ドラゴンボール○   作:ターバン

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其之二 「負けるな! Z戦士!!」

 ドカン!! 立ち並ぶビルの間で大爆発が噴き上げ、いくつかのビルが倒壊していく。

「へっへっへ! 案外腰抜けぞろいじゃねーか!」

 立ち込める煙幕が風に流れ、姿を現す鬼の少年。頭上に立派な角が閃光を放っていた。

 彼は魔界からやってきたと言うチョコットだ。

 散らばる破片を踏み砕き、ニヤリと不敵な笑みを見せていた。

「あわわ……」

 町の人達は怯えていた。我先にと逃げ出す人も少なくない。

 明後日の方向に掌を向け、気弾を撃ち出す。ボウン! 一軒の家が爆発で砕け散る。

 それが切欠なったのか、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

「この様子だと、昔話と大分違うなー」

 

 するとダン、と何者かが降り立つ。

「……なんだぁ?」

 チョコットは視線を移すと、同じ背丈の人間が睨んでいた。

 鼻がないのが特徴で丸っこい感じの双眸。赤いTシャツとダブダブのズボンだ。

「お前は何者だ!」

「そっちこそなんだよ」

 問いかけられて、チョコットは訝しげに眉を潜めた。

「オレはクリリン。何の為に来た!!」

 握った拳をアッパー気味に上げ、怒鳴った。

「あん、武装した兵がこっちの世界を襲おうとしてたからだよ。扉ぶっ壊れちまった」

 クリリンは眉を跳ねた。

「んな事どうでもいい。オレ様は魔界を轟かしている鬼神チョコット様だ!」

 自信満々と両腕を広げ、不敵な笑みを見せた。

 クリリンはゾクゾクと背筋に何かが走った。冷や汗が頬を伝う。

 

「まだ戦っていないようだな……!?」

 今度は三つ目で剥げた青年と傷だらけの顔面にボサボサの長髪の男が降り立った。

「天津飯! ヤムチャさん!!」

 クリリンは側の二人に笑む。目の前の鬼の少年に天津飯もヤムチャも険しい顔を見せた。

「気をつけろ! あいつ結構強い!!」「……分かってる」

 クリリンの警告に天津飯は百も承知だと頷く。

 三人は足を広げ、拳を作り、臨戦態勢に身構える。一触即発の状況にチョコットは笑む。

「なんだ、臆病じゃねーのがまだいるじゃねーか」

 鼻を指ですする。

「狼牙風風拳!!!!」

 まずはヤムチャが果敢と飛び掛る。瞬時に間合いを詰め、拳の乱打をチョコットへ叩き込む。

「おっ、とっとっと!!」

 散弾銃のような乱打にチョコットも驚きながら掌でことごとく捌ききっていく。

 その隙を突いて側面から挟み込むように天津飯とクリリンが蹴りを放つ。

 しかしチョコットはオーラを纏い飛び上がる。

 二人の蹴りが交錯し、それを足場にヤムチャは飛び上がった。

「烈風・狼牙風風拳!!!!」

 裂帛の気合。蹴りと拳を織り交ぜた凄まじい弾幕で追い討ちを仕掛ける。

 ガガガガガ!! チョコットとヤムチャの繰り返す空中での激しい格闘。

「だっ!!」

 天津飯とクリリンは気弾を撃つ。チョコットは交差させた腕でヤムチャの蹴りを受け止め、迫り来る気弾に舌打ち。

 フッと掻き消え、気弾は交差してそのまま空へと飛び去った。

 

「へっ、なかなかやるじゃねーか! 面白くなってきたぜ!!」

 

 チョコットは滾る血を抑えきれず歓喜に笑む。

 油断なく構える天津飯とクリリンにヤムチャが降り立つ。

 チョコットは踏ん張り、全身に力を込めた。

「はあああああああ……!」

 立ち上るオーラが勢いを増し、周りが震え上がっていく。破片がパラパラと舞い上がっていく。

 膨れ上がっていく気にクリリン達は恐れおののいていく。

「はあッ!!」

 方向一喝。周囲へ烈風が吹き荒れ、砂煙がドーナツ状に広がっていった。

「イェイ! 行くぜ!!」

 チョコットは意気昂揚と笑みを零し、拳を突き上げる。

 クリリン達もオーラを噴き上げ気張る。

 チョコットは地を蹴り、ヤムチャのみぞおちに拳をめり込ませた。

「ぐ……グハッ!!」

 そのまま拳は振り抜かれ、ヤムチャは吹っ飛んだ。何本かのビルを貫き、向こうの果てで煙幕が吹き上がった。

「ヤムチャさん!!」クリリンは叫んだ。

 天津飯は舌打ちし、自分から仕掛けた。チョコットはそれを察し振り向く。

 互いの拳の応酬が繰り広げられるが天津飯は「ぎ……ぎっ!!」と呻く。

「ちぇい!」

 チョコットの肘打ちが頬を捉え、天津飯は地面を滑りながらビルへ激突。瓦解したビルが崩れ落ちた。

 焦燥を帯びたクリリンは掌を天にかざし、薄い円に整えた気弾を浮かす。

「……気円斬!! たあっ!!」

 投げつけられた気円斬はチョコットへ目指す。流石のチョコットも命の危険を直感で感じた。

 ヒョイ、と飛び上がって気円斬は通り過ぎた。

 そのまま気円斬はビル群をスパスパ切り裂き、遠くで大爆発が巻き上がった。

「ひょえー! おそろしい技をお持ちで……」

 額の汗を拭い安堵の息を漏らす。クリリンは「くそ……」と渋る。

 そのままチョコットは直進して蹴り飛ばす。

 クリリンはあちこちの障害物を跳ねて吹っ飛んでいった。敢え無くうつ伏せに転がった。

「ま、手加減したから死んじゃいねーけど……」

 片目を瞑り、拳を腰に当ててふんぞり返る。

 その時、背後に誰かが降り立つ。その気配にチョコットはゾクッと寒気を感じた。

 

「おめぇは何者だ!」

 

 声の主に振り向けば、背丈の高い凛とした黒髪の男が睨んでいた。

 左右対称に比率が違う突き出た髪の毛。丸っこい双眸。山吹色の道着に青い下着。

 その姿から醸し出される貫禄は百戦錬磨を感じさせた。

「へっへー! こいつぁ、いい勝負が楽しめそうだぜ!!」

 逆にチョコットは歓喜し向き直った。男はそんな少年に微かな驚きを見せた。




 ついにあの男が登場ですw しかしクリリン達がかませ犬になるとは胸が痛むなぁ。

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