リハビリも兼ねて上位入りしたばかりの女ガンナーでストーリーを進めたいところ。
千刃竜セルレギオスが出没した。それもバルバレギルドが確認されているフィールド各地に。
その事実はギルドを始めとして大老殿に、そしてドンドルマの人々に囁かれ、さらなる脅威として人々を不安に駆り立てる……かと思えばそうではない。
何せドンドルマは、世間的に言えば滅多に現れないという古龍種が何度も襲来し、それに見事打ち勝ってきたのだ。
もちろんハンターが討伐してくれるという希望を抱いているとはいえ、古龍種が引き起こす災害への備えや心構えぐらいはある。
ビクビクしているぐらいなら少しでも補強や補給に力を注ぐ。その思考の切り替えがドンドルマの街に活気を与え、大勢が逞しく生きていけるのだ。
「セルレギオス……か」
「次から次に厄介ごとが増えるのぉ」
「まぁこんなこともあるさ!笑ってはいられないがな!」
……まぁ、モンスターの脅威や知識をよく知っているハンターや探検家は、彼らほど前向きにはいられないが。
料理長アイルーがデカい鍋を振るって調理する傍ら、重苦しい雰囲気に包まれた状態で3人はため息を吐いた。
1人は筆頭ハンター。ドンドルマの警備や周辺の調査など様々な仕事を引き受けている立場故に、己ですら数度しか目撃していない千刃竜の襲来に危機感を覚えている。
2人目は【我らの団】教官ことジグエ。隻腕となった彼は「遠い地方で有名な教官服」を着込んでいる。いつもは朗らかだが、この時ばかりは眉間に皺を寄せまくっている。
3人目の【我らの団】団長は相変わらずの笑顔。しかしその豪気さが却って2人の緊張感を解し、元気づけさせてくれた。
彼らもまたセルレギオスの情報を耳に寄せていた。情報源は例の研究者3人組―イリヤ・ヴァルツ・リグレットの3人だ。
ロックラック出身の女ハンター・クカルの知人だという彼らは研究者の卵としてハンターを兼任しており、彼らの情報提供は実に役に立った。
まぁ大老殿という知識の宝庫がある為、研究者の卵らがたまたま資料で見たという情報よりも的確かつ豊富な資料があったのだが。アーメン。
セルレギオス。非常に高い飛翔能力と縄張り意識を持ち、一度決めた縄張りを自ら出ることは滅多にない飛竜種。
リオレウスとタメを張れるという程の飛行能力と攻撃性を持つ危険性の高いモンスターが、バルバレで確認される各地フィールドに現れている。
これはハッキリいって異常気象に近い。セルレギオスの生態と数を考えるなら尚更だ。
「セルレギオスが大勢で逃げ出したと考えれば……古龍種の再来も考えられるな」
「いや、もしかするとそれ以上の脅威がいる可能性も考えられる。気は緩められん」
「ドンドルマの強化が間に合えばいいんじゃがな……」
老人2人の顔は厳しいが、筆頭ハンターの顔の厳しさはその上を行く。筆頭ルーキーが見たら卒倒しそうな程に。
何せ筆頭ハンターはドンドルマの警備にも貢献しており、密漁者の捕縛も仕事の内に含まれるのだが……その密漁者の影がチラホラと見えているのだ。
ディム達の話によると、あの日のクエストで自分達以外のハンターの姿を一瞬だが目撃したのだという。
当然だが同じフィールドに複数のハンターチームを投入することは基本的に禁止している為、密漁者と考えて間違いないだろう。
風紀の乱れを嫌う筆頭ハンターにとって、自然の摂理を全く考慮せず好き勝手に生物を殺す密漁団は忌むべき存在。放っておくことはできない。
【我らの団】としてもドンドルマの助けに貢献しているとはいえ、教官は引退した我が身を惜しむ日々が続いている。
三者三様に溜め息を零していると……。
―ドズンッ!
「教官。団長。筆頭ハンターさん。竜頭ターキーが出来ましたよ」
テーブルを揺らすほどの巨大な皿に盛られた巨大な頭の丸焼き(何なのかは秘密)を置いたのは、1人の女性だった。
レイアSのガンナー装備を纏い、紅竜砲を背に持った女性ハンター。ヘルムを脱いでいるからか眼鏡をつけており、その眼はキツい。
への字口ではあるが整った顔つきをしており、金髪碧眼の可愛らしい顔つきをしている。泣きホクロが特徴的。
学院の委員長でもしていそうな、しかし背丈の高さ故に威圧感を感じさせる女性。それが彼女、【我らの団】ガンナー・リリトである。
突如として置かれた丸焼きに驚いた3人は目を点にしてリリトを見上げ、リリトは眼鏡をクイっと正して3人を見る。
「悩むのも仕方ないことでしょうが、悩んでいても仕方のないことなのも事実です。私たちにも出来る事の1つは、腹を満たして次に備える事だと私は思います」
ニヤリと笑ったリリトはそのままドッカリと座り込み、皿に盛られていた骨付き肉を握り、豪快に噛み千切って食べ始める。
見た目は真面目系、中身も真面目、根っこは野生児。理性と野生を併せ持ち、基本的に前向きなハンター。それがリリトだ。
「……ワッハッハッハ!こりゃ1本取られたな!」
「ほっほっほ、確かにそうじゃのぉ。ではせっかくの料理長の作ってくれたメシじゃし、食うとするかの」
そんな豪気な態度を見せるリリトを見て笑った団長と教官も続いて肉を食べ始める。
3人を見て呆気にとられていた筆頭ハンターだが、やがて観念したように料理に手を伸ばしだす。イライラしていて腹が減っていた処なのだ。
かくして、美味しそうな匂いに宛がわれ、労働で疲れて腹を空かせた人々が集ってお祭りモードに。
料理長はそれに負けじと皆の腹を満たすため、料理をふるまうのだった。
ドンドルマの危機は近い。しかし腹を満たせば元気が出て、また仕事に戻れる。
モンスターもそうだが、人間も食欲が満たされると頑張れるものなのだ。
「料理長はん!どうかウチのオトモになってぇなぁ!」
「断るニャル」
「そこをなんとか!」
なお、この料理長アイルーの料理に魅了された女ハンターが泣き縋る事になったのだが、それは別の話。
我らの団新人ハンター・リリト登場。その胸は平坦であった。
残る作品はGW前か中に投稿できればと思います。怠け者ですみません(汗
次回はオウショウザザミサイドです。