ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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以前読者様が感想で散々言っていた事が実現しちゃいました。


第47話「鬼鉄蟹VS天廻龍・後編」

 シャガルマガラ。【我らの団】によって詳細が明らかになり、古龍種として分類されたモンスター。

 ゴア・マガラが成長した姿とだけあって漆黒から純白に変色しただけでなく、「狂竜の力」と称された能力を最大限に生かして、成長前とは比べ物にならない程の威力を発揮する。

 生物を狂竜症に侵させる物質の散布量は暗雲のように空を覆い、拡散し周囲に散ったそれは連鎖爆発を引き起こし、更なる災害へと繋がる。

 

 しかしシャガルマガラの何が恐ろしいかといえば、ゴア・マガラにもあった「翼脚」だ。

 この脚と翼が一体化した翼脚によって、高い飛行能力と地上走破力を手に入れた他、攻撃にも用いることもできる。ゴア・マガラの頃と比べて筋力も育った為、威力も桁違い。

 後ろ脚によって立ち上がる必要があるとはいえ、この翼脚を使った叩きつけ攻撃は地面を割るほど。当たれば即死級のダメージは必須だろう。

 

 

 そんな翼脚による攻撃を、全身の甲殻とヤドがボロボロなオニムシャザザミは誰よりも危惧していた。

 

 

 天空山の禁足地で勃発した、シャガルVSオニムシャ&ブッチャーの戦い。この戦いはシャガルがリードしている。

 シャガルマガラは脱皮して間もないとはいえ、先日までの激戦のダメージは完全に癒え、健康状態とポテンシャルは完璧。

 対するオニムシャザザミは甲殻故に未だにひび割れが残っており、ここ連日の連戦による影響が今になって響いたのか、全身がボロボロとなっている。

 加えてオニムシャザザミのヤドもボロボロで、いくらテツカブラの頭蓋骨を使用しているとはいえ、シャガルの翼脚で叩かれたりすれば粉砕玉砕大喝采は間違いなし。

 いくら本能が剥き出しになって狂竜症で凶暴化しているとはいえ、ダイミョウザザミの本性である「弱点を剥きだしにされることへの危険性」は無視できない。

 

 そんなわけで、シャガルマガラが立ち上がったと解れば攻撃を中断し、そそくさと後退り一撃を回避するのは当然のことであった。

 

 地面を割るような一撃を振り下ろしたものの、直後に発生する硬直を狙ってくるオニムシャが居ると解れば安心はできない。

 シャガルはすぐさま地面にめり込んだ翼脚に力を込めて強引に跳躍。後方へと飛んで鋏叩きつけを避ける。

 一撃の破壊力ではシャガルに劣るが、すぐさま鋏を振り上げる怪力をオニムシャザザミは有しており、硬直の隙はほとんど無い。

 しかしシャガルは息を吸い、右へ左へと黒い塊を発射。独特的な軌道を描き地を這う黒煙を、オニムシャザザミは大きく跳びあがって回避。

 空へ跳ぶことで地上では虚しく爆発を起こし、そのままシャガルへと急降下する。だがシャガルは翼を広げ助走を加えて滑空し、これを避ける。

 このジャンププレス後の隙がオニムシャにとって最も大きく、硬い岩盤にめり込んだ身体を抜くのにもがきあがきと一苦労。

 

 それを狙い、低空でUターンしながらオニムシャへ向かって飛ぶが……ここでまた邪魔が入る。

 (実質上)オニムシャのオトモであるブッチャーだ。彼は先ほどからずーっとシャガルの背中を陣取っており、今度は頭へと移動して妨害行動を起こしたのだ。

 今度はシャガルの特徴でもある角にしがみつき、あろうこと両の角を握って操舵するかのように右へ左へと引っ張り出した。

 チャチャブー特有の怪力が少なからずシャガルに響いたらしく、頭があらぬ方向へ向けられようとし、それに釣られて体のバランスを崩し始めた。

 その結果、シャガルは空中で緩やかなカーブを描いてオニムシャザザミを通り過ぎ、あらぬ方向へと転がり落ちてしまう。

 

 その隙を逃すものかと地面から這い出たオニムシャザザミは鋏を向けたまま突進。スピードは無いがセカセカと急いで転んだシャガルへと向かう。

 だがここでも翼脚が役立つ。強引に身体を起こしたシャガルは首を動かそうとするブッチャーを振り回して黙らせ、再びオニムシャに向き合った。

 互いが向かうことでオニムシャザザミは停止。振り落とされたブッチャーはオニムシャの頭に上り、頭頂部で杖をブンブン振り回す。威嚇のつもりだろう。

 

 仮にも古龍種相手に向き合う様になったオニムシャは、心身ともに成長したと言えよう。

 しかしオニムシャが不利には違いないし、シャガルは古龍種としての誇りと余裕を醸し出している。

 ブッチャーによるおジャマ攻撃は有効だが、かといってシャガルの動きを長時間封じられるわけでもないし、そもそも一度離れると取り付くまでが大変なのだ。

 

 なので、ここは接近戦から遠距離戦に切り替える。

 そうオニムシャが判断するや否や、口から大量の水を線状に放つ。ウォーターカッターのような水ブレスで一気に風穴をあけるつもりか。

 しかしシャガルは仮にも古龍種。グラビモスに劣るとはいえ見た目以上の硬度を誇る甲殻は、傷がつけど致命傷にはならず。

 それでも長いこと受けているつもりは無いらしく、水の勢いに乗るようにして後方へ跳び、そのまま翼脚を広げて空を舞う。

 

 空を飛ばれたがオニムシャは何を考えてか、体の回りに紫色のガス……毒霧を撒く。

 視覚を持つシャガルはその毒霧を前に突進を躊躇ったが、ここは勢いで攻めるとばかりに突進。滑空と重力により勢いは加速し、激突。

 オニムシャの経験では毒が充満すれば突進を躊躇うだろうと思っていたが、それが外れて咄嗟に鋏で防ぐも、勢いが強すぎて後ろへ跳ぶ。

 

 そのままゴロゴロとシャガルを含めて転がっていく中、シャガルは幸運にもマウントポジションをゲット。オニムシャに身体を圧し掛かけていた。

 オニムシャはもがくものの、正面を地面につけた状態という非常に不味い姿勢で、鋏は体ごと押さえつけられて動けない。しかも不運にもブッチャーが鋏を蓋にして埋まっちゃったし。

 

 そしてシャガルはこの機会に叩き潰す、と言わんばかりに翼脚を広げ……オニムシャの最大の弱点であるヤドに叩き付けた。

 腕のような翼脚だけでも威力は充分で、厳つい頭蓋骨に次々とひび割れを起こし、穴まで空く始末。叩けば叩くほど酷くなる一方。

 これは非常に不味いとオニムシャは理解しているが、体全体で押さえつけられている為に上手く動けない。甲殻種ならではの体つきによる弱点だ。

 

 

 

―そしてついに、ヤドの頭蓋骨が完全に砕け散る音が響いた。

 

 

 

 突然だが、オニムシャザザミの特性である金属甲殻の仕組みを覚えているだろうか?

 挟める物なら何でも食べ、消化できないものは排出するという本来の器官は、突然変異によって消化できない金属類の成分を甲殻に反映させるという器官に変化している。

 防御力を向上させるこの仕組みは、オニムシャザザミが非常に臆病であるからこそ、摂取した金属を次々に合成し甲殻に滲み出るようになっている。忘れがちだが護石も。

 

 だが、近年はそうではない。

 狂竜ウィルスによる凶暴性の強化と、野生の性である「敵を排他し生き延びる本能」の復活。

 これらが合わって防御性より攻撃性に思考が偏ることで防御本能が変化し、器官に変化が訪れたのだ。

 

 必要最低限の量で最大限の硬度を得る為に合金し、薄く硬く甲殻に反映させ。

 

 甲殻の量を減らした分の金属を、最も防御が低い箇所(・・・・・・・・・)に回す。

 

 薄れてきた防御本能が、防御を必要とする箇所に割り当てる為の身体へと作り変える。

 ゲネル・セルタスを叩き潰したあの日から、オニムシャザザミは精神だけでなく、身体も突然変異級の進化を遂げていたのだ。

 

 

 

 弱点である背中が開放されたことによって状況は一変。

 

 

 

 シャガルマガラの翼脚。先端の鋭い爪が脚ごと(・・・)折れたことで警戒心を一気に高めるシャガルマガラ。

 ヤドが破壊されたことで露になった弱点だった物(・・・・)の変貌に気づかず、危険を知り急変するオニムシャザザミ。

 地面から這い出てオニムシャを見上げた途端、ぼーっとしたまま動かなくなるブッチャー。

 そしてオニムシャザザミは最大級の危険を体感したことにより、攻撃的本能をさらに刺激させ、更なるステップに移すことにした。

 

 巨大かつ分厚い鋏を両手いっぱいに広げ、一気に鋏同士をぶつけあい、鈍い音を立てる。

 ぶつかり合った衝撃は、ボロボロの甲殻全体に響き渡り、ひび割れを拡大させ崩れ落ちていく。

 

 

 

―そこから漏れたのは、これまでの鉱石とは違う金属めいた輝きだった。

 

 

 

―完―




最後辺りのイメージはまんまタイクンザムザの物です。パクっているようですみません(汗)

次回、まさかのハンターサイド。

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