バカと魔王と澱の神   作:アマガキ

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予告詐欺になりました。
地下ダンジョンは次回に持ち越しです。


第二十二話 ドンドンドン

教師陣の国産大衆車の中に一台の高級外車があった。

何でも飛騨先輩が引っ張ってきた関東機関の公用車だそうだ。

でも五人用に見える。

今この場にいる人間の数は(リップルラップルは魔人だが)僕、リップルラップル、康太、吾g、名護屋河さん、鉄人、社長、長谷部先輩、飛騨先輩、関東機関の人の合計九人。

明らかに足りない。

 

「おい小娘、これでは全員で移動なぞできんぞ?」

 

拘束方法が目立たないようにロープから手錠にシフトした社長が言う。

 

「ふーん、小娘って私のこと?」

 

「他に誰がいる?貴様のようなこまっしゃくれたガキは小娘で充ぶ・・・・・」

 

「菊人こいつトランク」

 

「了解」

 

あれよあれよという間にトランクに社長が放り込まれる。

ドンドン

ドンドンドン

うーん軽くホラーだ

 

「あ、あのご主人様があっけなく・・・・・」

 

「伊織・・・・・敵ながら憐れっていうか・・・・・・」

 

「ひどい話なの」

 

「これが康太のボスか・・・・・」

 

「まだまだトランクはあいているわよ?」

 

コンコンっとトランクの上をたたくので全員が黙らざる負えない。

 

「まあ、車は宗一さんのがあるから大丈夫よ」

 

そのことに全員がほっとする。

 

「問題は分け方よね。こっちの五人乗りの運転手は菊人でしょ。そして私もこっち。ボディガードの長谷部君も当然こっち。康太は宗一さんのほうね。あとこっち二人どうする?」

 

「すみません飛騨先輩」

 

「どうしたの吉井君?あと、真琴でいいわよ」

 

「あの、僕は屋敷までの道覚えてないんですけど?」

 

「あれ?でも吉井君って自分ちと行ったり来たりしてるんじゃないの?」

 

「あれはリップルラップルに魔法で送ってもらってるから。逆に道はそれで忘れちゃったし。」

 

「じゃあリップルラップルに送って行ってもらえば」

 

「それはあとがめんどくさいから却下よ。じゃあ吉井君が宗一さんのほうで。それにしてもこんな小さな子が魔法をねー」

 

「真琴その子は魔人だぞ」

 

「へー、そうなの?」

 

こくんとリップルラップルがうなずき答える。

 

「局長そろそろいかないと」

 

「あっそうだったわね」

 

 

 

 

 

 

車は今は高速道路を走っている。

運転しているのは当然鉄人。

後部座席に僕と康太が座っている。

 

「それにしても康太が第三世界の住人だったなんて」

 

「・・・・・・俺のほうも春の事件は驚いた」

 

「そういえば春休はリップルラップルが魔人だって気づいてたの?」

 

「・・・・・・だから『そいつはいったい』ときいただろう」

 

「じゃあ、表情が死んでいたのは」

 

「・・・・・・・・そこまでだったのか?」

 

「うん」

 

「・・・・・・実際よくわからない者は怖い

 だから『心配するようなことではない』といわれて心底安心したぞ」

 

「そういえば康太はなんで関東機関に?親が働いてたからとか?」

 

「関東機関はそういうところではない」

 

鉄人が口を開いた。

 

「本来関東機関は素質がある孤児を鍛え上げ、局員とする組織だ」

 

「孤児を?ってことは鉄じ、西村先生は?」

 

「孤児だったよ。あと局員としての俺には鉄人で構わん。闇の世界でもその名で通る。」

 

「でも康太は?」

 

「・・・・・・俺は例外だ。」

 

「どういうこと?」

 

「・・・・・・昔のことだが、おれは田舎で妹と一緒に魔物に襲われた」

 その時に関東機関に救われた」

 

「そのあとこいつが関東機関に志願した時は驚いたぞ」

 

「・・・・・・守れるだけの力がほしかったからな」

 

「康太もいろいろあったんだ」

 

友達の結構な過去に驚く明久。

 

「ん?じゃあ、康太魔法を使えたりするの?」

 

「・・・・・・できるぞ」

 

「いいなあ」

 

「・・・・・・お前の出力にはとんと及ばんぞ」

 

「えっ?」

 

「教会での一軒は事情があって宮内庁直下の神殺しが大書したが、事件経過に関しては関東機関も調査はした」

 

「・・・・・・お前の雷撃に関してもな」

 

「あれはほんとに謎なんだけどなあ。僕もよく覚えてないし」

 

「・・・・・・今は出せないのか?」

 

「全然でないよ。クラリカさんはマジカレーズインゲンター使ってくれたんだけど一切魔力なしだって」

 

「・・・・・・マジカライズインジケーターだろ」

 

「しかし魔力反応も皆無とはおかしなものだな」

 

「でも発動中は明らかに魔力があったってフェリオール司教が」

 

「・・・・・・ますます妙だ」

 

「でもリップルラップルは魔力の才能0だってさ」

 

「お前は本当に謎だらけだな」

 

「・・・・・・ちょっと後ろが騒がしくないか?」

 

言われて後ろを見るとパトカーが来ていた。

 

「パトカーかいやなこと思い出すな」

 

「・・・・・・なにをだ?」

 

「社長と初めて会った時、あの人吾が、名護屋河さんに運転させたんだ」

 

「・・・・・・道路交通法をがん無視か」

 

「その時のせいでパトカーにトラウマが」

 

そうこう言っているうちにパトカーはリップルラップルらが乗っている車と、この車の間に入った。

そしてその車を止めさせた。

そして鉄人は何事もなかったかのようにスルーして進み続けた。

 

「いいんですか?」

 

「あとで合流したほうがいいだろう」

 

「でも僕道分かりませんし」

 

「無線があるから大丈夫だ」

 

そして後ろを見るとみんなの乗った車が強引にパトカーを突破して走り出していた。

 

「あんなんでいいんですか?」

 

「仕方ないだろう」

 

「康太、鉄人っていつもこうなの」

 

「局員としての時はこんな感じだ。多少の無茶は許容する人だ」

 

「もしもし、局長そちらはいったいどうしたんですか?」

 

『伊織貴瀬が警察を呼んだのよ』

 

「なるほどそれであの騒ぎに」

 

『あとで地図送るから、別口で来てね』

 

「わかりました」

 

そういうことで別ルートから向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

伊織の屋敷につくと入口でほかの人達が待っていた。

 

「ようやくきたわね」

 

「お待たせしてすみません」

 

鉄人はほんとにキャラが別な感じだなあ。

そうそう向こうはこの屋敷の人のこととか話していたらしい。

その結果一番懐柔しやすいみーこさんを探すことになったらしい。

 

「局長、俺はここに残る」

 

「何で?一緒に行かないの?」

 

「誰かが見張りおやらなくちゃいけないだろう。この中で一番見張りに適しているのは俺だろう」

 

「そうね、長谷部君はボディガードだし、康太よりあんたのほうが強い、宗一さんには一人で捜索してもらうつもりだし」

 

「・・・・・・よろしく」

 

「頼んだぞ菊人」

 

「じゃあ行ってきまーす」

 

 

 

 

 

 

 

全員が去った後に菊人は無線機を取り出した。

 

「・・・・・・・・・・こちらE1」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・そうか伊織家にはたどり着いたあのか」

 

『勇者と魔王候補、それに不確定要素と家の局員二名が同行している』

 

「問題はないお前は言われた通りに行動すればいいのだ」

 

『・・・・・・確認しておきたいんだがよ。伊織貴瀬ってのは本当に・・・・』

 

「言われた通りにと言った筈だ」

 

菊人の通信相手は吐き捨てるように言う。

 

「怖気づいたのか」

 

『いや・・・・・・ただちょっと気になる言葉を聞いたからよ。あんたには関係のない話だが』

 

「ならば話す必要はない」

 

『そうだな。報告は以上だ』

 

通信が終了される。

菊人と通信していた男の名はベルロンド。

魔人組織ゼピルムの幹部であり、関東機関のクーデターをそそのかした男だ。

 

そこで通信機が鳴り出す。

 

『首尾はどうかな?ベルロンドさん?』

 

『はい、ここで問題です。私は誰でしょう?いち、世界の混沌と闇を心から望むゼピルムの魔人さん。に、こわーいこわーい魔王様の復活をもくろむゼピルムの魔人さん。さん・・・・・・・』

 

「お戯れをヴィゼータ様」

 

「つまんないね」

 

そうとは思えない声で電話の相手は言う。

このベルロンドが下手に出ている相手はゼピルム最高幹部の一人。

 

「昨夜寝ながら考えたんだけどね。自己紹介。だからベルロンドさんで練習しておこうと思ってね?不評?」

 

通信先の苦笑を聞き取ったらしいヴィゼータが聞く。

 

「魔王候補だそうですが、そちらはよろしいので?」

 

「心配ないない。どっちかっていうと不確定要素のほうに気を付けてね。それよりしっかりクーデターがんばってね。龍撃手(ドラグーン)の実験テストも兼ねてるしね。成功すればあなたも今日からゼピルム最高幹部だよ」

 

そこで通信は終了された。

 

ドラグーン、もともとは関東機関前局長すなわち飛騨真琴の父親が研究していたものだった。

別名Dタイプ導化猟兵。

導化猟兵とは魔導力を人体に埋め込むことで人工的な魔人を作ろうとしたことである。

関東機関の戦闘員は全員がEタイプ導化猟兵である。

Eタイプよりも上位のDタイプはドラゴンの体細胞を取り込むことで強くなろうとする試みである。

かつて飛騨真琴の父を殺したベルロンドがゼピルムに持ち帰り完成させたものである。

関東機関の非人道的な研究の産物が関東機関を使ってクーデターを起こすとは皮肉なものである。

 

 




いかがでしたか?

原作では鈴蘭、翔希、真琴、リップルラップルの会話シーンだったんですが、思いっきり出てきていません。
基本的に明久視点が多いので。

ムッツリーニや鉄人が関東機関局員だという設定にご意見がございましたら感想欄にお願いします。
どう思われているのか気になりますので

次回 地下ダンジョンに踏み込んだ明久たち

   襲いくるスライム

   ついに勇者が敗北する

次回 第二十三話 (今度こそ)地下ダンジョン   

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