ヤドを探して3千里。
実際孤島からどんだけ離れているかは知りませんが(苦笑)
解ることといえば、飛べないのって不便だなぁってこと(笑)
10/31:文章修正(段落付けなど)
―突然だが、リノプロスというモンスターをご存知だろうか?
灼熱の砂原地域に生息する草食種の一種だ。
その硬い頭殻は幾度も突進と頭突きを繰り返してきた結晶で、後にハンターが装備品としての価値を見出すほど。
このモンスターは、後にハンター達から「ロケット生肉」という奇妙なあだ名を持つようになる。
その理由は簡単で、このモンスターが持つ異常な程の勇敢さにある。リノプロスは縄張り意識が非常に強く、侵入者に所構わず突進してくるのだ。
相手の強弱に関わらず、敵を自分の縄張りから追い出すためにとにかく突っ込む。それに飽き足らず、同種の縄張り争いや求愛にですら頭突きをするほどだ。
そんなにも頭突きをしていれば頭の甲殻が硬くなるのは、むしろ当然。
―さて、リノプロスに関する話はここまでにしよう。
そんなリノプロスだが、やはり草食種。灼熱の大地とはいえ草木が全く生えていないわけではなく、程よく草木が生えている地でのんびりと草を食べている。
しかしリノプロスは、ある姿を発見し、食事を中断。どうやら何者かがリノプロスの縄張りを侵しているようだ。
その姿をはっきりと捉えるより前にリノプロスは威嚇するが、謎の存在は構わずゆっくりと歩いてくる。
この辺では見慣れない顔ぶれだ。肉食竜ではないようだし、大きさも自分達より一回り大きい程度だ。
どちらにしても、威嚇を無視するということは頭突きを仕掛けていいという証拠。それを理解するや否や、リノプロスは意気揚々と砂を蹴り、狙いを定める。
―目標、前方の生き物……GO!
リノプロスは駆ける。侵入者に突進する為に。
そしてその硬い頭が一直線に侵入者に迫る!
―ゴイィン
この地域に生息していないはずのイャンクックが空を飛んでいた。
それも小さいのが何匹もいて、同じところをグルグルと回っている。
いや、正しくは眩暈を起こしたリノプロスの幻なのだが(何故ヒヨコでないのかは謎)。
岩肌にぶつけても平気でいられるはずのリノプロスが、激しい音を立てるほどに強い衝撃を受けた証拠だ。
では岩よりも硬い物体とはなんなのか?
それは―――蟹である。
それも岩をも超える硬度を持つ鋼鉄を纏った、例のブシザミであった。しかもぶつかった先は、分厚い鋏の方。
なるほど、これではぶつかってきたリノプロスが逆に目を回しても仕方ない。
一方ぶつけられたブシザミからしてみれば迷惑でしかなく、急ぎ足でリノプロスの縄張りから逃げ出す羽目に。
とりあえず、縄張りから追い出すことができた以上はリノプロスの勝ちだ。
しかし未だにふらついているリノプロスからは、なんとも言えない敗北感が漂っていた。
唐突に場面は変わり、砂原のとある洞窟内部。
洞窟とは言っても日は差しており、程よい薄暗さと湧き出ている水源によって丁度良い避暑地となっている。
さて、そこではメラルーと呼ばれる、白黒の模様が特徴的な獣人族の群れがいた。
メラルーはとても悪戯好きな獣人族で知られ、他人の持ち物を盗んだりする性質の悪い連中である。
そんなメラルー達は、オアシスの木々に漂っている虫を食べていたブシザミにちょっかいをかけていた。
抵抗したり(簡単に)怒ったりしないことをいいことに、悪戯というよりはブシザミを遊具に見立てて遊んでいた。
中には嫌がらせとしてブシザミの背負っている飛竜の頭蓋骨を抜いてやろうと何匹かが引っ張っている始末。
しかしこれが中々外れず、メラルー達は若干ムキになっているようだ。
そんなメラルー達に遊ばれているブシザミはといえば気にもせず、黙々と好物である不死虫を食べ続けていた。
腹が減っては戦……いや探し物は出来ぬ。厳しい環境だからこそ腹ごしらえは大切である。
だから虫以外も食べるべく、乗り物にのった子供のようにはしゃぐメラルー達を乗せたまま、ブシザミはゆっくりと歩き出した。
とりあえず、砂原地域に生息するメラルー達は、ブシザミを危険度の低いモンスターだと認めてくれたようだ。
ただ、怒らせると大きな鋏で地震攻撃を仕掛けてくるので、今後は度の過ぎた悪戯はしないとメラルー達は誓った。
さて、ここからはブシザミの視点からご覧頂こう。
このブシザミ、実は幼少の頃、つまり食用として人に捕まる前は砂漠に暮らしていた。厳しい環境に住むヤオザミほどザザミソが濃厚になるんだそうな。
話は逸れたが、この灼熱の日差しの下で果てしなく広がる砂原は、まさしくブシザミの故郷に近い物だ。
もちろん砂の海を跳ねて泳ぐデルクスという魚竜種は知らないし、彼に故郷を懐かしむほどの感情や記憶力は持っていない。
ただ本能的には懐かしんでいるのか、しばし目の前の絶景を眺めているかのように佇んでいた。
そしてブシザミは、新たな地にも関わらず平然と砂地に足を踏み出して歩き出す。
何かめぼしいヤドは無いか。デルクス達が回りで飛び跳ねている事など気にせず、そんなことを考えながら歩き続ける。
すると前方にあるものを発見した。
砂に半分ほど埋まっているそれは、一見するとゴツゴツとした白い岩のようにも見える。
しかしそれは岩ではなく、大昔に砂原で息絶えたモンスターの頭蓋骨だ。
大きくゴツゴツとしたそれは、ボルボロスと呼ばれる獣竜種の頭が白骨化したものだ。
大きく硬いその頭は、頭突きでオルタロスのアリ塚を破壊できるほどとされている。それだけ発達した頭が白骨化すれば岩のように見えるのも無理は無い。
とにかくブシザミがわかったことといえば、ボルボロスの頭蓋骨の大きさが丁度いいサイズだということ。
―おお、なんと立派な頭蓋骨だろう。
ブシザミは一目で気に入ったようだ。遠めでは頭蓋骨の大きさがはっきりとしないが、きっとあれならヤドに丁度いいだろう。
さっそくヤドにしてしまおうと、ブシザミは頭蓋骨の方へと歩き出す。
だがしかし、求めている物がそう易々と手に入らないのは自然の摂理。
ハンターが碧玉や紅玉を手に入れられなくて何度も狩らなくてはいけないように、モンスターだって苦労はする。
捕食者に見つかって食べられてしまいそうになるのも、この厳しい砂漠では当たり前のこと。
今、ブシザミは巨大な口の中にログインした。
―完―
巨大な口の正体とは!?……丸わかりでしょうが(笑)
子供メラルーにとって、ブシザミはジャングルジムとか登り台みたいなものです。