横島が気を失ってからのGS世界の話です。
一言:唐揚げには何をかける? レモン? 塩? 七味? 醤油?
「ちょっと、凄い霊波が……って、結界が! 西条君、結界符をありったけ持ってきなさい!」
「先生! これを!」
傍にいた西条に指示を飛ばすと、すぐ様西条は両手に抱えた大量の結界符を美智恵に渡す。そのことに、違和感を覚えながらも美智恵は銅鏡に結界を施していく。
「何で結界が……!! 西条君が新しい符に替えたばかりなのに……!」
「え? いや、今から替えるところだったんですが……? だから、符を……。でも、まだ一時間は保つ筈だったのに、どうして」
「あ、あら? そうだったの? ……ってそんなことより、横島くんは?」
どうやら、西条が符を貼り替える前に横島を案内してしまったということに気づいた美智恵は、室内に居る筈の横島を探す。室内を見回すと、まず目につくのが先程まで霊波を放出していたのが嘘のように、大人しくなった銅鏡。大量の結界符を使ったのだから、当然の結果である。次に床に散乱している資料。よく見ると、結界符の残骸も混じっている。
そして、部屋の天井に突き刺さっている物体Y。まず、間違いなく横島であろう。
それを見た美智恵は、西条に引き抜くように指示を出すのであった。
「ごめんなさいね? 結界の強度が足りなかったみたい。でも、もう大丈夫よ。あの通り、さっきの倍の符を貼ったから」
明るい口調で告げる美智恵に、横島は何も言わない。
「怒ってる? ほら、責任は全部西条くんにあるから、後で好きなだけ……」
「あ、別に怒ってるわけじゃ。ただ、こう……霊力をごっそり持ってかれた感じでして」
「霊力を? そう……被害者と同じ症状ね。私たちの介入が早かったから、倒れずに済んだのかしら。それとも、保有霊力の差? もしくはある一定量までしか、霊力を吸収できないとか」
横島の言葉を聞き、考え込む美智恵。そんな美智恵に横島は、封印作業に入ると告げる。
「え? もう? 少し休んだ方がいいんじゃない? それに、資料も読んでないでしょ?」
「大丈夫ッス。文珠で『理』『解』したんで。文珠のストックもありますし、早いとこ『封』『印』しちゃいましょ」
「そう? じゃ、お願いね」
横島は『封』『印』と文珠に文字を込めると、銅鏡に当てる。すると、文珠が光を放つ。光が収まると、そこには封印と書かれた札が貼られた木箱があった。
「完了っと。これで仕事は終わりですよね? じゃ、帰っていいっすか? 霊力減ったからか、眠いんで」
「ええ。これは責任を持って、妙神山に持っていくことにするわ。……西条くんが」
「ちょ、先生!? 別にボクじゃなくとも」
「あら、万が一封印が解けそうになったとき、アナタ以上に素早く対処出来る隊員がいるかしら? それとも、こんなオバサンに妙神山を登れと?」
「……分かりました。ボクが持っていきます」
美智恵にイイ笑顔で言われた西条は、渋々妙神山に持っていくことに頷く。そんなやり取りを、ぼんやりした眼で見ていた横島が口を開く。
「気ィつけろよ、西条。オレは嫌だからな? 向こうの世界でも、お前がいるなんて」
「? キミは一体何を言ってるんだ?」
「その銅鏡な。別世界の入口なんだ。で、霊力を吸収された人は、その世界に……」
「はぁ? キミはここにいるじゃないか?」
西条が最もな質問をする。慌てて口を挟んだ西条と違い、美智恵は静観を選んだようで黙っている。
「そりゃ、オレがそのまま行くわけじゃないからな。吸収した霊力を分析して、知識や記憶を完璧にコピーした分身を銅鏡の向こうの世界に送るんだ。吸収した霊力が多い程、早く向こうの世界に行けるんだと。だから、もうオレの分身が向こうにいるんじゃないか?」
「そこまでコピーされると、本物と変わらないな。でも、普通逆じゃないか? 分析するなら、少ない方が早いと思うんだが」
「オレだって全部理解した訳じゃないんだ。ただ、分身の体は霊力をベースに作られるらしいから、その辺が関係してるんじゃないか? 体を作るのに足りない霊力は、培養して補うって。これ以上は分からん」
そこで、黙って聞いていた美智恵が口を開く。
「霊力の培養……ね。ねぇ、横島くん? 銅鏡が壊れるとどうなるのかしら? 向こうの世界とこっちの世界に影響が出る?」
「多分、単純に入口がなくなるだけじゃないですかね。それがどうかしたんすか?」
「うん。この銅鏡壊そうかと思って。だって、別世界との入口とか面倒なことになりそうだし。この銅鏡はもううちのものなんだし、壊れても問題ないし」
「そうなのか?」
「ああ。学校側も封印した後の処理は任せると言ってたしな。本物の曰くつきの銅鏡なんて、欲しがるのはその手のマニアくらいだから別に珍しくもないことさ」
どうやって壊そうかしらと考え込む美智恵をよそに、西条に問いかける横島。西条はそれに対し、珍しくもないと答えると美智恵に提案する。
「先生、いくら影響がなさそうと言っても、ここで壊すのは……。いっそ、宇宙に打ち上げると言うのは? 誰も手出しできないですし。万が一、封印が解けても影響はないでしょう」
「あら、それいいわね。じゃ、西条くん打ち上げ準備宜しく。あ、横島くんは帰っていいわよ」
「あ、はい。それじゃ」
霊力を消費したことによる気怠さを全身に感じていた横島は、許可が出たことで部屋から退出すると、事務所によらずまっすぐ帰宅するのであった。帰り道で、結局宇宙に捨てるのなら封印する必要なかったのではと考えながら。
――その数日後。密かに銅鏡は宇宙へと飛び立つのであった。
二話です。今回も恋姫の“こ”の字もありません。でも、クロスなんです。次回から出てきますから。本当ですから。
二話は、GSサイドのお話。こっち側のお話はもうありません。これ以上のGSキャラの追加もありません。銅鏡が宇宙に飛び立ちましたし、彼女たちの横島くんはいますから。
と言う訳で、この作品は銅鏡によって作られた、もうひとりの横島くんのお話です。とは言え、単純に偽物ではなく、同一人物がGS世界と恋姫世界に存在するようなものです。
何故こんな設定にしたかは、活動報告で。
事件について。銅鏡について。
これらは拙作内設定です。
ご意見、ご感想お待ちしております。
活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。