トリップ成功したのだろう。
気が付いたら森の中にいた。
夏なのだろう。ミンミン蝉の鳴き声と木の葉が擦れる音。木漏れ日が眩しい。
私・・・いや、俺は近くの川まで走り川面で自分の顔を見た。
そこには後ろをゴムで結び空虚な目をした5歳くらいの男の子がいた。うんおじいさんに感謝だね。
俺はイルカより六つ上だから来年あたり生まれてくるだろう。・・・楽しみだな。
「ハイロ!こんな所で何やってんだ。帰るぞ」
茶髪の男性がこちらに向かって走ってきた。この男性は音無ドン。俺の父親で上忍だ。
俺は首を少し下に下げ、父親の差し出す手を握った。
母さんは音無ヒュウ。俺を産んだ直後元々病弱だった為亡くなった・・・らしい。
今は忍界大戦中だ。そんな中、上忍である父親が数少ない里待機組にはいれたのはまだ幼い俺を残して行けないからだ。
俺の所為で死んだ母親と俺の所為で仲間を助けられない父親。・・・最悪だ俺。
「俺と母さんはお前が息子として産まれてきてくれて嬉しいよ」
!?驚いた。どうして分かったのかという顔をしていると
「お前はあまり顔には出さないが雰囲気で分かるんだよ俺は」
と苦笑された。・・・全く、敵わないな。
──ドンsibe──
俺は音無ドン。木の葉の上忍だ。
突然だが俺には今悩みがある。息子のハイロの事だ。
ハイロは病気で喋れない事に加え、同世代の子供と比べたら大人だ。だからか友達がいない。
する事がないからか、図書館で上忍でも読まなそうな本を読んでたり、森でチャクラを使った訓練をしているのを見た事がある。
そして大人だからか嫁のヒュウの死を自分の所為。俺が大戦に行かないのは幼い自分を残して行けないからと思っているようだ。
・・・お前ほんとに五歳児か?我が息子ながら恐ろしい。そして極め付けに表情が貧しい。いや、殆ど無いに等しい。
以上の事を踏まえてハイロは里の影でこう呼ばれている「無音人形」と。本人は気付いて無いだろうが。
来年には隣家のうみの夫妻の子供が産まれるらしい。あの夫妻の息子だ。きっと明るくて仲間思いでいい子に育つだろう。息子と仲
良くなってほしいものだが・・・。
息子を見る。俺と同じ茶髪を嫁の形見の紐で後ろを結び、嫁と同じ何を考えているのかわからない緑の目をしている。
嫁も息子も表情から感情を読み取るのは上忍である俺ですら難しいがたまに雰囲気から分かる事がある。
取り合えずフォローはしたがそんな事気にしなくていいのにと思う。
こんな一癖も二癖もある息子だが物凄く可愛い。
あ?親ばかでしめんなってか?別にいいじゃないか。