隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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タイトル通り夏侯恩が行動を始めます。
また例の3人組が揃って登場します。


第十二話 行動開始

俺達が陳留に移ってから1年。

俺はいよいよ自分の計画を実行させる事にした。

 

俺のかつての経験と同じなら4年後に黄巾の乱が起こり、大陸は本格的に乱世へ突入する筈だ。だが今の俺達の力では乱世を勝ち抜く事は出来ない。だから俺は自分の足で優秀な人材を大陸を回りながら華琳の元に送る為の準備を陳留に移ってからしてきた。

それに華琳達には俺無しでも政務や軍事をしっかり出来る様になってもらわなければならない。特に華琳は主として俺を使うのをどうも躊躇いがちだからな。もっと王としての威厳を身に付けてもらいたい。

 

行動を起こす為、いつもは春蘭に下される賊討伐を俺が志願した。華琳達にはたまには実戦に出たいからと適当な理由を付けて討伐の任を受けた。

(華琳、春蘭、秋蘭、しばらく留守にするが陳留を頼むぞ。)

俺は心の中で華琳に詫びて、討伐隊を編成するために玉座の間を後にした。

 

 

 

 

秋蘭視点

 

……兄者の様子が妙だ……。

この1年、兄者は相当量の仕事を凄まじい勢いでこなしてきた。陳留の治安改善や発展は確かに必要だったがたった1年でここまで改善させる必要があっただろうか?

それに……陳留にやって来る商人達と密かに何かを話している。商人達との話し合いの最中は私や華琳様ですら通さない。兄者……一体何を考えているのだ……?

 

そんな中で兄者が賊討伐に志願した。別に賊討伐に行くのには驚かない、華琳様から指示があれば私も兄者も討伐に動くからな。しかし兄者が志願するのは初めてだ。そして玉座の間を出ていく時の兄者の顔……。

 

何か決意を秘めたあの顔が頭から離れない。何時もと違う兄者の顔に私の不安が掻き立てられる。まるでしばらくの別れを告げるみたいな……!?

そんな事があたまをよぎったらもういてもたってもいられなくなり、私は無断で討伐隊を率いて出陣した兄者を追う為に厩に向かった。

兄者……兄者……!!

 

 

 

秋蘭視点終了

 

 

 

俺は十数人の騎馬隊を率いて賊の拠点と思われる場所に向かっている。この兵達は俺の隊の兵で、俺がしばらく抜ける事を話してある。兵達は「将来のこの国の為ならば、喜んで汚名を被ります!!」と言ってくれた。俺が帰った時には隊の兵全員と飲み明かそうと誓った。

 

ただ1つ計画に支障があるとすれば……秋蘭だな。

何故か秋蘭が俺達の後を付いてきている。まだ距離は離れているが、このままでは俺に付いてきそうだ。

今陳留を華琳と春蘭の2人だけには出来ない。何とか秋蘭には陳留に戻ってもらわないとな。

幸い俺達は全員騎兵だ、行軍速度を上げて秋蘭を振り切るか。そして兵達には途中で散ってもらい俺が何処に行ったか分からなくすればいいだろう。

俺は馬の速度を上げて賊の拠点に向かった。

 

 

 

 

上手く秋蘭を撒いた俺は賊の拠点に攻め入り壊滅させた。後は兵達が来て処理してくれるだろう。

 

俺は馬に跨がり、拠点内にあった適当な羽織を頭から被り眼帯を左目に着けた。そして馬を南東に向けて走らせる。

しかし眼があるのに眼帯を着けるとかなり違和感があるな。左目の視界が無いことは慣れているがこの違和感にも慣れないとな。

さて……最初の目的地は荊州の水鏡先生の私塾だな、軍師候補がいるといいんだがな……。

 

 

 

 

華琳視点

 

今陳留の城内は大混乱に陥っている。それもその筈よ、何せ兄様……夏侯恩が賊討伐に行ってから行方不明になったのだから。

夏侯恩が率いていた兵達も知らない、分からないと言うし、無断で追っていった秋蘭も途中で見失ってしまったみたいだし。

その秋蘭は帰ってきてから部屋に籠ってしまったわ。無理もないわね、私達の中で一番兄様を慕っていたし……それに秋蘭が兄様に向ける視線、あれは従兄を見る眼じゃ無いわ、好きな男を見る眼だったわ。

でもね秋蘭、私だって兄様を想う気持ちは負けないわ、兄様は私達を従妹としか見てくれないけど、私だって女として兄様が好きなのよ。それは春蘭も同じ、あまり態度には出さないけど時折熱の籠った視線を兄様に向けてるわ。

ふふ……従姉妹でありながら1人の男を想う恋敵だなんてね……まあ兄様は鈍感だから分からないでしょうけど。

 

話が逸れたわ。とにかく今兄様が行方不明になった事を街の民達に知られる訳にはいかないわ。民達や陳留にやって来る商人達は皆兄様を慕っている、その兄様が行方不明と知れたら皆陳留を離れてしまう、それだけは阻止しなきゃいけない。でも兄様が討伐に出たのを何人もの民が見ている、それが帰ってこなければ皆不安に思う。

どうにかしないと……そういえば最近兄様はよく商人達と何か話をしていたわね……何か関係があるのかしら?

 

 

私は町で商人達の集まる一角にやって来た。目的は兄様が何を話していたのか探る為。話が聞ければ兄様が何を考えていたのかが解るかもしれない。

何人か声をかけたけど誰も何も話さない、相当隠していたい事なのかしら……私に隠し事なんて……兄様の馬鹿……。

 

「おや?曹操様、どうなさいました?」

 

悲しみに暮れていたら1人の商人が話しかけてきた。その商人は兄様が贔屓にしている商人の1人、もしかしたら何か知っているかしら……?

 

「……貴方は兄様とよく話をしていたわよね?」

「はい……もしや夏侯恩様が街を離れられたのですか?」

「……ええ……貴方は何か知っているの……?」

「後で夏侯恩様が使っていた広間に来てください、そこでお話致します。」

「あの広間に……?分かったわ……春蘭と秋蘭も呼んで構わないかしら?」

「構いません、夏侯惇様も夏侯淵様も悲しんでおられるでしょうから聞いていただいた方が気持ちが晴れると思います。」

「分かったわ、一刻程でいいかしら?」

「はい、では一刻後にお待ちしております。」

 

 

 

 

まさか話して貰えるとは思ってなかったけど、これで兄様が何を考えていたのか、どうしていなくなったのかが分かるわね。

城に戻る私の足取りはとても軽かったわ。

 

 

 

華琳視点終了

 

 

 

俺は荊州への道中、偶々見つけた邑で少しばかり食料を調達しようと思い、邑に立ち寄った。

自分の食料と馬の食料を少し買い、何気なく邑を見て回った。この辺りは俺達の領地では無い為か、守備の為の兵は無く、少々の防柵があるだけか……この程度では賊に襲われたらひとたまりもない筈だが……聞いてみるか。

 

「済まないがこの邑は賊に襲われた事は無いのか?」

「いや、何度かありますが……何か?」

「それにしては兵もいないし、随分守りが疎かな様だが?」

「この邑には何人か腕の立つ者がいまして、それで今まで無事でいられておりますじゃ」

 

 

腕の立つ者か……少数の賊なら問題無いだろうが、中規模以上の賊が来たら流石に危険だな……。

 

 

「……夏侯恩様……?」

 

 

名を呼ばれてもう華琳の差し向けた兵に見つかったかと思い振り向いたら……。

 

 

「……やはり夏侯恩様でした、お久しぶりです!!」

「……凪……?」

「はい!!夏侯恩様がどうしてこの邑に?」

「お前こそどうしたんだ?また籠を売りに来ていたのか?」

「あっ……ここが私の暮らしている邑なんです。」

 

 

まさか偶々立ち寄った邑が凪の住む邑だったとはな……偶然とはいえ驚いたな。

 

「なんや凪、この兄さん知り合いかいな?しかも真名まで許してどういう関係なん?」

「凪ちゃん沙和達に内緒で大胆な事してるのー。沙和もこんなカッコイイ人と知り合いになりたいのー。」

「ち……茶化すな2人とも……この方には街で籠を売るのにお世話になって……。」

「何々?もしかして凪が街に売りに行くのに積極的になったのって……中々やるやないか凪ー。」

「ヒューヒュー、いいなー凪ちゃん、沙和も街に売りに行きたいのー。」

「べ……別にそういう事じゃ……だから茶化すな……。」

 

 

イジられて慌ててる凪は珍しいな……だが流石にこのまま見てる訳にはいかないな。

 

「凪には街で籠を売る場所を提供しているんだ、2人は凪の友人か?ならあまりからかうのは良くないぞ?」

「なんや兄さんお堅い人やなぁ、うちは李典、字は曼成、真名は真桜や。」

「凪ちゃんとおんなじ感じなのー、沙和は于禁、字が文則、真名が沙和なのー。」

 

 

(于禁に李典か……しかしこの2人の話し方は変わっているな……これも時代の違いと言うやつか……。)

 

 

「いいのか?初対面で真名を預けて?」

「かまへんよ、凪が預けてるんやから兄さんは信用出来る人やから。」

「沙和もそう思うのー、凪ちゃんが信用する人だから大丈夫なのー。」

「ふ……2人とも……。」

「3人は仲がいいんだな、俺は夏侯恩、字は子雲、真名は冬椿だ。」

「夏侯恩って……もしかして最近噂になってる陳留の警備隊長さん!?」

「確かに陳留の警備隊隊長をしてるが噂とは何だ?」

「陳留の街を甦らせた凄い人だって噂が流れてるの!!邑に来る商人が皆そう言ってるの!!」

 

(どんな噂だよ……俺は特別な事をした訳じゃ無いんだが……。)

 

「でもその陳留の警備隊長さんが何でこの邑におるん?この辺は陳留の領地や無いで?」

「個人的な用件で荊州に行く途中で立ち寄っただけだ、特に意味はないぞ。」

「なーんだ、つまんないのー。」

「お前達……将軍である夏侯恩様にそんな態度は……。」

「俺は気にしないぞ、むしろ凪の様な堅苦しい態度の方が息が詰まるぞ。」

 

 

 

こんなやり取りをしてから俺は馬の所に戻ってきた。沙和、真桜、凪が見送りに来てくれている。

 

「夏侯恩様、気をつけて下さいね。」

「また来てや、楽しみにしとるでー。」

「そうなのー、楽しみにしてるのー。」

「ああ、もしも何か問題が起こったら陳留に使いを出すといい、俺の名を出せば支援位してくれる筈だからな。」

 

 

俺は一路荊州に向けて馬を走らせた。




もう少し書き進めたら登場人物のまとめを載せようと思います。原作キャラも性格等をいじってるのでこの作品での性格等を載せます。


オリジナルキャラも出していこうと考えていますがオリキャラ案や真名案などあれば活動報告にお寄せください。

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