ベジータとナッパが荒野に咲く奇妙な植物と化して約一時間が経った。
「いったい何があったんだ」
まずベジータが意識を取り戻し、土中から頭を出し、土埃を払いながら回りを見回す。
「チッ、地球の原住民の雑魚どもに囲まれていやがる。ナッパ起きろ。ラディッツのクソヤロウを制裁する前に、この雑魚どもを皆殺しにするぞ!」
辺りにベジータの怒号が飛ぶ。
相当苛立っているのがよくわかる。
「つつつ、おっベジータ。俺たちはどうしていたんだ?」
「知るか!」
起き上がったナッパはまだ状況がいまいち飲み込めていないらしく、辺りをキョロキョロと見回す。
「へっベジータの言ってた原住民ってのはコイツらか」
ナッパは徐にスカウターのボタンを押す。
スカウターは無機質な機械音をたてて動き出した。
「まずあのスケベそうな爺は139、あの噛ませ顔の男は177、あのチビ禿げは206、山吹色は500、あのデカイ男はマジかよ、0かよ」
「おいクリリン俺たちはバカにされていないか」
「ええヤムチャさん、もろにバカにされてましたね」
ナッパの発した言葉にヤムチャとクリリンの闘志が燃え上がった。
確実にナッパは死亡フラグを立てていた。
まあそれもしょうがない話である。
広い宇宙の中でも戦闘民族サイヤ人にかなう者は一握りほどしか存在しない。
そのため、ベジータ、ナッパはほとんどの生物を見下していたのだ。
「雑魚ばかりか。こんな雑魚を相手にしていられるか。ナッパサイバイマンを出せ」
「ああ。へへへ、丁度六粒あるぜ。爺、噛ませ、チビ禿げ、山吹色、デカブツ、後ろに隠れている爺。丁度いいぜ」
ナッパは地面を掘り返し、
「なかなか土も良いじゃねえか。高値で売れるぜ」
とポツリと嬉しそうに溢すと種のような物を植え出した。
まさにその姿は、農民そのものであった。
すると、一瞬の間もおかず、土がむくむくと膨らみ、奇妙な緑色の生物が飛び出してきた。
「ケケケケケ」
「キシャーー」
「ウゲッ気持ちわりー」
「可愛い娘ちゃんが出てくると、チッとばかし期待してたんじゃがな」
「武天老師様、それはありませんって」
「じっちゃん変わらねえな」
「……」
クリリン、亀仙人、ヤムチャ、悟空が和やかに話をしている。
まるで緊張感がない。
それもしょうがないことである。
すでに悟空達は気で相手の力を計れるまでになっており、サイバイマンは敵ではないと考えていたからだ。
「なめやがって、やれサイバイマン!やつらをぶっ殺せ!」
「キシャーー!!」
ナッパの指示と同時にサイバイマン六体が一斉に襲いかかる。
六体のサイバイマンは地を蹴り、疾風の如く迫っていた。
「チッ雑魚が、狼牙風々拳」
ヤムチャが腰を下ろし、構えをとり、拳を繰り出した。
「ハイハイオーー」
未だに足元はお留守ではあるが、その雷鳴が鳴り響くかのような轟音が、ヤムチャが拳を振り抜く度に放たれる。
サイバイマンとは距離が空いていたはずが、その拳の衝撃波のみで、サイバイマンは頭が砕けたり、上半身と下半身が放されたりといったように、簡単に粉砕していった。
「フン、ぶっ殺されたくなかったら、さっさと消えるんだな!」
ヤムチャはドヤ顔で決め台詞を放っていた。
今まで見たことがないほどのヤムチャのドヤ顔に皆は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「やれやれ、敵じゃなかったぜ」
「ヤムチャ後ろだ!」
ヤムチャは気を抜き、気の関知を怠っていた。
戦場では一瞬でも気を抜いてはいけないという鉄則を怠ったのだ。
それも、今までさらさら活躍の場がなかったヤムチャが、大活躍をしたのだから、慢心してもしょうがなくはないのだが。
「チッ離れやがれ!」
下半身が千切れたサイバイマンと、腹に穴が開き緑色の血を流したサイバイマンが、ヤムチャの死角となる背中にへばりついて離れない。
「それでいいんだ」
ふんぞり返ったベジータが偉そうにいい放つ。
皆はどこかヤムチャに似たところをベジータに見いだしていた。
「キシャーーーー!!」
サイバイマンが激しく発光しだした。
「ヤムチャさーーーん」
「棒読みだなクリリン」
「まあそうだろ」
サイバイマンは爆発した。
土煙が巻き起こり、辺りにはサイバイマンの欠片やら、土やら、石やらが落ち、音を立てている。
土煙がおさまった時には、クレーターの中でぼろ切れのようになったヤムチャの姿が。
「クックックック、まず一匹目か、お前らそのゴミクズをかたずけておけ!!」
ベジータが顎で指示を送る。
「なあクリリン、あいつら気を感じることできねえんじゃねえか」
「多分な。そういう方面にはたけてないんだろ」
未だに喉かに話す悟空とクリリン。
まるでヤムチャのことは気にもしていないようだ。
すると、亀仙人が横たわるヤムチャに近より話かけた。
「そろそろ起きんかヤムチャ。皆お前さんが無傷なのをわかっておるぞ」
「バレてたか。少し皆を心配させたかったんだがな」
ヤムチャはスクッと立ち上がると埃を叩き、残念そうな顔をした。
「あんなちっぽけな気での爆発じゃあそよ風程度にしか感じなかったんじゃないかヤムチャ」
「まあな」
悟空達が笑いあっている一方で。
ベジータとナッパは。
「おいマジかよ。どうなってんだよベジータ」
「知るか俺に聞くな!嘗めやがって次はナッパお前が奴等を地獄に送ってやれ!!」
「ああ、任せておけ」
ベジータとナッパは依然として強気ではあるが、僅かながら違和感を感じ始めていた。