隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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今回はあの2人と出会います。


冬椿はとても紳士的な人物です。


第十四話 幼き知者との邂逅

陳留を離れて一月。

俺は荊州の襄陽に来た。たしか水鏡先生は襄陽の何処かに私塾を作ると言っていたんだが……何処だか全く分からん。おそらく水鏡先生は大きい街には作っていないんだろう。こうなったら襄陽中をしらみ潰しに探すしか無いんだろうが、襄陽は陳留と比べると領地も広い上に地形も起伏に富んでいる。探すのに何日かかるか分からんが……やるしかないだろう。幸いまだ手持ちの食料には余裕があるし、季節は春だ、最悪山で獲物を採ればいいだろう。

 

「よし……気合を入れて行くか。」

 

一先ず西側から当たってみるか。

 

 

 

 

 

水鏡先生の私塾を探し始めて4日。今俺は山にいるんだが……。

 

「まさか猪に不覚を取るとはな……。」

 

正面から襲ってきた猪に気を取られ、左から来た猪に気付かなかった。完全に眼帯による死角だったが俺の油断が原因だ、早く慣れないといかんな。

幸い2頭の猪は仕留めたが、左腕と左足を負傷しちまった。薬や手頃な布も持っていない、どうしたものか……。

 

 

 

カサッ

 

(……何かの気配がする……また猪か……!?)

 

カサカサッ

 

(ちっ……あまり動けん……何とか一撃で仕留めなければ……!!)

 

ガサガサッ

 

(さあ……来いっ!!)

 

「……朱里ちゃん……本当に合ってるの……?」

 

(っ……!?子供の声!?何故こんな山に子供が!?)

 

「だ……大丈夫だよ雛里ちゃん……きっと合ってるよ……。」

 

(しかも2人……それに女!?)

 

「ほら、出られた……はわっ!?」

「朱里ちゃんどうしたの……あわっ!?」

 

茂みから現れたのは2人の子供だった。

 

「はわわ……こ……殺さないでくだしゃい……。」

「あわわ……た……助けてくだしゃい……。」

「ん……?ああ……済まん、驚かせてしまったな。」

 

俺は右手に握っていた朴刀を地面に刺して離す。

 

「ほら、なにもしないから早く家に帰りな。」

「はわ……さ……山賊じゃないんでしゅか……?」

「山賊じゃないぞ、猪を狩ってただけだ。」

「あわ……け……怪我してるんでしゅか……?」

「ん……ああ……ちょっと油断してな。」

「……雛里ちゃん、お薬持ってたよね?」

「……うん、手当てしてあげよう。」

「お……おい、俺の事はいいから家に帰るんだ。」

「怪我してる人をほっとけましぇん!!」

「そうでしゅ!!ほっとけましぇん!!」

 

そう言って2人は俺の左腕と左足の傷の手当てをしてくれた。

子供が山の中を歩き回ってるのもそうだが何故傷の手当てまでしっかり出来るんだろうか?気になった俺は聞いてみることにした。

 

「……2人はこの辺に住んでいるのか?」

「はわ!?……はい、そうでしゅ。」

「あわ!?……この近くの私塾に住んでましゅ。」

「私塾……!?すまんがその私塾の先生は水鏡先生で間違いないか!?」

「はわわ!?そうでしゅよ!?」

「あわわ!?水鏡先生を知ってるんでしゅか!?」

「短い期間だが水鏡先生に教わっていた、まさかこんな山の中に私塾を作るなんて……。」

「……水鏡先生に……?」

「……教わっていた……?」

「済まないが案内してくれないか?実は水鏡先生の私塾を探しに襄陽まで来たんだ。」

「は……はひ!!わかりましゅた!!」

「つ……ちゅいてきてくだしゃい!!」

 

 

2人の案内の元水鏡先生の私塾に向かい山を進む。しかしこんな山道を子供に歩かせるには酷なので俺の馬に乗せてやった。俺は手当てして貰ったお陰で歩く程度には問題ない、そんな柔な鍛え方はしていないからな。

山道を進むと山中に立派な建物が見えてきた。あれが水鏡先生の私塾、水鏡学院だそうだ。門の前で2人を馬から降ろすと水鏡先生の名を呼びながら中に走っていった。

しばらく待っていると2人に手を引かれてやって来た……。

 

「お久しぶりです、水鏡先生。」

 

「ま……まさか……子雲君なの……!?」

「はい、夏侯恩子雲です。水鏡先生、十数年振りですが御元気そうですね。」

「ええ……子雲君も、あんなに小さかった子雲君がこんなに凛々しく逞しくなって……!?子雲君、その眼帯は!?何があったの!?」

「す……水鏡先生……お客様なのに立ち話は良くないと思いましゅ……。」

「あっ……そ……そうね……子雲君、入門証は持ってきてるかしら?」

「勿論です、あのときは男に渡したのは初めてだと言っていましたが、あれから男の子供は受け入れたのですか?」

「いいえ、結局男の子に子雲君の様な子はいなかったわ……さあ、入って頂戴。」

 

俺は水鏡先生に付いて私塾の中を歩いていく。後ろには2人が付いてきている。何人かの子供とすれ違ったが皆一様に驚いていたな。まあ女しかいない私塾に男が来たんだ、驚くに決まっているか。

 

案内されたのは水鏡先生の部屋の様だ。扉に許可無く立入禁止と札がかかっていた。

 

「朱里、雛里、2人は部屋に戻りなさい。」

「はわ!?……はい……。」

「あわ!?……わかりました……。」

 

2人は落ち込みながら離れていった。

 

「さあ、座って頂戴、子雲君。」

「ありがとうございます、失礼します。」

 

俺と水鏡先生は机を挟み向かい合って座る。

 

「色々聞きたいけれど……先ずは私と別れてからの十数年、子雲君が何をしてきたのか聞かせてくれるかしら?」

「……そうですね、この十数年色々ありましたよ。」

 

 

俺はこの十数年の事を話した。洛陽に行った事。洛陽の乱れを感じた事。実戦を経験した事。町に戻り華琳の配下になった事。今は陳留で将軍及び警備隊隊長をしている事。全てを話した。

 

 

「様々な経験をしたのね……子雲君は……。」

「はい、剣の修行も学も欠かさずにやって来ましたよ。」

「じゃあその眼帯はどうしたの?それに陳留の将軍が何故荊州に来たの?」

「陳留を離れたのは優秀な人材を探すため、眼帯は正体を隠す為と察知能力を高める為って所です。」

「それじゃあ子雲君がここに来た目的は……?」

「……はい、優秀な軍師を探す為です。」

「……やっぱり子雲君は軍師にはならないのね……子雲君なら間違いなく大陸一の軍師になれるのに……。」

「俺が目指すのは孟徳の天下を斬り開く為の武と知ですから……大陸一の軍師になりたい訳ではないので。」

「残念ね……それに今いる子達はまだ幼い……まだ軍でやっていける年齢では無いわ……だから連れていく事は許可出来ないわ……。」

「分かっています。何人かすれ違った生徒は皆子供……水鏡先生に教えを受けているから皆優秀でしょうが、いきなり軍を任せる事は出来ない……まして戦場に連れていくなど出来ません。」

「……それじゃあどうするのかしら?このまま陳留に帰るの?」

「俺は今、数年先を見て行動しています。水鏡先生が特に優秀だと思う生徒に話をさせて頂きたいんです。この学院から巣立った時、陳留に仕官してくれないかと。」

「……本当に勿体無いわ……子雲君の眼は……一体何処まで見ているの……?」

 

 

「…………数年後に始まる乱世……そしてその先にある華琳の……曹孟徳の天下まで。」

 

 

「……子雲君の決意は分かったわ。私が特に優秀だと思う生徒は3人いるわ。」

「3人……その名は……?」

「……諸葛亮孔明、ホウ統士元、徐庶元直、この3人が水鏡学院の誇る3人よ。」

 

(やはり諸葛亮にホウ統、徐庶か……かつて徐庶に3人は水鏡先生の元で同門だったと聞いていたからこれには驚かないな。)

 

「因みにさっき子雲君を案内してきた黄色い髪の子が孔明ちゃん、とんがり帽子を被った子が士元ちゃんよ。」

「……なっ……!?あの2人が……!?」

 

 

 

予想外な事に俺は頭を抱えるしか無かった。




と言うわけで諸葛亮とホウ統と出会いました。

2人共原作とは性格等が変わります、その辺も後に載せるキャラクター紹介に書いていきます。


次回は朱里と雛里と更に絡みます。

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