隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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今回もフラグが立ちます、しかも後々敵になる人に。


また今回は他人視点をいれてみました。


第六話 加減とは難しいな

父と共に洛陽に来てから2年。

俺は10歳になり、いよいよ本格的な修行を始められる様になった。

父が鍛冶屋に俺の剣を頼んでくれたらしく、鍛冶屋に取りに行く時の俺の喜び様は今までで1番だったらしい。

新しい剣は俺の意向を取り入れて作られたので、形はかつての俺の剣である朴刀と同じ形になった。

やはりこの形に握った感触、これは俺の剣だ。今までのどんな剣よりも手に馴染む。これからの修行は一層力が入るな。

 

 

学の方はあの馬鹿(袁紹)の邪魔が頻繁に入るので進みこそ遅かったが、洛陽で俺が入れる書庫は全て回り全ての書を読んだので、暫くは剣の修行に集中する。

もっと中央に行ければ貴重な書があるのだろうが、1武官の父の子である俺には中央に入れる権限など無い。こればかりは諦めるしか無かった。

 

 

あの馬鹿だが、送ってやってから次に会った時に一方的に真名を預けてきたが断った。

しかしそれから会う度に真名を押し付けてくるのが10日程続いたので仕方無く預かった。言うことは無いだろうがな。

それからは前以上に俺に絡んでくる様になった。面倒な奴だ。

 

だが絡んでくるのを俺が軽くあしらうと顔を赤くして満足そうにしているが・・・馬鹿も風邪を引くんだな。

 

 

 

そんな中、十常侍の狼藉がいよいよ本格的になってきた。自分達の私腹を肥やしたいが為の増税や財産の押収が頻繁に執り行われている。

それを看過出来ないと判断した武官や文官らが定期的に会合を開く様になった。父も当然参加している。俺も付いていくが会合に参加する為ではない。

では何故か?

 

 

俺は子守を任せられるからという理由で毎回連れていかれるのだ。

確かに孟徳達で慣れているが、数が多すぎる。十数人は子供がいるのだ、1人では正直全員を見られないぞ。

 

 

そこへ1人の女が近付いて来た。

 

 

「1人では大変だろう、手を貸そうか?」

 

 

褐色肌の女が声をかけてくる。

 

 

「済まない、そうしてくれると助かる。」

 

 

「任せておけ、私も普段から子守をしているから慣れてるのよ」

「済まないな、子守の経験はあるんだが数年前でな」

「ハッハッハ、その年で子守の経験があるとは、なかなか苦労している様ね?」

「それはお互い様だろう?挨拶が遅れたな、俺は夏侯恩、字を子雲だ。」

「うむ、私は黄蓋、字を公覆だ。」

 

 

 

(黄蓋・・・確か孫家の宿将だったな・・・と言うことは孫家の将は孫堅か・・・やはり女なんだな。)

 

 

最早有名な将が女なのには驚かないが・・・孫堅と黄蓋にこんな所で会うことになるとはな。

ん?と言うことは・・・。

 

 

「祭ー、遊んで遊んで!!」

「おお策殿、しかし他の子らの面倒も見ないといけないので少し待ってくださいね。」

「ぶーぶー、今遊んでくれなきゃ嫌!!」

 

(やはり孫堅の娘は孫策か・・・何処と無く元譲に似ているな・・・。)

 

「黄蓋さん、遊んでやるといい、他の子供達は殆ど寝ているから俺だけで大丈夫だ。」

「そうか?なら夏侯恩殿の言葉に甘えさせて戴こう、策殿、お相手しますよ。」

「わーい、お兄さんありがとね、私は孫策、字は伯符よ、今度はお兄さんも遊んでねー。」

 

 

そう言いながら黄蓋と孫策は部屋を出ていった。

 

(もしかしたら他にもこの中に俺の知ってる名の子供がいるんだろうか・・・いずれは敵になる奴も・・・考えたくないな・・・。)

(かつての俺なら例え過去に会ったことのある奴でも女でも孟徳の道を阻む奴なら斬ってきたが・・・今の俺にそれが出来るだろうか・・・。)

 

 

俺がこんなことを考える様になるとはな・・・いずれ来る乱世・・・苦しい事になりそうだな・・・。

 

 

 

数日後、今日も会合があり、俺は黄蓋と共に子供達の面倒を見ている。

子供達は活発で動き回る子供達と大人しく書を読む等をする子供達と2つにまとまっている。

活発な集団には孫策がいるので黄蓋が見ている。俺は大人しい集団を見ている。

 

子供達を見ながら書を読んでいると、隣の部屋から大きな声が響いてきた。

俺は何事かと隣の部屋に入ると、子供達が喧嘩していた。叫びと喚きが木霊してかなり五月蝿い。しかも黄蓋がいない、偶々外していた所を喧嘩が始まった様だ。

何とか止めようとするが、収まる気配がない。まるで孟徳の我が侭を抑えようとしている時の様だ。

仕方無く、俺は覇気を少し纏わせて声を張った。

 

 

「・・・静かに・・・しろぉっ!!」

 

 

 

   黄蓋視点

 

 

私は黄蓋、字を公覆、孫家に仕えている。

今は主君である孫堅殿の供として洛陽に来ている。

洛陽では十常侍達が皇帝を蔑ろにして民からの搾取を繰り返している。それを快く思わない諸侯が集まり対抗する為の話し合いをしているのだが、私はそこで面白い男を見た。

夏侯恩・・・何故かその男が私は気になった。

堅殿と話し合いを行う屋敷に来た時に堅殿の子供の策殿を任せられ、他の諸侯の子供の面倒を見ている者がいるからと言われて、その者に策殿を預けようと向かった。

そこで子供達を見ていた男、それが夏侯恩だった。

男というよりもまだ子供なのだが、その雰囲気は私よりも大人びていた。

会話をしてみると礼儀正しい子供なのだが、その不釣り合いな雰囲気が私を離さなかった。

それから話し合いがある度に夏侯恩と2人で子供達の面倒を見ている。

策殿と歳は変わらない位なのに不釣り合いな雰囲気、それにあの眼・・・とても強い決意や信念を宿した眼。まるで堅殿の眼を見ている様に感じた。

 

そんなある日、今日も話し合いが行われ、私は夏侯恩と子供達を見ている。

途中で厠に行ったら何やら揉めていたので仲裁してから子供達のいる部屋に帰ると何やら騒いでいる。私のいない間に喧嘩でも始まってしまったか・・・と思いながら部屋に入ろうとした時、大きな声がした。

 

 

「・・・静かに・・・しろぉっ!!」

 

 

その声に私は動けなかった。部屋の中からも声がしなくなった。

我に返り部屋に入ると夏侯恩がいたのだが・・・。

 

強烈な気を纏い、放っていた。

 

子供達は泣きもせず、ピクリとも動かない。完全に硬直しているみたいだ正直私も動くのがキツい。

 

「か・・・夏侯恩・・・殿・・・?」

 

私は恐る恐る声をかける。

 

「・・・あ、黄蓋さん・・・驚かせて申し訳無い・・・」

 

 

 

私に気付いた夏侯恩殿は纏っていた覇気を一瞬で掻き消した。硬直していた子供達は皆腰を抜かした様に座り込んだ。

夏侯恩殿の顔を見ると気まずい表情をしていた、恐らくは覇気が強すぎたのだろう。

細かな調節は出来ないのだろうが、ここまで気を正確に操れるとは・・・末恐ろしい子供だ。

しかし・・・一体何処まで延びるのか・・・とても興味深いわね・・・。




黄蓋の口調が違うのはまだ若いからだと思ってください。

しかし赤壁の重要人物にフラグ・・・無計画で済みません。

次回は初の戦闘場面になります。

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