スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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EP28

 

「敵襲! 総員攻撃態勢!」

「何? 何?」

「東西南北、全てから敵が迫ってきてます!」

「兵装を全て出せ! 迎撃態勢を整える!」

「これは一体………」

 

 プリティー・バルキリー号の艦内全てで、蜂の巣を突付いたかのような騒ぎと化していた。

 

「まずは情報の統一化が先です! 確か緊急用のターミナルユニットがありましたね?」

「積んでたわ! 大和に持っていく!」

「私も行こう! こちらと指揮権が統一されてない大和に助言が出来る人間が必要だ!」

「私も手伝います!」

 

 エルナーの指示の元、ミサキと美緒とアーンヴァルが高度情報通信用のターミナルユニットを倉庫から持ち出すと、即座に大和へと瞬間移動する。

 

「個々に対応しては行けません! 各艦でフォーメーションを組んでください! カルナダインを頂点として十二時方向に、中間にプリティー・バルキリーを六時、攻龍と大和で前後逆転の縦陣で三時と九時に配置! 索敵はカルナダインとこちらで行います!」

 

 エルナーの示す陣形がカルナダインと攻龍に伝えられ、攻龍から大和へと伝えられると即座に各艦が90度ずつ背中を向けあう陣形を取っていく。

 

『こちらカルナダイン! トリガーハート各艦、ネウロイと交戦中!』

「そのまま防衛線として維持してください!」

『こちらマドカ! 限定的だけどオペレッタとのリンクを接続! 今そちらを仲介して機械化惑星とのリンクを繋げてみます!』

『こちらジオール! バクテリアンとの交戦を開始するわ!』

『こちら攻龍! ソニックダイバー隊、ワームへと向けて発進しました! 敵影が射程範囲に入り次第、援護攻撃を開始します!』

「エリカ! エリカ7を率いてソニックダイバー隊に合流! 501小隊と光の戦士はトリガーハートの両脇に!」

『了解ですわ!』『こちらミーナ、もうそろそろ接敵! ストライクウィッチーズ、フォーメーション・サジタリウス!』『行くよユーリィ! 亜弥乎ちゃん!』

 

 各所から出撃、交戦の報告が飛び交い、それに対応する指示が乱れ飛ぶ。

 

「ミサキ! 大和へのターミナル設置急いでください!」

『分かってるわ!』『今私も手伝ってます! 設置後、オペレートは任せてください!』『対空、対潜警戒! 発射態勢維持のまま、指示を待て!』

 

 大和からの返信を聞きながら、エルナーは3Dコンソールに表示される敵影の異常としか言いようの無い数に焦りを感じていた。

 

「信じられん。ここまでの数とは………」

「機械化惑星の時より多いかもしれません。明らかに、人為的な布陣でしょう」

 

 宮藤博士も愕然としながら、減っては増えていく敵影に絶句していた。

 

『こちらミーナ! 敵は間違いなく本物のネウロイよ! コピーじゃないわ!』

『こちら雷神 一条! ワームはDクラス中心にCクラス複数、今Bクラスを確認! クアドラロックの許可を!』

『こちらエリカ! 雑魚はエリカ7でお相手するわ!』

『こちらクルエルティア! 今増援が到着! このまま防衛線を構築します!』

『こちらジオール! 水中からバクテリアン多数接近! なんとか押し止めてみます!』

 

 次々と入る通信に、戦闘音が無数に入り混じる。

 

「完全に嵌められました………まさか、こちらが転移するのを利用して、ここにおびき寄せられるとは」

「転移装置を外部操作か………詳しい仕組みまでは知らないが、可能なのかい?」

「正直、信じられません………それほど高度な次元操作が出来る存在は…」

『大和に入電! 後方に待機していた秋月、高雄双方の側を敵編隊が通過! 全く攻撃の意思感じられず! 敵の狙いは我々だけだ!』

『こちらでも確認! どの敵もこちら以外の水上艦は完全にスルーです!』

 

 エルナーの言葉を遮るように響いてきた美緒とカルナの報告に、宮藤博士の顔が険しくなる。

 

「ウィッチの、いや彼女達の搭乗している船以外は無視か。聞いた事の無い状況だ」

「ここに飛ばされた時から、可能性は考慮していましたが………やはり、敵はここで私達を、殲滅するつもりです!!」

『こちらカルナ! 敵、更に増加! 総数約600!!』

 

 エルナーの断言を肯定するように、カルナの悲鳴のような報告が響いてくる。

 

「まずい………このままでは………」

『こちらミサキ! ターミナル設置完了! 私も出るわ!』

「アーンヴァル! 大和の全武装とその弾数と射程範囲を入力!」

『了解です!』

『杉田艦長には話を付けた! 攻撃の指示はそちらに一任する! それと後方に艦隊が控えているそうだ! 増援の打電は打ったそうだから、秋月、高雄と合流した後にこちらに向かっている!』

 

 エルナーは次々と送られてくる大和のデータを元に、手早く迎撃態勢を構築していく。

 

「皆さん聞いてください! これより、攻龍と大和は防衛戦に徹します! 皆さんは現在位置で防衛線を構築、前後共に敵を深追いせず、第一に互いを守る事、第二に敵の数を減らす事を念頭に置いてください!」

『分かったわエルナー! 皆で一緒に戦ってればいいのね!』

『…………』

 

 エルナーの言葉を、ユナが思いっきりはしょった事に、全員が僅かに無言になるが、押し寄せる敵に即座にユナの言葉が間違っていない事を悟る。

 

「防衛線を少々なら突破されても、迎撃できます! 無理だけは絶対にしないでください!」

『了解!』

 

 全員からの返信だったが、それがかなり難しい事は、誰もが気付かざるを得なかった。

 

 

 

「行って、ディアフェンド!」

 

 迫ってきていたヴァーミスの中型ユニットに向けてエグゼリカはアンカーを飛ばし、それをキャプチャー、それをスイングして周辺のヴァーミス、ネウロイ双方の小型ユニットを弾き飛ばしてリリース、爆発を起こして僅かに敵陣に穴を開けるが、それは新たな敵で即座に塞がれる。

 

「いっけぇー!」

「行かせない!」

 

 エグゼリカの両脇で、ユナと芳佳が弾幕を張り、敵の接近を防ごうとする。

 

「そこ!」

「当たると痛いですよ~」

「しびれちゃえ!」

 

 そばではリーネが中型以上のユニットを狙撃で接近速度を遅らせ、ユーリィと亜弥乎が乱射と電撃で足止めに徹する。

 

「中型、大型はトリガーハートに任せて! 私達は小型の撃破と他の足止めを!」

「言われなくたってそうするわよ!」

「魔力を節約! 大技は控えて!」

「シュツルム!」「控えろと言われたろうが!」

 

 攻撃力に秀でたトリガーハートを中心に、その両脇をウィッチと光の戦士がガードする形で陣形が組まれ、押し寄せるネウロイとヴァーミスの大群を次々撃破していくが、敵は更に湧いてくる。

 

「どこからこんなに湧いてクルんだ!?」

「分からない………私の感知範囲外からどんどん出てくる」

「こんな海の上でバーゲンでもやってるって言うの!?」

「セール品はウチらアルよ!」

「どうでもいいから撃ちまくりなさい!」

「マイスター、11時上方に中型!」

 

 エイラとサーニャがそれぞれの固有魔法を持ってしても掴みきれない敵の全容に、舞と麗美が思わずぼやくが、フェインティアとムルメルティアが弾幕を張って敵の接近を阻もうとするが、それでもなお敵は増えていく一方だった。

 

「カルナ! どこかに侵食コアがいるはず! 反応は!?」

『それらしい反応は発見できません! 今の所中型までしか………』

「それでも、この数はちょっとね………」

「マスター、また増えた!」

 

 クルエルティアがカルナと共同してセンサーをフル発動、ミーナも固有魔法で周辺状況を把握するが、中枢となる存在は発見できず、ストラーフがシュラム・RvGNDランチャーとフルストゥ・クレインを乱射して必死にガードにあたる。

 

「それでは、一斉に行きますわよ! トネール!」

「スタンオール!」

「プラズマリッガー!」

 

 ペリーヌを中心にかえで、葉子の電撃使いで急遽編成されたチームが、あたりを覆い尽くすような電撃の嵐を繰り出していくが、まとめて墜落していく敵を乗り越えて次々と新手が押し寄せてくる。

 

「マリ! アレフチーナ! 敵をなるべく撹乱して! 姫と沙雪華は皆のサポートに! ルミナーエフは私と突出してきた奴を!」

 

 ポリリーナが矢継ぎ早に指示を出しつつ、手にしたバッキンボーでネウロイ、ヴァーミスを双方撃破していく。

 

「相手の動きが完全に計算されているわね。間違いなく指揮ユニットが存在するわ」

「そういうのは最前線でやんないでくれ!」

「来たよシャーリー!」

 

 ネウロイ、ヴァーミス双方の動きをプロトコル解析しているエミリーに、シャーリーが怒鳴りながらルッキーニと共に弾幕を張ってガードする。

 

「……お姉様、敵機直上に」

「さっきから次から次と! ルッキーニ、アレ行くぞ!」

「うじゅ!」

「そぉれ!」

 

 飛鳥の指摘通り、上空に現れた敵群に向かって、シャーリーが固有魔法で加速させたルッキーニを投擲、ルッキーニが固有魔法の多重バリアで次々と敵群を撃破していくが、その背後を突くように敵が潜り込んでくる。

 

「やば! ルッキーニストップ!」

「……少しでも突出すれば隙を突かれる模様です」

 

 慌ててシャーリーがルッキーニの後を追いながら銃を乱射し、飛鳥も近寄ってきた敵を次々と霊刀 千鳥雲切で斬り裂いていく。

 

「いけない! このままじゃ孤立する!」

「それは~~~いけませんね~~~」

 

 エミリーが後を追うべきか迷うが、相対速度が違い過ぎるために追いつけない事を即座に悟り、そこで状況を理解しているのか怪しい詩織が、相変わらずの間延びした口調で首を傾げたかと思うと、いきなり強烈なビーム砲撃で孤立しかけていた三人の周囲を薙ぎ払って一掃する。

 

「ウジュアッ!」「わり、助かった!」

「……お姉様、後退を」

 

 礼を述べつつもシャーリーは二人を連れて陣形を組み直す。

 

「ハルトマン! 何機撃墜した!」

「え~、20以上は数えてないよトルゥーデ」

「細かい事数える女は男に持てないわよ」

「本来なら反論する所だが、そうは言ってられないようだ………」

 

 背中合わせになってマガジン交換しているバルクホルンとハルトマンだったが、そばでゴールドアイアンを振るっていた舞の呆れた口調に、バルクホルンが珍しく肯定する。

 その視線の先には、どう見ても残弾数よりも多い敵影が有った。

 

「あ~、あたしらひょっとしてスカ掴まされてんじゃない?」

「そうでもないみたいよ………」

 

 舞も思わずたじろぐ中、ミーナが他の戦闘の様子を感知していく。

 それは、他の場所の激戦を示していた。

 

 

 

「目標、前方Bクラス! クアドラロックのスタンバイを…」

 

 瑛花が眼前のヤドカリ型ワームに接近しようとするが、そこを小型のワーム達が立ちはだかっていく。

 

「邪魔よ!」

 

 雷神の20mmガトリング砲と大型ビーム砲が一斉に火を噴くが、目標になかなか近付けない。

 

「瑛花さん! 敵が多過ぎる! これじゃあクアドラロックが出来ないよ!」

「こいつで、永遠に眠りやがれ!」

「しかもこの子何か普段とギャップが……」

 

 MVソードを振るいながら何とか目標に近づこうとする音羽だったが、敵はまるでそれを阻むように迫り、音羽が捌き切れない分を普段は眠たそうなヴァローナがまるで別人のような好戦さで背のカンベーリアームドウィングを迫るワームへと射出していく。

 

「この、どけ~!」

「冬后大佐! 敵が多すぎてクアドラフォーメーションに必要なフィールドが確保出来ません!」

『交戦しつつ後退しろ! 攻龍から援護を…』

「必要ありませんわ。エリカ7!」

「大リーグシューター!」「ハリケーンシュート!」「バックファイヤー!」「スポットライイトビーム!」「トリプルアクセル!」『サイクロンカット!』

 

 エリーゼがMVランスを振るい、可憐がリアルタイムで解析したデータを攻龍に送り続ける。

 混戦の模様を呈してきた戦況に、冬后から一時後退の指示が出かけるが、そこにエリカ率いるエリカ7が一斉攻撃で周囲を一掃する。

 

「援護はこの香坂 エリカとエリカ7が引き受けますわ! さあ早くあのデカブツを倒してしまいなさい!」

「ありがと!」

「クアドラフォーメーション!」

「「クアドラ・ロック」座標固定位置、送りますっ!!」

 

 周辺に敵がいなくなった隙に、ソニックダイバー四機がフォーメーションを組み、零神が一気に突撃する。

 

「行くよゼロ!」

 

 そのまま一気にMVソードを突き刺そうとした音羽だったが、突き刺さるはずの切っ先がヤドカリ型ワームの表面で弾かれる。

 

「へ!?」

「音羽さん! 目標のセル結合率が異常に上がってます! 明らかにクアドラロックを警戒されてます!」

「ええ!? 今までそんな事一度もなかったじゃない!」

「クアドラフォーメーション一時中止! 散開してセルの結合率の低い所を狙って!」

 

 可憐の予想外の言葉に、エリーゼも瑛花も驚きながら一時ヤドカリ型ワームから離れる。

 

『クソ! ワームがここまで警戒して戦うなんてオレも聞いた事がねえ! やはり攻龍からの援護で…』

「目標に変化あり! 足を殻に引っ込め始めました!」

 

 冬后が声を荒らげる中、突然瑛花が叫ぶ。

 

「え~と、逃げ支度?」「寝る準備とか」

「そんな訳ないでしょ! 全機警戒!」

 

 音羽とヴァローナがのんきな事を呟くが、それが次の攻撃の準備段階だと判断した瑛花が即座に警戒に入る。

 

「エリカ様!」「何か来るわよ! 注意しなさい!」

 

 同じ判断をしたエリカがエリカ7に叫んだ時、ヤドカリ型ワームが回転を始め、それに応じるように殻から無数の棘がミサイルとなって発射される。

 

「わ~!!」「危ないオーニャー!」

 

 飛来した刺ミサイルを音羽が叫びながらMVソードで次々と撃破し、ヴァローナも手にしたFL015 バトルスタッフを叩きつけて撃破する。

 

「なんて数!」

「単純追尾の数で迫るタイプです! 回避パターンを今作ります!」

「急いで!」

 

 瑛花が20mmガトリング砲を連射しながら回避し、可憐が回避しながらその攻撃パターンを解析、エリーゼがMVランスを手に援護する。

 

「エリカ様! 後ろに!」

「こんな物!」

 

 集合したエリカ7からマミとルイが前に出て飛来する刺ミサイルを次々と打ち返し、蹴り返していく。

 

「舐められた物ですわね。この程度でこの香坂 エリカとエリカ7が倒せるとお思いかしら!」

「回避パターン出来ました! そちらにも送ります!」

 

 自らもエレガントソードで飛来する刺ミサイルを撃破していくエリカだったが、そこで可憐が解析した回避パターンが送られてくる。

 

「長くは続かないはず! 攻撃が止む隙を待って!」

「待つ? この私が? そんな悠長な事はたしなみませんわ! アコ、マコ!」

「行くよマコちゃん!」「行くよアコちゃん!」『サイクロンカット!』

 

 エリカの号令で前へと出たアコとマコが猛烈なスピンで竜巻を作り出し、それを一気に打ち出す。

 

「ミドリ! ミキ! 付いてきなさい!」

『はい、エリカ様!』

 

 竜巻の後を追うようにエリカが飛び出し、ミドリとミキもそれに続く。

 

「前座はお任せを!」

 

 ミドリが一気に前へと出ると、可憐から受け取った回避パターンを元に、氷上を舞うような動きで次々と棘ミサイルを回避し、ついでにアイスファンネルで撃破していく。

 

「すごい………」「そだね」

「エリーゼだってアレくらい!」

「後にしなさい!」

「あの、さすがにあんなアレンジはちょっと…」

 

 ミドリの見事な動きにソニックダイバー隊が絶句する中、危険と感じたのかヤドカリ型ワームの攻撃がエリカとエリカ7に集中し始める。

 

「援護を! また敵が集中する前に再度クアドラフォーメーションに!」

『了解!』 

 

 好機と見た瑛花が一気に攻勢へと転じる。

 それに反応したのか、ヤドカリ型ワームも回転を止めると、節足を伸ばしてソニックダイバー、特に零神を集中的に狙ってくる。

 

「えい、この! 来るな!」

「全機、零神を援護!」

「瑛花! この足も結構硬い!」

 

 近接戦闘に優れた零神とバッハシュテルツェが節足を迎撃しようとするが、MVソードとMVランスを持ってしてもなかなか節足を切断出来ず、苦戦していた。

 

「セリカ! 隙を作りなさい! ミキ! 撹乱を!」

「はい!」「分かりましたわ!」

 

 エリカの指示の元、セリカが前へと一気に進み出る。

 

「目閉じてな! スポットライトビーム!」

 

 ヤドカリ型ワームに向けて眩しすぎる程のパッシングが向けられ、僅かに相手の動きが鈍る。

 

「エレガントダンス!」

 

 その隙にエリカがエレガントソードの連撃を関節部に集中させ、節足を切断していく。

 

「今の内、って、え?」

「あ、あの………」

「そ、そういえばそんな事言ってたような」

 

 パッシングの閃光が消えた後、その後ろから飛び出した、二機の零神にソニックダイバー隊が一瞬驚くが、片方がミキの変身した姿だと気づくと即座にクアドラフォーメーションの準備に入る。

 

「こっちで惹きつけるから、今の内に!」

「なんか、不気味………」「後だオーニャー!」

 

 姿形から口調までそっくりなミキのコピー零神に音羽が僅かに顔を引きつらせるが、ヴァローナの言葉にMVソードを構えて突撃する。

 

「顔、できれば眼球を狙ってください! そこが一番結合率が低いです!」

「分かった可憐ちゃん!」

 

 残った節足が迫る中、それを斬るのではなく、刀身で受け流しながら音羽がヤドカリ型ワームの顔へと向かっていく。

 ヤドカリ型ワームは攻撃を二機の零神へと集中させるが、ミキのコピー零神はソニックダイバーのスペックまで完全コピーできなかったらしく、徐々に動きが鈍っていく。

 

「くっ……!」

「危ない、行くよゼロ!」

 

 ミキが追い込まれていくのを見た音羽が、半ば強引に突撃、だがMVソードを突き刺す直前で、ヤドカリ型ワームは顔を殻の中に引っ込めてしまう。

 

「しまっ…ええい顔出せ!」

「危ないオーニャー!」                                                                              

 

 不用意に近付いた零神に向かって触手が殻の中から飛び出してくるが、ヴァローナがとっさにジャミングをかけて逸らす。

 

「まったく庶民はこれだから。見ていなさい」

 

 エリカがそう言いながらヤドカリ型ワームに接近、節足と触手がかすめる中をかいくぐり、殻へと手を触れる。

 

「喰らいなさい! ミラージュビーム!」

 

 ゼロ距離からエリカは腐食性ビームを叩きつける。

 直撃した部分が異音を立ててもろくなっていく中、お返しのつもりか至近距離から棘ミサイルがエリカへと向けて発射された。

 

「エリカさん!」

『エリカ様!』

「今よ! そこを狙いなさい!」

 

 かわしきれずに直撃を受けたエリカだったが、とっさにエレガントソードで受け止め、弾き飛ばされながら叫ぶ。

 

「そこかぁ!」

 

 音羽は一気に上昇、ミラージュビームが直撃した場所にMVソードを突き刺す。

 

「「クアドラ・ロック」修正座標固定位置、送りますっ!!」

 

 風神から送られてきた座標を元に四機のソニックダイバーはフォーメーションを再構成、ヤドカリ型ワームを完全に囲む。

 

「座標、固定OKっ!!」

「4!」「3!」「2!」「1!」

『クアドラロック!』

 

 人工重力場が発生し、ホメロス効果が発動。

 

「セル転移強制固定、確認っ!!」

「アタック!!」

「私達も!」

 

 そこでエリカ7も加わった一斉攻撃の前に、ヤドカリ型ワームは重力場内で爆発、完全崩壊する。

 

「やった!」

「お見事ですわ」

 

 喜ぶ音羽に、なんとか復帰したエリカも賛辞を送る。

 

「さて、次はどれにしましょう?」

「そうだね」

「選ぶのに苦労するね、オーニャー」

 

 そう呟く三人の前、更に新手のワームが押し寄せてきていた。

 

 

 

「ビックバイパー、モードセレクト《ARPEGGIO》モード!」

「ロードブリティッシュ、《P.TORPEDO》セット!」

「セレニティバイパー、《L―OPTION》セット。さらに戦力アップ!」

「あ! 忘れてた。ビッグコアエグゼミナ、《S・SPREAD》セット」

 

 自らが駆るライディングバイパーに対地攻撃をメインとした兵装をセッティングしていった天使達は、低空から主に水中から迫ってくるバクテリアンに攻撃を開始した。

 

「水面からなるべく出さないようにして! 小型だったら、攻龍で迎撃できるはず! 深追いはしないで!」

「でもリーダー! 確か戦艦大和は対空迎撃力が低かったはず!」

 

 ミサイルをばら撒きながら叫ぶジオールに、エリューが歴史関係でかじった知識を思い出して叫ぶ。

 

「攻龍、大和! 迎撃態勢は準備よろしくて!?」

『攻龍、こちらは大丈夫です!』

『こちら大和! 準備は完了した! 射程範囲内に入り次第、対ネウロイ用三式弾を発射する! 射程と散布界を転送するから、注意してくれ!』

 

 タクミと美緒からの報告に、亜乃亜が首をかしげる。

 

「三式弾?」

「艦砲用焼夷散弾、当たってみる?」

「遠慮する!」

 

 亜乃亜が水中から飛び出した熱帯魚のようなバクテリアンにショットを叩き込みながら、妙な事を知っているティタに叫ぶ。

 

「マドカさん、オペレッタとのリンク状況は?」

『出力が安定してない! これが安定すれば、機械惑星とも繋がるのに!』

 

 攻龍に残って次元回線の再接続を試みているマドカからの報告に、ジオールは僅かに焦りを覚える。

 

(確か、水中移動能力を持つのはワームとバクテリアンだけ。けれど数で責められたら対処しきれるかしら………)

「トゥイー先輩! なんか更にいっぱい来たぁ~! え~い、ドラマチック…バースト!!」

 

 悩むジオールのそばで、更に現れた大群を相手に、焦った亜乃亜がD―バーストでサーチレーザーを叩き込む。

 

「亜乃亜! 大技は控えた方が…」

「無理、次来ていたかも」

 

 エリューが思わず亜乃亜をたしなめようとするが、ティタがそれを遮り、前を指差す。

 そこには、水中、上空共に新たな敵影が出現していた。

 

「……みんな、回復エキスちゃんと持ってきてる?」

「ユナちゃんがみんなにって配ってた奴なら、ここに」

「プラトニック・エナジーが回復するのも確認してます」

「お腹には溜まらない」

「まだ予備が攻龍にもプリティー・バルキリーにもあったはずね。水中攻撃力を持ってる機体は私達だけだから、多少の無茶をしてでも、ここで防衛戦を張りましょう」

「しかしリーダー…」

「更に来ていた、海の中」

 

 絶対攻勢を主張するジオールに、エリューが何か意見を述べようとした所で、ティタの言葉に皆が一斉に振り返る。

 

「亜乃亜さんとエリューさんは右翼、左翼は私とティタさんで受け持つわ!」

「了解しました!」

「亜乃亜、上空警戒お願い!」

 

 亜乃亜とエリューが並んで右へと回り、亜乃亜の駆るビックバイパーはレーザーで周囲をなぎ払い、エリューの駆るロードブリティッシュは貫通力の強い対地ミサイルを水中へと向かって連射する。

 

「エリュー、上空から更に来た!」

「行けない! 大和に向かってる!」

 

 新たに現れたバクテリアンが、大和に一直線に突き進んで行くのを見た亜乃亜とエリューが対処しようとするが、水中から現れた敵群がそれを阻む。

 

「どいて!」

「行くわよ、ドラマチック…」

『大和主砲発射します! お二人共退避を!』

 

 間に合わないと悟った二人が即座にD―バーストを放とうとした時、アーンヴァルからの通信と退避範囲が送られてくる。

 

「亜乃亜! 避けて!」

「言われなくても!」

『大和第一砲塔、一番二番、撃てー!!』

 

 慌てて二機が最大速度で退避した時、すさまじい轟音が響き渡る。

 周辺に凄まじい衝撃を撒き散らしながら、当時としては最強の46cm砲から放たれた対ネウロイ用三式弾が、大和へと向かっていくバクテリアンの一群に突き進み、直前で時限信管が発動、内部に封入された焼夷弾子と徹甲弾子を放射状に撒き散らす。

 

「うひゃああ………」「なかなか派手ね。対ネウロイ用ってだけあって、バクテリアンにも効いてはいるわ」

 

 亜乃亜が素っ頓狂な声を漏らす中、エリューはセンサー類を総動員させて効果を確認していく。

 

「半分以上は落ちてるわ。残った奴を片付けましょう!」

「分かった! けどまた撃たれない?」

「この時代の戦艦は連射できないはずよ」

『その通りだ! 砲を左右に向けてる以上、次弾まで6分ほど掛かる! なんとか持ち堪えてくれ!』

 

 美緒からの通信が届く中、反対側に向けられた大和の第二砲塔が再度轟く。

 

「よお~し、いくわよ!」「ええ!」

 

 更に押し寄せてくる敵へと向かって、二人はRVの機首を向けると、トリガーを押し込んだ。

 

 

 

「敵、10時方向射程範囲に侵入!」

「主砲斉射!」

 

 防衛戦を潜り抜けてきた敵影へと向かって、攻龍の76mm全自動砲が火を噴く。

 

「敵撃墜! いえ、8時方向また来ました!」

『こちらで受け持つ! 第二砲塔、二番三番撃て!』

 

 七恵の報告に、大和からの通信が入るや攻龍の後方から凄まじい轟音が轟く。

 

「耳がイかれそうだな、ありゃ………」

「実際甲板にいると鼓膜が破裂したらしいからな。破壊力は明らかにあちらが上だが、数はこちらでどうにかするしかない」

 

 ブリッジにまで響き渡る大和の砲声に、冬后が思わずぼやいた所で嶋副長が普段から険しい顔を更に険しくさせる。

 

「戦況は」

「今ソニックダイバー隊が三体目のBクラスワームをクアドラロックで殲滅しました!」

「大和から通信! 秋月、高雄が増援艦隊と合流、今急行しているそうです!」

「この時代の船が役に立つといいのですがね」

 

 門脇艦長の問に七恵とタクミが即座に返答するが、そこでブリッジで戦況を見ていた緋月が危険な言葉を漏らした。

 

「おい、妙な事言うなよ」

「可能性を述べたまでです」

「この時代は我々の知っている20世紀ではない。ここでネウロイと戦っているのは、ウィッチだけではないはずだ」

 

 冬后が緋月を睨みつけるが、門脇艦長がそれを中断させる。

 そこで冬后の席のコンソールがアラームを鳴らし始めた。

 

「ナノスキンの限界時間が近い! 一度撤退だ!」

『けれど冬后大佐!』

『タイムリミットがあるのは聞いてますわ! ここはこの香坂 エリカとエリカ7に任せてドレスチェンジを…くっ!』

「後部ランチャー、誘導弾発射! 彼女達を援護しつつ、ソニックダイバー隊を一時撤退!」

「ソニックダイバー隊、一時撤退を!」

 

 攻龍から無数の誘導弾が弾幕を形成する中、ソニックダイバーが大急ぎで帰還する。

 

「全員にナノスキンを再塗布! その間に全機全兵装を再装填! 大急ぎだ!」

『分かってる! 全員急げ!』

 

 冬后が半ば怒鳴るようにマイクに叫び、格納庫からも大戸が怒鳴り返してくる。

 ブリッジの先では、ソニックダイバーの抜けた穴を攻龍の全兵装とエリカ7が必死になって塞いでいた。

 

『こちらプリティー・バルキリー! 負傷者が出始めました! 白香と芳佳が治療を受け持ちますから、そちらでも負傷者が出たらこちらに!』

『こちらカルナダイン! 敵が全然減りません! このままだと防衛戦が突破されかねません!』

『こちらブレータ、マドカの次元回線復旧はあと一歩で難航中』

『こちら大和! 対ネウロイ用三式弾はそれほど多く数を積んでいない! このまま斉射を続ければ持たない!』

 

 各艦から苦戦を示す報告が次々と届く中、門脇艦長は状況打開の戦略を必死になって思考する。

 

「………敵群の増加が止まらないようならば、大和を先頭に戦域を脱出、攻龍は殿を務める」

「艦長!?」

「それが妥当かもしれませんね」

 

 門脇艦長の驚くべき提案に副長が思わず声を上げるが、緋月はそれをむしろ肯定する。

 

「正直、どの船が一番持つかって聞かれたら、どいつだろうな………」

「これだけの数の敵に集中砲火を浴びれば、たとえどの船でもひとたまりもあるまい。ならば、一艦でも生き残る手を取るのが順当という物だ」

「しかし艦長………」

 

 冬后が顔をこわばらせながら呟くが、門脇艦長は淡々と可能性を分析していく。

 嶋副長が何かを言おうとするが、そこで一際大きな警報が鳴り響く。

 

「各敵群、更に大幅増加! このままだと防衛線が、みんなが持ちません!!」

 

 七恵のそれは、報告ではなく、正真正銘の悲鳴だった………

 

 

 

「うぎゃあ!」

「舞ちゃん!」

「だ、大丈夫よこれくらい!」

 

 ネウロイの攻撃がかすめ、バランスを崩した舞を見たユナが悲鳴を上げそうになるが、なんとか態勢を立て直して叫ぶ。

 

「ミーナ中佐! サーニャが弾切れ、私もあと1マガジンしかナイぞ!」

「一度退いて再装填を! 他に残弾が少ない人は!」

「私はまだ大丈夫だ!」「回復エキス切れちゃった、取ってきて」

「私も残弾が……」

「こっちも魔力が残り少ない!」

 

 エイラとサーニャに撤退を指示した所で、各ウィッチ達が残弾や魔力が残り僅かな事を次々報告してくる。

 

「きゃあぁ!」

「マリ、掴まって!」

 

 攻撃を避けそこね、ライトニングユニットを破損したマリをそばにいたアレフチーナが慌てて救うが、撹乱役の二人の手が止まった所で更に敵が押し寄せてくる。

 

「ユニット破損した人はプリティー・バルキリーへ! まだ予備があったはず!」

「ここは私が防ぎます」

 

 ポリリーナがパッキンボーを振るいながら叫び、二人の抜けた穴を沙雪華がなんとか塞いでビームを乱射する。

 

「怪我した人はこっちに!」

「無理はしないでください!」

 

 後方で芳佳がシールドを張り、白香と二人で負傷者の治癒に専念しているが、戦況は明らかに押され気味になりつつあった。

 

「ディアフェンド、アールスティア、あそこの中型、サイティング!」

「エグゼリカ! あまり前に出てはダメよ!」

「けど姉さん! このままじゃ!」

「ガルトゥース! ガルクアード! サイティング! 同時に狙うわよ!」

「了解、マイスター!」

 

 破られつつある防衛戦を維持すべく、エグゼリカが前へと出るのをクルエルティアが止めるが、そこへフェインティアも一緒になって中型ヴァーミスにアンカーを打ち込み、ムルメルティアも一緒になって一斉斉射を叩き込む。

 

 トリガーハート二機と武装神姫も加えた一斉攻撃に中型ヴァーミスは耐え切れずに爆散するが、その爆煙が晴れる間もなく、新たな敵影が押し寄せる。

 

『皆さん、一度後方に下がって防衛戦を再構築して下さい! このままでは突破されます!』

『まだ余裕がある間に補給をするんだ! 簡易整備の準備は整えた!』

「みんな聞いた!? 下がってフォーメーションを立て直すわ!」

「撃てるだけ撃って! その間に!」

 

 エルナーと宮藤博士からの通信に、ミーナが撤退を指示、ミサキが中心となって弾幕を張りつつ、後退しようとするが、そこに大型のヴァーミスが迫ってきた。

 

「なあにあの大っきいの!?」

「侵食コア!? 多分分散型の一つ!」

 

 ここに来ての大型の出現に皆が驚くが、全員が即座に応戦態勢に入る。

 

「カルノバーン!」

 

 真っ先に飛び出したクルエルティアがアンカーを打ち込むが、突き刺さる事は突き刺さったが、特殊装甲なのか侵食までには至らない。

 

「おい! エビ倒した時のあれやるぞ!」

「分かりました! ユーリィさん!」

 

 シャーリーがルッキーニとユーリィのWアタックをするべく準備に入ろうとするが、それを阻止するように一斉に周囲からの攻撃が集中していく。

 

「リベリアンとルッキーニ少尉を援護!」

「みんな! ユーリィとエグゼリカちゃんを!」

 

 バルクホルンとユナの呼びかけに、皆がなんとか援護に入るが、突撃の隙がなかなか作れない。

 

「少しでいい、空間が作れれば………」「うじゅ~~」

「スイングできるスペースさえ作れれば…‥…」「ユーリィお腹すいたですぅ………」

 

 弾幕を張りつつ、突撃の隙を伺う両者だったが、敵の攻撃は更に激しくなってくる。

 

「仕方ありませんわ。僅かですけど、隙を作ってみます」

「ペリーヌさん!」「あなたももう…」

 

 ペリーヌが普段の優雅さをかなぐり捨てるように回復エキスを一気に飲み干し、しばし迷ってから空ボトルを投げ捨てる。

 

「かえでさんと葉子さんはそっちから! 私はこちらから!」

「手伝うよ!」

 

 二手に別れ、亜弥乎も加わった四人が一斉に構える。

 

「最大出力で行きますわよ」「分かった!」

「準備いい?」「任せて!」

『せえの!』

 

 四人がかりの電撃が一斉に放たれ、周辺の敵を一斉に駆逐していく。

 

「今ですわ!」

「行くぞルッキーニ!」「うん!」

「ディアフェンド、フルスイング!」「回るですぅ~!」

 

 四人がかりの電撃で空いたスペースを活用し、ルッキーニとユーリィが急加速でスイング、左右から大型ヴァーミスへと突撃する。

 

「それえ!」「みんな、行くですぅ!」

 

 ルッキーニの多重シールドとユーリィの無数の分身体の一斉攻撃が直撃、すさまじい轟音が鳴り響き、大型ヴァーミスの装甲が崩壊を始める。

 

「よおし、アールスティア、トドメを…」

「……ん!? ダメだみんな、逃げロ!!」

 

 一気にケリをつけるべく、無数の銃口が狙いを定めようとした瞬間、突然エイラが声の限りに叫んだ。

 

「え、何?」

「ユナ! みんなも下がって!」

 

 いきなりの事にユナが思わず振り返るが、そこを何か悟ったポリリーナがユナを掴んでテレポートする。

 

「全員シールド全開!」

 

 エイラの声に異常を悟ったミーナも残った魔力で全開にシールドを張り、庇えるだけの味方をかばおうとする。

 直後、全体にヒビが生じていた大型ヴァーミスの中から光が漏れたかと思うと、すさまじいまでの爆発が周囲を飲み込んだ。

 

「きゃ…」「うわ…」「な…」

 

 悲鳴も怒号も飲み込み、今までで最大の爆音が、戦場に鳴り響いた………

 

 

 

「うわあっ!?」

「何!? 何が起きたの!?」

「後方、大規模爆発!」

「全機、体勢維持!」

 

 ソニックダイバーが再出撃した直後に、いきなり響き渡った大爆音と続けて吹き付けてきた爆風に、ソニックダイバー、RV各機共に吹き飛ばされそうになるのを何とか堪える。

 

「ユナ! 生きてるなら返事を!」「向こうにいたみんなは!?」

「待ってオーニャー………全員バイタルサインあり! 皆生きてる!」

「けど、この爆発じゃ……」

 

 エリカと音羽が叫ぶ中、ヴァローナの言葉に皆が胸を撫で下ろすが、可憐の続けての言葉の意味を誰もが口には出せなかった。

 

「助けに行かないと!」

「そうだ! 私も…」

 

 音羽と亜乃亜が同時に救援に向かおうとするが、その前を塞ぐように小型ワームが湧いてくる。

 

「どいて!」「この! この!」

「ダメだオーニャー! フォーメーションを崩すと、集中攻撃食らうよ!」

「音羽戻りなさい! 貴女がいないと、クアドラロックは使えないのよ!」

「亜乃亜! 貴女までここを離れたら、防ぎきれなくなる!」

「けど!」「だって!」

 

 瑛花とエリュー、二人がかりで止められ、音羽と亜乃亜は反論しようとするが、そこに新たな敵が押し寄せる。

 

「はああっ!」

 

 そこをエリカがエレガントソードを一閃させ、敵を斬り捨てる。

 

「持ち場に戻りなさい。向こうにはウィッチの方々もトリガーハートの方々もいるわ。すぐに戦列崩壊にはならないはずよ」

「けど…」

 

 こちらに背を向けながら断言するエリカに何かを言おうとするが、エレガントソードを手にしたエリカの手が震えている事に気付き、口を紡ぐ。

 

「よおし、手早く全滅させてあっちに行こう!」

「そうだね! よおし!」

 

 気を取り直し、音羽と亜乃亜は敵へと向かっていった。

 

 

 

「何事だ!?」

「6時方向で大爆発! 敵大型が自爆した模様!」

「自爆、だと………」

 

 大和のブリッジ内にも響き渡った巨大な爆発音に、状況を知らせる声も霞みそうになるが、その内容はブリッジ内全てに轟いた。

 

「皆は無事か!?」

「今確認します………全員のバイタルサインを確認! けど負傷者多数です!」

 

 美緒が顔を青ざめさせながら叫び、アーンヴァルがターミナルを操作して何とかウィッチ、光の戦士双方の生存を確認する。

 

「やられた………大型と見せかけて、特攻機か!」

『こ……ミーナ………トゥルーデとペリーヌさんが負傷……後退を…』

『これくらい、問題ない!』『まだやれますわ!』

『ユーリィ! ユ―リィ!!』

『こっちよ! なんとか釣り上げたわ!』

『ユーリィ目が回ったです~………』

『全員生きてるわ! 負傷者は撤退を!』

『誰か手を貸してくれ! 沙雪華が無茶しやがった!』

『敵が、敵が来ますわ!』

『負傷者の撤退と治療を最優先させて! 治療が出来る子は全員こっちに!』

『こちらクルエルティア、トリガーハート全機健在、けど戦闘力平均28%低下!』

 

 通信から響いてくる阿鼻叫喚の状況に、美緒は拳を強く握りしめる。

 

「皆無理をするな! 今私も出る!」

「ダメですマスター! マスターの魔力はもう…」

 

 美緒がブリッジを駆け出そうとするが、そこをアーンヴァルが必死になって止めようとする。

 

「ダメです坂本少佐! 今の状況で、シールドが張れない貴女が出て行っては!」

「どけ土方! 今戦わなくていつ戦うと言うのだ!」

 

 従兵の土方も必死になって止めようとするが、美緒の決意は硬い。

 

『敵影、更に増加! 6時方向から一斉に押し寄せてきます!』

「三番砲塔も向けろ! 三式弾はまだあるか!」

「今装填中!」

『こちら観測班! 6時方向敵機無数! 計測不能! 繰り返す! 6時方向敵機無数、計測不能!!』

 

 カルナからの通信に杉田艦長も応戦しようとするが、観測班からの悲鳴のような報告に顔を曇らせる。

 

「他の部隊は!」

『こちら攻龍、ソニックダイバー隊は手一杯です! ソニックダイバーにも損傷が出始めました! エリカ7も限界です!』

『こちらエリュー、RV隊も離れられません! バクテリアンの大型反応も確認!』

 

 各隊からも悲鳴のような報告に、美緒の顔は更に険しくなる。

 

「増援はまだ来ないのか!」

「もう少し…あ?」

『どうやら、困っているようだな』

 

 

 

「新たに反応確認! 4時方向からです!」

「クソ、まだ増えるのか!」

「あれ、でもこれは?」

 

 七恵の報告に、冬后が思わずコンソールを殴りそうになるが、続けての疑問符に手が止まる。

 

「この反応は………」

 


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