隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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大分お待たせしました。

連載はなんとか続けていきますのでよろしくお願いします。
今回後半がかなりグダグダかもしれないです。


第十八話 虎との再会

雛里と共に水鏡学院を後にして数日。俺達は南に向けて馬を進めている。ただ馬は俺の一頭しかいない。どうしているかと言うと……。

 

 

「……雛里……。」

「何ですか?冬椿さん。」

「……そんなにくっつかなくてもいいと思うんだが……。」

「こうしてる方が安全ですよ?」

「それは分かるんだが……。」

「……嫌なんでしゅか……?(ウルウル)」

「うっ……嫌ではないが……。」

 

 

 

こんな感じで雛里を俺の前に乗せてるんだが……雛里はやたらと俺にくっついてくる。しかも少し離そうとすると泣きそうな顔で見上げてきて俺の罪悪感を煽ってくるのでなし崩し的に雛里の思うままになっている感じだ。この俺の心を責めてくる感じは昔の秋蘭とそっくりだな。そんなやりとりをしながら襄陽から長沙に入りあちこち回っているんだが……かなり酷いな。袁術……袁紹の従妹だと聞いているが、あの家系は馬鹿しか産まれないのか?と疑問に思うな。

袁術の領地は税がかなり重いらしく立ち寄った邑や町はかなり貧しい生活を余儀無くされている様だ。それにより賊も多く何度も襲われた。まあ全て討ったがな。

今も立ち寄った邑を襲ってきた賊を討ち、賊の大将の身柄を軍に引き渡す為に邑に留まっているんだが……軍の動きが明らかに遅い。この辺りは長沙からはそれほど離れていない筈だがこの遅さはおかしい。

 

しばらく待っていると漸く軍の連中が来た様だ。文句の1つでも言ってやろうかと思いそっちを向いて……驚いた。

やって来たのは孫堅と黄蓋だった。孫堅は俺の事を憶えていないのだろう、大した反応が無いが黄蓋からは驚きと警戒心が見えるな。

 

「あんたかい?この邑を襲ってきた賊を討ったのは?」

「そうだ……まさかこんな所でまた会うとは思わなかったぞ、孫堅、黄蓋。」

「うん?なんで私と祭の事を知ってるんだい?」

「堅殿、夏侯のご子息じゃよ、洛陽で策殿らを儂と一緒に見ておったよ。」

「ああ、あの時の坊やかい、それは悪かったね、憶えてなくて。」

「それは構わないさ、どうやら変わり無い様だな、少し安心した。」

 

そんな会話をしながら賊の身柄を預けると、孫堅は兵だけを先に戻らせて俺をマジマジと観察し出した。

 

「随分逞しくなったもんだね、あの頃からやけに達観した子供だとは思ってたけどここまでになるとはね。」

「そいつはどうも……あれから鍛錬はサボっていないし場数も大分踏んだからな。」

「へぇ……祭はどう見る?」

「……寸分も隙を見せない上に纏う覇気……正直に言えば全盛期の堅殿を越えているやもしれませぬな……。」

「ちょっと……それは聞き捨てならないわね……私が坊やに負けるとでも言うのかい?」

「まあ……領地を奪われる様な年寄りに負けるつもりは無いが?」

「……年寄り……?私が年寄りだって……?」

 

途端に孫堅の雰囲気が変わり、体からは覇気が溢れてくる。雛里はすっかり怯えて俺の後ろにしがみついてる。

 

「……上等だよ!!面貸しな!!私はまだまだ若いって事を教えてやるよ!!」

「いいだろう、賊よりは歯応えがある事を期待するぞ。」

「その減らず口を塞いでやるよ!!祭!!立ち会いな!!」

「やれやれ……困った堅殿じゃ……そこのお嬢ちゃんはどうするかな?」

「あわっ!?一緒にいきましゅ!!」

 

 

こうして俺と孫堅は邑から少し離れた場所で勝負する事になった。正直な所食い付いて来るとは思ってなかったんだが……どうやら血気盛んな様だな……しかし孫堅から溢れ出る覇気は正に虎だな、気を緩めたら殺られかねないな。

 

 

「覚悟は出来たかい!!私に喧嘩を売ったことを後悔させてやるよ!!」

「そっちも負けて恥をかく覚悟は出来たか?」

「まだ言うかい!!祭!!早く始めな!!」

「血が昇りすぎじゃよ堅殿……では……始め!!」

 

 

 

 

黄蓋視点

 

堅殿と夏侯恩の仕合、儂は火が付いた堅殿がアッサリ勝つと思っておった。しかし夏侯恩は堅殿と互角以上に渡り合い、今は堅殿を圧し始めておる。

数年前、堅殿の補佐として洛陽にいた時に出会ったまだ子供だった夏侯恩。子供ながら覇気を使い、一緒に賊討伐に行った時には崖から飛び降り、賊の大将を討ち取った。その頃はいずれ儂等の脅威になるやもと警戒しておったが、夏侯恩が洛陽を去ってからは気になって仕方がなかった。

洛陽での任期を終えて江東に戻ってからは時折夏侯恩の情報を集めさせた。陳留の曹操と言う小娘に仕えているとの情報を得てからは兵を旅人に仕立てて陳留に送ったりもした。

その夏侯恩が儂の前で堅殿を圧している。堅殿に勝てる者などいないと思っておった、堅殿は江東の虎の異名を持つ程の武を誇っておる。少々知が足りず、それにより江東の地を奪われたが、武で敵う者はいなかった。

その堅殿を夏侯恩は完全に圧しているのが儂には信じられなかった。儂でもまだ敵わない堅殿が明らかに圧されている。

堅殿の表情がどんどん曇っていく、既に全力で攻めているのだろう、だが夏侯恩はまだ余裕を感じさせる表情をしておる。

そして……堅殿に疲労の色が見えた瞬間、夏侯恩は堅殿の持つ南海覇王を弾き飛ばして剣先を堅殿に向ける。

 

「……勝者……夏侯恩……。」

 

儂が挙げた勝者の声はとても小さかった。

 




孫堅と夏侯恩との再開と仕合です。
戦闘模写はやはり苦手です。

次回は来年1月中には載せられる様に頑張ります

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