隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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今回は雛里の決意と想いが表れます。

しかし自分で書いておきながら冬椿の鈍感さは凄いと思います。


第十七話 鳳雛の巣立ち

水鏡先生のお叱りを受けてから数日。

俺はそろそろ出立する事を水鏡先生に話すために水鏡先生の部屋を訪ねた。

 

 

「失礼します、水鏡先生。」

「あら色男君、どうしたの?」

「……それは忘れてください……。」

「うふふ、冗談よ、それでどうしたの?」

「そろそろ立とうと思ってるんです。」

「そう……淋しくなるわね。」

「済みません……お世話になっておいて何も出来ませんが……。」

「なら一晩共にして貰おうかしら?」

「……勘弁してください……。」

 

 

 

それから数日かけて出立の準備を整えながら情報をまとめていた。目的地は南の袁術の領地と決まっている。

今の袁術の領地は荊州の南四郡から江東までの広範囲を領地としている。江東は元々孫堅の領地だったが何故か袁術に呑み込まれている。あの孫堅に何があったのかが気になるな。

それに長江域なら水練に秀でた者が多いだろう。いずれ必ず水軍を使う時が来る筈だからな、出来れば陳留に勧誘したいものだな。

 

 

 

 

雛里視点

 

最近冬椿さんが色々調べてる……きっと近く水鏡学院を出ていっちゃうんだ……。

冬椿さんに陳留に誘われてから私の心の中は冬椿さんでいっぱいでしゅ……あんなに優しくてカッコよくてとても紳士的で……勇気を出して一緒にお風呂に入った時は優里ちゃんに冬椿さんを取られたくなくて……あんなことまでしちゃって……水鏡先生に叱られた時には私達を庇ってくれて、私が冬椿さんに謝ったら私の頭を撫でながら気にするなと言ってくれて……。

私が冬椿さんに抱いてる想い……優里ちゃんは恋だって……男の人を愛する事だって教えてくれた……。冬椿さんの事を考えたり、お話をすると心がとっても暖かくなって……冬椿さんが優里ちゃんとか他の子と話してるのを見たら心がチクチク痛くなる……これが恋……最初はよく分からなかったけど……今なら分かる……。

私は……冬椿さんが好き……冬椿さんと一緒にいたい……。陳留の曹操さんの軍師じゃなくて、冬椿さんの軍師になりたい。

でも……冬椿さんはもうすぐここを出ていっちゃう……。冬椿さんは大陸を回ってから陳留に戻るって言ってた……今冬椿さんと離れたらきっと何年も会えなくなっちゃう……そんなの……そんなの嫌だよ……。

 

「何悩んでるの、雛里。」

「……優里ちゃん……。」

「お兄さん、きっと2、3日したら出ていっちゃうよ。」

「……うん……分かってる……。」

「……雛里はお兄さんに付いていきたいんじゃないの?」

「……でも……大陸を回るのに……私が付いていったって……。」

「……雛里はどうしたいのさ?」

「……私は……冬椿さんと一緒にいたいよ……でも……。」

「だったらその想いをお兄さんにぶつけたらいいじゃない、行動する前から恐れてたら進めないよ。」

「……でも……でも……。」

「……焦れったいなぁ……そんなに不安ならずっと怯えてればいいよ、ボクがお兄さんに付いてくから。」

「……えっ……優里ちゃん……!?」

「雛里が行動しないんならボクが行動するよ、ボクもお兄さん好きだし、ああ見えて押しに弱そうだから強引に迫れば……。」

 

優里ちゃんの言葉の後半は私の耳には届いてなかったです。呆然としてる私の頭の中では考えたくない事がグルグル渦巻いてました。

冬椿さんと優里ちゃん……2人で大陸を回ってる……お互いの距離がとても近く……寄り添って寝たり……遂には裸の2人の影が重なって……。

そこまで考え、ふと優里ちゃんが扉のほうに向かってるのが見えて……気が付いたら私は扉の前に優里ちゃんに立ちはだかる様に立ってました……。

 

「……雛里……退いてくれる?」

「……ダメ……ダメなの……。」

「何がダメなの?お兄さんの所に行くんだから退いてくれる?」

「ダメなの!!優里ちゃんでも……優里ちゃんでもダメなの!!私が……私が冬椿さんに付いていくの!!だからダメなの!!」

「……雛里……気付くの遅すぎだよ。」

「えっ……!?優里ちゃん……?」

「ボクは雛里の本音が聞きたかったんだよ、理屈云々は抜きにした雛里の本音がね。」

「えっ……じゃあ……。」

「ボクはお兄さんに付いてくつもりは無いよ、まぁ雛里が最後まで渋ったら付いてく気だったけどね。」

「……優里ちゃん……。」

「雛里、水鏡先生の部屋に行ってきなよ、水鏡先生にはちゃんと話しておかなきゃダメでしょう?」

「……うん……ありがとう優里ちゃん……。」

 

優里ちゃんに背中を押されて私は水鏡先生の部屋に向かいます。もう心は決めました。私は……冬椿さんに付いていきます……冬椿さんの傍にいたいです。

 

 

雛里視点終了

 

水鏡学院を立つ日、俺は日の出る前に門に来た。門の前には水鏡先生がいた。

 

「また来てね、子雲君。」

「はい、水鏡先生、お世話になりました。」

「……冬椿さん!!」

 

声がしたので振り向くと、雛里と優里がいた。2人は勘づいてるだろうとは思っていたが……雛里の格好はまるで旅に出る様な格好だ。

 

「冬椿さん……私も連れていってくだしゃい!!」

「……何!?どうして……!?」

「私……冬椿さんの軍師になりたいんでしゅ!!冬椿さんの傍にいたいんでしゅ!!」

「……雛里……お前……。」

「お兄さん、女の子がここまで言ってるんだよ?それを無下にするの?」

「子雲君、雛里ちゃんは本気なの、私も子雲君になら安心して雛里ちゃんを任せられるわ、一緒に連れていってあげて頂戴。」

「……危険だぞ?宿も食事も保証は無いんだ、それでも一緒に来たいのか?」

「はい、我慢しましゅ、冬椿さんの傍に置いてくだしゃい!!」

「……分かった……宜しくな、雛里。」

「あっ……はい!!宜しくお願いしましゅ!!」

 

 

 

 

 

こうして俺は雛里と共に水鏡学院を後にして南へと向かうのだった。




雛里は冬椿専属の軍師になりました、これからは冬椿にベッタリになります。

優里は原作の星みたいな感じになってます、からかいつつ核心を突く感じは軍師の素質です。


次回は2人旅の模様をお見せします。

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