隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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久しぶりに町に帰ってきた恩さんは衝撃の事実を知ることに・・・。

話の展開が遅すぎる気がする、原作開始時には何話になってるんだろうか?


第八話 久しぶりに戻ったら

およそ3年振りに産まれ育った町に帰ってきた。

たった3年とはいえ懐かしいな。しかし3年前より町が寂れている様な気がする。何と言うか人々にも表通りにも活気が無い。

間違いなく十常侍共の重税の影響だろう。こんな地方の町にまで・・・十常侍はいつか必ず斬る。

 

そう考えながら家に着いたのだが・・・人の気配がない。以前なら母や縁戚の者が何人もいた筈だが人1人いない。

父は近所の家に話を聞きに行くと言って家を出ていった。俺は仕方無く家の片付けをしている。かなり荒れていたので手間取ったが大方終わらせると父が戻ってきた。

 

 

 

 

「父・・・冗談ですよね・・・?」

 

父が話した事に俺はこれまでに無い程に動揺した。

母が・・・母が病にかかり半年前に死んだなんて・・・。

そういえば町に戻る前の半年は賊討伐に頻繁に駆り出されていて気にする隙が無かったが確かに手紙が来ていなかった。まさか死んだなんて・・・くそ・・・。

 

それと町の長の曹家の者も今病に倒れているらしく、政務や警備も滞っている様だ。まだ子供の孟徳や元譲、妙才も政務や町を襲う賊の撃退に駆り出されているらしい。

そこまでしてもかつての町の賑わいを失ってしまうとは・・・余程長が優秀で負担をかけていたんだろうな。

 

母が死んだのは悲しいがそれはもうどうしようも無いんだ。俺は前へ進むだけだ。

俺は父と共に町の中央の曹家の屋敷に向かった。3人は元気にしているだろうか・・・。

 

 

 

華琳視点

 

私は曹操、字は孟徳、真名は華琳。

この町を治める曹嵩の娘で今は病に伏している母上に変わりこの町の政務を仕切っているわ。

 

でも周りの大人達は曹嵩の娘とはいえ子供の私には従わない無能ばかり。頭にきたからそいつら全員町から追い出してやったわ。

その代わり政務は私と従妹の夏侯淵、真名は秋蘭と2人だけですることになって完全に滞ってるけど。もう1人の従妹の夏侯惇、真名は春蘭は政務は出来ないから兵達の訓練や賊の撃退を主に担当して貰ってるけど・・・人手不足は深刻ね。

せめて兄様・・・私の従兄で大好きな夏侯恩、真名は冬椿がいてくれたらずっとはかどったんでしょうけど・・・兄様は3年前に兄様のお父上と一緒に洛陽に行ってしまわれた。

あの時の事は思い出すと顔から火が噴きそうになるわ。私も春蘭も秋蘭も兄様に甘え通しだった。自分で出来る様な事まで兄様に頼りっぱなしだったわ。

今ならあの時の兄様の気持ちが分かるし兄様がくれた手紙の真意も読み取れる。兄様は私達に早く独り立ちして欲しかったんだわ。何時までも甘えては要られない、時には甘えも必要だけど甘え過ぎは人を堕落させる。甘えをはね除け自らの意思で進んで行かなきゃいけないの。この荒れ始めた大陸でなら尚更。兄様はずっと前から先の先の更に先まで見透していたのね。

でも・・・やっぱり兄様に会えないのは寂しい・・・。兄様は今何をしてるんですか・・・?華琳は町の為に頑張ってますよ?でも・・・正直もう辛いです・・・ちょっとだけ弱音を言っていいのなら・・・兄様に会いたい・・・。

 

 

 

 

秋蘭視点

 

私の名は夏侯淵、字は妙才、真名を秋蘭という。

私は今、従姉である華琳様の補佐として華琳様と共に町の政務を行っているのだが・・・。

華琳様の疲労や心労が限界なのが端から見ても明らかだ。無理も無い、町の長である曹嵩様が病に伏してから華琳様が政務を引き継いだのだが、役人達が華琳様とは仕事をしないと言い出し、華琳様を怒らせ町から追放されたので政務は華琳様と私の2人だけで行っている。

私は4人の従兄妹の一番下で、華琳様は二番目。三番目である姉者、夏侯惇は政務が出来る者では無い。一番上の兄者・・・夏侯恩は今町にはいない。

兄者・・・兄者が私達の前からいなくなってもう3年だ・・・。

まだ帰ってきてはくれないのか・・・。華琳様も姉者も私も兄者には及ばないが強くなった・・・。でも・・・もう押し潰されそうだよ・・・華琳様も・・・私も・・・。

 

 

そんなことを考えていると、屋敷の門番の兵が執務室に入ってくる。何やら慌てている様子だが何かあったか?

 

「ほ、報告致します、夏侯家のお方がいらっしゃいました。」

 

 

夏侯家の者?一体誰が?

私が考えていると華琳様が一言言い放つ。

 

 

「追い返しなさい。」

 

 

華琳様・・・それはいくら何でも・・・。

兵も何かを言おうとしたが、華琳様は更に言い放つ。

 

 

「追い返しなさいと言ってるの、今日は誰とも会わないわ。」

 

こうなっては華琳様は会われないだろう、仕方ないが私が行こう。

 

 

「華琳様、私が説明に行ってきます、宜しいですか?」

「・・・構わないわ、好きになさい。」

 

 

華琳様の許しを得たので兵と共に屋敷の門に向かう。正直な所、ずっと室内で政務をしていたから外の空気を吸いたかったからが会いに行く理由なのだが・・・。

 

屋敷の外に出て門に向かって歩く、2人の男が門の前にいた。遠くからでははっきり見えなかったが・・・近付いていって私は足が止まった。

あの姿は・・・見間違う筈がない・・・背が伸びて逞しくなっている・・・兄者だ!!

気が付いたら私は走っていた。兄者に向かって走り兄者に飛び付いた。

 

 

「兄者ぁっ!!」

「うおっ!?妙才か・・・大きくなったな。」

 

 

相変わらず兄者は真名を呼んではくれないが今はどうでもいい、ずっと会いたかった兄者に触れられる、頭を撫でて貰える、それだけで幸せだ。

だから私は気付かなかった。背後に迫る怒りの覇気を膨らませた存在に。

 

「しゅ~う~ら~ん~?」

 

 

体が硬直する、冷や汗が止まらない、私はゆっくりと振り向く、そこには・・・。

 

 

怒りの形相の華琳様がこめかみにいくつもの青筋を浮かび上がらせ口元をヒクつかせながら私を睨んでいた。

 

ああ・・・私の人生・・・終わったな・・・。




今回春蘭が居ない理由は次話でわかります。まあ想像通りだと思います。

ちなみに華琳の夏侯恩の呼び方は「にいさま」じゃなくて「あにさま」です。理由は呼び方が被らない様にです。


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