GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER 作:OLDTELLER
「それじゃ、二次試験スタート」
ヨコシマ達が到着するのとほぼ同時にその声が響き渡り、受験生達は散っていこうとしたところで、ヒソカを頭の上に掲げてやってきたゴンの姿を見ることになった。
「どんなマジック使ったんだ? それヒソカだろ!?」
そのゴンにキルアが歩み寄り、頭上でぴくりともしないヒソカを見て信じられないというように言う。
「絶対、もうもどってこれないと思ったのに」
ゴンがヒソカに勝てるなどとは夢にも思わなかったキルアは傷だらけのゴン達を見回してそうつぶやいた。
「おい、あれヒソカか!?」
「あのガキが!?」
「いや、あのチンピラじゃねーか?」
「金髪かも、しれないぞ」
キルアの声を発端にして、ざわざわと騒ぐ受験生達だが、なぜかヨコシマに注目するものはいない。
それもそのはずで、ヨコシマは注目を集める前にゴン達とは関係ないという顔でこそこそとヴェーゼのほうへとむかっていたからだ。
「二次試験は料理だそうよ。 材料の調達に行くわよ」
ヴェーゼは既に準備万端で、ヨコシマに麻酔銃を渡してそう言った。
「へー、料理っスか。 なんかイメージと違うなあ」
ヒソカのことには触れないんだなと思いながらも、受け取った麻酔銃をジーンズのポケットに押し込み、バイクの荷台に載せたリュックをかついでいると。
「まあ、無事でよかったわね。 これからはあんなのにカラまれたら、サッサと逃げちゃいなさい」
ヴェーゼの照れたような気づかいの声がかけられる。
「ヴェーゼさん。 すごく心配してたのよ。 あのときの顔は──」
顔をあげてヴェーゼのほうを嬉しそうに見るヨコシマにミューズがひやかすように言うのを。
「──ッ!」
ヨコシマの頭につきささるヴェーゼのケリが響かせたズドンという音がさえぎる。
「お、おい! 死んだんじゃねえか……!」
岩をも砕きそうなケリを受けたヨコシマを見て、近くにいた受験生がざわめく。
「なぜ俺をぶつんですか?」
しかし、とうのヨコシマといえば頭からダラダラ血を流しながらも、半眼で抗議の声をあげていた。
「生きてるゾ!!」
「すげー! あれが生かさず殺さずってやつか!」
「ツンデレ奥義か!?」
「やかましい!!」
ヨコシマに一喝して、騒ぐ連中をヴェーゼは視線と殺気をこめたオーラで追い払うとバイクにまたがり乗るように促す。
「ほら、さっさと乗りなさい! グレートスタンプをシメにいくわよ!」
「ぐれーとすたんぷ?」
そう聞き返すヨコシマの顔は、もう傷も血の跡もなく、表情もさっきのことなどなかったかのようにユルんでいる。
本人さえも巻き込んで全てのストレスを笑い飛ばす恐ろしい能力であった。
そんなふうにヨコシマが騒々しい出発をした頃。
ゴン達四人はといえば、ヒソカをどうしようかと試験官に尋ねていた。
「おねーさんじゃなくて、メンチよ。 そっちはブハラ」
ゴンにそう名乗ると、セクシー路線のロック歌手のような格好をした女試験官は横の三メートル以上ありそうなデブの巨漢を指差す。
「それは、どっかそこらに置いときなさい。 失格になったら係の人間がつれてくから」
「それより、材料をとりにいかなくていいのかい? 課題は料理で豚の丸焼きだけど、試験はオレ達が満腹になった時点で終了だよ」
親切にブハラがそう促すとメンチも続いて言う。
「その後で、あたしの試験もあるわよ。 ブハラはともかく、あたしをおいしいと言わせるのはむつかしいわよ」
「それは、おいしいと認められなければ失格ということか?」
そこまで聞いてクラピカがそう問い返すのにブハラがうなづき、ゴン一行も遅めのスタートを切ることになる。
「こうしちゃいられねぇ! よし、行くぞゴン……って、ヨコシマはどこいったんだ?」
「ヨコシマなら、もう連れの女性と……一緒に出発したぞ」
「なに!? あの野郎、ヌケガケしやがって!!」
なぜか連れの女性という言葉を聞いた時点でレオリオが騒ぎ出し、クラピカが眉をひそめる。
「──ヨコシマってだれ?」
レオリオとクラピカのやりとりを聞いていたキルアが横から尋ね。
「バイクの後ろに乗ってたひとだよ。 オレ達と一緒にヒソカと戦ったんだ」
どう説明しようか迷っている二人に代わってゴンが、それに答えた。
「へー、あいつも強そうじゃなかったけど、よっぽど運がよかったのか?」
キルアは首をかしげて言うと、そこで考えてもしかたないと思ったのか三人とは別のほうに走り出す。
「ま、いっか。 とりあえず試験だな。 じゃ、またあとでな」
どうやらキルアは好奇心旺盛なわりに飽きっぽい性格らしい。
どうやって、ブタを見つけようかと考えながら暗殺術で気配を消し、そのまま森に溶け込んでいく。
(まさか、44番が脱落するとは思いませんでしたが。 それ以外は全員合格というのも……あの爆発がなければ、こんなこともなかったのでしょうかね)
そんな彼らの様子を木の上で見ながら、サトツが優秀な受験生に歓心半分、自分の試験に意味がなかったような気がしてさびしさ半分、微妙な気分を味わっていた。
第二次試験参加者数62名。
意識を取り戻さないヒソカを含め、未だ不合格者はいない。