船久保浩子はかく語りき   作:箱女

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十三

―――――

 

 

 

 窓から見える空は薄い雲に覆われており、もう太陽もその姿を見せていない。ビル風の音が外の気温の低さをさらに強調しているように感じられる。そのビル群のなかの一室で、プロ選手であるならばいくら積んででも見たがるだろう半荘は、ほとんど誰にも知られることなく決着した。

 

 

 「あーあー参った参った。なーんかおかしいとは思ってたんだけどねぃ」

 

 卓に着いたまま腕を組んで目を瞑って考え込む咏からこぼれる言葉を聞いても、浩子はさっきの局で何が起きたのか理解できなかった。ただ咏の調子は変わらず良い状態のままで、それは自摸が手に吸い込まれていく様からもはっきりしたことだった。オーラスにたどり着くまでに赤木も打ち子も奮戦し、絶対的な差が開くには至らなかった。しかしそれでもこの勢いは殺しきれないように見えた。少なくとも浩子にはそう見えたし、打ち子の二人もおそらくはそう思っていただろう。だがそれでも、最後に和了ったのは赤木だった。咏からの直取りで5200。直撃で捲るのに最低限の点数だった。

 

 ぶつぶつと呟く咏の言葉から推測すると、どうやら赤木はかなり早い段階から最後のために仕掛けを打っていたことがうかがえる。それは浩子にはまだ届かない領域での勝負だった。しかしそれが決定的であったことだけ伝わってくるというのは、置いてけぼりを食らったような気がしてあまり気分のいいものではなかった。

 

 うんうんと唸っていた咏は、今は赤木に詰め寄って打牌の意図を問いただしている。閉じられた扇が七筒を指している。あれがキーになった牌なのだろうか。浩子は高級そうなソファに腰を下ろしてぼんやりと赤木たちのほうを見やる。健夜も加わって今の半荘について話をしている。できることなら浩子も混ざって話を聞きたかったが、どうやら自分が飛び込んでいってもついていけるレベルの話ではないようだ、と判断して引き下がることにした。小さな身体をめいっぱいに使って感情を表現するその様は見方によっては子供っぽいのかもしれないが、目の前の一戦にそれだけ集中しているという点ではプロのあるべき姿として捉えるべきものなのだろう。

 

 現時点で浩子が掴んでいるものは情報と呼ぶにはあまりにも不確かなもので、事前の調査がない状態と比べても大差のないようなものだった。かなり強気だと思われることと、それに見合うだけの図抜けた引きの良さを持ち合わせていること。本質なんてものはまるで見えず、ただ咏の強さを間近で確認するだけになってしまっていた。それでも浩子は必死で頭を働かせていた。どんな打ち手であっても必ずどこかに穴はある。仮に見つけられなかったとしてもそれは自分の力量が足りないだけであって、相手の絶対性を認めるものではないと浩子は確信していた。赤木が目の前で勝ってみせたことでそれは証明されている。だから浩子は先の半荘で得られるものが少なかったとしても、諦めるつもりはなかった。

 

 

 いくらレベルが高いとはいえ、さすがに三尋木咏と二連続の半荘を打てるような精神力を打ち子たちが持っているはずもなく、休憩ということで室内はすこしゆるんだ空気になっていた。

 

 それぞれ思い思いに過ごしている様子は、まるでなにかのミュージック・ビデオのようで浩子はそこに自分も含まれていることにどこかこそばゆい思いをしていた。やはりテレビに出慣れている人というのは普段の仕草も絵になるのだろうか、と特に実にもならないことを考えながら、浩子は部屋の備え付けのアーモンドチョコをソファで口に放り込んでいる。窓際でタバコをふかしていた赤木が咏のもとへと歩いていく。声をかけられた咏はその話の内容を聞いて疑わしげな視線を赤木に向ける。何を話しているのかは聞かなくても大体のところはわかっている。おそらく次の半荘についての話だろう。たしかに以前と比べて浩子の実力は向上しているが、咏と真正面からぶつかって点棒を残すにはまだまだ足りない。

 

 「なあ三尋木、サシウマの話なんだけどよ」

 

 「あー、変えるってんだろ?ま、モノによるけどねぃ」

 

 「何言ってんだ。ひろと打ってもらうときの話だよ」

 

 「……わーお、それマジだったの?」

 

 「トビ無しと親の連荘無しで打ってやってくれ」

 

 「……それは別に構わねーけどさぁ」

 

 「なんだ?」

 

 「お前ホントに正気?いや聞いてもしょうがない気もすっけどさ」

 

 「クク、教え子のために場を整えてやるのがそんなにおかしいか……?」

 

 はぁ、とため息をついてそれ以上追及するのを咏は諦めた。彼女にとっての赤木像がどんなものなのかは正確にはわからないが、大筋ではこれまで会ってきた大人たちと同じなのだろう。ここまで一様に変わらない反応をさせる赤木はこれまでどんな振る舞いをしてきたのだろうか。それは浩子には知りようもないことだったが、正直ロクなもんじゃないだろうということだけは推測できた。

 

 

―――――

 

 

 

 浩子の上家には咏が座っている。あらためて見ると本当に小さい。麻雀に体格などまったく関係ないが、それでもこの体躯で日本のトップを走っていると考えると感心したくなるほどだ。肩まで届くウエーブのかかった茶髪が小さく揺れて、浩子の方に視線が向けられる。いいかい、と前置きをして咏が話し始める。

 

 「この半荘はトビは無し。それと親の連荘も無しだ。純粋に八局だけ回す」

 

 浩子にしてみれば否やがあるわけもない。三尋木咏を相手に確定で八局も打てるのは掲げている目標からすると非常に大きい。プロとの対局でさえかなりの確率で相手をトバす打ち手なのだ。自分がハコを割らない姿が浩子には想像できない。

 

 「それと船久保ちゃん、手なんて抜いてやるつもりはないからさ、泣くんじゃないぜ?」

 

 

 兎にも角にも浩子がまずやらなければならないのは情報収集だった。課題は “咏から和了ること” だから、運さえ良ければ普通に打っても可能かもしれない。だが、浩子は当然のようにそれをよしとしない。きちんと分析して相手の考えを呑み込んだうえで和了らねば意味がないと考えている。赤木も健夜もとくにそこに関する指定はしなかったが、その程度で自分の立ち位置を見失うほど浩子は自分に甘くはない。二週間に一度しか帰っていないが、名門である千里山女子の部長であるという矜持があった。

 

 秋季大会のときには他家の理牌を見ていたから自分の理牌ができなかったが、今はもうそれを同時に行うことができるようになっていた。この部分に関しては日々の鍛練というよりは慣れのほうが強い。小さな進歩ではあるが、確実に浩子は前進していた。咏は理牌をしっかりと散らすため、そこを見ること自体にはさして大きな意味はないが、気を抜かないという意味においてそれは欠かせないことだった。

 

 見る、と一言で表すことはできるが、その内実はそこまで単純ではない。視神経やそのとき働く脳の野であるとか重要なタンパク質などのことではなく、見るという行為の幅は想像以上に広い。浩子がやっているのは他家の表情の変化や挙動、あるいは思考時間などそれこそ日常生活では見ないような部分まで観察する行為である。これは第一に全員を同時に視野に収める必要が出てくる。誰かの捨牌に注目しすぎて、その捨牌に対する別の人の反応を見逃しては本末転倒だからだ。そうやって全体を見渡しつつ、細部にまで気を配る。もちろん同時進行でそれまでの局の打ち筋を随時引き出してくる必要もある。これを実行するだけで脳の疲労は尋常ではないものだが、とくに今回は情報がなかなか出てこないがゆえに精神的な疲労も重なっている。いくらインターハイを経験しているとはいえ、弱音のひとつも吐かずに闘い続ける浩子の精神力は称賛に値するべきものだった。

 

 

 東三局。トビこそないものの浩子の残り点棒はすでに半分近くになっていた。先ほどの局は赤木がいたからこそ成り立っていたようなもので、その()()()から解き放たれた咏を止められるものなどこの場には存在していなかった。外から見ているときにはあれだけ華麗だった闘牌は、卓を同じくすると獰猛そのものであった。それでも浩子は咏を分析するために打たなければならない。咏はというと決して無表情ではなかったが、その笑みの向こうに何があるかだけは悟らせてはくれなかった。どこかでそれを崩さなければいけないと理解していたから、じっと浩子は耐えていた。

 

 牌と牌がぶつかるかちゃかちゃという音と牌をラシャの上に置く音だけがする中で、三尋木咏の一方的なショーは続く。打ち子たちの技術も相当のもので、インカレなどに出場していてもおかしくないようなレベルなのだが、それでも彼女とのあいだにはどうしようもない壁が立ちはだかっていた。火炎の花の勢いは増していく。彼女が望めばその牌は彼女のもとへとやってくると聞かされても信じられるくらいに。東四局を終えて、浩子はやっと咏の打牌の淀みをひとつだけ見つけることができた。

 

 その淀みが単に咏が裏目を引いたというだけの話であれば、それはもう何の役にも立たない。だが仮に咏がなにかを嫌ってその形になったのだとすれば、付け入る隙になるかもしれない。浩子は何がなんでもその糸を手放すわけにはいかなかった。手放してしまえば、ぷつんとなにかが切れてしまう気がした。そうやって気合を入れる浩子を見て、咏は薄く微笑んだ。

 

 

 「……しげるくんさ、ほんとイイ性格してるよね」

 

 「クク、なんのことだか」

 

 「まあいいけど」

 

 互いに顔を見ることなく、視線は卓に向けながら二人は会話を交わす。

 

 

 四度和了った形を見せられてようやく掴んだ咏の思考の一端は、集中の高まった浩子でなければ気付かなかっただろう。それはほんの小さな違和感。本来なら何度も繰り返し映像を見てようやく気付くような些細な違和感。それでもその違和感は伸びやかに打つ咏の手筋からは際立って見えた。それがオカルトに絡んでいるかどうかこそわからないが、狙い目だ、と浩子は思った。もちろんまだ思考判断の源泉は掴めていないから分析自体をやめるわけにはいかないが、一矢報いるにはおそらくここしかない、と頭の奥から声がする。

 

 仕掛けを打つなら一度だ。無理に罠を張って悟られてしまえばもうチャンスはないだろう。咏はそこまで甘くはない。じっくり手を待たねばならない。南場をまるまる使えるのだから、あとは咏を刺す手を焦らずに作らねばならない。自分では気付いていなかったが、このとき浩子の目は異様な熱を帯びていた。

 

 待つ。待って、刺す。浩子の集中はいや増していく。

 

 

 浩子が咏から直撃を取るためには条件を二つクリアしなければならなかった。ひとつはひどく簡単だ。咏が翻数を伸ばして和了りに向かっていけばいい。もうひとつが問題だった。彼女が聴牌する前に罠を張り終えなければならないのだ。三尋木咏が現役日本最強とされるのは、その打点に似つかわしくない速度も大きな理由として挙げられる。もちろん彼女の強さはそう簡単に言い尽くせるようなものではないが、わかりやすい強さというのもたしかに持っていた。だが、打点と速度を両立させるのはそう簡単ではなく、とくに “最速” は咏であっても諦めなければならない場面があった。浩子にできることはその一点の隙を狙い撃つことだけだった。

 

 そして南三局十巡目、ついに浩子は二つの条件をクリアした。点棒は南一局を終えた時点ですでにゼロを下回っている。だがそんなことはトビ無しなのだから関係がない。浩子は課題達成のために突き進む。打点のための一巡、あるいは二巡で十分だった。浩子は罠を張り終えて、息を潜めてただ待つ。捨牌から咏の手の方向性は読めている。いずれ、それも遠くないうちに咏から八筒がこぼれる。それを討ち取って課題の達成とする。浩子はこの時点で九割がた勝ったと思っていた。点棒状況で言えばもちろんボロボロのうえに直撃で和了ってもそれは雀の涙ほどの点数だが、それでも日本最高峰の選手から和了るというのは未だ高校生の身である浩子にとっては大きな勝利と言えるものだった。

 

 

 「大したもんだぜ、船久保ちゃん」

 

 不意に咏が口を開く。まだ場は南三局のままだ。

 

 「よく気付いたね。それだけで花マルをあげたっていいくらいさ」

 

 浩子の目が見開かれる。咏の言葉はそれだけですべてを悟らせるに十分だった。一気に脱力感が襲い掛かる。体にかかる重力が五倍にも十倍にもなったように感じられる。そこには善意も悪意もない。ただ技術に開きがあったから、()()()()()()ことに気付かなかっただけの話だ。

 

 咏が自摸和了りを宣言して手を開ける。手には八筒が三枚使ってあった。理性は把握している。罠を張っていたのは上家に座っている咏だ、と。浩子がギリギリ掴めるであろう弱点のようなものをちらつかせて、それに食いつくように仕向けたのだ、と。その衝撃から声を洩らしそうになったが、浩子はそれを必死に噛み殺した。

 

 

―――――

 

 

 

 「ま、惜しむらくは経験が足りなかったってことかねぃ」

 

 局後に咏が立ち上がって浩子の肩を抱く。浩子は力なく笑い返す。結果も内容も圧倒的なものだった。ただの一局も咏は和了りを逃さなかった。八局すべてを和了り続けたのである。それも運任せの立ち回りではなく、十分に他家のケアをしながらのものだ。浩子に対して気付かれないように罠を張ったこともそうだが、彼女はこの半荘で一度もリーチをかけていない。自分の手を限定することを選ばなかった。それは相手次第で柔軟に対応するという意思表示であって、逆に言えばリーチをかけざるを得ない状況に追い込めなかったことの証左でもあった。

 

 咏の笑みは対局中の深みを持ったものではなく、普段のからっとしたものに変わっていた。

 

 「なあなあ船久保ちゃん、これはおねーさんからのアドバイスな」

 

 「……はい」

 

 「 “見てる” のは船久保ちゃんひとりじゃねーんだ、そこに気をつけるといいんじゃね?ま、わかんねーけど」

 

 「……ひょっとして私、わかりやすかったですか」

 

 「そりゃもう!東四が終わったときだっけ?妙にギラギラしててさ」

 

 「うーわ、カッコ悪すぎやろそれ……」

 

 「まーまー、気にしちゃダメさ。高校生レベルでそこまで気を配れる子なんてほとんどいるもんじゃないぜ?」

 

 「そんなもんですかね」

 

 「ところであの打ち方さ、どっちに習ったの?」

 

 「いえ、あの二人はほっとんど何も教えてくれないですよ」

 

 「へ?」

 

 「せいぜいたまーにヒントくれるくらいですわ」

 

 咏はそう聞いた途端に、ちょっと気になることができた、と浩子の肩をやさしく叩いてその場を離れていった。なにか今の会話におかしなところでもあっただろうか。浩子の頭を支配しているのはそのことよりも先ほどの咏のアドバイスだった。ちょっと考えればわかりそうなことだが、現実問題として今の今まで気が付かなかった。対戦相手に分析を得意とするものがいてもおかしくはない。せっかく相手の分析に成功して仕掛けを打っても看破されてしまうのでは締まらない。この対局は課題こそ達成できなかったものの、浩子が意識しなければならないものに気付くことができた非常に大きなものだった。

 

 “打牌” とはこれを指していたのだ、と浩子はついに理解した。あのとき赤木が半分だと言った理由はここにあったのだ。打牌という動作はこちらだけが見るものではなく、他家も当然のように見ている。そこを意識して利用してこそ意味がある。打牌とは幅だ。その見せ方によっては相手を油断させ、警戒させ、あるいは意識から外すことさえできるかもしれない。能面のように表情を変えずに何も悟らせないのも面白いかもしれないが、別にそれにこだわる必要もないだろう。

 

 じん、と鈍い痛みが脳を走る。さして強いものではなかったためとくに浩子は気に掛けることもしなかった。それよりは疲労感のほうが大きい。もしこの場が自分の部屋であったなら、何も考えることなくベッドに飛び込んでしまいたいくらいに消耗していた。トッププロのすごさが身に染みる。八局回しただけでこれほどの疲労感に襲われることなど経験がない。それと同時にその咏を上回ってみせた赤木の異様さも再確認させられることになった。すでに打ち子たちは退室していた。部屋を出る際に多少ふらついていたような気もするが、待機スペースに戻れないということもないだろう。時刻は十一時の半ばを過ぎていた。

 

 

―――――

 

 

 

 小さめなこたつの上でぐつぐつと音を立てる鍋を四人が囲む。どうせ鍋を食べれば暖かくなるのだから、と暖房は入れていない。浩子は鍋だのラーメンだの湯気の立つ食べ物を食べるときは眼鏡を外す。なんとか具の判断はできるからそこまで問題はない。見定めるために少々しかめっ面になってしまうがそれはご愛嬌。眼鏡というのは冬になると室内に入るだけで曇るから、対策のされた眼鏡に買い替えようかと何度も考えるのだが結局は考えるだけでいつも終わる。それに眼鏡が曇るというのはお決まりだが鉄板のネタで、それをみすみす手放すのも浩子にとっては考え物だった。視界が一気に白に染まるというのも案外面白い体験で、浩子はわりと好きだったりもする。

 

 「んでさ、赤木もすこやんもこの子どうするつもりなの?」

 

 「私は勝手についてってるだけだから、まずはしげるくん次第だよ」

 

 「……そうだな、大沼のジジイのとこでも行ってみようかと思ってる」

 

 浩子は大人三人の話を聞きながら、次は九州か、とうすぼんやり想像する。

 

 「もうジイさんには連絡とったの?」

 

 「いや、まだだな」

 

 「ならさ、提案があんだけど」

 

 「提案?」

 

 「このまま横浜に置いてくってのはどーよ?」

 

 はふはふと口の中のものを冷ましながら、事もなげに咏は言う。とくに誰の返答を待つわけでもなく、咏は続ける。

 

 「船久保ちゃん、今取り組んでる課題は?」

 

 「えっと、オカルト能力の分析とその対策ですね」

 

 「うんうん、だったらやっぱこっちにいたほうがいいねぃ」

 

 浩子は箸を動かし続けながらも咏の言っている意味がよくわからないため、不思議そうな顔をしている。今度は神奈川の高校で打ってもらうということだろうか。赤木と健夜は黙々と鍋をつついている。健夜の箸からずるりとマロニーが逃げていく。

 

 「ウチんとこにもオカルト持ちはいるし、ちょうどいいんじゃね?」

 

 そう言って咏はぱちりとウインクを決めてみせる。それがあまりにも決まっていることは別にして、浩子の頭が久しぶりに停止する。前にこんな状況に陥ったのはいつのことだったか。要は咏の言っていることは “プロチームである横浜ロードスターズに練習においで” ということなのだ。たしかに宮守で打った面子も水準としてはプロに等しい (一部は明らかに超えている) ものだったが、今回のこれはまた話が変わってくる。プロチームともなればその人数の多さとともに選手のバリエーションも多様となる。もしプロレベルのオカルトを封殺できるようになれば、もはや相手が超高校級でもない限り敵はいないと言ってもいいだろう。それにプロのオカルトを封じ切ることができなかったとしても、その経験は間違いなく浩子を成長させるだろう。

 

 口を開きっぱなしにして停止している浩子を横目に次第に話が詰まっていく。

 

 「咏ちゃん、学校のことも考えてあげないと」

 

 「んー、私の母校でいいっしょ。なんとか話通しておくよ」

 

 ようやく浩子は意識を取り戻す。取り皿の白菜はぬるくなってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 


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