バカと魔王と澱の神   作:アマガキ

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予定より遅れて、読んでくださっている方すみませんでした。

どうぞ


第十七話 苦悩と答え

(「なんだい?もう終わりなのかい翔希。勇者様もたいしたことないねえ」

姉の声が聞こえた。

どうやら家の道場のようだ。

「そんなんじゃ、何にも守れやしないよ。」

言い返そうと思ったが、どうも声が出ない。

「長谷部の合憲はね、神殺しの技なんだよ。長谷部は剣に取りつかれた一族なんだよ。悪の一族なんだ。そのあんたが勇者?笑わせないでよ」

この時に何か言ったはずだ。

はっきりと言い返したはずだ。

強くなってやると。

 

そこで翔希は意識を取り戻した。)

 

 

 

真っ暗だった。

明久にはあたりの様子がちっとも見えなかった。

しばらくして目が慣れてきたのかあたりの様子が見えてきた。

どうやら何かが自分の足元にあるようだ。

それの周りには何やら液体のようなものがぶちまけられていた。

どうも赤いようだ。

絵具か?

そんなことを思っていたがふと気が付いた。

あそしてはっと気が付いた。

自分の足元にあるのは血まみれの・・・・・・・

 

 

 

「うわああああああああああ!!!!!!!」

 

悲鳴によって翔希は起こされた。

どうやら翔希はベットに寝かされていたようだ。

周囲を見渡すと明久がいた。

というか、今の悲鳴は明久の者みたいだ。

何やら震えている。

 

「大丈夫ですか?明久君?」

 

声がしたほうを見ると、みーこさんが立っていた。

しかし明久は一向に応えない。

 

「あっ、勇者様も起きたみたいですね」

 

見ていると視線に気づいたようだ。

 

「えっと・・・・」

 

「そういえば名乗っていませんでしたね。俺は長谷部翔希といいます」

 

「長谷部・・・どこか懐かしい感じがしますね」

 

「そうですか?」

 

しかしこうしてみていると彼女が教会で教えられた凶悪な魔人だとはとても思えない。

むしろ聖人や聖女かと思えるほどだ。

 

「あなたが俺を介抱してくれたんですか?」

 

「はい」

 

「あなたがいなければどうなっていたことか」

 

「そうかならおれに感謝するといい!!」

 

扉を勢いよくあけながら伊織が現れた。

 

「貴様!!」

 

「どうしたその女に君を介抱させたのは僕だぞ。感謝の言葉はないのか?」

 

「なっ」

 

確認するようにみーこさんを見るとそうですよとうなずいている。

 

「いったい俺に何をするきだ?!」

 

「もう何もする気はない」

 

「もう!?すでに何かしたのか!?」

 

「具体的には・・・・・・・ロケットパンチ」

 

「は?」

 

「をドクターはつけようとしたが止めておいた」

 

ロケットパンチをつけられかけていたという事実にキレた翔希はつかみかかろうとしたが、鎖に引っ張られて動けなかった。

 

「これは!?」

 

「あまり貴様に自由に動かれても困るんでな」

 

「くそっ」

 

「おとなしくしておかないとドクターにロケットパンチをつけさせるぞ」

 

「はあ?!」

 

「ロケットパンチをつけていいのかいいいいいいいい」

 

何やら白衣を着て危ない目をした人が駆け込んできた。

 

(なんなんだいったい)

 

するとその人物はこっちに来て言い放った。

 

「きみ、ロケットパンチをつけていいんだってええええええ?」

 

「いや俺は・・・・」

 

「そうかああああああ。男の子ならやっぱりドリルだよねええええええ」

 

今度はどこからともなくドリルを取り出した。

 

「そんなものいらな・・・・」

 

「大丈夫さ。このモテモテ回路を使えばドリルをつけてももてるから」

 

「ドクター話が進まん」

 

そういって伊織はドクター?をつまみ出した。

 

「ほんとにあそこまで悲しむドクターは初めて見たぞ」

 

「なんなんだよあの危険人物は!!」

 

「そういうな。彼は誰に対してもそんな感じだ。例外だったのは明久ぐらいだ」

 

「そうか。ってなんでお前と俺が離さなくちゃいけないんだよ」

 

「そんなことよりも今は明久だ」

 

「そうだ。お前明久にいったい何をしたんだ?!」

 

「別に何も」

 

そう明久だ。さっきからみーこさんが話しかけているが一切返事をしていない。

呆然と何かを考えているようだ。

 

「おそらくPTSDみたいなものだな」

 

「は?」

 

「おそらくあのイカレシスターを刺したこと原因だろう。」

 

「ああ」

 

そうだ、忘れていた。明久はクラリカをナイフで傷つけている。

 

「そのことであそこまで」

 

「ああ。明久は学校ではいったいどんな奴なんだ?」

 

純粋に知らないらしい。

 

「俺もよくは知らないかな。学校を代表するバカってことはみんなが知っているけど」

 

「そうか。まあいい」

 

そういって伊織は明久に近づく。

 

「一体どうするつもりなんだ?」

 

「こうする」

 

そういって伊織は明久のほうを平手でぶった。

思いっきり横っ面を張られた明久はぼうっと伊織を見る。

 

「社長?」

 

「お前は何をやっている」

 

冷静な声で明久に問いかける。

 

「お前は鈴蘭を助けるために車の上に飛び乗ってまできたのではないのか?」

 

(そんなことやったのか)

 

「こんなとこでくすぶってても何ともならんぞ」

 

「戦う覚悟が決まればブリッジに来い」

 

「は?ブリッジ?」

 

翔希は思わず声を上げる。

 

「そういえば言ってなかったな。ここは船の中だぞ」

 

 

 

 

伊織に言われた言葉を明久は考えていた。

 

(人を傷つけるのに戦ってもいいのだろうか?確かに伊織魔殺商会にはいったのは吾川さんを助けるためだ。

でもそのために人を傷つけていいはずなんかない。)

 

「おい明久」

 

長谷部先輩の声を聴いてそちらを見るとなんか鎖で繋がれた長谷部先輩がいた。

正直ドン引きだ。

 

「先輩一体どんな趣味が・・・・」

 

「ちがうからな!さっさとそのカギで鎖を説いてくれ。そうすりゃ俺動けるから」

 

「社長はそれを許さないと・・・・」

 

「お前はどうしたいんだよ」

 

「吾川さんを助けたいです」

 

「じゃあなんで戦わない?」

 

「人を傷つけるから。先輩は人を傷つけるのは怖くないんですか?」

 

「怖いってのはちょっと違うかな?」

 

「?」

 

「何せ俺はまだ殺したことはない」

 

「・・・・・・」

 

「傷つけたことはあるが治る範囲でしかない。モンスターは結構狩ったけどな」

 

「命を取らない限りお前はまだ大丈夫だよ。けがさせても治るのならまだ謝る機会もある」

 

「はい」

 

「じゃあ鎖はずしてくれよ」

 

「わかりましたよ」

 

明久が鎖を説くと、

 

「ふう、すっきりしたぜ」

 

鎖から解放された翔希が言う。

 

「伊織はお前に俺をブリッジ連れて行かせるつもりだったみたいだけど俺は勝手に出ていかしてもらうから」

 

が、そこで翔希は電撃を受けて倒れた。

 

「明久、何のつもりだ?」

 

「先輩、僕これでも悪の組織の一員なんで」

 

 

 

 

そのあと明久は翔希を引きずってブリッジに向かった。

ちなみに意識を失うと面倒なので体がしびれる程度に電撃は抑えられていた。

ブリッジには途中で迎えに来たみーこに連れて行ってもらったので何とかついた。

なんと運転していたのはリップルラップルだった。

翔希がちょっと余計なことを言ったために不機嫌になっていたが明久がなだめて元に戻っていた。

 

「さてと話をしようか。クソガキ」

 

「俺を捕まえとく理由なんてないだろいうことも聞かないのに」

 

「お前がいないと神殿に乗り込めんからな」

 

「なに?」

 

「どういうことですか?」

 

「神殿の一般開放されていない部分は結界で守られていてな、選ばれたものしか入れんのだ」

 

「それで?」

 

「察しろ。当然勇者は選ばれたものだろう?」

 

「あっ」

 

「ちょっと待てなんでそんなことを知ってる?!」

 

翔希のもっともな問い。

これは十分機密情報だ。

が、それに伊織はいともたやすく答える。

 

「聞いたからな。フェリオールに」

 

 

 

 

 

 

 

「「は?」」

 

「大体今回の剣は日本政府からの依頼なんだ。フェリオールは最初から協力者だ」

 

「ちょっと待ってくれよ。てことは今までのいろいろは・・・・」

 

「全部茶番だな」

 

「え?」

 

さすがのことに明久も驚く。

 

「誰がクソガキのレベル上げの場に鈴蘭を送った?その直後やけに早く打ちの場所が分かったのはなぜだ?聖騎士突入の指示は誰が出した?」

 

すべては伊織とフェリオールとフェリオールの息がかかったクラリカが糸を引いていたのだった。

 

「ほんとにイレギュラーだったのは明久の乱入だ。その上戦闘力がおかしな高さをしている。計画はお前のおかげで大分狂ったぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「具体的には、お前の性格を見て、翔希と初めて合わせた時におとりにして、捕縛させようとしたりな。失敗したが」

 

「そうですか」

 

「まあ、本来なら鈴蘭は魔王の力の片りんでも引き出す予定だったんだがな。それが失敗したんでこうなっている」

 

「どういうことですか?」

 

「本来魔王の力の片りんでも出さしておけば僕たちは出向くことはなかったが、そうならない以上カチコミに行くわけだ。」

 

「じゃあ黒幕は・・・・・」

 

「ランディル枢機卿だ。どうもゼピルムにそそのかされたらしい」

 

「ゼピルムだと!?」

 

「社長、ゼピルムってなんですか?」

 

「社会の裏で暗躍している第三世界の組織だ。詳細はよくわからん。魔人の組織だということが分かっている」

 

「ランディル枢機卿の目的は?」

 

半信半疑ながらに翔希が聞く。

状況証拠的に伊織とフェリオールの結託は事実のようだが翔希は伊織を完全に信用はしない。

 

「不老不死のようだ。その引き換えに邪心を下すらしい」

 

「わかった。お前を信用はしないけど吾川を助けるためならやってやるさ」

 

「いったな、神殺し」

 

「なに!?なぜそれを知ってる!?」

 

「翔香から聞いてないのか?」

 

「何でそこで姉ちゃんの名が出る」

 

「伊織もまた神殺しの家だ」

 

「そんな何個もあるもんなのか?」

 

「ほんとに何も知らんな。神殺し四家。神を殺すための四家。本流の名護屋河、豪剣の長谷部、剛弓の天白そして邪流の伊織だ」

 

「じゃあ吾川も・・・・」

 

「ああ、フェリオールが言った通り神殺しの血を引いている」

 

「昔の神殺し四家も今回の俺たちみたいに協力したんだろうな」

 

「いや恐ろしく仲が悪かったらしい」

 

「おい!」

 

ちなみに明久にはあとで説明がなされた。

 

 

 

船はそのまま進んでいたが、途中海上保安庁の巡視船が現れた。

しかし伊織が名前を出すと逆に併走して護衛をし始めた。

翔希が「悪の組織はここまで横行しているのか」と嘆いたが誰も気にしなかった。

 

 

その後東京の港につき一同は船を降りた。

ドクターは留守番だ。

そして倉庫から車を出す。

 

「行くぞ、これでこの事件は終わりだ」

 

 




ようやくかけました。

次回 第十八話 「天の門」

感想待ってます。

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