隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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ちょっと時間がかかりました。

朱里と雛里ともう少し絡みます。


第十五話 伏龍と鳳雛と

諸葛亮とホウ統が少女だと知り驚愕してからも水鏡先生と話を続け、気が付くと外はすっかり暗くなっていた。

 

「随分長く話し込んでいたみたいね……。」

「そうですね……しまった……宿まで遠いな……。」

「しばらくここにいたらどうかしら?滞在する猶予はあるのでしょう?」

「いいんですか?かなりの生徒がいる様ですが……?」

「空き部屋ならあるわ、元々子雲君の為の部屋なのよ。」

「なら……済みませんがしばらく厄介になります。」

「ええ、それじゃあ案内を……。」

 

水鏡先生は立ち上がると部屋の扉を開けた。

 

「はわっ!?」

「あわっ!?」

「盗み聞きは感心しないわよ、朱里ちゃん、雛里ちゃん。」

 

諸葛亮とホウ統は立ち去る振りをして話を盗み聞きしていた様だな。

 

「構いませんよ水鏡先生。聞かれて困る様な話では無いですから。」

「そう?子雲君がいいならいいけど。」

「だが盗み聞きは良くないな、2人だって盗み聞きされたら気分は良くないだろう?」

「……はい……考えが足りませんでした……。」

「……はい……ごめんなさい……。」

 

2人は揃って頭を下げる。まるで姉妹みたいだな。

 

「分かってくれたならいいさ。さて、まだちゃんと挨拶をしていなかったな。姓は夏侯、名は恩、字は子雲、真名は冬椿だ。」

「はわわ!?真名まで預けてくれるんでしゅか!?」

「あわわ!?どうしてまにゃまで!?」

「さっき傷の手当てをして貰っただろう?俺は恩を受けた者に礼として真名を預けるんだ。2人は俺に真名を預けてくれなくても構わないぞ。」

「そんな失礼な事は出来ましぇん!!姓は諸葛、名は亮、字は孔明、真名は朱里でしゅ!!」

「あわわ……姓はホウ、名は統、字は士元、真名は雛里でしゅ……。」

 

2人はそれぞれ帽子を取って挨拶してくれる。

 

「そうか……短い間かもしれんがよろしくな、朱里、雛里。」

 

俺はつい2人の頭をくしゃくしゃと撫でてしまった。

 

「はわわ!?そんな子供扱いしないでくだしゃい!!」

「あわわ!?……あわわ……。」

「っと……スマン、従妹がいるからつい撫でちまった。」

 

俺は撫でてた2人の頭から手を離す。朱里は子供扱いされたと思い文句を言ってきたが撫でる手を払うことは無かった。雛里は大人しく撫でられてたな。何となく態度が朱里は華琳、雛里は秋蘭に似てたな。

そういえば俺が頭を撫でると皆顔を赤くするが……何故だ?

 

 

「はいはい、仲良くするのはいいから、朱里ちゃんに雛里ちゃん、子雲君を部屋に案内してあげて頂戴。」

「はわっ!?わかりましゅた!!」

「あわっ!?付いてきてくだしゃい!!」

「ああ、頼むよ、水鏡先生、失礼しました。」

 

 

手を振り見送る水鏡先生を背に俺は朱里と雛里に案内されて学院を歩いていく。朱里と雛里は時折俺をチラッと見てはまた前を向く、を繰り返している。

 

「……俺の顔に何か付いてるか?」

「はわっ!?な、何も付いてないでしゅ!!」

「あわっ!?な、何でも無いでしゅ!!」

 

 

……何というか見ていて和むな……慌てて話して噛むのは……。

 

「あの……聞いてもいいでしゅか……?」

不意に朱里が話しかけてきた。

 

「何だ?」

「冬椿さんの妹ってどんな人なんですか?」

「妹と言っても従兄妹なんだがな……2歳離れた従妹が3人いるぞ。」

「3人!?三つ子なんでしゅか!?」

「いや、その3人も従姉妹だ。俺が仕えている曹操と共に曹操に仕えている夏侯惇と夏侯淵だ。」

「ええっ!?従妹さんに仕えているんでしゅか!?」

「確かに産まれたのは俺の方が早いが俺の父が曹家に仕えていたんだ。だから主従としては曹操が上なんだ。」

「そ……そうなんでしゅか……。」

 

そんなことを話ながら歩いていき、おそらく宿舎であろう建物の一番奥の部屋の前に着いた。

 

「ここが水鏡先生が冬椿さん用にあてがわれた部屋です。」

「そうか、済まんな。」

 

 

扉を開けて中に入ると……あまりの部屋の広さに驚いた。

 

「おい……何だよこの部屋の広さは……!?」

「はわわ!?凄く豪華でしゅ!?」

「あわわ!?私達の部屋の倍は有りそうでしゅ!?」

 

 

水鏡先生……これは差別にならないか……?こんな部屋に1人は……辛いぞ?

 

 

「……朱里、雛里、この部屋しか空きは無いのか……?」

「……今はこの部屋しか無いでしゅ……。」

「……朱里ちゃん……冬椿さん……凄いんだね……。」

「……冬椿さん……案内も終わりましたから……私達はこれで失礼します……。」

「あっ……!?朱里ちゃん引っ張らないで!?」

いきなり朱里が雛里を引っ張って部屋を出ていった。最後に朱里と目が合ったが……あの目には嫉妬や怒り、悔しさが篭っていた。

かつての俺が関羽に対して向けていた目と同じ目だな。俺は関羽が孟徳に高く評価された事に嫉妬した。確かに関羽は強かった、それは俺も認めていた。だが孟徳が俺よりも関羽を優遇し、俺の立ち位置を関羽に奪われてしまう事を恐れた。結局関羽は孟徳の元には付かず劉備の元に戻ったが俺は心の何処かで安堵していた。その後俺と関羽が直接戦う事は無かったが、呉に討たれるまで関羽には負けんと鍛錬を止めなかったな。

話が逸れたが、さっきの朱里の目は正にそう言った思いが篭っていた。朱里にはおそらく水鏡学院で一番なのは自分だと言う自負があるんだろう。そこへいきなり現れた俺が自分よりも上と評価されれば嫉妬するのも当然だろう。

こうなると朱里は陳留には間違いなく来ないだろう。諸葛亮はこの時代でも俺達の敵となるか。

 

 

朱里視点

 

 

 

私は無言のまま雛里ちゃんの手を引き宿舎の廊下を歩いていく。雛里ちゃんが何か言ってるけど私の耳には入らなかった。とにかく子雲さんから離れたかった。

こんな感情を抱くなんて自分でも驚いてる。今まで誰かに嫉妬したりする事は無かった。

でも私は子雲さんに嫉妬した。自分よりも頭が良くて色々な事を知ってて、あの水鏡先生よりも凄い人、それも男の人。

私だって水鏡学院に来て水鏡先生に教わったり自分で書物を読んだりして沢山の知識を身に付けた。水鏡先生には及ばないけど、水鏡学院では一番だって思ってた。

負けたくない。子雲さんに負けたくないよ。でも今までのやり方じゃきっと勝てない。子雲さんに勝つには……もっと……。




この小説での朱里はちょっとダークになります。こんな朱里でもいいと思うんです。
雛里は純情なキャラになります。秋蘭に近い感じになります。


次回はオリキャラを出します。

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