改めてですが暖かい目で見守ってくだされば幸いです。
夏侯惇。
字を元譲。
曹操の挙兵より付き従う曹魏きっての猛将、左目を射抜かれその目を食らって尚も戦い続ける胆、曹操が最も信頼し不臣の礼を認め寝室への入室すらも許可する程の男、曹操に従い数多の戦場を駆け抜けた男。
そんな男も曹操の没して直ぐに床に伏し、曹操の嫡子曹丕が献帝から帝位を禅譲させるために動いているのを床で伝え聞くだけになっていた。
「…懐かしい頃を思い出したな」
懐かしさに浸り得物を握る事も無くなった両手を眺めながらふと自分もそんなことを思うようになったのかと苦笑する。
黄巾の乱より始まった乱世を覇道による統一を目指した自分の唯一の主君、曹操。
その曹操を挙兵より共に支えてきた従弟、夏侯淵。
力と胆力、そして強い忠義心により曹操の親衛隊を任された典韋。
典韋と互角に渡り合い、共に親衛隊を任された大食漢の許緒。
軽い物腰とは裏腹に完璧なまでの策を張り巡らせる天才、郭嘉。
その武と誠実さで曹魏を支えた猛将、張遼。
武の頂きに登らんと切磋してきた徐晃。
関羽の攻めすらも防ぎ、正に曹魏の盾と言わしめた曹仁。
見た目は奇抜だったが実力は間違いなく本物だった張郃。
他にも于禁、李典、楽進、荀彧、荀攸、賈詡、龐徳、程昱、曹洪…。
数多の将や軍師達が孟徳に惹かれ集い共に戦ってきた。
しかし天下統一を目前にした赤壁での決戦で孫権・劉備の連合に破れ、孫権も劉備も力をつけてしまい、結果三国が拮抗する形になってしまいそれぞれが国力の充実を図りながら様子を見ている…いや、劉備はおそらく孫権に戦を仕掛ける準備をしているだろう、関羽を討ち取ったのは孫権の軍勢だったからな。
しかし孟徳は志半ばに病に伏してその天命を終えた。孟徳の息子、曹丕の帝位即位によりこの乱世は新たな局面を迎える事になるだろう。この局面の先に待つ天下統一、それを孟徳に掴ませてやれなかったのが心残りだが曹丕達次代の魏が天下統一を果たす事を天から見守ろう、孟徳や淵と共に。
体に力が入らなくなってきた…瞼も重い…遂に自分にもその時が来た様だ。
(孟徳、淵、先に散った皆…俺も今行くぞ…)
この日、隻眼の猛将は静かに天命を終えた。
「あら…?」
「どうした貂蝉、例の外史に何かあったのか?」
外史の狭間、そこには二人の外史の管理人がおり本来の外史から別たれた異質な外史を調べていた。
「強い意思と力を持った魂が流されてきたのよん、理由は知らないけどね」
「貂蝉、お主その魂を利用するつもりか?」
「いいじゃない卑弥呼、この外史にはご主人様は現れないんだから誰が主役になったって」
「うむ…それには異論は無い、問題はその魂じゃ」
二人はとある外史をどうするかを話していた。
その外史には発端である北郷一刀が何故か現れなかった。原因は解らず、その外史だけが他の外史から完全に別たれてしまったのだ。仕方なく他の人物を送り込んではみたが、その全てが半ばも持たず散ってしまった。
その為二人の管理人は頭を悩ませていた。
「この魂は…正史とはまた違った世界の夏侯惇の魂ね、それも正史の夏候惇よりも断然優れてるわ、どうしてそんな魂がここに流されてきたのかはわからないけど…凄い偶然ね」
「しかし既に夏侯惇のいる世界に夏侯惇として転生させる訳にはいかんじゃろう、どうするつもりじゃ?」
「大丈夫よん、正史には夏侯の名を持つ人物は沢山いるから適当な夏侯の家に転生させるわ」
「それならば構わぬ、しかし…偶然導かれた異端の魂にこの外史の命運を託すとはのぅ」
貂蝉と卑弥呼はこの異質な外史を早々にどうにかしなければと考えていた、そこに導かれた夏候惇の魂、これによりこの外史がどうなっていくのか、それは2人にもまだわからない。
「さあ、この魂を転生させるわよん」
「うむ、始めようか」
貂蝉と卑弥呼により別たれた外史に転生される役目を終えた筈の猛将の魂。
「うふふ、この外史で貴方がどう生きていくのか…見せて貰うわね?」
その魂はゆっくりと外史に呑み込まれ溶けていった。
修正、訂正の第一弾です。
大まかな本筋はそこまで弄りませんが追加キャラをどう付け足していくかが悩み所です。