5月26日。それは隣家のうみの夫妻の息子が生まれる、めでたい日だ。俺はたとえその次の日が
戦場に放り込まれる日であっても、その日を精一杯喜ぼうと思う。
将来深い付き合いになる子の産まれる日の次の日が死亡日になるかもしれないが・・・。
「おーい、ハイロ!!なーに感傷に浸ってんだよ!どっか行こうぜー!」
無断で俺の部屋の窓から入ってきたのは不知火ゲンマ。同じ班の班員だ。こいつも明日共に戦場に行く。まあ、こいつは戦場に放り込まれたぐらいで死ぬような可愛げのある奴じゃないが。
ここには居ないが、もう一人はシズネと言う暗器使いの女の子だ。因みに先生はいない。
「なあ?お前今、俺の事馬鹿にしただろ?」
恐るべし勘だ。
一応、首を横に振っておく。
「ええー、嘘だー。で?どこ行く?」
どこにも行きたくないので首を横に振る。
すると予想してたのか、ゲンマは俺のベットのに寝っころがった。付き合い長いけど図々しいよな、お前。「親しき者にも礼儀あり」っていう言葉を教えてやりたい。
「・・・ハイロは怖くないのかよ?」
怖いに決まってんだろ。
「俺はハイロの事が凄いと思う。」
・・・なんで?
「一つしたの学年なのに飛び級して、周りが明日死ぬんじゃないかってヒヤヒヤしてるのにハイロは
平然としている。たとえ怖いと思っていても顔には出してないし」
・・・。
「常に冷静で、今日みたいに俺がハイロから借りてた雑誌をジュースで汚しちまって、水で洗おうと して、破けちっまっても怒らずに、その雑誌の料金請求してくるし」
・・・一つ目は罪悪感が少し沸くが、二つ目は嫌味に聞こえて「自業自得だ」と思う反面イラァっとする。
金縛りの術でも掛けてやようかっと思っていたら父親の声がした。
「隣のうみの夫妻のお子さんが産まれたらしいぞー。お。なんだゲンマ君もいたのか。どうだ?一緒に会いにいかないか?」
父親が部屋に入った瞬間に机の前に正座したのはさすがだけど、その俊敏さはそこで使うなと思う。
てか親父よ、ゲンマがこの家に不法侵入したことには気付かんのか。
「あっ、俺はこれから用事があるので。また日を改めて伺わせてもらいます」
「むう、そうか、それは残念だな。ハイロ、ゲンマ君を家の近くまで見送りなさい。その後にうみの夫妻の所にいこうか」
父親の手前、首を縦に振った。
俺とハイロの家は近い。子供の足でも2分はかからない所にある。
いつもは短い時間でも煩いくらいに話しかけてくるくせに今日に限って話かけてこない。
オレンジの光が俺達に覆いかぶさり、影が後ろからついてくる。気味が悪い程、静だった。
「・・・なあ」
俺はゲンマの目を見る。