バカと魔王と澱の神   作:アマガキ

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そろそろ二巻も終わる。


第二十六話 居澱の当代

みーこはリップルラップルと一緒に金髪の男・ベルロンドとヴィゼータというやたら元気な少女に連れられて歩いていた。

 

黒づくめのミニスカートにマント姿の少女がほほ笑む。

「きれいな人だねみーこさん。昔の魔王様はだからそばに置いたのかな?」

 

「私もこれ程美しいお方だとは思いませんでしたから驚きましたが、どうでしょう?」

 

(魔王の側近?・・・・・・私が?)

 

そうこうしているうちにヴィゼータたちが立ち止った。

 

「関東機関で暇をつぶせそうなところなんてここくらいかな?」

 

「?」

 

「今のみーこさんだと驚いちゃうかもしれないね?」

 

その一室の入り口の上には標本室と掛かっていた。

ヴィゼータが扉を開け、みーこを招き入れる。

そこには肌色の標本が大量にあった。

 

「これはもしかして・・・・・・・人間?」

 

 

 

 

 

「大体関東機関は旧日本軍の実験施設がそのもとなのよ」

 

「・・・・・・機関員はいわば実験台」

 

「今の機関員はみんなEタイプ導化猟兵よ」

 

「Eタイプ?」

 

「純粋な魔力を埋め込んだ導化猟兵のことだ」

 

「父さんの資料ではそれらはすべてDタイプ導化猟兵つまり龍撃手への布石だそうよ」

 

「そんなひどいことが・・・・・」

 

「何でそんなことが明るみに出ないと思う?」

 

「えっと・・・・・・」

 

「機関員は皆孤児だからだ」

 

「え?でもムッツリーニは・・・・・・」

 

「俺は例外だ。志願した」

 

「実験される覚悟で?」

 

「そのくらい守れる力の代償には安いもんだ」

 

「だが大半の機関員はそうじゃなかった」

 

「そうね。関東機関は身寄りのない孤児の中から素質のあるものを選び育てるの。国がお前たちを拾った、国のために尽くせってね。でも現実を理解するころになってくると今度は機関を脱走すれば魔人として処刑するぞと脅すわけ」

 

「それが国のやることですか?!」

 

「・・・・・・実際やってる」

 

僕の問いに康太は淡々と答える。

 

「そして埋め込まれた魔力はいつまでも残っているわけじゃ無いの二十歳ぐらいでなくなるわ。そして魔力がなくなった機関員はようやく俗世で過ごせるようになるというわけだ」

 

「あれ?鉄人は?」

 

「機関は厳しいからな社会に出ても食うに困ることはないんだがな。俺はこの生き方以外を考えられなくてな」

 

「どういうことですか?教師ですよね?」

 

「これも任務の一環だぞ?」

 

「「え?」」

 

「文月学園の試験召喚システムは学園長が生み出した、オカルトと科学が混じってできたものだ。ここまでは知っているな?」

 

「「はい」」

 

「第三世界ではオカルトが魔力という形で認知されている」

 

「・・・・・・だが第一世界でそれが知られた」

 

「だから第三世界の人間は多かれ少なかれ注目しているわ。監視の目を送り込んだり、うちのおじいちゃんと同じように支援者としてかかわったりね」

 

「へええ」「そうなんですか?」

 

「・・・・・・身近にも宮内庁とかかわっている、退魔の家系のやつがいるぞ」

 

「だれ?」

 

「そのうち向こうが明かすだろう」

 

「大体長谷部君も協会からの指示でしょ?あそこに入学したの?」

 

「ああ・・・・・・そうだよ!!」

 

「まあ、宗一さんは埋め込んだ魔動力がなくなってからも鍛えて魔法を使えるようになった猛者なのよ」

 

「魔導力がないのに魔法が使えるんですか?」

 

「・・・・・・人間も少しなら持って生まれる」

 

「その少しでは魔法を扱うのは大変なのがな」

 

「じゃあ長谷部先輩はすごいんですね?」

 

あっそうなるのか。

 

「・・・・・・そうだな」

 

「っていうかお前らいい加減止めてくれ?!」

 

「勇者殿は強いので楽しいであります!!」

 

さっきから話してる横で長谷部先輩は白井さんに襲われていた。

 

「この子楽しいって言いながら全部急所狙ってきてんだけど?!」

 

「女の子の一人ぐらいに狙われたって耐えてくださいよ」

 

「お前何言ってんだ?!」

 

「こっちはむさいクラスメイトに命を狙われるのがざらなんですよ?」

 

「・・・・・・その通り」

 

「ああ、もういいから止めてくれ?!」

 

長谷部先輩は先ほどの遭遇からずっと白井さんの件を防ぎ続けていた。

よく耐えていたものだ。

 

「白井軍曹!」

 

真琴先輩のその言葉に白井さんはピタリと立ち止まる。

 

「これは真琴殿であります。お久しぶりであります」

 

「ええ、久しぶり。元気そうでよかったわ」

 

「・・・よく見れば西村教官に康太もいるであります」

 

「・・・・・・久しぶりだな」

 

「元気そうでよかったぞ」

 

「・・・で、さっきの話の流れ的に局員の積もり積もった不満にベルロンドが漬け込んだってところか?」

 

長谷部先輩ちゃんと話聞けてたんだ。

 

「そういうことよ。あとはE0しだいってところね」

 

 

 

 

 

 

「ダメだね。ダメダメだね」

 

ヴィゼータがスチール机に座ってベルロンドとしゃべっている。

 

「人間ってこんなに残酷ーって証拠をあれほど見せてあげたのにみーこさん全然目覚める気配がないね」

 

「我々から手を打ってみては?」

 

「そんなことして私たちが敵と思われちゃったらそれこそダメダメ」

 

首をフルフルと振りながらヴィゼータは言う。

そしておもむろにポンと手を打つ。

 

「そうだ、伊織家の当代って殺したの~?」

 

「どうでしょう?菊人は無力化はさせたと言っていたのであるいは」

 

「え~、そっちもダメ~・・・?」

 

がっくりするようにヴィゼータは羽根つき帽子をうつむかせる。

 

「・・・・・・ゼピルムの手駒として有効活用しようと思ったんだけどな~。仕方回廊を開いちゃおう」

 

「ということは人柱に?」

 

「そうそう。クーデターで大混乱の不安な人間の気持ちをいんふぃにちシリーズの魔力で集めてずぱぱーんって」

 

実際にずぱぱーんとてで身ぶりお交えながら言う。

 

「でもみーこさんはほんとにもったいないんだよねえ」

 

「関東機関局長の娘との約束がありますし、人間との約束など本来守る価値など本来ありませんが、それまで待ってみますか?伊織家の当代が生きているのならその時に現れるかと」

 

「そ~だね。それでいこ~」

 

そういってぴょんとスチール机から降りる。

そして傾いた帽子を直しながらひそかにほほ笑む。

 

(まだ堕ちたりしないでよね。ミッペルテルト)

 

 

 

 

 

 

――――――――それにしても坊主はでっかくなったな

 

見覚えのないあの男はそういっていた。

 

――――――――見違えたぞ小僧

――――――――そうか、無理もないな小僧

 

あのペンギンはそういった。

 

まるで奴らは僕が何者なのか知っているように話す。

そして自分たちの知る僕でないとみなすと口を紡ぐ。

 

ふつうはあの小娘のように思い出させようとするのではないか?

 

いったい僕はなんだというのだろうか?

 

 

 

 

 

 

夢の中で少女にあった。

 

眼鏡をかけたその少女の瞳はいつも好奇心で輝いていた。

だけど負けず嫌いで気位の高い気の強い女の子。

そうして時にはあどけない笑顔を見せる女の子だった。

 

しかしその少女は今は泣いていた。

早くに母親を亡くし、そして一週間前に父親を亡くし泣いていた。

一週間ずっと。

だから俺は絵を描いた。

その少女の笑っている絵を。

 

「ほら、これを見てさっさと笑い方を思い出すといい。君は笑っているときが一番かわいい」

 

その絵を見て涙をぬぐった少女はその絵を大事そうに抱えてから不安げな視線をこちらに向けた。

 

「あたし・・・お父さんもお母さんもいなくなったわ・・・なのに先生はどこに行くの」

「・・・・・・任務だ。君は心配するな」

 

勘の鋭い子だ何かしら感づいているのだろう。

洞察力があり、物事を見抜くことに優れた子だ。

俺が平静を務めていても現状をよく理解しているのだろう。

 

「嘘よ!沙穂も一緒に行くんでしょ?!宮内庁の人もいたわ!先生一人じゃかなわないような危険な任務なのよ!」

 

「・・・・・・帰ってくる。君はそれまでに今までみたいに笑えるようになっておくんだ」

 

「いや・・・・・・!」

 

「よく聞け真琴。たとえ何であれ君や君の友達のような人間が笑って過ごせるような平和を守るのが関東機関の任務だ。だから君の笑顔を見るために帰って来る」

 

そういって俺は背を向けその場を離れる。

 

「絶対よ!絶対だからね!・・・・・・絶対に!!」

 

「分かったよ。俺は必ず帰る」

 

 

 

 

 

 

いいや。違う。これは、僕じゃない。

 

違う。僕ではない・・・・・・

僕は・・・・・・・・・

僕は・・・・・・

俺は・・・

 

 

 

 

手術室の奥。

ドクターの事務室に局長・俺・鉄人はいた。

勇者と名護屋河、明久は今頃沙穂と夕食を作っているのだろう。

 

「ひひっ。そうかい、なるほどねぇ・・・・・」

 

局長の推察を聞いたドクターはひひっと笑う。

 

「あんたねえー、人としゃべるときはこっち見なさいよ」

 

その横には伊織貴瀬(いやE0というべきか)が包帯を胸にまかれて横たわっていた。

高々数十分の処置だったが、ここまで息が穏やかになるとは、名護屋河が腕だけは保証した出家のことはある。

光線銃のようなものが転がっている部屋だとそれも台無しになって見えるが。

 

「結論から言うとねえ。君の言う通りさ。ひひっ・・・・・」

 

「じゃあ、やっぱり指定一号との戦闘で記憶が・・・・・」

 

「そこが少し違うのさぁ・・・・」

 

「「「?」」」

 

「伊織はねぇ。かわいそうなやつなんだよぉ。みーこ様との契約でねぇ・・・・・」

 

何を言ってるんだ?

 

「かわいそう?契約?」

 

「日ひひひ。本流から外れた伊織けはねぇ、いついた澱を静かに堕とすのさぁ。でもさすがにみーこ様はそうはいかなかったんだよねぇ・・・・・・伊織は昔に戻りかけたみーこ様を探すために関東機関に入ったんだよぉ。そして最後の任務でのぞいてしまったんだよぅ、澱の世界おねぇ。」

 

「澱?」

 

「そういうなれば第四世界。君たちのいるところよりもさらに深いところだよ。君たちの想像もつかない世界だ。それを覗いてしまったというわけさぁ。もともと優しいやつだったからねぇ」

 

「知ってるはそんなことは・・・・・」

 

いや俺は知らないぞ。

E0の記憶なんて鬼教官だったことしか覚えてないんだが・・・・・・

 

「康太、先生は私には優しかったわよ」

 

「・・・・・・そうですか」

 

「まぁ、厳しくするときは厳しくするのも伊織らしささぁ・・・・・でも、心がぁ、たえられなかったんだよ!でも何かしらは覚えているんだろうねぇ。いつも言ってるよ、自分は悪だ、逃げてきたってね。だから僕個人的には・・・・・・」

 

ちらりとさびしそうな表情を見せた。

 

「そっとしておいてやってほしいんだよ」

 

「指定一号はそれほどだったんですね」

 

鉄人が言う。

 

「ああ、君たちも帰れなくなるから探らないほうがいいよ」

 

それ以上取り合う気はないようだ。

最高戦力が手に入らないことが確定した。

 

「逃げても逃げても逃げ切れやしないのよ」

 

そう局長がつぶやいていた。

 

 

 

 

 

ドクターの事務室から康太たちが出てきた。

 

「ご飯できましたよ」

 

「そう。聞いてたの?」

 

「はい」

 

地味に鈴蘭さんがビビってる。

 

「なあ。真琴、勇者と魔王候補のタッグだぜ。それでもまだ足りないか?」

 

「正体不明を抜かないでくださいよ」

 

「そう。三人とも協力してくれるの?」

 

「はい。沙穂ちゃん連れてきます」

 

「ああ、鈴蘭はいいわ」

 

「え?」

 

「あんた魔王候補なのに全然自分の力を自覚していないじゃない」

 

「・・・・そうかもな。真琴の意見も一理ある。危険だ」

 

「それだったら真琴先輩や吉井君だって・・・・・」

 

「私は捕まってもそれで殺されて終わりなの。明久も外れたほうがいいわね。自由に出せないんでしょ」

 

「それがなくても僕は戦えますよ。ドクターの武器がありますから」

 

「・・・・・・逆に不安だ」

 

「そこは俺が保証する。明久の先頭センスと合わせれば実力は確かだ。聖騎士にも勝ってた」

 

「聖騎士にも・・・・その情報は初耳ね」

 

「数日前まで一般人だった奴に聖騎士が負けたなんて言えるわけないだろ?」

 

「それはここで言っていいのか?」

 

「あっ」

 

鉄人は痛いところを突いたみたいだ。

 

「この件はここだけの話でお願いします」

 

「・・・・・まあ、それなら吉井は連れて行ってもいいわね」

 

そこ三人化けものを見るような目で見ない。

 

「それに私はやっぱり局長だから。でも鈴蘭、あんたの気持ちは嬉しいわよ」

 

「さてごはんにしますか?」

 

「そうね。それと、このうちの車がどこにあるか知ってる?」

 

 

 

 

関東機関局長の子が出て行ってからややあって伊織は目を覚ました。

 

「もう起きて大丈夫なのかいいい、伊織いいいい!!」

 

「・・・・もういいやめろ」

 

伊織は嘆息している。

でもそんなことは構わない。

 

「ひひっ、何がいいんだい伊織ぃ?まだまだ治療はこれからさぁ!ひひぃ!!」

 

「いいんだ葉月。思い出したんだ。・・・・・・すべて」

 

「ひ・・・・・・」

 

伊織は思い出したといったかい?

それに葉月とも・・・・・

 

「・・・・・そうかい。戻ってしまったんだね」

 

「ああ。もう騙してくれなくてもいい」

 

これが本来の僕のしゃべり方だ。

伊織を騙すのにあのキャラでやってきたが、それももう必要はない。

必要は。

 

「ばかげた話じゃないか。みーこのことをボケだなんだと言っていたおれ自身が、忘れ行く澱だったのだ。それも高々二十年やそこらで始まるとはな」

 

「仕方ないさ。君はみーこ様に心の安寧を与える使徒としてみーこ様と契約してしまったんだから。だから死なないように人間には強すぎる力を与えられたじゃないか」

 

「魔人が事故の否定をきっかけに澱へと向かい始めるように・・・・・・君は〝外の世界”を見るのをきっかけに忘れ始めてしまったんだよ。仕方なかったのさ〝ミッペルテルト”」

 

「伊織貴瀬でいい。俺は人の子だ。それが両親からもらった名だ。ミッペルテルトは沙穂の魔導力と同じ埋め込まれた力の名だ。俺の名じゃない」

 

「ひひっ、そうかい」

 

「おい葉月、キャラが戻ってるぞ」

 

「ひひっ、必要はなくてもぅ、もうこっちのほうが素になってちゃってねぇ」

 

「そうか。それより状況だ。真琴はクーデターとか言っていたが、他には?」

 

「みーこ様が連れていかれたよ。リップルラップルはそれに付き添っている」

 

「・・・・・・・そうか、やばいな」

 

今回の伊織も似たようなもんだけど、堕ち掛けたアウターというのはちょっとのことで戻ってくる可能性がある。

己を封印でもしない限り。

万が一の時はリップルラップルはノエシスプログラムにのっとって被害は止めてくれるだろうが、落とすのはあくまで伊織の仕事だ。

そんな個人的なのは抜きにしてみーこ様が戻ってくるのは少々怖いが。

 

そこで伊織の携帯が鳴り始めた。

 

「ああ、俺だ」

 

『よかった貴瀬!今暇だね!大っ至急・・・・』

 

長谷部の子だね、相変わらず仲がいい。

 

『ってあんた今、俺って?あんた貴瀬かい?』

 

「ああ、居澱の当代だ」

 

『ふーん』

 

「どうした?」

 

『昔に戻っちまったんだなーっと思って。あたしゃ今のあんたも好きだったんだけどねえ』

 

「どっちも伊織貴瀬だ。その証拠に君の好きなネコ耳でも贈ろうか?」

 

ガチャン!ツー!ツー!

 

「?急ぎの用ではなかったのか?」

 

再び伊織の携帯が鳴る。

 

「ああ、俺・・・」

 

『こんのバーカバーカ!ひっとが忙しいときに!』

 

「で?要件はなんだ?」

 

『今夜零時に関東機関がクーデターを起こすって!!』

 

「ああ、そんなことは知って・・・・・・てあと三時間しかないぞ?!」

 

『そうだよ!こっちだって今情報入ってきたばっかでてんやっわんやなんだから。首謀者はゼピルムの魔人ベルロンド。それでDタイプ導化猟兵で龍撃手ってなんかやばいらしい』

 

「なんかってのはなんだ?」

 

『わかんないよ!そうとしか載ってないんだから!それで分かったね?!ご下命だから何とかしな!』

 

「一つだけいいか?」

 

『余計なこと言ったら切るからね!』

 

「みーこがさらわれた」

 

『?!』

 

「おそらくその関東機関がらみで間違いないだろう。だから今回は本当にやばいかもしれん。そっちでも手を回しておいてくれ」

 

『参ったねえ。泣きっ面に蜂だよ。ほかになんかあるかい?』

 

「ネコミ・・・・」

 

ガチャン!ツー!ツー!

 

「なんだというんだいったい・・・・」

 

伊織に構わず僕は引出しをあけてスイッチを押す。

 

ガシャンっ!!

 

音とともに棚が開く。

 

「これは・・・」

 

「ひひっ。とっておいたのさぁ。いつか必要になるんじゃないかと思ってねぇ!」

 

「魔導被膜もかけなおしてあるな」

 

あの日ぼろぼろの伊織を処置した際に身に着けていた戦闘服だ。

ちなみにデザインは明久の戦闘服を作った際に似せている。

 

「ひひっ、ついでにこれも持って行きなよぉ。神器ほどじゃないけど役に立つよぉ」

 

「おう・・・・・?」

 

「どうしたんだい?」

 

「ここにトウキョウマルイと書いてるんだが?」

 

「ひひっ僕に銃のデザインなんてできるわけがないだろうぅ。それは伝導ガンというんだぁ」

 

「そういうことか」

 

「一応聞いておこう。弾は?」

 

言われて僕は机から取り出す。

それはどこにでも売っているのと同じ球だ。

 

「やっぱりBB弾じゃないか?!」

 

「なんならドリルでもいいんだよう?!」

 

「くっ」

 

そこで伊織は何かに気づいたようだ。

 

「まさか葉月、俺の体をいじったりはしてないだろうな?!」

 

「さあ、どうだかねぇ」

 

「いったい何をしたんだ?!」

 

何もするわけないさ。

きみはすでに完成してるんだから。

 

その後追及をかわし続けると、伊織は結局出て行った。

 

おそらく沙穂と鈴蘭を連れて行くのだろう。

鈴蘭を巻き込む覚悟を決めたそういう目をしていた。

 

 




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