ってヨコシマを見る。

「大丈夫よね? ヨコシマくん」

 

(GS試験なら銃刀法違反で失格だよな……)

 そのせいで試験に落ちたボケ爺さんと、その最高傑作と呼ばれた人造人間の事を思い出しながら、はあ、と曖昧な返事をして、ヨコシマはヴェーゼが銃を組み立てていくのを見ていた。

 

「よし、じゃあ、おねがいね」

 出来上がったライフルを渡してくるヴェーゼに。

 

「へ!? おれっスか?」

 きょとんとした顔でライフルを受け取り、ヨコシマは聞き返した。

 

「あたりまえじゃない。 私がパラシュートで降りてる間の援護は頼んだわよ」

 そういうとヴェーゼはいそいそとリュックからパラシュートを一つ取り出して言う。

 

 美神事務所の頃から銃火器は見慣れているし、美神を狙う悪魔相手に乱射しても当たらなかったので訓練させられ、おキヌの仇と思った妖怪相手に、揺れまくる車上から一撃でヘッドショットを決めるほどの腕になっているヨコシマだ。

 いまさら銃を撃つのが怖いだとかそういった感覚は、ありはしない。

 

 問題はそんなことではなく──。

 

「……ヴェーゼさんはそれでいいとして、俺はどうすりゃいいんスか!?」 

「しかたないじゃない。 パラシュートはともかくライフルは一丁しかないんだし。 それにアタシじゃ撃っても当たらないから無理でしょ」

 

 涙ながらの抗議にあっさりと正論で答えたヴェーゼは、再び屋上を見回すが、もうそこに受験生の姿はない。

 

「そりゃあそうですけど──!」

 なおもゴネるヨコシマだったが、その抗議は次の瞬間、腕に押し付けられた柔らかな感覚に、ピタリと止まった。

 

「あなたは、正攻法で降りてきなさい。 大丈夫、ヒソカを廃人にしちゃうくらいだもの。 あなたなら簡単よ」

 腕を抱えてのあててんのよ攻撃からのホメ殺しコンボで、ヴェーゼはヨコシマを完封すると。

 

「ヴ、ヴェーゼさんッ!!」

 飛び掛ってくるヨコシマからヒラリと身をかわして立ち上がる。

「ダーメ、ご褒美は試験が終わってからよ。 じゃあ、頼んだわね」

 

「ぜ、絶対ですからね!!」

 いつもの空手形にあっさりと引っかかったヨコシマは、ライフルを渡され下心満々の顔で返事をすると銃を構える。

 

 ヨコシマにとって、ヒソカを廃人にしてしまったという情報は、目の前の乳相手では、ささいなことらしく、あっさりとスルーされていた。

 通りすがりの殺人鬼の人生など、遠くの戦争や震災と同じという、実に欲望に忠実で小市民的なヨコシマであった。

 

「じゃあ、いくわよ!」

「はい!」

 

 合図とともに‘練’を発動させたヴェーゼは、一拍をおいてスカイダイビングを決行した。

 身体強化によるダッシュ&ジャンプでタワーから放物線を描いて跳びだした後、数秒を置かずパラシュートが開いて、ゆっくりと下降していく。

 

 そのヴェーゼを狙って、妖怪かと思うような怪鳥は少し離れた森からやって来た。

 

「げっ! なんじゃありゃ!?」

 怪鳥をスコープ越しに見たヨコシマが、思わずそうもらすほど怪鳥は不気味な姿をしていた。

 

「このっ! くらえ──ッ!!」

 だが、そんな鳥もライフルの前にはただの的にすぎず、フルオートを使うまでもなく一撃で墜落していき、十数羽いた鳥達はヴェーゼのもとに辿り着くことなく全て撃ち落され、パラシュートは地面に降り立った。

 

「わははっ! これなら俺もパラシュートでいけるか!?」

 ヴェーゼがパラシュートを切り離したのを確認して、調子に乗るヨコシマだが、当然その能力化した悪運のせいで、そのまま上手くいくわけがない。

 

 無事にヴェーゼの姿がトリックタワーの中に消えようとした時、やつらは空を埋め尽くさんばかりの大群でやってきた。

 

「ひえええええ!!」

 どう考えてもそれは全て撃ち落せるような数ではなく、しかも確実にヨコシマ狙っているようだった。

 

「ヨコシマさん! はやく隠し扉を探してっ!」

 ミューズの声に我に返ったヨコシマは、あわててリュックを背負うと駆け出す。

 

 既に速い何羽かはタワーの上空に達し、そんなヨコシマを狙っていた。

 体の割りにアンバランスに大きい顔に並んだ鮫のような鋭い牙をむき、数羽の怪鳥がダイブしていく。

 

「来たわッ! 右からっ!!」

 それにあわせてミューズの警告がピアスから発せられ。

「んなろ──っ!!」

ゲッゲッと不気味な鳴き声をあげながら迫る無数の怪鳥に、フルオートで銃弾を叩き込むと、ヨコシマはまた必死で走り始める。

 

「うおおおおっ! 死ぬっ! 死んでしまう──ッ!!」

 そんなことをやっていて、隠し扉を探すなどということができるわけもなく、ヨコシマは銃弾を撃ちつくすまでそんなことを繰り返し、トリックタワーの屋上を走り回っていた。

 

 そんな必死な様子であるにも係らず、見る者がいればその姿は暗運祓い(シリアススィーパー)のせいで妙に滑稽に見えるのだろうが、今は屋上にはヨコシマ以外に人影はない。

 

 既にトリックタワーの上空は、無数の怪鳥で覆いつくされ、その全てが空になったライフルを抱えて走るヨコシマへと襲いかかった。

 

 リュックを捨てられたらまともに回避もできたのだろうが、そんな暇があるわけもなく、次の瞬間ヨコシマの姿は、なすすべもなく群がる怪鳥の中へと消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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