GS ヨコシマ IN HUNTER×HUNTER   作:OLDTELLER

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11. ヨコシマのハンター試験予備審査!?

 

 

 エレベーターから降りた先は長大な地下トンネルだった。

 既に何百もの人間が集まっていたらしく、二人の受験ナンバーの書かれたプレートには401と402という三桁の数字が並んでいた。

 

 プレートを受け取り、予め決めておいたように401をヴェーゼが402をヨコシマがポケットへとしまい込み、二人は受験者達から離れた場所へと向かう。

 

「ほ、本当にやるんスか?」

 ビクビクとあからさまに挙動不信な様子でささやくヨコシマだが、小者オーラと入ってきたときからのおどおどとした様子から、それほど注目はされていなかった。

 

「あたりまえでしょ。 ハンター試験が始まってからだと試験官がルールだけど、今は試験前。 アタシ達自身がルールよ」

 小声でそう返したのは、近頃、とみに美神かが進んだヴェーゼだった。

「それに、あんたの文珠なら死んだりしないようにできるんでしょ?」

 

「そりゃ、そうっスけど。 バレたら──」

「バレなきゃいいのよ。 バレなきゃ」

 すみっこのほうでこそこそと悪巧みをする二人に、ミューズが警告を発する。

「誰か近づいてくるわよ」

 

「やあ、君達、新顔だね」

 人懐っこそうな笑みを浮かべた男の胸には16番のプレートがある。

 

「この声はトンパね。 いい? 油断しちゃダメよ。 そいつは新人潰しって言われてるの」

 ピアスから二人にだけ聞こえるボリュームでミューズの声が言った。

 

「こんにちは。 トンパさん」

 トンパが何か言う前にヴェーゼが牽制するように言うと、トンパは笑いを引きつらせる。

「アタシ達、今、作戦会議中なの。 またにしてくれる?」

 そして追い撃つように冷たい口調で告げるヴェーゼに、トンパは隠し持った下剤入りジュースを出す暇もなく追い払われる。

 

「嫌なメロディーだわ。 人が絶望することに暗い喜びを感じる腐った心根が見えるよう」

 トンパをそう評するミューズに。

「うーん。 ああはなりたくないもんスね」

 ヨコシマはうんうんとうなづくと。

「そういうわけなんで、やめましょう! ヴェーゼさん」

 

 実際はこんなむさくるしいオッサン連中の足を引っ張ることなど何とも思っていないのだが、バレたら袋叩きにされるという恐怖で言っているヨコシマだった。

 

「なに言ってるの。 アタシは嬉しいからやってるんじゃなくて効果的だからやってるだけよ」

 ヴェーゼは、最近の自分が致命的に甘くなっているのではという強迫観念から、あくまでライバル減少作戦に乗り気だ。

 

 結局、押し切られてヨコシマは5個の‘爆’の文珠をビクビクしながらあちこちにばらまいてくることになった。

 

(ふう! やっと終わった!! あとは戻って爆破じゃ)

 全てを誰にも見られずばらまき、ヴェーゼのそばに戻ろうと、あわてていたのがまずかったのか、ヨコシマは、そこでいつもの大ポカをやらかしてしまった。

 

 そう、それはこの試験で最も危険な男とぶつかってしまったことだ。

 それでもあやまっていればよかったのかもしれないが、急いでいたヨコシマはそのまま通り過ぎようとして、次の瞬間ぞくりという感覚とともに後ろへとびずさる。

 

「へえ、気づくんだ♦ でも人にぶつかったらあやまらなくちゃ♣ 腕が消えちゃうとこだったよ♥」

 ヨコシマがその感覚の出所はと見れば、トランプマークのついた衣装を着た男が、狂気めいた笑みを浮かべて立ってていた。

 

 左の目の下に涙型の、右目の下には星型のペイントというピエロメイクに金髪のその男の周囲には、常人には見えない不気味なオーラが纏わりついていた。

 

「ひーっ! す、スンマセン! ごめんなさい!!」

 その念に脅える前に、完全にビビッていたヨコシマは、反射的にペコペコと謝りまくる。

 

 強くて怖そうな相手にはとりあえず下手に出るのがこの男の処世術だ。

 場合によってはそれが裏目に出ることもあるのだが、この場合はうまくいったらしくピエロ男はそれで興醒めしたように去っていった。

 

「チクショーッ! ビビらせやがって今に見とれよ!!」

 そして、こそこそと逃げ出した後、相手の姿が見えなくなると一転して威勢がよくなるのもヨコシマだ。

 

 中指を立ててなけなしのプライドを回復させるため、ピエロ男の悪口を並べているヨコシマだったが、後ろから伸びてきた手に肩をつかまれて、ビクリととびあがる。

 

「ひいぃっ──! スンマセン、スンマセン!!」

 ピエロ男が戻ってきたのかと脅えるヨコシマだが、そこには男の姿はなく怒ったような心配しているような複雑な表情のヴェーゼが立っていた。

「ほら、さっさとこっち来なさい」

 ヴェーゼは一喝すると、ずるずるとヨコシマを引きずるように入り口付近までつれていく。

「バカね! あれはヒソカっていう危険人物らしいわよ」

 そして、壁際まで来るとヨコシマのドジを責める。

 

 ヨコシマがカラまれているのをみたトンパが、新顔の子供に話しているのを聞いたヴェーゼだったが、そんなことを聞かなくても判るくらい不吉なオーラに身をすくませていた。

 

「すごく不気味な音がしてたわ! 戦闘狂の殺人鬼ね、そのヒソカっていう男」

 ミューズも異常者の声に同じ思いをしたらしい。

 

「しかも、かなり凄腕の念能力者よ! オーラも凶悪だったわ」

 なぜ、そんなやつ相手にあんな真似ができるのかというように、ヴェーゼがヨコシマを見る。

 

 アシュタロスや魔族達のオーラになれているせいで、オーラから直接的な畏怖を感じることはないヨコシマだが、二人がかりでそういわれてあらためて冷や汗が出てくるのを感じた。

 

「や、ヤバかったんスね!」

 キョロキョロとヒソカの姿が近くにないか伺うヨコシマにヴェーゼが、厳しい声で急かすように言う。。

「今のうちに爆破しなさい! 文珠が見つかって念によるものだってばれたらあいつに目をつけられるわよ」

 

 爆破した後ならそれが物理的なものか‘念’によるものかは判らなくなるので、爆破を急がせているのだ。

 

「でも、それなら爆破せずに回収したほうが──」

「もう、いいからさっさとしなさい!」

 小声で怒鳴られ、ヨコシマは反射的にハイというと文珠に念を送る。

 

 その瞬間、どこからか鳴り渡るジリリリリというベルの音と共に一歩遅れて爆音が地下道に響き渡り、閃光と爆風が受験生を包む。

 

 第287期ハンター試験は、こうして歴史上類を見ない波乱の幕開けを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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