隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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三話です。
ここから従妹や後に繋がる出会いが続いていきます。
直ぐにどうこうなる出会いでは無いですが重要な出会いです。


第三話 考えて考えて決めた道、自分を超える

曹家の跡取り、それは曹操だった。

しかしその曹操は女として産まれ、自分の知る曹嵩は男だったがこれも女だった。

自分の知る時代と異なる時代な事がはっきりしたがまだまだ考えなければならない事が無数にある。

猛将の魂の思考は休む暇も無く考え続ける。

 

 

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俺と女として産まれた孟徳、今はまだ字は無いから曹操だが、その衝撃的な最初の出会いから既に三日が経過した。

母と曹嵩との会話はその後二、三言で終わり母は与えられていた客間に戻って俺を侍女の預けて正式な挨拶の場に向かった。

俺は曹操が女である事を知った際に頭の中で散らかった考えを纏め直すのに精一杯で床に寝かされたり侍女に抱かれたりされていたがそんな事を気にする事も無く考えては眠り、また考えては眠りを繰り返していた。

母はどうやら暫くは譙に滞在する予定らしく一日に三度程度曹嵩と個人的な話をしており、一度は俺を連れていき曹操と逢わせる様にしていた。

会話している間は曹操が泣き出したりしない限りは姉妹での会話に花を咲かせており、俺は構わないが赤子の曹操すらほっとかれている。

仕方無く俺が側についていてやるがこの赤子の曹操には俺の知る孟徳の魂は宿っていないだろうと考えている。

勿論俺の意識が目覚めたのは産まれてから半年経ってからだったからまだ分からないが、余り過度な期待はするべきでは無い事を俺は既に悟っている、それにあの孟徳が女として振る舞うのは正直見たくないからな。

 

そんな訳で二人が会話している時は寝かされている曹操の側で思考を巡らせているのだか、今日はやたらと曹操の意識がこっちに向いている、思考しながら時折曹操の方を見ているのだがずっとこっちを見ているしやたらと手を延ばしてくる。

一度俺が手を差し出したらその手をやたらと掴もうとして手を延ばしてくるので、俺も思考ばかりでは疲れるので少し相手をしてやる事にした。

曹操の前に手を差し出すと上下や左右にゆっくり動かす、目の前で動く手を曹操は掴もうと手を延ばすがまだ産まれて間もない赤子、手は直ぐに床に落ちるがまた手を延ばす。

そんな事を繰り返していると曹操の表情に変化が見られた、徐々にしかめ面になってきている。

何時までも捕まらないから腹を立てているのだろう、自分の意のままにならない事に腹を立てるとは女で赤子と言えどやはり曹操なのだなと考える。

俺は動かしていた手を更にゆっくりにしてやる、すると直ぐに曹操の手は俺の手を捕まえた。

俺の手を捕まえた事に満足したのだろう、曹操の表情がしかめ面から一転満面の笑みになる、そして俺の手を掴んだまま腕をぶんぶんと振り回す。

結構な力で掴まれている上に俺の身体もまだ幼子だ、中々に痛いのだがこれは暫く離してくれそうに無いので諦めてされるがままになっていた。

 

そんな様子を眺めていたのだろう、母と曹嵩がこちらを見ながら話していたのに俺は気付いていなかった。

 

「恩は偉いわ、操ちゃんと遊んであげて面倒見てあげてる」

「ええ、まるで本当の兄妹の様です、操も人前では表情を余り変えないのに恩君に遊んで貰ってあんなに笑みを浮かべていますよ」

「この先世がどうなるのか分からないけど…恩と操ちゃんは出来れば並び立って欲しいわね」

「そうですね…中央の腐敗は恐らくもう止められないでしょうがせめて成長するまでは守ってあげなければいけませんね、姉上」

 

そんな話を二人がしている等知らず俺は暫くの間曹操の遊び道具にされてしまった。

 

 

それから更に数日が立ち、曹家への挨拶や跡取り誕生の祝いの儀も一段落して明日には母と共に自領に帰る事になり侍女達は帰りの準備をしている中、今日は母に抱かれて曹家の屋敷の外に連れ出されていた。

母曰く今日は帰る前に旧知の人物達と話をするらしい。

何故屋敷の外でなのかは知らないが恐らくは曹家への配慮だろうと考えている。

 

俺は母に抱かれながら街の様子を眺めているがやはり街には活気が溢れていて人の往き来が多い。

最初に来た時と比べればだいぶ落ち着いているがそれでも商人が多く来ているし作物を売りに来た者もいる様だ。

街の規模が違うから当たり前だろうがやはり規模が大きく治安がいい街には人が集まるという見本だろうな。

 

そんな風に街の様子を眺めていたら目的地に着いたのだろう、母が一つの建物に入る。

どうやら飯屋の様でそれなりに賑わっていて、母は階段を上がり上の階に向かい一つの部屋に入る。

中には既に先客が何人かいて母が入ると久し振りと軽い挨拶をしている。

先客としていたのは女が三人と男が二人で女二人と男二人は母とかなり親しげに話をしているから母と歳が近いのだろう。

残された女一人は全員に対して畏まった様に話しているから若いのだろうと考えていると、その若い女が俺の事を気にし始めた。

話している内容から母と歳が近いのだろう男女には既に子がいるらしいが若い女は恐らく十五を越えて間もない位だろう、幼子が珍しいのか頻りに俺の事を見てくる。

母もそれに気付いたのか若い女に俺を抱かせようとする、若い女はまるで腫物を扱うかの様に俺を抱いているのでもっとしっかりしろと意味を込めて若い女の頬をはたいてやる。

幼子故に頬をはたいた所で大した力は無いし精々戯れている程度にしか見えないだろうと思っていたが若い女は頬をはたかれた事に戸惑い母に俺を差し出していたが、母はそんな様子を見ていて何を思ったのかとんでもない言葉を投げかけていた。

 

「あらあら、良かったわね風鈴、恩が自分から誰かに手を延ばすなんて無かったのよ?気に入られたのね」

 

母がそんな事を言ってから他の男女も将来の夫婦だの祝言には呼んでねだのと囃し立てて、若い女も顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟きながら俯いてしまい危うく俺は落ちそうになった。

母が素早く俺を拾い上げて落ちる事は無かったがその後も母達は若い女の婿取りだの祝言は何年後だので盛り上がり、若い女はずっと顔を真っ赤にしており会話に加わる事は無く、日が暮れるまで母達の会話は終わらなかった。

 

 

そんな事があった日の翌日、街に帰る準備も終わり母は改めて曹嵩に別れの挨拶をしていた。

俺は母に抱かれているが曹嵩に抱かれた曹操がずっとこっちを見ていて時折手を延ばしてくる。

俺はそれを無視して色々な事をまた考えていた。

今特に気になっているのが聞き覚えの無い名で呼びあっている事がある事だ。

曹嵩は字が巨高で大勢の前で挨拶をしていた時には自身の事を巨高と名乗っていた。

しかし母と話している時、母は曹嵩の事を華蘭と呼んでおり俺はその名を知らない。

それに昨日旧知の者達と話していた時も聞き覚えの無い名が飛び交っていた。

 

気にはなるが話せない今は何も聞く事は出来ないのでいずれ確かめればいいかと結論を出して次の事を考えようとしていた時にふと曹操の方を見たらまた不機嫌そうな表情になっていた。

俺が無視していた事が不満なのだろう、頻りに手を延ばして俺に構えと言っている様にも見える。

仕方無く手を延ばしてやれば笑みを浮かべて俺の手を掴もうとしてくる、その様子を見て母と曹嵩はまた不穏な会話をしている。

 

「操ちゃんは本当に恩が気に入ったのね、風鈴も気にしてたし結婚相手には事欠かなさそうね」

「そうですね、昨日は皆と会ったのですよね?皆にも子が産まれたと聞いていますよ」

「ええ、袁家の紹ちゃんに荀家の彧ちゃん、公孫家の瓚ちゃんですって、皆女の子だから恩のお嫁さんになるかもしれないわね」

「英雄色を好むと言いますし、恩君には英雄の素質があるのかもしれません、将来が楽しみですね、姉上」

 

ちょっと待て、昨日会っていたのは袁家に荀家、それに公孫家だったのか?聞き覚えの無い名で呼びあっていたから分からなかったが知っている家の者と親交があったのか。

それに子の名前だ、袁紹に荀彧に公孫瓚だと?

反董卓連合の盟主になり官渡で孟徳と雌雄を決した袁紹、王佐の才と評され孟徳を支えた荀彧、幽州を治め優れた騎馬隊を用いていた公孫瓚、まさかこんな所で名を聞くことになるとは思わなかったな。

しかしまた女として産まれたのか、ここまでくると完全に俺が生きた時代とは別物なのだろう、そうなるとこの先どうなる?

黄巾の乱から始まる乱世、霊帝の崩御から反董卓連合、官渡や赤壁の戦と俺の知る時代の流れと何処まで変わらず何処まで変わるのか?

 

しかし俺のすべき事は決まっている、武芸も知勇も磨きかつての自分を超える事、それが出来れば少なくとも俺に降りかかる火の粉や災いは払う事が出来る筈だ。

昨日の母達の会話から察するに既に世の乱れは表に出始めているらしい、なら俺に出来る事は武芸を磨き鍛え、知識を得て自分が戦場に出る準備を怠らない事だ。

 

その為にも早く話が出来る様にならなければと俺は屋敷に戻ったら話す練習を始めようと決めた。

 

 

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情報を集め、整理して自分の道を決める猛将の魂。

決めた道の先に何があるのか、それは誰にも分からない。

そしてその道の先に様々な困難が待ち受けている事もまた知らない。




感想で指摘を貰ったのでここで説明します。

今修正してる話と既に掲載されている話は全くの別物で繋がりはありません。
なので訂正済みの話とその後の訂正前の話は全く繋がりません。
訂正前の話はこんな風に書いてたのかと確かめる為に残してあるので、それについてはご了承ください。

話の書き方についてもどう直したらいいか自分では分からないので書き方は変えずに行きます、指摘してくださった方もそれをご了承ください。

ではまたよろしくお願いします。

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