金色のオーラを纏った男。金髪に輝く髪。鋭い目付きだが穏やかな雰囲気を醸し出している。
掌を差し出していた。
激しい戦闘を重ね、蒼い下着が露になっており山吹色の道着もズボンのみに残っている。
「またな!」
その男は口元を綻ばせ、まるで友達に別れを告げるかのように立てた指をかざした。
告げられた相手はピンクに染まった身長の低い魔人だった。
魔人が受け止めている巨大なエネルギー球は押し潰さんとにじり寄る。
圧倒的な圧力にさしもの魔人も見開く。
「だあっ!!!」
掌を向けていた男は気合と共に遠隔操作のエネルギー球を押し込む。
眩い閃光と共に魔人は光の彼方へと消えていく。
こうして魔人による世界への脅威が取り除かれ、安穏とした平和が訪れた。
澄んだ青空を雲がノンビリと漂う。緑生い茂る草木が風に揺れる。岩を這うトカゲが虫を舌で捕らえ、飲み込む。
「悟空さ! 昼飯だよ」
首にタオルをぶら下げて桑を手にした男は額の汗を拭い、声の主へと振り向く。
この男こそ孫悟空。魔人の脅威を拭い去った男である。
何故か金髪ではなく黒髪。鋭い目付きだったその双眸は丸くておっとりした感じだ。
曲線を描いた白い家。その扉の側でチャイナ服の女性が手を振っていた。
「オラ、もう腹ペコだ。待っとったぞ~。チチ~」
飄々と畑を後にする孫悟空にチチは呆れながらも笑んでいた。
「全く仕方ねぇだなー」
パタン、と扉が閉まる。そして畑に静寂の間が訪れた。
そして同時に大きな扉が爆発によって吹き飛ばされ、飛び散った。
「へっへっへ!」
銃を抱えた兵士は薄ら笑みを浮かべる。
どこかの国の軍隊だろうか、物々しく戦車群と銃やバズーカを抱えた兵がある場所へ群がっていた。
城の様な大きい岩山のふもとから黒煙が立ち上っている。その近くに扉の破片が散らばっていた。
「いいか! 我が軍は異世界への入り口を確保した。これで領有権はこの国のものとなる――」
戦車の上で指揮官らしき風貌の男がマイクを手に高らかに宣言していた。
「おお!!」
それに合わせて意気昂揚と拳を突き上げる兵士達。
指揮官は微かにニヤリと笑む。
(くっくっく! これで昇級は確実なものとなる。そして異世界から資源を見つけられれば大躍進は間違いなし!!)
笑いを堪え切れなくてプププと肩を震わせる指揮官に、兵士達は後頭部に冷や汗を垂らした。
「えーい!! 何をしておるか! その扉の向こうに何があるか調査に向かえよ!!」
「は、はいい!!」
指揮官の怒鳴り声に兵士達は身を竦ませた。
遮る扉もなく闇を覗かせる穴。兵士の数人はゴクリと生唾を飲み込む。不安に駆られ汗が滴り落ちた。
抱える銃を握り締め、穴へと足を踏み入れていく。
何かを目にしたのか目を引ん剥いて「あわわ」と口を開けていく。
「ぎゃあああああ――――――ッ!!!」
悲鳴と共に穴から爆発が噴き上げた。兵士達はそれに煽られて宙を舞った。
「な、なんだ!?」
兵士達に戸惑いが走っていく。緊張感に顔を強張らせながらサッと銃口を穴の方へと向けた。
「やいやい、てめーら!! 脅かすんじゃねーや!!」
穴から人影が抜け出す。
ザッと靴が明るい地上を踏み締めた。兵士達は懐疑の眼差しを向けたまま人影を見定めた。
まだ少年だろうか、身長は低い。目に入るのはツンツンに逆立った金髪、左右に分かれた前髪。そして獣の耳の位置と同じく頭上に一対の角が伸びていた。
強気で荒々しい雰囲気の表情。不敵に笑む口には牙が覗いていた。
腕を組み、威張るように胸を張っていた。
「こっそり地上へ出ようかなーと思ったらイキナリ爆発すんだからビックリこいちまったぜ。てめーら覚悟できてんだろーなー」
不機嫌か額に血管が浮かび上がる。拳をバキバキ鳴らす。
「あ、あの少年も金色の戦士か……!?」
指揮官は脳裏に金髪の逆立った男が浮かぶ。セルゲームでテレビに映っていたのと、バビディの魔術で見せられた映像と重なっていた。
少し違うような気がしていたが、気に留めず嫌疑の目を向けた。
「さて! 貴様らに地獄の苦しみを与えてやろう!!」
邪悪に笑み、両手を左右に伸ばす。「はぁぁぁ!」と力を込めた息を吐き出し、すぐさま左右の掌を兵士達へと向けた。
「イオナズン!!!!」
怒号の叫び、それにおののく兵士。
しばしの間。ヒューと空しい風が兵士と男の間を流れた。唖然と兵士達は立ち竦んでいる。
「はは……は。運が良かったな。貴様ら、たまたまMPが切れてんだ」
気まずそうに苦笑いを浮かべる。
指揮官は不機嫌そうに眉間を寄せる。やがて落ち着きを取り戻し――
「捕らえろッ!!」
号令と共に兵士達は一斉に覆いかぶさっていく。驚く男。ドサドサと煙幕を立てて兵士が積み重なる。
ふうと呆れたような溜息をつく指揮官。
しかし閃光が兵士達の間から篭れ出た。ほどなく大爆発が巻き起こって兵士達は四方八方に吹っ飛んでいった。
「……なっ!?」
指揮官は目を丸くした。
男は踏ん張ったような体勢で立ち、表情に怒りを漲らせていた。
全身から溢れるオーラ。そして頭上の二つだった角は立派な大きな角一本になっていて真ん中に伸びていた。
「覚えておけ! 俺様は"鬼神チョコット"だ!!!」
びしい、と兵士達に向かって指差して言い放った。
「う、うわわ~~~~~~!!! 本物の鬼だぁ~~~~~~!!!!!」
蜘蛛の子を散らすように一目散と兵士達は逃げていった。そして取り残されたチョコットと気絶している兵士達。
「あ、あんのヤロー! ここからが楽しみだってのに腰抜けめ――」
悔しそうに歯軋りする。
ブランクを解消する為に試し書きしましたw
ちょっとの楽しみにしていただければ幸いですw (^^