ハリポタ転生もの   作:たか等

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ぷろろ

 

 

それは私がまだ小学生で男子の劣情を弄ぶこと(ネカマ行為)を繰り返し無邪気に遊んでいたある日のこと。

わが家の近くをフクロウが飛んでおった。

珍しいなぁ、なんて呑気に考えていた私だが、きっと疲れていたのだろう。

憧れだけで習い始めた剣道もようやくペースを掴んで両手の豆もいい感じに痛かったことだし。

けど、思えば最近不思議なことが多かった気がする。

体力の限界に挑むべく死にそうなくらいヘロヘロになったマラソンでは、気付いたら自分の部屋のベットで寝ていたり。

防具をつけて暑くて仕方なかった時に一陣の風……どころか竜巻のような暴風が局所的に体育館に発生したり。

あと具体的には、試合で鍔迫り合ってるときになんだか得体の知れない波動が私の体から放たれて相手が吹っ飛んだこととかか。

まあ、きっと気にするほどのことでもないのだろう。

最後のは筋がいいぞと褒められてまんざらでもなかったわけだし。

 

 

 

ただいまぁ、といって玄関の扉を開ける。

多分お客さんだろうか? サイズ的に女性ものの靴――やたらととんがっている革製の黒い靴――がある。

加えて、居間のほうがなんだか騒がしい。両親ともになにやら興奮して話し合っているようだが……まあそれより今は眠い。

居間の扉を通りすぎて風呂場へと向かう。

途中で東洋だか魔女だかいう単語が聞こえてくる。

……多分きっとバレーとかの話だろう。母は昔バレーやってたらしいし。

汗くさくなったジャージやら道着やらを洗濯かごに突っ込んで二階のマイルームへ向かう。

もう眠くて倒れそうだ。階段を登ることすら今はツライ。

のそのそと歩いて部屋へ辿り着き、下着の替えを出して着替える。

汗で湿った下着は部屋の片隅へ放り投げ、そのままベットへ倒れこむ。

途中、シャワー浴びればよかった、なんてことが頭の片隅に浮かぶも睡魔に負けてそのまま眠りに落ちた。

 

 

 

……いったい、どれほど眠ったことだろうか。

辺りはすっかり暗くなっている。きっと夕ご飯だ。目が覚めたのだって腹が時間を覚えているからだ。

紗衣ー! という母親の呼び声が聞こえてくる。

はぁーい! と返事を返すも……なんだかやっぱり食事の前にシャワーを浴びたくなってきた。

ジャージを取り出し、着替えてから足早に居間へと走る。

仕方がないが食後にシャワーを浴びてとっとと寝ることにしよう、と考えながらドアを開ける。

 

 

「ハッピーバースデー!!」

「おめでとう紗衣!」

「おめでとうございます」

 

 

途端、祝福の言葉とともにクラッカーの破裂音が鳴り響く。

え? という言葉とともに先にシャワー浴びていい? の問いも消えた。

変わりに口からは、感謝の気持ちを当り障りなく伝える言葉が出てきた。

 

 

「えっと、ああはい、ありがとうございます」

 

 

なんだかよくわからないが、そうか、今日は誕生日か……私の。

ありがとう父さん。ありがとう母さん。ありがとう蔵内家のみんな。

今日は私の誕生日。

おめでとう私。ようやく11歳だよ。

そしておめでとう俺。もう41歳だよ。

もう40代前半。この時期って油が乗って美味しくなるらしいよ。

それと本厄間近……やばいね、けどこの場合はどうすればいいのやら。

いちおう近くの神社へ駆け込めばいいのか? 

……いやなんかそれじゃご利益ないっていうかとりあえず祓ってもらえばいいのかな?

……………………。

…………ていうかあれ? なんか両親の他にもうひとりいた気がする。

 

 

 

ふと、顔を上げてよく見てみると知らないおばさんがいた。

多分、彼女が変な靴を履いてきた例のお客さんなのだろう。

 

 

「もう一度、おめでとうございます。ミス・クラウチ。

 はじめましてですね、ミス。私の名前はミネルバ・マクゴナガル。

 ホグワーツ魔法学校の副校長を務めています」

「はあ……そうですか」

 

 

四角い眼鏡は厳格そうな彼女の見た目に似合っているし、エメラルド色のいわゆる“ローブ”と呼ばれているであろう服を着ている女性。

そしてなんだがホグワーツって聞き覚えがあるなぁ……すごく昔に、具体的には30年くらい前に。

 

 

「単刀直入に言うと……あなたは魔法使いです。

 もっとも、この場合は魔女ともいいますが」

 

 

報告があるよ前世の俺。

どうも、30歳まで童貞を守れば魔法使いになるっていうのはあながち間違いでもなさそう。

けど、魔法使いじゃなくて魔女になるってのは聞いてない。

 

 

「私たちと共にホグワーツ魔法魔術学校で学びませんか? 偉大なる未来の魔女を目指して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある男子がスカートめくりという可愛らしい攻撃を繰り出したので、私は見事にそれをかわして、逆にその男子のズボンおよびパンツを引っさげて反応を楽しんだ。

しかし泣かれた。顔を真っ赤にして泣かれた。あらやだショタかわいい的な反応をしていた私だが、そのまま担任の女性教師に怒られた。

もちろん反論はした。

下していいのは下される覚悟をしたやつだけだ、と。

しかし、そういうことではない、と更に怒られた。なんだと! 教師なのにまったく理知的ではないじゃないか!

ともかく要約すると、いろいろとはっちゃけていた毎日であった。

無論埋め合わせもした。その男の子とは一緒にカブトムシを捕りにいったりもした。

発見したスズメバチにアルコールを飲ませて酔わせたり、間違えてゴキブリっぽいものを捕まえたり、定番のザリガニ釣りではニホンザリガニの希少さを嘆いたり。

とても楽しかった。

もう一度言おう。とても楽しかった。

前世でも同じように遊んだ記憶はもちろんあるのだが、同年代っぽい彼らとの何も考えないですむ交流は何度繰り返してもやっぱり楽しいのだ。

たとえ前世で30歳を越えておっさんになった俺であっても楽しいのだ。

 

 

俺は別段、聖職者とか神職を目指していたわけでもない。もちろん魔法使いを目指していたわけでもない。

けれども無事30歳まで貞操を守りぬいた俺であり、噂に聞くクラスチェンジが発生するかどうかにほんの少し期待した。

……もっとも結果としては、そんなことはなかった、とだけ言っておこう。

考えてみれば30歳といっても数え年で数えると31歳なわけである。厄年とかもこっちで計算するわけである。

けど、そうなると正直、30歳の基準がよくわからない。数え年で30歳のころ、つまり29歳元旦時点での俺はおそらく酔いつぶれていたことであろう。

 

ともあれ、前日は杖とかも買ったほうがいいのかな、などと要らぬ心配事で悩んだが、杖は翌日枕元に置いてあるらしい、とも記述されていたので安心した。

いや、その、別に信じていたわけじゃなくて、あくまで検証としての話である、あくまで。

 

 

そして誕生日を跨いだ翌日の朝。

噂で聞いたように、ある日突然魔法が……なんていうことはなかった。

いつからだろうな。

枕元にはプレゼントの代わりに携帯の充電器が置いてあるようになったのは。

会社行くか、などと俺は呟いた。

食パンかじってコーヒーを飲んで、テレビのニュースを右から左へ聞き流し、背広を着て寝癖をとかした。

そして靴ひもを結び、玄関のドアに手をかけ俺は思ったのだった。

 

今日もいつも通りの一日が始まる、と。

 

 

 

そうして俺は……。

……うん、こっからさきがよくわからない。

想像になるが、きっと光の中へ溶けていったんだと思う。

というか、その次に見た光景が今の母親の笑顔で蔵内家の一員になった瞬間だったし?

 

 

ともあれ俺こと私は今は11歳で、ホグワーツで7年間勉強する予定である。

けどまあ正直いって、ホグワーツってのは年代によってはとても危険な場所である。

しかし、マクゴナガル先生に魔女ですよーと言われ、魔女なんだーと憧れてしまった私にとってとても魅惑的な場所でもあった。

そのため、断るという選択肢は後になってから思いついたというわけである。

もっとも、イニシャルでいうところのH・Pさんがいない時期であれば難易度が下って我が世の春を謳歌できるともいえる。

そんな一抹の不安を感じながら、動く写真で蠢いている『日刊予言者新聞』のバックナンバーを調べると、あぁと悲しみが私の口から零れた。

 

 

 

英雄が生まれたのはどうやら11年前らしい。

 

 

 

よりにもよって同年代。

賢者の石から死の秘宝までより取り見取り。飽きのこないホグワーツ生活になりそうである。

特に後半、嫌だ。

 

記憶に残っているH・Pさんの活躍劇は賢者の石から不死鳥の騎士団あたりが限界である。

その後の、半純血のプリンスと死の秘宝に関しては一度読んだだけだ。それも発売日に『今日は読むか』的に一気読み。

記憶的にいえば短期記憶に分類される。即ち、ほぼ覚えていない。

ネビルがナギニを切り裂いたとか、ニワトコの杖は死の秘宝だったかな? など断片は残っているが、私が生き残るために重要となる物語の展開がおぼろげ過ぎる。

けどまあ、主要人物に関しては名前を聞いたら思い出すかもしれない。それだって小手先の対応しかできなさそうだけど。

死亡フラグ多いよぉ、助けてローリングさん。

あー、でもアンブリッジさんとかそこらへんは覚えてるかもしれない。たぶん関わらないのが一番だということも真実薬がやべえとかそんな感じで。紅茶は飲まない、これでおっけー。

あとは……ああ、そうか閉心術とか危ないのか。……危ないのか? 我ながら頼りない記憶野だけど? まあ、注意しなければ。

 

 

物語的にはまあこんなものだが、今後の方針的にはどうすればいいのだろうか。

具体的には、全てが終わった後の私の生活とか。

闇の帝王自体はおそらく私が卒業するころに滅んでしまうであろう。なんの影響も与えず、植物のように生きて貝のように静かにしていれば。

そしてホグワーツ卒業後の進路は……魔法省が多かった気がする。

けど魔法省にしても戦後処理ではないが、そこらへんのゴタゴタもそれなりに長く続くだろうきっと。闇の帝王の残党とかもいそうだし少しめんどくさい。

それらのゴタゴタが終われば魔法省は定職、安定、堅実とよさそうだが、だとしても第二第三の闇の魔法使いが現れてもおかしくない。

そういうわけで、平和ボケして意外とよさげだが闇払いも却下。というかそこまでの才能があるかどうかが怪しい……人員補充とかはありそうだけど。

お役所仕事というわけで魔法省ってのはいい職場だと思うが、現状、卒業後すぐに入るのはキツイかもしれない。残業とかも多そうだし。

 

……というわけで私が目指すべきはホグワーツ勤め、もしくは日本に存在するであろう魔法省(日本支部?)とかが妥当である。被害少なそうだし。

ホグワーツに関しては、職場としても研究の場としても事欠かなそうっていうのと、そもそも毎日がおもしろそうだからである。ほんとH・PさんとかT・Rさんとかいなければ。

まあ、候補に挙がった魔法省の日本支部だって、現地で採用しているのやら日本に派遣されるのやらわからないから、実質ホグワーツ一択であろう。

ホグワーツといえば教師とか森の管理人の手伝いとかフィルチさんの手伝いとか? 

個人的には教師かハグリットのお手伝いかなぁ。魔法生物っておもしろそうだし。

 

 

まあ、今後の方針としてはふわふわしてるけどこんなところか。

一通りは理解した。忘れないようにメモ……するほどでもないか。

とりあえず、頭使ったから甘いものが食べたい。

というわけで予め買っておいたカエルチョコの蓋を開ける。

カエルが跳び出すも焦らず捕まえる。カードは……マッドアイさん。狂った眼の人。……あれはマジックアイテムだったのだろうか。見た目はともかくすごく便利だと思う。

そして逃げ出そうとしているカエルチョコを貪りながら思う。何も触感までカエルっぽくしなくてもいいのではないだろうか?

ぐちゃぐちゃ、と何か肉のようなものを噛みながらもどこか甘い不思議な感覚を味わいながら、魔法界では本物らしさが重要なのかもしれない、と考えた。

かぼちゃジュースの、風味と甘さは十分だがもう少しさわやかさが欲しいそれを飲みながら、持ち込んだ最近の『日刊予言者新聞』をめくる。

どうやらギルデロイさんの本の売れ行きが好調らしい。いや、買わんけど。

そして片隅にはリーター女史の現魔法省大臣ミリセント・バグノールド批判が載っている。どこの世界も政治の話では褒められることなどないようだ。

まあ、リーターさんって金曜日っていうかパパラッチっていうか……仕方ないよね、コガネムシ相手じゃ。

 

 

しかしコガネムシねえ。

お金に困ったら突き付ければ……だめか。たぶんアズカバン出てきたらこっちが身を滅ぼされる。やめとこう。

それにしても虫って『動物もどき』なのか?

区分がわからない。確か免許制だっけ? で、H・Pさんの父親がたは無登録、と。

ブラックさんもそこらへん利用してアズカバン出てくるんだよなぁ。

………………。

…………閃いた。

天啓かもしれない。

物語の展開的に一番安全な対策は違法な『動物もどき』だ。

吸魂鬼にも睨まれないし、危なくなれば森にでも逃げればいいんだ。もしくは鳥形になれたらホグワーツの屋根の上でじっとしていればいい。

よし、そうと決まれば話は早い。魔法の勉強は頑張ろうとか思ってたけど、魔法史だか魔法薬学だか知らないがそこらへんは中空飛行でも低空飛行でもなんでもいいから平均点くらい。そして変身術では全力を尽くす、そんな感じで。

最終目標はT・Rさんとかが直接ホグワーツを攻めてくるときまでに。たぶん六年とちょっと。

大丈夫だ。あのピーター君でもできたんだ。凡人っぽい私でもゆっくり時間をかければきっとできるはずだ。

頑張れ頑張れ私。負けるな負けるな! H・PさんとかT・Rさんそんな醜い血で血を洗う争い勝手にやっててください。

……でもジェイムズとシリウスでさえ三年だっけか。

……やばいなぁ在学中にいけるかなぁ。

無残で悲しい最期とか、主人公のために役立つとかそんなことはどうでもいいから食っていけるだけの強さと強かさが今切実に欲しい。

でも『動物もどき』で手こずって成績悪くなったらどうしよう。というか『動物もどき』できるかなぁ……。

ぴ、ピーター君には負けたくない気もするけど。

まあ、『動物もどき』になれたら話は簡単だ。最悪リータ―さんを脅してでも弟子入りすればいいのさ! 権力の狗? わんわん! なにそれおいしいの?

なるほど、『動物もどき』こそがすべての鍵。もちろん無登録で、だけどね。

ようし頑張って練習するぞ。特に変身術。感覚はやってからだけど、今から楽しみだ。

 

 

 

 

……とりあえずまあ、頭の上でくっちゃべってる帽子さん。だからとっとと寮を決めてくれないかな。

 

 

「レイブンクロー!!」

 

 

よし、一番地味なとこ来た。

 

 

 

 




TSタグを入れるか悩むとこ。
葛藤っていうか、うーんなんだろう。女の子するかなぁこの子。

TSタグ、一応追記

誤字修正
秘法→秘宝
T・Mさん→T・Rさん
T・M……いったい何者なんだ……

半純潔→半純血
半純潔 深く考えてはいけない


そして、指摘された通りに怪しかった数え年の表現の辺りを修正。
……やっぱ普段使わない数え年はピンとこないなー。
もういっこの指摘の方は少しばかり考え中ってことでお願いします。

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