ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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ゆ、夢みたいな光景です……皆さん本当にありがとうございます!目指せロングセラー!先が見えないから何ともいえないけど!(爆)
これからもどうかよろしくお願いします!

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第28話「変異種VS特異個体」

 モンスターは日々変化している。同じモンスターが居たとしても、その差は成長次第で大きく変わってくる。

 若い個体から熟練の個体との差はモチロンのこと、生息地の環境や強敵の有無によっても、その違いはハッキリと出てくる。

 他にも長い年月や生まれつきの強さなど、様々な原因が加わることで、モンスターの強さに変動が生じてくる。

 

 その中でも特に厄介なのは……突然変異による急激な進化であろう。

 そういった急激に変化した個体も存在しており、それらは二種類に分かれている。

 

 一つは、何らかの理由により、進化への道を自ら変える事で異なる種となった「変異種」。

 急激な環境変化や食性の変化によって進化したモンスターは、どれも原種とは違った生態系を持つ。

 

 もう一つは、本当の意味での突然変異によって進化した「特異個体」。

 見た目こそ原種に近いものの、姿形どころか身体機能などが大きく変わり、まったくの別物として捉えられるほど。

 

 いずれも強大な力を持っているとはいえ、両者には違いがある。

 変異種は、自ら進化の道を変え、並大抵ならぬ努力や忍耐、そして適応力によって成長した「努力せし者共」。

 特異個体は、努力も何もなく唐突に進化への飛躍を遂げた「才能ある者」。この言葉に限るだろう。

 進化への道は競争とはいえ、突然変異という奇跡もあれば、努力すれば導き出される答えもあるということだ。

 

 そんな特異個体モンスターだが、実は様々な所で確認されている。イャンクックやバサルモスなど意外にも幅が広く、あちこちでハンター達が狩猟に励んでいる。

 いずれも通常種とは実力も攻撃方法も違う為、同じと思って侮ってはならない。

 

 さて、沼地における特異個体の一体を挙げるとしたら、ショウグンギザミ特異個体だろう。

 ショウグンギザミは沼地でも発見されているが、進化の都合上ガミザミにあった毒腺は消え、毒を吐く機能を持たない。

 特異個体の場合、その毒腺が異様に強化されており、腹を毒から保護する為にグラビモスの頭殻を必要とするほど。

 瘴気渦巻く沼地だからこその進化なのだろう。もちろん力も強まっており、古龍種に匹敵するとされている。

 

 そんなショウグンギザミ特異個体は、己の縄張りを侵す大型モンスターを許さなかった。

 自身より一回り大きい上に己と同種ではあるが、同種だろうとも容赦なく襲い掛かる好戦的な所は変わらない。

 

 その相手とは、もちろんオニムシャザザミである。

 キノコを食しているだけとはいえ、彼の縄張りを侵したことには変わりなく、襲われても仕方ないというもの。

 だがオニムシャザザミは、驚くことに逃げることなく、ショウグンギザミ特異固体と戦う事を選んだ。

 理由は三つ。食料を欲していた事と、同じ甲殻種であったということと、相手の威圧感を感じ取ったことだ。

 

 甲殻種となると互いに縄張り意識が合致する為、それが戦いに発展することもある。

 何よりも大きさ(というか腕の長さ)でいえばショウグンギザミが圧倒的なため、力づくという選択を選ぶ他なかった。

 

 

 そんな二匹の争いは、意外にも白熱したものだった。

 

 

 強震を起こす程の力を秘めた鎌爪が、右から左へと次々に振り下ろされる。

 物凄い金属音を響かせながらも両の鋏で受け止め、溜め込んだ力を一気に解放、鋏を突き出す。

 モロに受けて後方へ吹っ飛ぶものの、距離はさほどなく、むしろ怒りを買ってしまい連続攻撃へのキッカケを生む。

 左右からの鎌爪の攻撃を身構えてガードしつつ、水のジェット噴射で押し出すものの、決定打にはならない。

 逆にショウグンギザミが距離を置いて毒ブレスを噴射。これも鋏で受け止めるものの、たまらず地中へ潜る。

 

 ショウグンギザミが連続攻撃しているのに対し、オニムシャザザミはガードを中心に重い一撃を繰り出す。

 どちらも一撃の度に重々しい音が響き渡るため、その力強さや甲殻の硬さが伺えるだろう。

 

 オニムシャザザミは防御を支点に強化されている為、甲殻は頑丈であれども動きはショウグンギザミに劣っている。

 ショウグンギザミは攻撃を支点に強化されている為、攻撃方法や力は優れていてもオニムシャザザミの甲殻に傷はつけにくい。

 互いに地中からの攻撃や毒腺を持つものの、戦い方や性能はまったく違っていた。

 

 特に問題なのは毒の強さの差だ。オニムシャザザミは幼少期から毒類を食していた為に蓄積し耐性がつけられてきた。

 対するショウグンギザミ特異個体は毒腺の強化という進化を歩んだ為、その濃度や量はオニムシャザザミより優れている。

 ましてやオニムシャザザミはスピードが劣っている為、必然的に毒ブレスや毒霧を浴びることとなる(水圧自体は問題ない)。

 さらに時間帯は夜。沼地の瘴気が充満されるこの時間帯はより毒の濃度が高まり、追い詰められる起因となる。

 

 よって、オニムシャザザミの身体は徐々に毒に侵されていき、ピンチを迎えている。

 いくら防御性能が高く様々な毒を扱えるからといっても、猛毒を大量に浴びればいずれ毒に蝕まれるというもの。

 ショウグンギザミもダメージを負っているとはいえ、このまま時間が過ぎれば勝者は確定するだろう。

 

 

 そんな時、彼が動き出した!

 

 

 ファンゴにも劣らぬ勢いで走る一つの小さな、しかし不釣合いな大きさを持つ影。

 それは大量の解毒草が入った巨大背負子を担いで走る、奇面族のブッチャーだった。 

 重たいはずの鳥兜風のお面を被ってもなお、ピンチなオニムシャザザミに向けて走っている。

 

―キー、キーキー!

 

 両者ならぬ両蟹が一時休戦と言わんばかりに疲労を見せているのをキッカケに、ブッチャーはオニムシャザザミの前で止まる。

 「さぁこれを食べてくだせぇ!」と言わんばかりに地面に置くと、すかさずオニムシャザザミは鋏で背負子ごと掴んで食べる。

 疲労でふらついていた身体が一転、立派に構えるほどに元気な姿を取り戻すことに成功した。

 すかさずブッチャーは背負子を背負い、逃げ出すようにして走り出すのだった。

 

 ブッチャーがこのような行動を取ったのは、彼の被っている「鉄壁のお面」のおかげである。

 その性質はオニムシャザザミの本能や生態に強く反映されているからだ。

 つまり、生存本能と防衛本能が高く、どの食物がどのような作用を促すかを本能的に理解できる。

 そこへオニムシャザザミへの尊敬の意識が加わった為か、彼は毒を治療できる解毒草を持ってきた、ということだ。

 しかも自身より遥かに大きい背負子にギュウギュウに詰め込むほど沢山。採取率の高さも優れている証拠だ。

 

 そんなブッチャーの支えもあって、オニムシャザザミは毒状態から回復、多少疲れているものの戦闘態勢に入る。

 対するショウグンギザミも身構え、自慢の鎌爪を広げる。効果的だった毒ブレスを放たなかったのは、毒腺の貯蔵が切れたのかもしれない。

 

 

―こうして二匹の甲殻種は、さらなる戦いを繰り広げるのだった。

 

 

 有効だった毒が切れたショウグンギザミであったが、それが無くともオニムシャザザミの相手としては充分だった。

 盾蟹に比べると細く、切れ味を重視した鋏だが、その細長い脚に詰め込まれた筋肉は想像以上のものだったらしく、威力は絶大。

 その力強さは、オニムシャザザミの甲殻のあちこちに軽微な凹みとひび割れを生じたほど。

 なにせ嵐龍の素材を用いて作られたハンマーですら、連撃してやっとひび割れを起こしたのだから。

 

 だがしかし、勝者はオニムシャザザミだった。

 重厚なオニムシャザザミの攻撃を前に、流石のショウグンギザミもボロボロになって負けを認めるしかなかったのだ。

 全身にひび割れを残し、名残惜しそうにオニムシャザザミに背を向けて歩くショウグンギザミ。

 好戦的な彼がココまで大人しく敗北を認めるのも、甲殻種ならではの縄張り意識に乗っ取ったからだろうか?

 

 なにはともあれ、この沼地の縄張りはオニムシャザザミが手に入れた。

 頭の上で勝利を祝うかのように踊るブッチャーを余所に、その辺で見つけたキノコを食す。

 オニムシャザザミもショウグンギザミもボロボロだが、直に治ることを約束しよう。

 硬い甲殻といえども、元を考えれば外骨格。時が経てば治るのは生物の基本だ。

 

 

 今回でお分かりになったと思うだろうが、この世に絶対の生物などいない。

 最高クラスの堅さを誇るオニムシャザザミにだって相性の悪いモンスターは存在している。

 猛毒性の高いショウグンギザミもそうだが、同じく猛毒性の高いゲリョスは別格。毒を吐く量と濃度が段違いだからだ。

 もしブッチャーの助けが無ければ、毒に対する危機感が強まり、逃げて生存できたとしても縄張り争いには負けていただろう。

 そういう意味では、ブッチャーは共生状態にあるとオニムシャザザミは認識をより深めることとなった。

 

 仮にテオ・テスカトルが存在していたら、オニムシャザザミは一目散に逃げていただろう。

 溶岩より熱い龍炎や放射ブレスで熱され、「上手に焼けましたー」状態にされるのがオチだからだ。

 ましてや自身よりも強大な力を持つと明確に知れている古龍種が相手となれば、逃げて当然であろう。

 

 

 世の中は広い。特異個体や変異種がいるとしても、その上が存在しているかのように。

 いくら唐突な進化を遂げたとはいえ、純粋な力の差や老熟したモンスターが弱いわけが無い。

 この世を生き抜くのに必要なことは、生き抜くため為の「諦めの悪さ」なのかもしれない。

 

 

 

―人間もモンスターも、生きることに必死なのだから。

 

 

 

―完―




 オニムシャザザミは防御チートではありますが、無敵や最強ではありません。
 ザザミは作者の好みである防御に支点を置いて強化したに過ぎませんから。
 モンハンの世界は底知れないから楽しいんですよ。フロンティアGを見て改めて解かりました。

 際限の無いモンスターハンターの世界。魔法なんか存在しない、自然に近い姿を持つ動物達の姿。
 そこに作者は引かれているのです。動物の生態を実際に知っているわけではありませんが(笑)

 そんなわけですので、今回はVSショウグンギザミ特異個体です。オニムシャが圧倒すると思った?残念相性の悪さで接戦でした。
 ショウグンギザミ特異個体だって凄く強く、毒無しでも充分に強いんです。
 この世はまだまだ上がいるということを認識していただけるとありがたいです。

 そしてブッチャー大活躍!出番は控えめですがな(笑)せっかくなので、ブッチャーの新しいお面の紹介をしておきます。

■鉄壁のお面
・攻撃対象:攻撃しない
・攻撃方法:無
・採取率:★★★★★
・スロット数:熟練度2以降は2で固定
・効果:状態異常を受け付けない・状態異常に合わせたアイテムを使う・ガード性能高い

そんなわけですが、今回はここで終了です。ではでは!

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