GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER 作:OLDTELLER
真っ白な空間にソレはおそろしい速さで落ちてきた。
そこが地面ならクレーターができる勢いで。
ズドンと。
天地を揺るがすような振動が爆発音となり辺り一面に響き渡る。
人の形をしたソレが人間なら爆散して肉と骨のカケラになっていただろう。
「あ~。 死ぬかと思った……!」
だが、ソレは人の形状のまま、どこかノンキな声で むくりと起き上がってくる。
「イテテ、まったく二度もこんなメにあうとは」
「あー、悪かったな。 ヨコシマよ」
荘厳と言っていい光の波動と声にふり向いて、ヨコシマと呼ばれたソレが見たのは、輝く後光で姿さえ定かでない人影だ。
古代ギリシャのトーガのような衣らしきものを身にまとっているようにも見えるが、ソレは人や霊を遥かに超えた次元の存在だと解る。
「…………」
かつてアシュタロスと呼ばれた高位魔族が滅びに際して放った攻撃を受け止めた神と魔の最高指導者達に匹敵する存在を前にビキリとヨコシマは固まった。
「突然のことに思えるだろうが、今生の間、おぬしにはワシらの治める世界へと来てもらうことになった」
そういって笑うような波動が真っ白な世界に広がる。
「なに使命などという無粋なものはない。 おぬしは好きに生きよ。 生が終わればおぬしは元の世界元の時代に戻れるから心配するな」
その声と同時に七色の光がヨコシマの赤バンダナやGジャンにGパン、スニーカーなどにふりそそぎ霊的な力を与える
「え? ええ! コレはいったい……!」
ようやく硬直が解け、うろたえだしたヨコシマに強大な存在はわずかに驚いたような気配をみせたが、つぎの瞬間には面白そうな笑いの波動と共に声が響く。
「約束どおり、全てが終わった後には報酬を渡そう。 その衣服には、お前のためにと女神たちが祝福を授けた。 では今生の終わりにまたあおう。 サラバじゃヨコシマ 」
その声と同時にヨコシマは白い空間から消え失せ、この神の治める世界へと転送された。
「ゼー先輩。 なかなか面白いでっしゃろ? お気に召しましたか?」
「あの者なら、あなたのいう世界のカンフル剤としての役割には充分でしょう」
ヨコシマが消えると同時に白い空間に現れたのはヨコシマがかつて目にした神魔の最高指導者だった。
「うむ。 ワシらの世界の人間は、放任したせいかやたらに暗いからのう。 おぬしらの判断に期待しておこう」
神族の最高指導者にうなずき返した神々は、内容の割には重々しい口調で言う。
「先輩んとこはギャグ担当がおらんからなあ。 あのヨコっちなら頑丈やし魔族の霊基構造も持ってるんで魂をこっちから出せるし、おあつらえむきや」
「あの者は霊力の半ばをを悪運の強さや身の守りに変えておりますからね」
やたらヨコシマの有用さをアピールするする神魔の最高指導者達であった。
「うむ。 おぬしらには借りができたの」
「いえ。 こちらの星域をここまで育ててくれたのはあなたがた古き神々です。 これくらい当然のこと」
「そうや。 先輩方がそっちの空間を育ててくれるんは宇宙のため。 こっちも手助けせなな」
「いや、ワシらはそっちの世界からは引退した身。 なにか礼はせねばな」
強大ではあれどやたらとカルい新しい神々と違い、古き神々の長はあくまで重く厚い神気を放っている。
そこらあたりが同じ宇宙にありながら二つの世界の差異となっているのかもしれない。
「それなら今度また何ホールかまわりまひょ。 ゼー先輩が来てくれればブっちゃんやアーちゃんも喜びますわ」
「そうですね。 その際に世界創造のコツなどを教えてもらえば、ありがたいですね」
「ありゃ、キーやんはちゃっかりしてるなあ」
などと腹芸を交えながらの会話がしばらく続き、ヨコシマの貸し借りの取引が終わった後。
「しかし、あやつ人の身でありながらワシの間近で口を利けおったな」
ふと古き神々の長が初めてそのヨコシマの評価について触れた。
どうやら、神々の駆け引きは終了したらしい。
「ああ見えて、宇宙の改変を阻止した者達の中心人物ですからね」
「ムードメイカーやしシリアスブレイカーや。 それに小者くささも能力やしな」
「ワシもアシュタロスの事件を聞いたときは、宇宙意志がたまたま味方した存在なのかと思っていたが案外彼奴自身が宇宙意志によって生まれた存在の一つなのかもしれん」
ならば、今回のこの成り行きもまた宇宙の意志なのかもしれないと、古き神々の長は語り、新しき神々の最高指導者達もそれに異は唱えない。
こうしてヨコシマは本人のあずかり知らぬところで、新たな世界の分岐へと関わることを決められてしまう。
ゴーストスィーパー横島忠夫の未知への挑戦と冒険は、いつものごとく本人の意思と関係なく、こうして始まった。