悲しみに暮れる孫悟空たちだったが、これで事件は終わった訳ではない。
ベジータたちは無事なのだろうか……?
突然の振動に襲われた西の都。平和だった日常風景に緊張が走った……。
驚き戸惑う人々は不安と恐惶を胸に固まっていた。
車も渋滞で続々と並び不満そうにブーブー鳴り響いている。
「あ、ありがとう……」
尻餅をついている少年。畏怖に身を竦ませている親父。
なんと宙に浮く男がガラスの道路用のパイプ管のパーツを下から受け止めていたのだ。
その男は青一色のアンダーシャツとタイツに白いグローブと長靴を身につけていて、タケノコのような尖った髪の毛に前髪のないM型に鋭い目付き。
「べ、ベジータさんじゃないですか! ブルマさんの旦那さんがここに……」
竦ませていた親父は男をベジータだと認識し、綻ばせた。
「ちっ、近所のポロッツか」
プイと顔を背け、ゆっくりとパイプ管を抱えながら降下していく。
ドスンと歩道にそれを置く。
「シャッツ、大丈夫かー?」
側で紫の髪の毛の子供は笑顔で尻餅を付いている少年に手を差し出す。
「と、トランクス君!」
シャッツはトランクスの手を取り、立ち上がる。
「いきなり転校されたら寂しいじゃないか!」
「あ、あの時はしょうがなかったんだ」
とトランクスは慌てふためく。
「……こんな所でポロッツ親子がいるんだ」
ポロッツはスーツを着ていて中太りをしている普通のサラリーマンのおっさんだ。
「か、買い物していましたよ。シャッツに玩具を買ってやりたくてね」
腕組みするぶきらっぼうなベジータにポロッツはペコペコと頭を下げる。
(いつもながら思うがベジータさんは怖いなぁ。はるばる遠くからやってきたとしか知らされていないが、ブルマさんは何でこの男と……)
不思議でしょうがなかった。そして今の宙に浮く術と人智を超えた怪力。
セルゲームやブウの事件の事もあって怪しい印象に感じていた。
懐疑を抱いていたが、人のいいブリーフ博士の知り合いだろうと思って敢えて検索はしなかった。
乱暴な物言いが多いのが気になるが、今のように親切にしてくれる事も少なくなかったので心を許していた。
トランクスは息子のシャッツと仲良しで、時々遊び呆ける事が多い。
何事もなく平和な日常なんだと今まで思っていた。
「なぁなぁ、いつか僕も金色の戦士になりたいな」
「あ、うん……。すっごく修行しないとなー。あ、あははは」
無垢なシャッツに、トランクスは目を泳がせ乾いた笑いを見せた。
「ちぇー、いいよなー。すっごく強いお父さんいるしー」
ぶすくれるシャッツの言葉に、ポロッツは劣等感を感じてか頬の汗をハンカチで拭う。
その様子にベジータはまた舌打ちする。
その時、眩い光が目に入った。
近くで大爆発が起き、地鳴りと共にその余波で建物のガラスが一斉に弾け散った。そして吹っ飛んできた破片が襲い来る。
咄嗟にベジータがポロッツ親子の前に立ちはだかり、腕をクロスさせた防御姿勢で破片を弾く。
「な、なんだよっ!? この気は……」
トランクスは突如発生した凄い気へ顔を向け、一筋の汗を垂らす。
何故か唐突に強い気が現れたのだ。まるで瞬間移動したかのように感じた。
「おい! ポロッツ、ガキを連れて逃げろ!! どうなっても知らんぞ!!!」
「は、は、はいぃぃ!!」
ベジータの怒鳴り声にポロッツは身を竦ませた。シャッツの背中を押し、そそくさと場を後にした。
尚も爆発は向こうで繰り返され、建物が瓦解していく。
まるでこちらを目指すように倒壊は続いた。
「くそったれめ……」
ベジータは立ち込める煙幕を睨み据え、歯軋りする。
煙幕の中から一人の男が姿を現した。威風堂々とマントをなびかせ、逆立った髪の毛と左右に伸ばしたヒゲに加え、頭上の立派な一本の角が輝いていた。
立ち上るオーラが地鳴りを誘発させ続けていた。
「貴様は……一体何者だ!!」
目の前のベジータを見据え、ピクリと眉を跳ねる。
「フッ、噂に違わぬサイヤ人の王子だな。私は……カスタードプリンスに仕えているガナッシュだ」
落ち着き払った態度に、ベジータは戦慄を感じた。ギリ、と歯軋りする。
ガナッシュは有無を問わず掌を向けた。ベジータは身構え、恐れおののいたトランクスは仰け反る。
そして掌から眩い閃光が広がった。劈く爆発音。飛び散る建物の破片。
立ち込める爆煙、だが旋風がそれを吹き飛ばす。
「ガナッシだかガナッジュだかしらんが、さっさと死にたいようだな……!」
噴き上げるオーラと共に金髪に突っ立つ髪、握り締めた拳を持ち上げるベジータがそこにいた。
「スーパーサイヤ人か。噂ほど大した事ないな……」
意に介せずガナッシュは鼻で笑う。それに対しベジータのこめかみに血管が浮かんだ。
ついにベジータ登場です! そして目の前に現れたガナッシュと言う男。
ラムネス同様の刺客だろうか?
なにやらこちらの事情を知っているらしい敵。
果たして一体どうなるのだろうか!? 次回を待て!